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添削杯Vol.2 観戦記事 TKC55 vs 龍之介 決勝~最後の審判~

text by ティル

イントロダクション

添削杯Vol.2は、前回の倍近くの人数である64人で始まった。
1日中ヴィンテージを楽しみたい、ただそれだけの思いで、これだけの人たちが参加を表明してくれた。

前回の添削杯が好評だったのも大きな要因の一つだろうが、なによりヴィンテージというフォーマットが持つ魅力が、たくさんの人を惹きつけてやまないのだろう。
スイスラウンド6回戦、決勝まで合わせれば9時間という長丁場でも、プレイヤーのみなさんは楽しそうにマジックをプレイしていた。

そしてこの大所帯をしっかり受け止め、大会としてまとめ上げてくださったジャッジ、スタッフの皆様。
商品を提供してくださり、各試合をさらに熱く、楽しいものにしてくださった「未確認スリーブ」(@u_sleeve)様

この場を借りて、お礼を申し上げる。


そんな添削杯Vol.2 決勝戦。
ヴィンテージの魅力に取りつかれた64名の中の、2人。

プレイヤー:TKC55
使用デッキ:Doomsday

最後の審判


3年ぶりにマジックを、ヴィンテージをプレイしたというKTC55。昔から使っていたというDoomsdayを操り、スイスラウンドを3位で通過した。

いわゆるロンドン・マリガンなどの基本ルールの変更に戸惑いながらも、長年の相棒と共に準々決勝ではKuraraの駆るRavager Shopを退け、準決勝ではゼロックスを操るseven forestに勝利し、この決勝を迎えた。
このまま最後まで久しぶりのマジックを満喫していただきたい。


プレイヤー:龍之介
使用デッキ:MUD

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先のKTC55とは対照的に、現在でもマジックを存分にプレイしているのが龍之介だ。先日の関西帝王戦でのTOP8が記憶に新しいが、前回の添削でもTOP8に入賞し、フォーマットは変わるが旧作杯でも準優勝の成績を収めている。オンライン・テーブルトップ両方で精力的にマジックを行い、楽しんでいる様子は、周りで見ている人も楽しくさせる。

今日も最後までマジックを楽しむ権利を得て、とても嬉しそうだ。


しかし、ここは決勝戦。どうしても勝者と敗者が生まれる。
せっかくなら、最後に勝って終わりたいというのはみんなが思っていることだろう。

観戦しているわれわれも、対峙しているプレイヤー二人も、そして実況・解説を行っている主催者添削とゲストの冬宮みはるさんも。

全員を楽しませて、そして笑顔で終わるような決勝戦を期待したい。


Game1


スイスラウンド上位のTKC55が先行となる。
少しキープに悩んだようだが、7枚で始めるということはこの決勝を戦うにふさわしい初手だったのだろう。

そして、ゲーム開始時から一気にフルスロットルでデッキを回し始める。
《Underground Sea》からの《Demonic Consultation》、そして指定は《Black Lotus》。

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これには解説席にいる二人も舌を巻く。取り除かれた6枚に《Black Lotus》が入っていたら、その時点でゲームが終わるのだ。

しかし、TKC55とDoomsdayの長年培った絆は、悪魔との取引でも引き裂けなかった。しっかりと《Black Lotus》を手に入れ、そのまま大輪の花を咲かせる。そして流れるように唱えられる《最後の審判/Doomsday》。じっくりと吟味した5枚を提示し、龍之介にターンを渡す。

いきなり最終通告を受けてしまった龍之介。この第一ターンの選択で、このゲームが決まる。ドローを終えた8枚を見て、検討する。
龍之介の選択は、《Mox Sapphire》《Mishra's Workshop》から《鋳造所の検査官/Foundry Inspector》。そして《虚空の杯/Chalice of the Void》をX=0で設置。

