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構築・プレイ決定の指針~色分け法~

0.はじめに
本記事は、「デッキ内容及びプレイングを決める際の指針のひとつ」を提示する記事です。筆者自身のための、思考の言語化も目的としています。
自分なりのそういった指針を既にお持ちの方にはあまり役に立たないと思います。「その手のことはあまり考えていない」「そこまで考えず組んでいて、なぜかうまく場合とそうでない場合がある」「デッキを考え出す前に思っていたようにプレイが進まない」などという方にはオススメです。
そうはいってももちろん、様々な方に読んでいただければ嬉しい限りです。どうぞよろしくお願いします。
なお、本編(最も重厚な部分)は 3.採用カードの分類(デッキ内の色分け)とは です。

1.短いまとめ


本記事の内容を一文でまとめると「事前にデッキを色分けしておくことで、構築案及び各場面でのプレイ案をまとめやすくなる」であり、そのために重要なことは以下の二点です。
(i)柱となる思想を決める、
(ii)デッキ内のカードを役割ごとに分類し、その比率に注目する。

(i)について
これは何よりも重要です。構築にもプレイにも大きく影響します。具体的でなくとも、メインプランが高速/中速/低速のどれであるかを決めるだけでもよいです。
例えば、筆者の過去記事の例ではより具体的に標語として「後続を用意しながら無理せず1妨害(アルカエスト)、できれば重錬装で」と掲げてありますが、単に「中速型メタルフォーゼ」でも構いません。

(ii)について
採用カードを個別に見るのではなく、役割毎に見ることが大切です。これにより、
・初手の様子とそこからの動き、
・中盤のデッキ内の様子とそれを踏まえた動き
の二点を、緩くかつ効率よくイメージできます。また、サイドチェンジの際にも役立ちます。

2.柱となる思想とは

柱となる思想とはすなわち、そのデッキで何をしたいか、またどのようにゲームを進めたいかという欲求のことです。デッキのテーマ(使用するカテゴリ)が同じでも、思想が違えば別のデッキが生まれます。そのテーマでできること、自分の好み、環境との相性などに基づいて決定しましょう。
まずこれを明確にする(可能な限り言語化する)ことによって、構築やプレイを選択する際に自分が目指すものをはっきりさせます。何かに迷う度に必ず、この基本思想を思い出すようにしましょう。
例えば、一言にメタルフォーゼデッキと言っても (i)相性の良い他のPカードを複数採用することで手数を増やし展開力を高め、強力な布陣を敷く高速型、(ii)展開をあまり伸ばさず、リソース維持を意識し続ける中速型、(iii)(ちょっと考えたこともないのでよく分かりませんが、)何らかの方法で相手の手を大きく遅らせながら勝ちに向かう低速型 といった具合です。高速、中速、または低速かで採用カードが変わるのはもちろんですが、「展開をどこまで伸ばすか」「妨害をどう受けるか」「リソースをどれくらい残すか」「相手の動きをどう止める/捌くか」などの決断にも影響を与えることが分かると思います。

3.採用カードの分類(デッキ内の色分け)とは

採用カードの分類とはすなわち、デッキ内で(1.の思想に基づき)「似たような役割を持っているカード群」をひとまとめにすることです。カードを個別に見ることではなく、大まかに見ることが大切です。最初にこの手法の利点を書いておくと、手札・デッキの様子を想定しやすくなり、取るべき動きを分析しやすくなることです。また、できれば(デッキの総数の5分の1)±1を単位とすると都合がよいです。
これは具体例を見ながらの方が分かりやすいため、筆者の中速メタルフォーゼを例に話していきます。

まず、これがレシピ(メインデッキ)の画像です。

画像1

これはどこでも通じるように適当に並べたものですが、今回の目的に合わせて並び替え、役割別に色をつけてみると以下のようになります。
(データベースの仕様で順番は必ずモンスター→魔法→罠になるようなので、どうにも綺麗になりませんでした。お許しください。)

