見出し画像

オンラインヴィンテージ大会「添削杯」主催、添削インタビュー

添削杯主催、添削(@kakikukeko2131)インタビュー

text by fumi(@fumi_rexia


危機感が大会を生み出した

-- 早速ですが今回の大会を開催するに至った経緯などを教えてください。

添削 最初にこれを開こうと考えたのが、3月に晴れる屋さんで行われる予定だったヴィンテージ「神決定戦」が延期になったときです。その時、ヴィンテージをいつもやっているメンバーのストレスが溜まっているな、と感じました。

-- 折角の機会が無くなってしまった。

添削 自分はヴィンテージ用のDiscordサーバー(※1)を運営していますが、大会延期後1・2週間ぐらいM:tGの話が全くなかったんですね。別の会話も楽しいですし、他のコンテンツでも盛り上がれればいい、という思いはあります。ただ今回のコロナ対策などは長期戦になるという雰囲気も当時からありましたし、このままいくとみんなのヴィンテージへのモチベーションが下がってしまうのではないかと。

※1 Discordサーバー
ヴィンテ愛好家の集い

ばりばりのヴィンテージのプレイヤーから、興味をあるもののプレイには至っていないプレイヤーまで数多くの人が集い話をしている。
その内容はヴィンテージの戦略論や対戦相手募集から、はてはソーシャルゲームで新しく追加されたカードまで!? 

添削 そもそもサーバーを作ったきっかけがまさに「ヴィンテージの話を常時できる場所を作ることで、モチベーションを上げる」だったんですね。これは元々地方に住んでいる方に向けて、を意識していました。MagicFestでも神決定戦でも、イベントに出ると毎回「ヴィンテージって面白いな。このゲームって凄く面白いな」って思うんですよ。

-- はい。

添削 それはヴィンテージの持つ面白さ以外に、人とのコミュニケーションだったり。プレイされている人たちもとても魅力的な人が多くて。大会に参加するために遠くからやってくる人たちってマジックがとても好きで、僕は「ヴィンテージをやっている人たち」が好きだし、そういう方たちと自分自身はとても相性がいいと思う。会って対戦するだけでものすごく楽しい時間を過ごすことができる。

でも必ずしも全員がそうではない。関東・大阪以外の方が常時ヴィンテージを遊べるような環境は無いですし、イベントが終わったら「終わりだね」と。ある程度時間があいて、さぁまたヴィンテージやりますよとなったときに、モチベーションが下がっていたら嫌じゃないですか。今のこの情勢をみていると、みんながヴィンテージをやらないようになってしまうのではないか、と漠然と感じたんですね。

-- 地方というお話が出ましたが、添削さんは沖縄在住ですよね。距離的ディスアドバンテージなどは感じられますか?

添削 うーん……正直あるといえばありますし、無いといえば無いですね。僕自身はヴィンテージを長時間楽しめるというのならそこに飛行機代を払ったって構わないんです。遠くにいる分僕は「普段会っている人」ではないですよね。それだけに大会に出るとなったら、時間を作って遊びたい・話したいといってくれる方が多くいるのでそこは利点ですよね。

でも当然ですけど「今週やりたくなった」って思ってもできないじゃないですか。どうしても頻度自体は凄く少なくなりますし、必然的に差が出るのがプレイングスキルですよね。これはどうしてもおいていかれてしまいます。それはマイナスなのは否定できません。

ただトータル的に考えて僕自身はマイナスに考えたことは無いです。仕事も他の趣味もありますし、今のヴィンテージのサイクル自体が個人的には合っている状態ですね。ただそのサイクルが今ズレかねないことになっている。だから開催を思いついたというのはありますね。

-- 今回の企画って検討していく上で誰かに相談とかされたんですか?

添削 してないです。

-- 一人で進めて!?

