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闇の大海原に瞬く存在の奇跡

処暑|綿柎開
令和6年8月22日

久しぶりにコヨムの筆を取る。 前回自分が書いたレターは約2ヶ月前。ちょうど桃の収穫が始まった頃だ。それからというもの,朝5時からの桃の畑仕事,夏風邪などなど,書かなかった言い訳はたくさん出てくるのだが,ちょうどこの頃になって,桃の終わりが見え始め,ようやっと筆を取ったということになる。農繁期を堪能しているその間も,淡々と流れ続けたコヨムという場所は2ヶ月の不在を後ろめたくさせるのではなく,不在のリズムを肯定するような寛大ささえ感じさせた。

子供が寝静まった夜半,映画【Perfect Days】を観た。そうそう,これだ。いつか過ごした東京という街は愛すべき街だった。旅先から帰ってくると,今までの東京の日常が全く違って見えることがある。実在は変わっていないはずなのに,自身が新しい目で見つめ直したことに気づいた感動のように。

【東京という下町に】のレターで描かれたような,東京の具体があまりにも美しい映画であった。こうした人間の営みが本当に好きだ。久方ぶりに書いたこのレターも,日本の片隅でちっぽけな人間が書いた,あまりに美しい人間的な営みとして昇華できるだろうか。

-S.F.

綿柎開

ワタノハナシベヒラク
処暑・初候

映画を観終えて,改めてNina Simone【Feeling good】を聴きながら頬が緩む。布団に入り,寝る前にランタンを灯して,読書をする。今読んでいるのは,サン=テグジュペリ【夜間飛行】。意識が遠のき眠りに落ちるまでの時間は至福だ。

参考文献

なし

カバー写真:
2020年2月11日 Magic Hour. 東京の頃。旧自宅近くの交差点。空を仰いだ。

コヨムは、暦で読むニュースレターです。
七十二候に合わせて、時候のレターを配信します。

闇の大海原に瞬く存在の奇跡
https://coyomu-style.studio.site/letter/watano-hanashibe-hiraku-2024


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