激長反抗期

母の日なにもできなかった、素直になりたい。

中学校の頃はそこそこ勉強ができる方でした。皆が勉強を頑張り出す前からやっていただけな所はありますが、いい成績は取れていたと思います。でも母は、特にそれになにか言ってくれたことは無かったです。興味がなかったのか、私が忘れているだけなのかはわかりませんが、本当に何も思われてなかったように感じます。
テストの個票を見せて｢この教科は一位だったんだよ｣とか、｢こっちは正答率の低い問題に答えられたんだよ｣とか言っても、｢へえ｣とか｢あっそう｣みたいな返事しか返ってこなかったなーと思います。
この後よくあるのが｢じゃあじいちゃんとこ行こっか｣でした。祖父にテストを見せると大概褒めてくれてお小遣いをくれるので、今考えれば母は私がお小遣いほしさにテストを見せてると思っていたのかもしれません。

高校受験には失敗しました。滑り止めに受けた第2志望の高校だってそう悪いところではないのですが、大した挫折を経験してこなかった私には目標を達成できなかったのが結構悲しいことでした。落ちた時に、母に｢まあ大して頑張ってなかったから仕方ないんじゃない｣と言われてより落ち込んで、そんなことないって言い返そうとしましたが、その時の私にはそう言われたらそうな気がして、それからずっと自信はないです。
それからは｢多分頑張るのが苦手なんだよ｣と何かをしようとして失敗する度に言われる訳で、中学生の私ならそれにキレ散らかして喧嘩くらいできたとおもうんですけど、母の言う通り私は努力が苦手で、自覚してしまってからは言い返す気力もなくなってしまいました。強い人ならここで見返すために努力出来るのかな。私はそうストイックではないです。そして多分母は、そういうときに努力できる人なんです。

母は私とは全部真逆で、一人でなんでもできる人なんだと思います。自立した大人って多分母のことを言う。小さい頃から自分の身の回りのことは全部自分でやっていたと聞くし、仕事の日も家事のほとんどを一人でこなすから。私はこの歳になっても子供っぽいままですが。

この前弟の友達のお母さんに会いまして、ちょっとだけお話しました。好意的で色々話しかけてくださったのですが、｢あそこの高校行ってるって聞いてびっくりしたよ！お母さんからはずっとゲームしてるって聞いてて勉強してるなんて何も聞いてなかったから、できたんだ〜って驚いちゃった！｣とおっしゃるものだから、なんだかもうその場から逃げ出したくて仕方なくて。
あの人は他人に、私の何を伝えているんだろう。勉強しないで一桁の順位にしがみつけるものですか。あなたが英語を習わせたんだから、成果を見てほしくて英語はずっと一位を取ってたのに。ゲームなんて、中二からはほとんど弟の物になっていたしそう遊んでなかった。
何もしてないように見えていたのか。

母は私が責任から逃げると怒ります。習い事をやめたいと言うと｢あんたがやりたいって言ったから行かせてやったのに｣がお決まりです。そう言われると、己の至らなさが恥ずかしくて何かをやめることをやめてしまうのがいつものことでした。
でもこの前ね、私ちょっと小さな言い合いに勝ちました。買った良い椅子がいつも使ってる机の幅に合わなくて深く腰掛けられないから、父のデスクと交換してほしいってお願いをしたんです。父は特に不満を言わなかったのですが、母には｢あんたがあの机で良いって言ったんでしょ｣といつもの様に言われて、私その時少しおかしかったから、｢小学生のときの、子供の時の自分の言ったことになんて最後まで責任取れないよ｣って、不誠実でおかしなことですけど言い返しちゃって。そしたら少し驚いた顔してました、あの人。その後すぐまた色々言われましたが机の交換には成功しました。

高一のとき志望校の話をしたら｢高校受験頑張れなかった人が大学受かるわけないでしょ｣と言われてしまって、その時は悔し〜〜〜！と思ったんですけど、高三になった今本当にその通りになりそうで私ってダメだなーとしみじみ感じますが、失敗してもそれが私の全部じゃないのかなって最近は思います。母は他人で私の人生になんにも関係ないって。でもやっぱり、母に立派だねって言ってもらえる自分になりたかったなって、そういう未練が拭えません。

小学五年生の時の林間学校のようなイベントの中で母が私に宛てたらしい手紙は、いつもはきつい口調のくせに友達に宛てたみたいな柔らかい文体と丸っこい文字がおかしくて、文末の′″がついた♡がどういう意味なのかはよくわからないけど保育園の時から変わらないその癖が健在なのがなんだか嬉しかった。その手紙では対面じゃ絶対言ってもらえないような優しくてあたたかいことが沢山書かれていて、それがずっと忘れられない。｢カワイイ｣なんて真面目に言ってもらったこと一回もないもん。その逆はよくあったし、きっと本人は書いたことすら忘れてるけど。

お母さんが機嫌のいい時に連れて行ってもらえるカラオケが好きだった。習い事が終わったらぶすっとした顔で運転席に座って待ってるお母さんを見て、やっと家に帰れるって安心できた。私が泣くと露骨に嫌そうな顔をして、慰めの言葉どころか文句言いはじめるのが嫌だった。でも目を逸らしてくれるのが好きだった。お父さんは気遣いなしにガン見してくるからほんとにノンデリだと思う、なんでこんな人と結婚したの。お母さんが好きな猫を気づけば私も好きだった。祖父の葬式では涙一滴も流さなかったくせに猫の火葬では珍しく泣いててびっくりした。
それで、昔からずっと怒られると悲しくって、何回怒られても慣れなかった。
たくさん嫌な思いをしたのに嫌いにはなれない、多分私はお母さんが死んだら泣いちゃう。小一のときに喧嘩して、勢いあまって死ねって言っちゃった時にまだ赤ちゃんの弟を抱えてじゃあ今から死んでやるからって玄関飛び出てって、私まだあれ忘れられないんだから。呪いだと思う。

自分のことは自分でどうにかしてって昔からずっと言われてきたのに、とうとうそれができないまま成人しちゃって、私きっと、母に毎日怒られるような人間のまま死ぬまで変われません。変わりたくもないのかな。いつか自立できたら褒めてね。