小説創作|とうきょうながれもの 序章:与三郎がゆく
作:cragycloud
おれの名前は、与三郎
東京・新宿から高速バスに乗って、東京湾の海底をもぐり、さらに橋を渡って辿り着いたのは、東京にほど近い半島にある西海岸のまちだった。
ワケあって東京を脱出してきたが、辿り着いたこの地に降り立つと、なんとそこは、殺風景を絵に描いたようなシャッター街だった。
高速バスが着いたのは、駅西口のロータリーだった。目の前には大きなビルが、おれを出迎えるようにそそり立っているが、その周辺に歩く人の姿は見られない。なんてことだ、あまりに殺風景な様子に寒気がしてきた。
「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」という、有名な小説のフレーズが思わず浮かぶと同時に、それに習って「東京湾を抜けるとそこはシャッター街だった」という新たなフレーズをおれは思いついていた。
この地を紹介してくれた人は、「そこそこ賑わいのあるまちだよ」と言っていたが、どこに賑わいがあるんだよ。アウトレットもあるし、イオンモールもあると言っていたが、だからどーした、この殺風景はどーいうワケだ。
とにかく、東京から着いたばかりだから、きっとどこかに面白いところもあるに違いないと、そう思うことにしてざわつく気持ちを落ち着かせた。
そして携帯を取り出すと、きょうからお世話になる知人から紹介された人物に連絡することにした。その人物の、詳しいことは知らされていなかった。
「もしもし、あー先日ご連絡した藤原与三郎です。お世話になります」
「おー、あんたか。もう着いたのか」
「えー、先ほど着いたばかりです。これから行きたいのですが…」
「あのさ、いま出先なんだ。一時間ばかりしたら、また連絡くれないか」
「わかりました。じゃー、少し街中を散策してみます」
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写真:cragycloud
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