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こんにちは。LINEのオープンチャット「コピーライティング戦略会議室」室長の夏目かをるです。
コロナと猛暑の二大パンチによって、お疲れの方も多いでしょう。私も夏バテ気味でしたが(運動不足で太ってしまったので、ダイエット中です、、、)夏の終わりにふらっと一人で湘南にいったところ、海からのパワーを感じて、元気を取り戻しました。自然の力は偉大ですね。

さてオープンチャットの参加者と一緒に、「今日一日元気になる言葉」という新しいコンテンツを作って、noteで共有する企画は今回で第七回。https://line.me/ti/g2/IwG29SxFcZmS6ucWGJAJNg

これまでの人生の中で、「あなたに影響を与えた元気になる言葉」は、オープンチャットの参加者から募った言葉とそのエピソードを、私が編集してnoteで紹介します。前回アップしてから、一か月と一週間が経ちました。夏休みということですね。

今回の「生き直し」という言葉を提供してくれた千葉さんは、予期しない出来事によってどん底に突き落とされてから、人生が一変してしまいました。テレビ番組に「逆転人生」というコンテンツがありますが、まさに千葉さんもその一人です。でも、地獄を見た人は強いですよ。秋めいてきたこの時期に、千葉さんの「生き直し」という言葉のエピソードから、夏の疲れを吹っ飛ばしてくださいね。
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今日一日元気になる言葉 vol7 「生き直し」
                     千葉龍一

 2003年2月、当時大学1年生で春休み期間中だった私は、自身が通っていた大学に行くため、私が運転する車で、近くの大学に通っていた高校時代の野球部の友人を助手席に乗せて向かっていました。
 ところがそこで、私の運転ミスで事故を起こしてしまい、友人は帰らぬ人になってしまったのです。
 私自身は、その時、「とんでもないことをしてしまった、どうしよう」と途方に暮れてしまいました。友人の親御さんにも合わす顔がないし、野球部のみんなにも合わす顔がない、裏切ってしまった、そして、友人の命を奪ってしまった、、、そんな思いの中、亡くなった友人の親御さんから「千葉君は息子の野球の仲間だけど、許すことはできない、裁判をしてほしい」と言われ、裁判をすることになったのです。

 罪の重さ、自責の念に堪えきれなかった私は検察官や裁判官に「刑務所に入れてください。死刑にしてください。僕は必要ない人間なんです。」と訴え続けました。
 それを知ってか知らずかわかりませんが、裁判に向けて野球部の仲間が私のために、当時インターネットもない時代に494人分の手書きの嘆願書を集めてくれたのです。弁護士から、野球部の仲間たちが「あいつのやったことは許されることではないけど、仲間であることには変わりない。何かできないか」と、嘆願書を集めてくれたというのです。
 そんな仲間の思いを受け止めきれずに、そこまでしてくれなくてもいいよ。自分は罪人なんだからと自責の念もさらに強くなり、そしていよいよ裁判へ。
 裁判では、嘆願書が有効だったかどうかはわかりませんが、執行猶予になったのです。でも正直なところ「自分自身は社会に必要がないやつだし、生きている価値なんてない」と思い続けていました。家族は喜んでくれても僕は上の空で「死にたい」という思いが駆け巡っていき、家に帰っても「自分なんて必要ないやつだ。あいつが生き残るべきだったんだ。俺があいつを殺したんだ。生きていても仕方がない。」と自分を責め続けて、家から一歩も出ることもせず、ただひたすら部屋に閉じこもっていました。

 そんな中、野球部の仲間が私に連絡をしてきたのです。「会おう」ということになって、1人だけだと思ったら何人も一緒にうちまで来てくれたのです。
「お前のやったことは、許すことはできない。でもお前は仲間だし、いつも明るいやつだったし、今でも仲間であることは変わりはない。生きていてくれるだけで俺らは嬉しいから」と仲間たち。
 こんなに支えてくれる仲間がいるのに、何もできてない自分に腹が立ったと同時に、「俺も生きていてもいいんだ」と思えるようになったのです。

 自分にできることは何か。そんなことを考える日々が続き、法学部に入っていたため、弁護士になって、自分と同じように苦しんでいる加害者を救うことが、自分にできることではないのかと思い、弁護士になるために勉強を開始したのです。
 ところが、勉強をしていても受かるかどうかもわからない先の見えないことに不安を感じ、勉強している最中も「こんなことをしていていいのだろうか、受からなかったらどうしよう」。そんな自問自答をしながらロースクールに入学し、新司法試験を受けましたが、結果は3回とも不合格でした。
 しかも最後の受験の年には、試験の3か月前に母が事故で植物人間になってしまったのです。交通事故を起こしてからずっと「事故は私のせい、あなたは悪くない。すべては私のせい」と言って、支えてくれた母親。その母親を失ってしまったようにやるせなくなり、しかも最後の年も試験は不合格でした。

