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肥料とフルボ酸で土壌改良の新たな可能性

農業の世界で「フルボ酸」という言葉が頻繁に取り上げられています。肥料としての利用だけでなく、土壌改良の新しい方法としての可能性が注目されているのです。この記事では、フルボ酸の特性と、それが農業にどのような影響をもたらすのかを詳しく解説します。

1. フルボ酸とは? 腐植物質の一部としての役割

フルボ酸は、土壌中の「腐植物質」の一種として知られています。腐植物質とは、土壌に存在するさまざまな有機物の中で、動植物の遺体や排泄物を除いた部分を指します。これらの有機物は、微生物によって分解される過程で、新しい有機物として生成されるものが「腐植物質」として分類されます。

この腐植物質は、さらに粒子サイズや溶けやすさによって、フルボ酸、フミン酸、ヒューミンの3つに大別されます。特にフルボ酸は、粒子サイズが小さく、アルカリや酸の両方に溶けやすい特性を持っています。

2. フルボ酸の農業への影響: 直接的・間接的な効果

フルボ酸が土壌に持つ多面的な効果は、作物の収量や品質の向上に大きく寄与しています。その主な効果としては、ミネラルの供給や発根・根毛形成の促進が挙げられます。

フルボ酸は、キレート作用を持つため、土壌中のミネラルを作物が利用しやすい形に変える役割を果たします。また、フルボ酸には植物ホルモンに似た作用があり、発根や根毛の形成を促進することが研究で示されています。

さらに、フルボ酸の施用によって土壌の構造が変わり、リン酸固定の軽減や保肥力の向上などの土壌改良効果が期待されます。

3. フルボ酸の実際の利用例: 塩害耕地の除塩から品質向上まで

フルボ酸は、塩害を受けた耕地の復元にも利用されています。特に、津波などの災害により海水を被った土地では、塩分が多量に蓄積し、作物の生育が困難になることがあります。フルボ酸を散布することで、土壌に吸着している塩分を溶出させ、再結晶化を促進することで、土壌の塩分を減少させる技術が開発されています。実際、東日本大震災で津波の被害を受けた千葉県山武市の水田では、フルボ酸散布による除塩技術が成功し、米の収量が大幅に回復したとの報告があります。

4. フルボ酸を取り入れるメリット: 肥沃な土壌の形成と持続的な農業

フルボ酸やフミン酸が豊富に含まれる腐植が多い土壌は、古くから肥沃な土壌として知られてきました。フルボ酸を取り入れることで、微量要素の供給が向上し、土壌の構造や通気性、保水性が改善されます。これにより、作物の生育が促進され、収量や品質の向上が期待できます。また、フルボ酸は、たい肥の多量施用を抑えることができるため、肥料成分の過多や未分解部分による障害のリスクを低減することができます。

フルボ酸の持つ多面的な効果は、持続可能な農業の実現に向けた大きな一歩となるでしょう。これからも、フルボ酸の研究や実用化が進められることを期待しています。

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