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small work camp  浜西 正

ただの箱に見えるけれど

ただの箱

ただの箱に見えるけれど、この筆箱にも物語があって、物語はいつも会話からはじまるんです。「木の筆箱にあこがれてたんです。」「学校に持って行きたいなぁ。」「卓上用の筆箱にバンドして持ち歩いてるよ。」なるほど、コンパクトで蓋が固定できる筆箱が作りたいなって、作り手はぼんやり思うわけです。

まず絵をかきながら頭の中で試行錯誤してイメージを固めるけど、作ってみるとイメージと違ったり、失敗したりしながら、あーでもないこうでもないと再構築していきます。失敗して形になることもよくあるんですよ。この筆箱は蓋の固定にマグネットを埋め込むのですが、あるとき失敗して、位置がずれてマグネットの効きが弱くなった。

そこで閃いたんですよね。わざとずらして非対称にすれば、蓋を閉める方向によって、マグネットを効かせたり、効かせなかったりできる。つまりカバンの中ではピタッと固定されて、机の上では片手で、すっと開く便利な機能の誕生。失敗して偶然に生まれるところも、ものつくりの面白いところですね。

外観は木目をつなげてシンプルにスッキリとさせる。蓋の裏がペントレーになったら便利だとか、使わない時は蓋が箱に下に収納できたたらいいんじゃないかとか、蓋の側面に勾配を付けて、指にかかりやすいようにとか、外観を邪魔しないように、機能を追加していく。そんなこんなで物語が形になっていきます。

シンプルな物を複雑に考える。見た目はただのシンプルな箱だけど、機能が隠れていて、見て触った人が気付いて驚くのが面白いんですよね。そこに至る過程も知っていただけたら使い手さんも面白いし、大切に使っていただけるんじゃないかと思うんですよね。

はじめまして木の箱屋です

はじめまして (1)

small work campというひとりの作り手による活動です。

以前はメーカーで設計開発をしていました。新しいものを生み出す面白さ楽しさを感じ充実した日々でしたが、反面、大企業ならではの行き届かないもどかしさも感じていました。行き届いた物を作ろうと40歳で定年退職を決めて、第2のステージsmall work camp をはじめました。

今は箱物の美しさに惹かれ主に箱物を作っています。顔の見える距離感を大切にしたいと思い、対面販売のクラフトフェアや手づくり市に出展中です。

作り手、伝え手、使い手が「なんかいいな」と何かを始めたくなるようなそんなものつくり。そんな事を考えながら日々制作しています。

わがままとダメ出しと

わがまま

ものづくりの相棒は家族でしょうか。欠かせないものは家族のわがままとダメ出しです。ああでもないこうでもないと1~99までひとりで作ってるのですが、0→1と99→100が僕には足りない。ひとりでは生まれもしなければ、完成もしない。

わがままから面白いものは生まれる。制作過程や苦労や実現性の考慮が全くないわがままは作り手にアイデアと燃える心をくれる。そして最後に容赦のないダメ出しによって完成する。このダメ出しが結構きつくて、自分ではいいと思っているものを満を持して出しているのに、ぐさぐさと容赦ない。ここが肝で踏ん張りどころ、乗り越えると客観性を持ったいいカタチになる。最後、整えて世に出る前に背中を押してくれる。

ということで相棒はわがままとダメ出しをしてくれる家族ということになりますね。

宇宙に驚きハマる

宇宙

宇宙にハマっています。

「時間は存在しない」という面白そうな本を読んでみましたが全く理解できず、元物理少年の僕に火が付いたんです。物理や宇宙の入門本を借りてきて読んでいると、驚きの連続で、見ている太陽は8分前の太陽だとか、ベテルギウスからすんごい望遠鏡で地球をもし覗けたら室町時代が見えるとか、速く動くと時間が遅れるとか、常識的な感覚とは程遠いのが面白い。少年時代のワクワクが帰ってきて、ああそうやった好きやったと。

宇宙を解明しようとする科学者たちの人間模様も面白い。自然はもっと美しい理論で成り立っているはずだという信念のもと、変人扱いされながらも、天動説から地動説に世の中の常識を変えていく。常識を覆してきた偉人たちの偉業がすごく面白いのはもちろんなのだけれども、その偉人たちが偉業を成し遂げた後、自分が権威になって常識を作ってしまって、次の世代の偏見になっていくという人間模様がなんとも面白い。アインシュタインも居酒屋のおっさんも「俺が若かったころはって...」みんな同じだと思うと、なんか勇気もらえるんですよね。