添削 そうです。なぜなら、そもそもこの企画が成り立つかわからなかった(笑)

-- 勿論わからないと思います。でも誰にも相談せず、「えいやっ」とスタートするのは怖かったのでは。

添削 そう、スタートしてしまったんです(笑)でも実際のところGWという休暇があり、加えて自粛という期間が発生した。つまりはみんな暇だろう、という目算はありました。行き当たりばったりなところは否定しませんが、その裏で日程的には人を集めることはできるだろうな、という勝算はありました。

-- そこから色々な方に声をかけられて、いよいよ開催目前です(※このインタビューは5/3に行っています)。今の段階で何名ぐらいの方が参加される予定でしょうか

添削 おそらく34名参加になると思います。後スタッフですね。

-- それは添削さんが声をかけられた方という形ですか?

添削 はい、基本的にはそうなります。

画像1

主催近影(画像はBIG MAGIC様よりお借りいたしました)


人と人のつながりを増やしたい

添削 さっき「モチベーション」だったり、自粛という風潮の中、大会が無くなって、人と会えなくなってM:tGもできなくなって……という嫌な空気を吹き飛ばしたかったという話をしましたけど、でもそれだけではなくて、今回「大会をやりました」「楽しかったです」「はい終わり」ではダメなんです。かといってこれを毎週毎月やるってのは大変な話です。回数を重ねればどうしても新鮮味は薄れていきます。

-- それは避けられませんね。

添削 はい。僕自身はさっきも言ったように集中的に濃度の濃いヴィンテージができればそれで満足できます。でも恒常的にヴィンテージをやりたがっている人たちがこれ以降のモチベーションを維持するにはどうすればいいか。そう考えた時に、そういう人たちがオンラインで対戦できる環境を作る、というのは良いのではないか、それが目的の一つとなっています。

-- これを機会に環境を整えてもらう。

添削 僕の理想としては「参加者全員が今回の大会が初のオンライン対戦だ」という形だったんです。今回最初から対戦環境をお持ちの方にはあまり声をおかけせず、そういう環境を持っていない人にこそ訴えていました。今回の大会に参加するには環境が必要ですよ、どうですかー。言い方は悪いですけど、この状況に追い込んだところはあります(笑)

-- 今回環境を作ったという方はいらっしゃるんですか?

添削 います。というよりもむしろほとんどそうじゃないですかね。逆にもともと持っていたという人の方が圧倒的に少ないですよ。

-- 一度場を作れば、そこからはその人たちでやってくれるかもしれませんね。

添削 そうなってくれればいいですね。

-- ただそこまで熱意をもって場を作ったわけですが、それであればむしろ添削さんはなぜ今回の大会に参加しないのでしょうか

添削 あー、そうね、そうねぇ(苦笑)

-- やはりヴィンテージであれば参加したいのではないかと

添削 今回配信をしたいんですけど(※決勝トーナメントをニコニコ動画で配信予定です)その目的は、僕の知らない人にヴィンテージに興味をもってもらいたい、今回参加できなかった人に楽しんでもらいたいということです。配信がある以上、配信者が必要となります。。

-- 私の知人でも配信を楽しみにしている、と言っている人がいます。

添削 今回「リアル民とMO民(※MAGIC Onlineでヴィンテージを遊んでいるプレイヤー)を結びつける」という自分の中での考えがあって、MOには本当に強い方がいっぱいいるんですけど、リアル側と繋がっているとは言い難い。

-- そもそもカードを持っているか、というのもありますね

添削 今回はプロキシ(※代理カード)をありにして、MO民の方でカードを買う予定がある、というようなことを呟かれていた方などに参加しませんか? と声をおかけしています。これを切っ掛けにリアル民にはオンライン環境を、そしてMO民には紙を、そうすれば相互間でもっと交流が出てくるのかと考えています。そういうMO民と繋げたいという動機もあるので、今回配信時の解説役として、MOでとても強いプレイヤーであるVtuberの冬宮みはる(@Miharu_Fuyumiya)さんをお呼びしています。

-- そんなテーマまでお持ちだったんですね。

添削 そこで呼んだ僕がいない、ってありえないでしょう(笑)

-- ははは、確かにその通りです(笑)

添削 運営側もとても楽しいですよ。

-- 解説の方もそうですし、今回ジャッジも3名ついていただくことになりました。ほとんどMagicFestのサイドイベントと遜色がないようになっています。そこまでする意図というのは何でしょう。

添削 一番大きいのは「その方が楽しそうだから」ですね。ただその楽しそうだからにも理由があって、MagicFest北九州が中止になりましたよね。僕は凄く残念でした。

-- まさに今開催される予定だったものですね。参加予定でしたか?

