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夏と夏らしさの今日

雑節|八朔
令和6年8月1日

夏かぜをひいた。夏かぜがなんなのかはよくわかってないけれど、夏にかぜをひいて、それほど深刻な症状ではなかったから、夏かぜということにしている。季語みたいな言葉の手ざわりもいい。でも夏かぜを引いたわりには、さいきん夏っぽいことをしていない。

夏っぽいこと。海辺でおこなうスイカ割りとか、扇風機にあたって飲むキンキンに冷えた麦茶とか、浴衣を着てじっと見つめる線香花火とか。ありふれた例だけど、そういうときに夏らしさを感じる。と考えたときに気づくのは、異常気象と呼ばれるほどの酷暑の連日には、もはや夏を感じられないということだ。少なくとも二十年前には、そういう夏があった。わたしたちが感じる夏は、スイカにせよ麦茶にせよ浴衣にせよ、暑さのなかの涼しさにある。

いま涼しさを感じるのは難しい。テレビは外出を控えろといい、空調にも省エネは求められなくなった。そして冷房が強力に効いて肌寒ささえ感じるような部屋のなかで、氷を山ほど入れた麦茶は飲みたくないし、かき氷も食べたくない。涼しさの前提がなくなってしまった。夏は夏によって奪われた。

それでもマシな気温だった今日の夕方は、家の冷凍庫からアイスを取り出して外を散歩しながら食べた。アイスを食べるために外に出て、わざわざ夏を感じている。こんな滑稽な夏があっただろうか。あるいは、これがいまどきの夏の景色なのだろうか。暑さはまだまだ厳しくなりそうで、二十年後の夏を想像することはもうむずかしい。

-D.K.

八朔

ハッサク
雑節

旧暦の八朔(八月一日)は田んぼに稲穂が実り始める時期で、八朔のことを田の実の節句ともいったそうです。「田の実」と「頼み」をかけて、昔はお世話になっている人に贈り物をする風習がありましたが、今ではほとんどなくなっています。こういう時節は社会の知恵だったのでしょうが、すこしずつ失われていきますね。

参考文献

なし

カバー写真:
2024年07月26日 雑草だって等間隔に並びたいときがあるみたい


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夏と夏らしさの今日
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