謎メキ!花の天カス学園とオトナ帝国の野望を比較解釈してみた話

 これは、イエスタデイ・ワンスモアが勝つオトナ帝国だ

 というのは、あくまで俺の見立てだが、一応どうしてそう考えるに至ったかを書いておく。

 そもそもの発端は終盤のレース展開でオトナ帝国を思い出したということが大きい。今作の最後はレースだ。かすかべ防衛隊と離れたくないと考えた風間くんが、友達全員をエリートにするために走る。その風間くんを止めるためにしんのすけたちが走る。周囲は当初風間くんを応援していたが、全力で走り続けるしんのすけたちの姿にほだされて、徐々にしんのすけたちを応援する。最終的にしんのすけはギリギリで間に合わないが、風間くんも考えを改めて引き分けにしてくれる。
 一方、オトナ帝国では"20世紀"というファンタジーをこの世界に固定するためにエレベーターに乗ったケンとチャコを、未来に希望を抱くしんのすけが阻むために塔を登るというレースだった。当初、過去というファンタジーを現実に固定することに賛同していたオトナ達は、未来を望み、ボロボロになりながらタワーを駆け上るしんのすけたちを見てほだされ、徐々にしんのすけたちを応援していく。最終的にしんのすけはギリギリで間に合わないが、すでに匂いのレベル=オトナたちからの賛同はファンタジーを固定するには足りない状態になっていた。

 こんな感じで、結構近い展開に”一見”見える。が、これよく考えると全然違うと思う。

 イエスタデイ・ワンスモアは、居心地の良い過去にそのまま居続けたいと願っていた。その過去を願う人たちに、未来への希望を語ったのがしんのすけだった。ケンとチャコには過去しかないが、しんのすけには未来があったのだ。
 そこで今作のレースでのしんのすけのセリフである。


「オラには今しかないぞ!」

 あくまで構造として考えたときだが、風間くんは皆とともにいる未来のために(明らかに間違った方法だが)行動を起こしている。それに対して、しんのすけ達はそれを止める=今という過去(未来を見据えている風間くんにとっては今は同時に過去でもある)によって未来のために行動を起こそうとしている人を止めようとするわけだ。これは、オトナ帝国の反転ではないだろうか。つまり、未来のために先へ進もうとする風間くん(オトナ帝国のしんのすけ)をしんのすけ(オトナ帝国のイエスタデイ・ワンスモア)が止めているわけだ。しんのすけは今だけを見ている、というこの映画の立ち位置は理解できる。
 一緒にいられる時間が限られているかもしれないからこそ、今を楽しむという考え方はよく分かる。だが、この映画がよく比較されるオトナ帝国のしんのすけは、果たして今だけを見ていただろうか。未来を夢見ていた。そのしんのすけが、果たして過去を代表する存在として未来に進もうとするものを阻んだだろうか。

 個人的には、しんのすけにも未来を考えていて欲しかった。そのうえで、風間くんのやり方が間違っていることを示してほしかった。例え違う小学校に通うことになっても、誰かが「春日部防衛隊!」と叫んだら、皆が「ファイヤー!」と叫ぶ未来を想像させてほしかった。

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