画像2

グループO(画像内桃色)[メインの動きの中核を担うカード群、16枚]
グループA(画像内紫色)[グループOのかさ増し、あるいはそれに繋がりうるカード群、8枚]
グループB(画像内緑色)[手札に来てほしくないカード群、8枚]
グループC(画像内黄色)[その他のカード群、8枚]

このように、ある程度の枚数のブロックができるようにデッキ内のカードを役割別に分類します。これを色分けと呼び、各役割をそれに割り振られた色と適当に同一視します。
Oは、いわゆる"初動"や"メインギミック"に強く関わるとして、特別な名前を振っています(「高速以上のデッキで"初動"と言われるカード群をOとする」と表現した方が世の潮流に合っているかもしれません)。

上記の例に基づいて、(i)初手の様子とそこからの動き、(ii)中盤のデッキ内の様子とそれを踏まえた動き をイメージする方法を見ていきます。

(i)初手の様子とそこからの動き
グループO,A,B,Cの比率は2:1:1:1です。従って、初手5枚にそれぞれ2枚、1枚、1枚、1枚で来ることが平均として想定されます。まずはこれを基本とします。共通効果を持つメタルフォーゼが2枚ということなので、十分な動きは取れません。しかし、かさ増し要員のグループAが1枚あることになっています。そこで、Aのカード毎にプランを分けます(具体的な動きを一応書いてはいますが、それ自体は本質ではないので興味がある方だけどうぞ)。

バオバブーン→召喚し効果を使い(Bをデッキに押し込み)、メタルフォーゼで破壊、
マジシャンズ・ソウルズ→メタルフォーゼの効果を1回使い、ドロー効果のコストにする(Bの枠が錬装融合かメタルフォーゼ・コンビネーションならそれもコストに、メタルフォーゼ・バニッシャーなら最初のメタルフォーゼの的に回すことで2回分とする)、
アストログラフ・マジシャン→メタルフォーゼの効果を使いアストログラフを特殊召喚、エレクトラム展開へ、
クロノグラフ・マジシャン→クロノグラフを的かスケールに回し、コンビネーションなどを構えて終了、
BとCはそれが何かによって盤面強度や次ターンの防御に関わるので、見てから考えることにします。

もちろんこれは比率に沿って手札に来た場合のみの話であり、これだけでは都合の良い妄想でしかありません。しかしこの手法が輝くのはむしろ比率から逸れた手札をイメージする場合なのです
まず、Oのカードが多く来る分にはメインの動きを取りやすくなる・手数が増えるということなので基本的には喜ばしいです。例えばOが3枚来たとしましょう。その際考えることは、残りの2枚が何であるかです。平均(OOABC)に比べてOが1枚多いわけですから、ABCの少なくとも1つは抜け落ちます。より正確にはAA,BB,CC,AB,BC,CAの6通りがありますが、そこまで細かくなくとも以下の3分類くらいで考えれば十分です(もちろん6パターン別で考えてもよいです)。
Aなし→展開用が3枚しかないので、リソース溜めに寄せる、
Bなし→理想的な初手なので、強めの展開を狙う、
Cなし→受け/返しが不安だが攻め手は多いので強めの展開を狙い、かなわなければ受けに寄せる。他にも、Bが素打ちできるカードなら展開を、素伏せのカードならリソース溜めをという思考分岐もあり。

同様に「Oが1枚少ない」という不調気味の初手でも、その1枠を埋めるのが何か(Oが少ない分多いのは何か)に応じて行動選択の目安を立てられます。Aが多い→かさ増しの結果次第では展開可能、
Bが多い→どうにもならない、コンビネーションがあれば希望あり、
Cが多い→これらが延命/後続調達になることを信じてB置きエンド。

このように、「Oが1枚多い」「Oが1枚少ない」という条件から、本来は膨大な数の起こり得る状況を、わずか数通りに分類し大まかな動きを考えることができます。主要な妨害(増殖するG、灰流うらら、無限泡影など)を受けた場合の動きも、手札の色模様ごとにあらかた決めておくことができます。これらはもちろん「Oが2枚多い」など他の状態でも同様です。

