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【タカマ二次小説】廻り舞台と紡ぎ歌#6 意地っ張りな君へ

季節は巡り、それから1年半後の夏。
中学2年の2学期に差し掛かった頃。

百合は数学の授業を受けながら、
自分の席でシャーペンをくるくる回し、
ため息をつく。

あれ以来、何度那智を合唱部に誘っても、
いい返事はもらえない。

それどころか、
彼の態度はますます頑なになるばかりだった。

(声変わりで辛いなら、そう言えばよかったのに)

百合は斜め前方に座る那智の背中をじっと見つめる。

進級に伴い、1階だった教室は2階となり、
違うクラスだった彼とは同じクラスになっていた。

窓からはまぶしい日差しが差し込み、
百合から授業への集中力をますます奪っていく。

(今からでも、なんとか引き抜けないかな……)

最初は確かに、タイミングが悪かった。

声変わりの最中はひどく声が出しづらく、
部活に行くのも嫌になる。

そう合唱部の男子が話すのを聞いて、
さすがの百合もタイミングの悪さを痛感した。

けれど、那智の声変わりは、
1年の2学期にはもう終わっている。

それにも関わらず、今も目の敵のように合唱部を嫌うのは、
彼が意地を張っているだけのように思えてならない。

(そうじゃなきゃあんな顔、しないもの……)

音楽の授業で歌を歌うときの彼の顔。

歌っている最中はものすごく生き生きしているのに、
歌い終わった途端、悲しそうな顔をする。

あれはきっと、合唱部に未練があるのだ。
そうに決まっている。

(それにあの声っ!合唱部に入らないなんて、
もったいなすぎるよっ!!)

それは百合だけでなく、合唱部の顧問であり、
このクラスの音楽の授業を担当している
三河先生も声高に主張していることだ。

声変わりを終えた那智の歌声は、
小学生の頃のボーイソプラノとは
打って変わった、甘く艶のあるテノール。

それは、聴く者の心を柔らかく包み込む、
甘美な歌声。

(せめて一度、見学に来てくれれば……)

そうすれば、合唱部の楽しさが伝わるはずだ。
もう意地を張る必要がないことに、気づくだろう。

そんなことを考えながら、百合がふと黒板を見上げると、
見慣れない数式が並んでいて驚く。

どうやら、ほんの少しだけ自分の世界に浸っていたつもりだったのだが、
ずいぶん時間が経ってしまっていたようだ。

慌てて隣の席の志摩優子を突く。

「ねえ、今、何ページ?」

教えられた教科書のページは、
百合が開いていたものよりも数ページも先で、

百合は大きくため息をついた。


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