添削 勿論です。これが流れてしまったので、せめて僕ができる範囲でいいので、その時の楽しさを再現できないかなと思って。それで参加者と合わせて、いつもヴィンテージでジャッジを行っていただいているabi(@abigara)さん、りんてつ(@rintetu)さんに声をかけさせてもらいました。

画像2

(画像はBIG MAGIC様よりお借りいたしました)


どうせやるなら本格的な大会に近づけたい

添削 僕が大会に出るようになってとても印象に残っていることがあって、それが「ジャッジの人たちが凄く楽しそう」ということなんです。ジャッジの人たちはヴィンテージをやっている、やる機会がある、それでもジャッジを選ぶぐらいジャッジが好きなんだ、と。そこから、敢えてジャッジとしてお呼びしました。まぁそれでも正直オンラインのイベントでジャッジが必要なのかはわかっていません。

-- そこは疑問に思っている人も多いと思います。そもそもどうやって対応するのかとか

添削 そこは後付けで解決できてしまって。Discordのシステムで個別でチャンネルを作る仕組みがあるんですね。勿論観戦もできるんですが、対戦の両名とジャッジ以外は音声を出さないことができる。これぞまさにジャッジシステムじゃないかと。ジャッジを呼んだのは思いつきだったんですけど、うまく嵌ってくれました(笑)

-- 後から機能がついてきた。

添削 ジャッジの運用の話をしていた時に、お二人から紹介をいただいて、更にレベル3ジャッジのてすてぃんぐ(@testing_urborg)さんに来ていただけることになりました。てすてぃんぐさんに「フロアリング」というジャッジの大事な仕事があるという話を聞いて、まさにこのチャンネルシステムが合致するなと。これがあればオンラインでありながら、MagicFestを再現できるんじゃないかなとなりましたね。

もし仮に大会中にジャッジの方のやることが無かったとしても、ここまで本番に向けてあれやこれや共有出来てきた楽しみがあるので、勝った負けたという結果を聞くだけのことになっても、少しは満足感を感じていただけるのではないかなと。でもシステムのお陰でより直截的にかかわっていただけることになったので、ジャッジとして参加してもらえる仕組みができたことは良かったなと考えています。

-- 本当にMagicFestと同等になっていて個人的には非常に楽しみを感じています。

添削 そうですね。最初は交流会でもしようかなぐらいの発想でしたけど、どんどんと大きくなっていって、この過程自体を楽しんでいてくれているといいですね。

-- 参加者34名というのは想定通りですか?

添削 いや、まさかですよ(苦笑)。十数人ぐらいだと思ってました。最初はジャッジもお一人だったんですけど、参加者が増えてもしガチなジャッジ対応が発生したときどうなるのかな、オンラインだとどうしても手間はかかるよなって考えたら、どうしても待たせることになってしまう。そこからお二人、三人と。ノリと勢いで声を掛けたら快く受けていただいて、ありがたいですね。

-- 本格的になってしまった。

添削 凄い方を呼んでしまった(笑)

-- さらに今回賞品まででることになりました。

添削 カードショップふらっと(※2)さんのご厚意により賞品をご提供いただけることになりました。実際のところ当初は賞品は無しという考えでしたし、参加費もないですしそのように説明していました。ですがある日ふらっと様からもともと販売用の商品ではないからと「ヴィンテージで大会をやるなら出しますよ」と声をかけていただき、折角いただけるなら、とお言葉に甘えることにしました。

それから個人的に、地元店舗の支援としてイコリアのボックスを購入していて、もともと僕はパックを剥くことにそれほど興味が無いので転がしてたんですけど、ならこれもつけちゃおうと。ここまで来たなら賞品があったほうがおもしろいよね、ちゃんとした大会っぽいよね、って考え方を変えました。