(ii)中盤のデッキ内の様子
中盤以降は、手札以外にデッキの変動も重要になります。もちろん、このゲームでは自分はデッキ以外の自分のカードを全て把握できるため、各点での自分のデッキ内容はいつでも正確に把握できます(昔は裏側除外のカードは確認できませんでしたね。懐かしい話です)。しかし、実用上は大まかな状況を素早く把握する方が重要です。
まず、スタートは手札と同様2:1:1:1:1と想定します。なおここに関しては、5枚しかない手札に比べて「1枚の変動が与える比率への影響」が小さいため、(i)で行ったような Oが1枚少ないと… のような細かいことは考える必要はありません。ここから自分が何かを行う度に、これらの枚数・比率がどう変動するかを意識します。こうして、デッキの上にあるカードの役割群別確率をイメージしながら、次の動きも役割群別に考えることができます。例のデッキではメタルフォーゼの性質上、Bの枚数は大きく減りやすく、AとCは変動の見込みが小さいです。

4.分類についての補足

4-1.分類の仕方
"基本思想に基づき自分が考える役割別"としておけば十分ですが、少し補足します。いわゆる[明確な初動を担うカード]がある場合は、それをOに入れればよいので分かりやすいです。しかし、少々細かい工夫の余地があります。
例えばイビルツインには1枚初動、あるいはコスト付き初動が大量に入れらます。ここで、16枚近く採用した[初動群]をOとするのも手ですが、[初動群+初動群を止めるカードを止めるカード(二種の指名者など)]を16枚あるいはそれを少し超える枚数としてOに纏めるのもよいでしょう。もちろん、前者の選択では次のグループAとして[Oを止めるカードを止めるカード]が生まれます。相剣電脳堺のように"純粋に1枚で動き出せる"カードが多くない場合は、[ここから2枚以上あれば動けるカード]としてまとめるとよいと思います。もう少し厳しく、甲虫装機のように"装備する側される側が両方必要"なデッキでは、それを分けてO1[装備する側]とO2[装備される側]のようにするとよいと思います。
またもちろん、同じカードでも思想や分類の仕方によっては異なる種類のグループに属することがあります(実際、上述のメタルフォーゼの例と下記4-3の例では増殖するG、灰流うららが別の分類法により異なる役割のグループに属しています)。


4-2.明確に複数の役割を持つカードの分類
黄金郷エルドリッチや電脳堺門-青龍のように、重要かつ明確な役割を二種類以上持っているカードについて。例えば、Pカードのように二色刷りと思う(AにもBにも所属するとみなす)方法が素直だと思います。こうしたカードが少ない(3枚以下程度)うちはデッキ内比率に大きく影響しません。多くある場合はそれ用の新分類([除去にも展開にも使える]など)を作ればよいです。

4-3.他のデッキでの例
筆者が一時期考えていた十二獣(アーゼウス以前)は、以下のように色分していました。

画像3

O(桃色)[下級十二獣及びそれに直接繋がるカード、14枚]
A(黄色)[相手を転ばせる、手札から発動できるカード、14枚]
B(紫色)[その他、12枚]
見ての通り、3種の役割で分類し概ね均一になるように意識しています。この均一性から、十二獣の動きのために重要な下級十二獣と、中速ゲームに持ち込むための妨害カードをそれぞれ1-2枚ずつ持つことを期待できます。そしてさらに、強欲で貪欲な壺を強く使うことができます。というのも、均一にしておくことで、デッキ内にはOABが概ね同じ枚数ずつ存在する状態を維持しやすいです(天璣、会局、モルモラットによる減少、貪欲な壺と方合による増加などはありますが、全体に与える影響は小さいです)。従って、どのタイミングで強欲で貪欲な壺を発動しても、均一なコストを支払い、均一なドロー結果を得ることが期待できます。すなわち、「痛すぎるコストの払い方」と「弱すぎるドロー」が起こりにくくなっています。こうした視点を自然に持つことができるのも、この手法の利点のひとつです。もちろん実際に発動した後は、コストとドローカードの12枚の中でのOABの比率を確認し、その後の行動選択の判断材料とします。
なおこのレシピ自体は個人の好みを強く反映しており、二の手を生むためのリビング・フォッシルや、EX枯れを防ぐ貪欲な壺を多めに採用しています。よく見られたように、強めの罠や除外系カードを入れた構築の方が広く勝てるとは思います。


