SPURS judge replay(仮)#11
#11 【本当にミスジャッジはあったのか?】
match week2 CHE 2-2 TOT
Referee: Anthony Taylor. Assistants: Gary Beswick, Adam Nunn. Fourth official: Peter Bankes. VAR: Mike Dean. Assistant VAR: Mark Scholes.
皆様いかがお過ごしでしょうか。無事に先週から開幕した2022-23シーズン。2節は開幕戦勝利したスパーズとチェルシーがいきなり当たるというビッグマッチでした。
試合は荒れに荒れた結果2-2のドローで試合後に両チーム、ファン、メディアが場外で論争を行うほど。(まだ続いている)
そんなビッグマッチを捌いたのは今年のカタールW杯に参加が決まっているアンソニー・テイラー。ベンタンクールのハヴァーツへのスライディングから沸点が上がったこのゲームに
果たしてミスジャッジはあったのか?
今回はスパーズ2つの同点ゴールの中にあった3つのシーンをピックアップして個人的にまとめていきたいと思います。
※このノートは他サポなどの意見を否定するつもりも煽るつもりもございません。あくまでも1人の審判員としてスパーズファン向けに書いてる内容になりますのでご理解を頂いた上でご覧ください。
①スパーズ同点ゴール(1点目)
まずは複数の事象が絡んだスパーズ1点目について時系列でまとめてみましょう
66:57〜TOT30ベンタンクールがCHE29ハヴァーツへスライディング→ノーファールの判定で67:40にTOT5が同点ゴール。
このゴール後にチェルシーの選手並びにベンチは3つの主張を審判チームに行っています。
(1)66:57〜ベンタンクールのファール
(2)ホイビュアのゴール前のソンフンミンのハンド
(3)ホイビュアシュート時にオフサイドポジションにいたリチャーリソンのGKへの視線の妨害
まず映像を確認すると(2)はノーハンドなことが確認できるので割愛します。
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では(1)ベンタンクールのスライディングはファールなのかどうか?
このシーンはかなり意見が分かれると思います。実際にスライディングに行った後、ベンタンクールはボールに触れています。私もいろんな角度の映像をコマ送りして確認しましたが非常に難しいシーンでした。
ただ上に貼った画像はベンタンクールがボールに触れる直前に静止したシーンです。
私はベンタンクールがボールに触れる直前のこの瞬間にベンタンクールとハヴァーツの接触があっり、以上の結論からこのシーンについてはファールだと考えています。
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ホイビュア得点シーンのリチャーリソンはオフサイドだったのか?
まず私はゴールを認めた判定が正しいと考えています。
実際にホイビュアがシュートの瞬間リチャーリソンがオフサイドポジションいることがわかります。
ではオフサイドポジションにいることが全て反則なのか? ここで競技規則を確認してみましょう。
サッカー競技規則第11条オフサイドより
1. オフサイドポジション オフサイドポジションにいることは、反則ではない。
2. オフサイドの反則
◦ 次のいずれかによって相手競技者を妨害する。
・ 明らかに相手競技者の視線をさえぎることによって、相手競技者がボールをプレー する、もしくは、プレーする可能性を妨げる。(中略)
このシーンの焦点は"明らかにキーパーの視点をさえぎっていたのか?"ということになります。
では別角度の画像をご覧ください。
シュートの瞬間キーパーのメンディは視界が確保されておりどちらにシュートが打たれても見える状況にあります(白線参照)
もしもこの場面、画像の赤線上にリチャーリソンが居れば視界を遮ったと判断が出来るためオフサイド判定とされた可能性が高いと考えます。
上記のことからこのシーンはノットオフサイドの判定を支持したいと思います。
②APPリセットが生んだ同点ゴール
①では66:57〜から得点が決まる67:40までのシーンを振り返りました。
ここでは"仮に"ベンタンクールのスライディングがファールだった場合、何故スパーズのゴールが取り消しにならなかったのかを考えてみたいと思います。
ここでのポイントはVARが入るゲームにおけるAPPという言葉。
APP(アタッキング・ポゼッション・フェイズ)
APPとは、攻撃側チームがボールを保持し攻撃に移る局面のことをいいます。 得点につながる攻撃がスタートし、結果的に得点したりPKを得た場合に、VARは攻撃スタートから結果に至るまでに攻撃チームよって反則がなかったか遡ってレビューすることが可能です。またAPP中に相手にボールが渡った場合APPはリセットとなる。(原文そのまま引用)