-- 最後のピースですね。

添削 そう、そうなんですよ。最後のピースです。大会には賞品がつきものなんですね。賞品を目当てとしてやっているひとは誰もいないと思います。でもあったほうが大会らしいし面白いんです。冠は無いですけど、僕の中ではふらっと様はスポンサードについてくれたぐらいの気持ちでいます。ふらっと様は郵送料もあるし手間もかかるし、はっきり言ってマイナスなんですよ。それでもやっていただけるということに、そのお気持ちに本当に感謝しています。

※2 カードショップふらっと(@cs_flat
店舗ページ 

大阪市北区のカードショップです。毎週金曜日にフライデーナイトヴィンテージと題した大会を開催するなど、ヴィンテージにとても愛情を注いでいただいている店舗様となります。

店舗様自体も現在営業をお休みされる中、添削杯に多数の賞品のご提供をいただきました。この場をお借りして謝辞を述べさせていただきます。

ふらっと様では、現在支援コースを募集されています。是非皆様一度目を通していただき、ご協力いただけると幸いです。


-- それでは改めて「添削杯」の当日のだいたいのスケジュールを教えていただけないでしょうか

添削 予選ラウンドが5日(火)13時からになります。これはDiscord対戦で行うので配信はないですね。スイスラウンド5回戦なのでおそらく決勝トーナメントは18時半~19時ぐらいからになるのかな。そこから決勝ラウンド3回戦。20時半~21時ぐらいに終わる感じかと思います。

-- 少し流動的になるかもしれませんが、随時Twitterなどで連絡する感じですね。

添削 そこから希望者でオンラインで飲み会でもして「お疲れさまでしたー!」と感想を言いあえば、最高に楽しい一日なるだろうな、と思っています。幸い翌日もお休みですし。


この大会を切っ掛けに色々と楽しんでください

-- 最後に二つほどメッセージをいただきたいと思っています。まず「参加者の皆様にメッセージ」を。

添削 大きく二つあります。一つは楽しんでほしい。そしてもう一つはこれを通じて他のヴィンテージのプレイヤーと交流を深めてほしい、知り合いを広げてほしい、ということです。

最近、自粛自粛で世の中暗い雰囲気で、折角のGWなのに楽しみが何もない、って嫌ですよね。そこでせめて添削杯があるって思ってもらいたい、5日は添削杯を楽しんでほしい。それ以降はここで繋がった方と、それは日常的な会話かもしれないし、オンライン対戦かもしれないですけど、楽しんでいっていただければそれが理想ですね。

-- ちなみに「添削杯」というのはそれで正式決定ですか?

添削 もうこれでいいです(笑)なんか僕にネーミングセンスが無くて、以前にもヴィンテージ交流会というのをやってたんですが、実際は誰もが添削杯って呼んでいて。もう繰り返すというか、それが一番なじむならもうそれでいいよって。僕の意志よりも周りの意志を取ります。

-- わかりました。では今度は「視聴者の方にメッセージ」をお願いします。

添削 ヴィンテージを楽しんでほしいですね。視聴者の方の大多数はヴィンテージを知らない方だと思います。ヴィンテージにはワンキルが横行しているとか、偏見が多少なりともあると思うんですよね。

実際にヴィンテージってどういう環境なんだと、確かに強力なカードは沢山ありますが、その中でもきちんとマジックをしている。読みあいだったりスペルの応酬だったり盤面のコントロールだったり、他のフォーマットと何も変わらないんだよと。あくまでフォーマットの延長線上で、他では使えないカードが使用できるという環境を知ってほしい。一方でヴィンテージを楽しんでいる方には「オンライン対戦ってこんな風にできるんだよ、もしよかったらやってみませんか?」という問いかけをしたい。

-- 気づきを与えたい。

添削 いやもうこれは勧誘ですね。「ぜひやろうよ!」と。そんな風に考えています。

-- 長時間ありがとうございました。