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子供へのワクチン接種への意義について議論しました(11月10日こびナビTwitter spacesまとめ)

こちらの記事は、2021年11月10日時点での情報を基にされています。

2021年11月10日(水)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:内田舞


アメリカで小児への新型コロナウイルスワクチン接種開始

内田舞
皆さん、おはようございます、こびナビの内田舞です。

今、たくさんの方がどんどん入って来てくださっているんですけれども、今日は話したいことが本当にたくさんあるので、もうズバッと始めちゃおうと思っています。

はい、こびナビの医師が解説する世界の最新コロナニュース、今日はわたくし内田舞がアメリカのボストンよりお送りさせていただきます。

実は私、子どもの学校の新学期が9月に始まってから、1か月以上スペースをお休みさせていただいていたんです。

今ボストンは6時半ですが、6時半から7時15分ぐらいって、おそらく育児中の方はご存じかと思いますが、いろんなものがつまった45分間です。

そんなこともあって、子どもの学校が始まってからスペースをお休みしてたので、私がお休みしていた間にこびスペ聞き始めたという方にとっては、新キャラが出てきた!と思われているかもしれませんので、軽く自己紹介します。

わたくし、内田舞と申しまして、ハーバード大学医学部の助教授(Assistant Professor)でマサチューセッツ総合病院(MGH、ハーバード大学の付属病院)の小児うつ病センターのセンター長を務めております。

専門は小児精神科医で、こびナビでは私自身が3人目の息子の妊娠中に新型コロナワクチンを接種したこともあって、妊婦さんや子どもの接種に関してを中心に発信させて頂いております。

その他にも、自分の本業のメンタルヘルスだったり、脳科学だったり、そして私のライフワークになっておりますソーシャル・ジャスティスだったり、ジェンダーについての発信も頑張っておりますので、応援していただけたらと思います。

さて、今日は、子どもの接種がテーマです。

先週の水曜日の夜にファイザー・ビオンテックワクチンの5歳から11歳までの年齢の緊急使用許可が承認されまして、翌日の木曜日から早速、アメリカでは5歳から11歳の子どもへの接種が開始されました。

我が家には子どもが3人いまして、上から6歳、次が4歳、そして最後は8か月の赤ちゃんなんですが、やっと6歳の長男が打てるようになりまして、早速金曜日に打って参りました。

こちらの接種ビデオを息子と一緒に作りまして、接種前日から当日、翌日の様子を、こびナビのインスタアカウントで公開しておりますので、ご覧いただけたらと思います。

Taka先生、こんにちは。

木下喬弘
Hi(笑)

内田舞
Hi, Taka-sensei(笑)

うちの長男も「タカ」って名前なんですけれども、タカのビデオ見ていただけましたか?

木下喬弘
見ましたよ。

内田舞
可愛かったでしょう❤️

木下喬弘
めっちゃ可愛かったです❤️
なんていうか、めっちゃいい子ですね。

内田舞
本当にありがとうございます。

そうですね、ちゃんと考えて意見を言うのは得意なことなのかなって思ってるので、同じ名前の Taka先生のように、このまま育っていって欲しいです。

さて、息子のタカですが、接種翌日の土曜日の朝、起きた時は「なんか腕が痛い」って言ってたんですが、土曜日の朝9時からクラスの子たちと学校のプレイグラウンドで会う約束してたので、私も一緒に行ったら、うんていはビュンビュンするし、サッカーもするし、元気に走り回っていました。

その後も熱もなくて、胸痛、関節痛、そういったものもなく、その日の終わりぐらいには、もはやワクチンを打ったことすら彼自身も家族も全員忘れているような状況でした。

なので、我が家は割と平和に過ごすことができました。

もちろん、子どもの接種がいきなり始まったわけではありません。

今年の3月から臨床試験が行われておりました。

この臨床試験のデータを FDA(アメリカ食品医薬品局)と CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が議論を重ねてレビューをして、その結果を踏まえて、水曜の夜遅くにGOサインを出しました。

翌日木曜日から色々な場所で接種が始まりました。

まずは接種状況をお伝えできたらと思います。

私たちの場合には、かかりつけの小児科の先生が「明日の午後、ワクチンクリニックを開くよ」と電話で教えてくれて、その時に予約を入れることができたんです。

かかりつけの小児科クリニックが入っているビルの1階に、工事中の結構大きな空き部屋がありまして、工事中で床とかも半分ぐらいない(1階なので床が抜けてるわけではなくて、下が石みたいな)ところでしたが、そこをかかりつけの小児科クリニックが借りて、その中に大きな机が10個ぐらい並べられて、それぞれの机が接種ステーションみたいになっていました。