5(おまけ).ちょっとした補足

5-1.ゲーム性との合致
近年の決闘シーンでは、増殖するGや灰流うららをはじめとした手札からの妨害カード、及びそれらに(も)1枚で対処できる墓穴の指名者や抹殺の指名者が大変広く使用されています。これらの"メインギミックと関係ないカード"が増えるほど、"メインギミックカードが手札に少なくて動けない"ことも増えます。そうした事態を避けるために、初動の軽さや手数の多さを語る議論は良くなされていると思います。この手法はその議論をより精密(しかし十分おおらか)にし、簡単かつ多様な分析を可能にします。
もちろんプレイを精密にするためには、「これとあれからこういうルートを辿ってここにたどり着く」のような初手からのルート把握が重要であることは間違いありません。しかし、多彩な初手や盤面に対応するためにはむしろ、手札の状況を(具体的すぎない範囲で)おおまかに分類することで、プレイ/プラン把握を手広くしておくことが重要であると考えます。おおらかなプランの先で、具体的なプランはいくらでも決めておくことができるわけですから(例えば3.(i)初手の様子とそこからの動きで行ったように)。
そうした観点からも、近年のゲーム性に合致した手法だと考えます。

5-2.組み合わせ総数
O,A,B,Cの手札5枚への割り振りの総数は56通りです。また、1分類が5枚という手札は良くも悪くも非常に極端で、あまり多くのことを考える必要がありません。従って、よく考えておくべき組み合わせは実質52通り。かなり多く見えますが、本来の(カード毎に考える組み合わせ)総数に比べればずっと少ないでしょう。計算が面倒なので何通りかは考えていませんが。
ちなみに、3分類(O,A,Bのみ)の場合は全部でも21通り、1分類5枚を除けば18通りしかありません。

6.最後に

6-1.言い訳
細かい部分まで読んでくださった方はお気づきかもしれませんが、例として使用したメタルフォーゼはかなり特殊です。共通効果を持つカードが6種類も存在し、その効果でデッキ内のメタルフォーゼ魔法罠に容易にアクセスできます。基本思想も比率もそれを前提に設計しているため、例としては不適切だと重々承知しております。しかし、例として挙げられるほど自分で詰めたデッキがないため、このような事態になってしまいました(もちろん、前記事の宣伝も兼ねましたが)。当然、使用するカードたちごとに、適切な役割配分や分類法があります。皆様は皆様のやり方で、皆様がお使いのデッキの色分けを考えてみてください。

6-2.終わりの挨拶
最後までお読みいただきありがとうございます。言うまでもなく、この手法は"とっかかり"に過ぎません。デッキというのは、考えるほど構築は洗練され、使うほどゲーム中の状況分析や意思決定は自然に行えるようになりますから、この手法を用いてできるようになることは特別なことではありません。しかしその鍛錬の道を歩むためには、ある程度方向性を意識しておくことが重要です。大雑把に言えば、目的地を定め、そこへ向かう大きな道をいくつか整備しておくということをしているわけです。道中での細かい振る舞いや、道を外れた斬新な動きなどは後からついて来ます。文字通り、デッキを詰めていく際に"指針"を持つことの大切さとその一例を提示する記事でした。冒頭の通りそのような指針を既にお持ちの方には不要な記事でしたが、漠然とデッキを考えていた方は是非参考にしてみてください。そして、いつかは自分なりの指針を確立し、充実した決闘者ライフを送ることができるよう、陰ながら(勝手に)応援しております。改めて、ありがとうございました。

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