スペース質問会の要点まとめ

昨日、「ウェブトゥーン翻訳初心者のためのスペース質問会」を開催しました。質問会のために事前に質問を募ったのですが、なんと30個以上も質問をお寄せいただきました。質問を送ってくださった皆様、本当にありがとうございました!

スペース会自体も思った以上に反響があり、とてもうれしかったです。これもすべて、貴重なお話を聞かせてくださった名無しさんこむたんさんのおかげです。本当にありがとうございました…!

この記事では、参加できなかった方のために質問会の要点をまとめています。普段なかなか聞けない内容ばかりですので、ぜひ今後のお仕事の参考になさってください。

(この記事は、すよさんがTwitterにあげてくださったメモを参考にしています。すよさん、カムサハムニダ…!)

今回取り上げた質問事項は以下のとおりです。

ローカライズ系

Q)名前をローカライズする際のコツ/気をつけていること

主要キャラはしっかり考える。

韓国語の名前の響きや漢字や意味、キャラの性格、ストーリー展開上の役割などを総合的に考えて決める。漫画を読む読者層を意識する。

既存の漫画のキャラクター、ジャニーズの名前、芸能人の名簿リスト、学生時代のクラスメートの名前なども参考に。

自分で名前を考えるのは限界があるので、名前ジェネレーターなど、機械的にいろんな名前を出してくれるサイトを参考に名前をつけている。(子供の名付けサイトよりもおすすめ)

セリフに名前をもじったダジャレなどが出てくることが多い。設定集作りの段階で最後まで読んで、名前をつけるべし。

武侠系などの作品は、原作の中国名をそのまま使う。

Q)韓国語の方言を使うキャラの場合、方言を使って訳すか?もし方言を使う場合どこの方言を使うか?

このキャラはXX弁で訳して欲しいと会社から指定があったことがある。

指示がない場合:キャラ次第。主要キャラでない場合などは、おばさん口調、おじさん口調に寄せたりして、方言よりも年齢など別の要素を強く反映した口調にする場合もある。

方言キャラがなぜ存在するかを考えるべき。

何らかの性格を表すため(例:大阪弁を使う→気さくな性格)、対立するライバル関係(例:コナン君と服部平次)を表すため等々、何か目的があって方言を使わせている。目的を突き詰めると、絶対に方言を喋らせないといけないのかそうでないかが見えてくる。

※自分で考えた根拠を持って、会社側の人に相談するのが一番!

Q)料理が真っ赤だったり明らかに韓国っぽすぎる場合、修正や削除をお願いしたことはあるか?

例:韓国は基本レジ袋が黒→日本だとゴミ袋か生理用品を買った時くらいしか黒いレジ袋は使わないため、白色に修正をお願い→却下

例:飲み会の次の日酔覚ましのために해장국食べにいく場面→韓国料理やさん(新大久保など)に設定し、韓国料理を食べに行くことに→豚骨ラーメンに修正

背景をぼやかしたり、太極旗を消すことは対応してくれるが、色を変えたり、絵を変えたりするような修正はほぼ通らない。翻訳でごまかしきることはできないので、悩み過ぎず、思いついた案をすぐに翻訳会社側に提案・相談する方が良い

使い分け系

Q)三点リーダーとダッシュの使い分けの基準は?

基本的には会社のマニュアルに従っている。原文通り。

三点リーダーは基本句読点の代わり。読点の代わりに三点リーダーを使っていたときは多いと指摘が入ったことがあったため、今は句点の感覚で使うようにしている。

セリフが次の吹き出しにつながっている時はダッシュを使う。数字の1と被ったりして見づらい場合は三点リーダーに変えて対応する。

Q)オノマトペはひらがな/カタカナどちらもいけるケースが多いが、使い分けの基準はあるか?

ひらがな:柔らかい、ゆっくり、湿り気(18禁)、感情、弱々しさ→少女漫画系に多い

カタカナ:勢い・スピード感・切れ味を出したい時、カタい音、アクション系、ドアを閉めるとか物理的な音→少年漫画系に多い

エロシーンなど、オノマトペが密集している場面では、全部をひらがな/カタカナにすると読みにくいため、ひらがなとカタカナを混ぜる。

キャラごとに決めてしまうのもあり。場面ごとに臨機応変に変えていくのが吉。

Q)漢数字と英数字の使い分けの基準は?

基本会社の指示。何も指示がない場合は読みやすさ重視で使い分ける。

(こむ)作品ごとに決めている。武侠系は漢数字。3桁以上の数字の場合は漢数字だと見づらいため英数字にする。

(なな)限定したふたり→「二人」、人数としてのふたり→「2人」

翻訳以外の質問

Q)1日の作業時間は?

平均1日6時間ほど。(4〜8時間の間)

Q)設定集はどのくらいの期間で作る?/何話読んで作る?

基本的に全部読む。設定集の段階で全部読んでおくと結末がわかるため、作中のセリフの意図や伏線などを把握でき、ミスリードの危険性もなくなる。安心して翻訳ができる。

100話を超えてくるとすべて読むのはキツいが、50〜70話程度なら1週間で読んで設定集を作る。

期間はバラバラ。基本的に会社から指示がある。

Q)過去の翻訳の蓄積方法について

エクセルファイルをGoogleドライブにすべて保存。作品の連載が終わったら全消し。流出の危険があるため。

回想シーンは、あらすじのメモなどを参考にして探す。一度回想で出てきたシーンは2度3度出てくる場合が多いので、一度出てきたシーンはスクショしておいてファイルにまとめるのもあり。

翻訳データは探しやすいように、エクセルで対訳表を作ったりしている。

Q)適切な報酬額について

作品ごとに差があるのはもちろん、同じ作品でも、周辺作業(設定集作りやタイトル・キャッチコピーを考えるかどうかなど)が業務に含まれるかどうかでも違ってくる。一概にいくらとは言いづらいが、初めてのお仕事を受ける場合、3000円くらいが目安ではないか?

スキあらば単価交渉すべき。2社目以降は、「前の会社/作品はXX円で案件をいただいている」など根拠を提示して交渉する。

新規開拓するときは、最低でも同額、基本は今以上の金額で仕事を受けるようにしていく。

【完】

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