実際に66:57〜ベンタンクールのスライディングでスパーズボールになってからこのシーンのAPPはスタートしています。しかし得点が生まれる数秒前の67:32〜チェルシーが自陣ペナルティエリア内でボールをカットします。
ここで66:57〜から始まったAPPはリセットされたと考えます。
APPには具体的に何秒前まで遡るという明確なものはありませんが、一般的には数十秒ほど(20秒前後程度)という定義になっています。
こう言ったケースでは仮にファールを受けていたチームがノーファール判定で流された上にAPPがリセットされた直後にゴールを決められてしまうとやられ損になってしまう場合があり、現行ルールの欠陥部分を示しています。
③スパーズ同点ゴール(2点目)
そしてこの試合の議論をさらに加熱させたスパーズ2点目ゴール一つ前のCKのシーン。
95:10〜スパーズ同点ゴール直前93:40〜のCK
お互いに掴むところから始まってますがこれは完全にロメロのファールと考えます。
しかしこのシーンでお咎めはなく直後にスパーズが同点ゴールを決めたので何故ロメロの行為にVARの介入がなかったのかという声も上がりました。
まず改めてVARの介入条件を確認します。
サッカー競技規則 VARの実施手順より
a. 得点か得点でないか。
b. ペナルティーキックかペナルティーキックでないか。
c. 退場(2つ目の警告(イエローカード)によるものではない)。
d. 人間違い(主審が、反則を行ったチームの別の競技者に警告する、または退場を
命じる)。
上記のためc.退場に該当しない限りロメロのシーンに対してVARは主審にOFR(オンフィールドレビュー)を提案出来ません。
ではロメロのククレジャに対するシーンは退場なのか?
個人的には退場では無いと考えます。たしかに髪を掴む行為は許されるモノではありません。しかしながらこのシーンで考えられる退場項目の競技規則上の"著しく不正なプレー"または"乱暴な行為"とまでは考えられずあっても警告止まりでしょう。
参考までに身体的な接触を伴う判断は競技規則では下記となります。
◦ 不用意とは、競技者が相手にチャレンジするときに注意もしくは配慮が欠けていると 判断される、または慎重さを欠いて行動すること。懲戒の罰則は、必要ない。
◦ 無謀とは、競技者が相手競技者にとって危険になる、または結果的にそうなることを 無視して行動することで、警告されなければならない。
◦ 過剰な力を用いるとは、競技者が必要以上の力を用いる、または相手競技者の安全を 脅かすことで、退場が命じられなければならない。
仮に乱暴な行為と考えた場合
乱暴な行為
乱暴な行為とは、身体的接触のあるなしにかかわらず、競技者がボールにチャレンジし ていないときに相手競技者に対して、または味方競技者、チーム役員、審判員、観客もしくはその他の者に対して過剰な力を用いる、粗暴な行為を行う、または行おうとするこ とである。
加えて、競技者がボールにチャレンジしていないとき、意図的に相手競技者やその他の者の頭や顔を手や腕で打つ場合、その力が微小なものでない限り、乱暴な行為を行ったことになる。
※懲戒=カードのこと
(ちなみに不用意、無謀、過剰の言葉はたくさん使いますので皆さんもこの定義を覚えて頂くとかなり役に立ちます)
ロメロのシーンは過剰な力、もしくは乱暴な行為とまではいかずあってもイエロー止まりとか個人的には思います。
(もちろん退場という考えも否定しない)
そうなるとロメロのシーンが退場と考えられない限りVARの介入は出来ずノーファールと判定しCKを支持したテイラー主審の判断が尊重されます。
結果的にVARの上の運用に間違いはありませんでしたが、テイラー主審がファールを吹けなかった為に生まれた同点ゴールでした。
④さいごに
今回は話題となったスパーズ2つの得点シーンについてまとめてみました。タイトルのようにミスジャッジがあったのか振り返ると残念ながら主審のミスジャッジがあったことは事実です。そしてVARが入るゲームでもピッチ上の主審の判定が尊重される現行ルールの欠陥点が出た試合でもありました。
"VARがあると誤審は無くなる"
そう思ってる方はたくさん居るかと思いますが昨日のゲームを観てそうではないと分かった方もたくさん居たのではないでしょうか。そしてそれは競技規則を知れば知るほどその考えに至ります。
スパーズファンの皆さんに1番お伝えたいのは昨日の様なことが逆の立場でも起きうるということです。
"これもフットボールの一部"
確かにそういえばそうかもしれない。ただ個人的にとても難しい感情になった昨日の試合でした。
今回のノートが何か少しでもスパーズファンの皆様の知識や考えの足しになれば幸いです。
さて今回はいかがだったでしょうか!?
次節のウルブズ戦ではタフな戦いで3ポイント獲得を期待したいですね。
それではまた気になる試合があったら振り返りたいと思います!
皆様今回もありがとうございました!
come on you spurs !!
※判定への質問やノートへの感想を是非お待ちしております(^ ^)
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