虚空の杯


マナアーティファクトを封じ、同時にクロックを用意する。最後の審判で残された中に《Black Lotus》があれば、そのまま完封できる。

だが、TKC55はそれを読み切っていたのか。《通りの悪霊/Street Wraith》を2度サイクリングしたのち、《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》でライブラリの枚数を調整。そして《Underground Sea》セットからの《タッサの神託者/Thassa's Oracle》。きっちりマナアーティファクトを使わず、Game1を勝利して見せた。

TKC55 1 - 0 龍之介


Game2

少しの感想戦と、入念なサイドボードを経て、ゲーム2が始まる。
二人とも、疲労が少し見えるがそれ以上に決勝を楽しんでいる。

先行に代わった龍之介。マリガンを挟んだが、初動はこのマッチアップで最高といってもいい動き。《Mox Ruby》を置いたうえで《Mishra's Workshop》からの《三なる宝球/Trinisphere》。
しかし、これはTKC55がしっかり握っていた《意志の力/Force of Will》の前に成就せず。

さんたま

TKC55は先ほどの攻防で失った手札を《定業/Preordain》で整えにかかるが、その隙に龍之介は《不毛の大地/Wasteland》で土地を攻める。

手札に脅威がないのか、《Time Walk》をただの1ドローとして唱え、龍之介にターンを返すTKC55。

龍之介は、その隙を見逃さないとばかりに《クルーグの災い魔、トラクソス/Traxos, Scourge of Kroog》を唱え、一気にライフを狙いに行く。ここでもTKC55は《死体焼却/Cremate》から《鋼の妨害/Steel Sabotage》と、狙いをかわして時間を稼ぐ。

しかし、そうやって稼いだターンを何もできずに返してしまう。3度目の正直とばかりに龍之介が展開した《電結の荒廃者/Arcbound Ravager》はついに盤面に降り立ち、重ねて呼び出された《高速警備車/Fleetwheel Cruiser》が重い一撃を放っていく。

高速警備車


一瞬で窮地に追い込まれてしまったTKC55。それでもあきらめずに勝ち筋を探す主人を助けるため、デッキは最高の1枚を持ってきた。
《渦まく知識/Brainstorm》がTKC55の手札を一気に新しいものに変え、そしてデッキとつながっていく。
《霧深い雨林/Misty Rainforest》でトップをシャッフルしたのち、《通りの悪霊/Street Wraith》《暗黒の儀式/Dark Ritual》から唱えられる《最後の審判/Doomsday》。

最後の審判


ターンを返せば敗北。その中でこのデッキができる最善手は何か。
これまでに何回も行ったパイルを、今回も積み上げていく。残りのマナ、ライフ、盤面すべてを見まわし、最適な5枚を。

そして積み終われば、あとはデッキと共に駆けるだけだ。《噴出/Gush》でライブラリの枚数を調整すると、最後はヴィンテージを象徴するこの2枚。

《Black Lotus》でマナを確保し、

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《Ancestral Recall》がカードを授ける。

アンリコ

そして、今日一日マジックを満喫したそのプレイヤーに、

タッサの神託者

《タッサの神託者/Thassa's Oracle》が、勝利という結果をもたらした。


TKC55 2 - 0 龍之介


勝者が決まった瞬間は、喜ぶ側と悔しがる側、2つに分かれていたと思う。
しかしそれは一瞬のことであり、そのあとはすぐに二人で、そして解説も交えて先ほどまでの試合の感想戦を話し合っていた。

9時間を超える長丁場の後でも、マジックに対する熱は全く冷めていない。

そして、その中でTKC55がふと呟いていた言葉を借りて、この場を締めようと思う。

「久々にマジックをして、マリガンルールなどが変わっていて戸惑った。」

「でも、ブラックロータスをプレイする瞬間の喜びや、アンリコで3枚引く快感はまったく変わらない。」

「本当に楽しかった。ヴィンテージを満喫したよ。」

本大会を締めくくるのに、これ以上の言葉は無い。

添削杯Vol.2の優勝者はDoomsdayを操るTKC55!