年金、2階建・3階建って?
年金手続きが難しいと後回しにしているクライアントと一緒に、年金事務所に行ったことがあります。
手元にたまっているたくさんの年金関係の書類を全てお持ちいただき手続きを進める中で、窓口の方は「あー、これは3階部分なのでここでは手続きできません」と一部の書類を返却し、クライアントは「3階部分って?」と困った表情に。そこで、この様な図を書きました。
年金を建物に例えると
現役世代は原則全員が国民年金の被保険者で、これが年金を建物に例えたときの1階部分と言われています。
サラリーマンや公務員などの場合は厚生年金にも加入することになり、これが2階部分です。1階と2階がいわゆる「公的年金」で、年金事務所で加入歴の確認・申請ができます。
さらに、企業によって、あるいは公務員の場合はその上に上乗せ制度があり、これが3階部分です。
年金の3階部分とは
公的年金に対して、「企業年金」という言い方もします。企業によって採用している制度のしくみが異なります。昔からあるのは
・確定給付年金
・厚生年金基金
ですが、バブル崩壊→団塊世代が大量退職したあと積立金がガサっと減って運営が厳しい状況です。厚生年金は現在、新規での設立が認められていません。そこで最近は
・確定拠出年金(企業型)
に移行する企業も増えています。確定給付が「給付額が確定している」のに対し、確定拠出とは、毎月拠出する額は確定しているが、将来受け取る給付額は従業員の運用成果次第、という意味です。転職しても次の会社が確定拠出年金を採用していれば、資産を移すことができますし、採用していなければ、あるいは自分が独立したら個人型確定拠出年金(iDeCo)に引き継ぐこともできるので、現代の働き方にフィットしている反面、運用に抵抗のある方は不利に思われるようです。
・年金払退職給付
は、公務員のための年金制度であった「共済年金」が2015年に厚生年金に統合された際、今まであった「職域加算」に代わって創設されました。
私のお客様は今まで複数の組織に所属していたので、厚生年金基金、確定拠出年金、共済年金の加入履歴があります。
厚生年金基金と確定給付企業年金は「企業年金連合会」というところでまとめて複数の企業の加入履歴の確認ができますが、確定拠出年金や共済年金はそれぞれ別の窓口(2015年以降は共済年金の受給手続きも年金事務所でできるが、加入期間や額はわからないのだそう)。
それをお伝えすると、ちょっとクラクラしながらも「3階建ての意味はわかりました」と納得のご様子。年金のしくみはとても複雑ですが、自分が何に加入しているかを理解できていないと申請漏れもあり得ます。
不足している人は私的年金(自分年金)をつくろう
現代は転職、複業などさまざまな働き方の選択肢があり得ます。転職しても持ち運び可能な企業型の確定拠出年金を採用する企業も増えている反面、「よくわからない」という理由で運用をデフォルト設定のままにしている方もいます。とてももったいないです!3階部分がないところも多いですし、増加傾向のフリーランスの方は2階部分すらないのです。
自分の職場が手厚くない、国はフリーランスにもっと保障を、などの声も聞きますが、まずは自分ができることを探すのも大事なこと。企業型の確定拠出年金がある方は、おそらく導入研修があるはずなので、ちゃんと受けて運用しましょう。
職場に3階建てがない方やフリーランスの方のために、任意で加入できる「私的年金(自分年金)」と呼ばれる制度があります。例えば掛金が全額非課税になるなどのメリットがある
・iDeCo(確定拠出年金個人型・ほとんどの人が加入できる)
・小規模企業共済(名前の通り自営業向け)
・国民年金基金(こちらも自営業向け)
や、全額ではないけれど一部非課税になる民間の保険、運用益に課税されないNISAを活用するなど「自分年金」づくりに取り組んでみましょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?