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台風が去る頃には

雑節|二百十日
令和6年8月31日

台風が近づいている。
なるほど、この季節は天候が荒れやすいらしいが、まさにその通りだ。
あっという間に強烈な太陽の熱を肌で感じることも少なくなり、懐かしささえ覚えるようになった。

雨は季節の変わり目などというが、
それにしても、この台風の猛威は季節の変わり目の知らせにしては少し大袈裟な気がする。

先日、安部公房の『箱男』が映画化されたことを知り、早速観に行った。
箱の中で生活する男の奇妙な話だ。

安部公房に夢中になっていた時期があり、
たまたま旅先で出会った人と安部公房について語り合い、しばらく文通をしていたことを思い出した。答え合わせのしようがないことをぐだぐだ語り合うのはとても楽しかったし、
何より「この現代において文通をしている」ということがエキサイティングだった。

今となってはもう、連絡手段もなく、その人はどこで何をしているのかも分からない。

ただ明確に分かっていることは、
ふとこんな風に昔のことを振り返ることができるのは、もう自分はそこにいないから、ということだ。

強い雨が降ってきた。
この台風が去ったその頃、僕はどこにいるのだろうか。

-T.C.

二百十日

ニヒャクトオカ
雑節

立春から数えて210日目だそうで、今年もそろそろ後半かな。

人間は我儘なので夏には早く冬になれ、冬には早く夏になれと言うが、
今はどちらでも無い、とても贅沢な瞬間なのかもしれない。

参考文献

なし

カバー写真:
2024年8月のはじめ この頃はまだ暑かった


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台風が去る頃には
https://coyomu-style.studio.site/letter/nihyaku-toka-2024


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