ひっくり返した灰皿みたいね

前提として認識しておいてほしいことは、俺が詩人なのではなくこの世界がハードボイルドだということだ。


人生を楽しんでいるかお前ら、心底うらやましいよ。
最近の俺はすごく空虚な気持ちに苛まれて苦労している。
家族も友達もいいやつばかりだ、新しい仕事も覚えてきて悪くないはずなのになぜだか何も楽しくない。
元来後ろ向きな人間なのは理解しているがここまでくると自分でもどうしていいのかわからなくなってくる。

最近はあまりSNSを見ないようにしている。
意図的に、というより他人にあまり興味が無くなりつつあるというのが正しいかもしれない。
あまり良くない兆候だ、あまり自分から発信するタイプではないからそこが変わらないのは別にいいのだが、もう全てどうでもよくなりつつある。
困るよ。まだ家族が生きているのに。

年が明けたぐらいから胸にビー玉ぐらいの鉄の塊が埋まっているような気分だ。
つっかえが早く取れればいいのだが、多少の水では流し込めない。
幸せを感じていないといえば嘘になるが、その幸せを感じる器官が麻痺していると言った方がいいのか?
なんにせよ「普通」なら楽しいであろうことも楽しさを覚えられず、「普通」なら悲しいことも何も感じない。
つまらない人間になったものだ。
元よりそうじゃなかった確信もないけどね。

一日が終わるごとに、昨日との違いを見つけられないまま明日を迎えてしまう。
この生活に空虚を感じないほうがおかしいと思わないか。
刺激がないとか、彩りが足りないというつもりはないけど、灰色なんだよな。
昔はもう少し楽しかった気がする、もっとドーパミンとアドレナリンに溺れながら生きていた気がする。もうそんな鮮烈な日々は送れないのだろう。
なぜなら今が残りの人生において最も若い瞬間なのだから。
萎びた感受性ではこの灰色の日々に色を付けるのは難しい、途方もなく。

まるでひっくり返した灰皿を眺めている気分だ。
掃除しなければならないのは理解しているが、その時は今じゃないと言い切れる理由を必死に考える。
でも風が吹くのを恐れているうちに手を動かさなければと追い立てられる。
結局面倒になって全て水で洗い流すのが一番楽だと気付く。
この床と同じように水でも流せばこの生活にかぶった灰も流れてくれればいいのにね。                         

じゃあね、またいつかの寝れない夜に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?