 この10年自分にとっては何もできなかった、社会のために何もできなかった。友人の命を無駄にしてしまったのか。ずっと何も言わずに見守ってくれた母親にも何の恩返しもできなかった。俺の存在っていったい何だろう。
 そんな思いにかられながらも、毎年会ってくれる野球部の仲間たちがいたのです。こんなに落ち続けている自分に対しても「試験頑張れよ!」の一言だけ言って、試験を辞めた方がいいという人も一人もいなかった。普通だったら、試験を辞めろというのに、いつまでも見守ってくれた野球部の仲間や母の気持ちに応えたい。そのためには、社会のためになることをしなくては。

 頭に浮かんだのが「NPO団体や公益社団法人等」でした。とりあえずということでネットを見てみると、たまたまテレビでも見たことのある「日本駆け込み寺」というDVや借金問題、いじめ、自殺といった悩み事を無料で相談をを行っている団体が求人を募集していたので、問い合わることにしたのです。
 当時の代表である玄さんから「ええ顔してるやん」との一言で採用が決まり、駆け込み寺に入りました。
 すると様々な相談がある中で刑務所から出てきた方の相談もかなりあり、就職先をつなぐが、仕事を1日で辞めてしまったり、うまくいかなかったりなどのケースも多く、どうしたものかと思っていいました。すると代表者の玄さんが、人と関わる中で研修のような形で仕事ができればうまくいくのではないかと考え、その形となったのが「歌舞伎町に出所者が働く居酒屋をオープンする」というプロジェクト。私自身も過去に事故を起こすなど色々なことがあったので、「ぜひそのプロジェクトに関わらせてください」と懇願して、参加したのです。

 プロジェクトから1年、歌舞伎町に新宿駆け込み餃子という居酒屋をオープンしました。
 ところがそこで問題が生じたのです。出所の方は家がないことが多いため、そこで、駆け込み寺で「自立準備ホーム」という出所者が住める施設を運営して家も確保するということにしたのです。
 しかしその当時、その類の施設をやったことが誰もいなかったため、自分がそこの施設長として担当することになりました。そこから5年。78人の出所者の受け入れを行いました。

 彼らと関わる中で、常にもがき苦しみ何とかして生きていきたいとの思いを感じていましたが、どこか自分とは違う人たちではないのか。そんな思いを持っている時に、夢アワードというスピーチ大会に出ることになったのです。そこで、プレゼン内容を一緒に考えてくれていた先生に「あなた自身が出所者に対してどう思っているのか。もっと深く考えなさい」と指摘されました。すると自分とは違うと思っていた出所者も自分と同じ存在だと気が付いたのです。

 交通事故があって、落ち込んで、助けてもらって今があるのにそれを忘れていないか。自分自身は今は少し社会に出て生き直すことができているが彼らはそうでもない。自分が生き直したように彼らも生き直してほしい。
 ふつふつ湧いてきた思いを言葉にすると、「人は誰でも生き直すことができるし、そんなチャンスがある。そしてそんな社会にしたい」。

 今でも活動の支えとなっている。当時をと振り返りながら、今年の夏も、自分自身に言い聞かせています。


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千葉龍一プロフィール
株式会社生き直し 代表取締役
一般社団法人生き直し 代表理事
1982年生まれ 創価大学卒 獨協大学ロースクール出身

2018年3月に諸々の事情で駆け込み寺の自立準備ホームがなくなる。だが「どんな人でも生き直せる社会を作る」というミッションがあったため、駆け込み寺を退職し、「株式会社生き直し」を設立。自身で出所者が住める施設である自立準備ホームを運営して2年間で、27人の生き直しのお手伝う。
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夏目かをる プロフィール
コラムニスト、小説家、ライター。秋田県出身。立教大学文学部日本文学科卒。2万人以上のワーキングウーマンの仕事、恋愛、婚活、結婚を取材。女性目線のコラム「”賞味期限”が女を不機や嫌にする」(現代ビジネス)、「女が嫌いな女の現在地」(日刊ゲンダイ)などやWOWOW映画コラムも。ルポ「同窓会恋愛」(婦人公論)、「高学歴女性の貧困」(サンデー毎日)は毎日新聞日曜版の読書欄で紹介される。「戦略的に離婚しない女たち」(週刊朝日)などで夫婦問題にも言及。「33歳女の壁その後」(朝日新聞社telling)では40万以上のPVを獲得。2020年4月日刊SPAの記事でYahoo!ランキング総合第一位に。小説「ボディ・クラッシュ」(河出書房新書)、「季節はずれの恋」(講談社ムック本)、連載小説「眠れない夜」(WOMe)ランキング第一位。書籍「英語でリッチ!」(アーク出版)で第12回ライターズネットワーク大賞受賞。2007年10万人に一人の難病・ギランバレー症候群を後遺症なしに完治。
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