クリニックスタッフ(医師が数名、ナース数名、メディカル・アシスタント数名)が入って、だいたい10分間の中で10人ぐらいが接種できるような体制を作っていました。

まずは外に並んでいる間に保護者に「今までワクチンでアレルギー反応をしたことありますか?」とか、そういった質問が書かれた問診票が配られて、それを記入して(うちの場合はアレルギーなどないので、Noと答える感じです)、それで会場(大きな工事中の部屋)に入る際に問診票を医師に渡して、医師たちが目を通し(それ自体は5秒位で終了)、そこから「空いてる接種ステーションに行ってください」と空いてる机に誘導されました。

息子、ここまではめちゃくちゃ元気だったんですけれども、椅子に座って肩を出して注射針を見たとたん、急に怖くなっちゃって。

6歳ですから、今までもどんな注射であっても直前に怖くなるっていうのは、毎回毎回同じパターンだったので、驚くこともなくて、私が手を握ったりとか、先生が「ママの膝の上に座ってギューっとハグしながらやろうか」って言ってくれたりして、まさにその通りにしました。

6歳の息子、私の膝に座って私がギュッとハグしながら、ぷちっと打ってもらって、1秒もしないような接種でしたね。

その後、大人の接種と同じように15分位待つんですけれども、待つのも同じ部屋の中の横のスペースでした。

大きなスペースだったので、こっち側半分は接種で、向こう半分は待つための場所になっていて、50個ぐらいの椅子が間隔を空けて並んでいました。

「どこか椅子をひとつ選んで、15分座っててね」っていう指示でしたね。

その間、息子は椅子に座りながら、ポケモンGO にフィーバーして、いろいろいいポケモンをゲットしてたみたいでしたが、そこから他の子の接種も見れるので、「なんかあの子は怖がってるね」とか、「あの子は泣かなかったね」「泣く子ももちろんいるよね、泣いてもすぐに終わって泣き止んで待つスペースに向かっているね」とか話しながら見ていたら、なんとなく「あ、自分が注射怖いって思ったのも普通なんだ。恥ずかしくないんだ」と思ったところがあるようで、これまで弟以外の他の子のワクチン接種の姿を見る機会がなかったので、息子にとっては自信に繋がった良い体験になったようでした。

私たちはこんな感じで、かかりつけのクリニックが設置した小型接種会場で打ったんですが、その他、息子が通っている学校でも、放課後を利用して、接種をする小児科クリニックと提携して、クリニックスタッフに来てもらい、ワクチンを打てるように手配してくれて、そっちで打っている子もいました。

公立学校が週末に接種会場になりまして、その学校に通っていなくても、誰でも予約できるよっていう接種会場もたくさんありました。

Boston Children’s Hospital、私が勤めてる MGH などの大型小児病院もワクチン会場を病院の一角に設置したり、あとは大人と同じように CVS や Walgreens といった街のドラッグストアでも接種ができるようになっていました。

また、科学博物館も接種会場になり、ワクチン打った子どもとその親は入館無料という粋なサービスをしています。

個別のクリニックでの個人接種は、今はあまり効率重視で行われてないんですが、その方法自体はあります。

おそらくこの1か月で特にボストン界隈は5歳から11歳の2回の接種両方とも落ち着いてしまうと思うので、そこで接種会場は早々に閉まり、その後は個別クリニックで5歳になったら、かかりつけの小児科で打ってもらうという形になるかと思います。

それ以外に、先端恐怖症の子だったりとか、重度の医療トラウマなどを過去に持つお子さん、多くは重度発達障害や知的障害があるお子さんですが、そのような接種会場での接種が難しいお子さんに関しては、発達障害専門クリニックでも接種ができる場所がありまして、ここはもうとにかく速さ重視、接種するメディカル・アシスタントさんが、クリニックの駐車場まで出てきて、お子さんは車に乗ったままぷちっと打って、はい終わり、帰ってね、といったケースもあって、いろいろな接種会場がありますね。

アメリカはクリスマスに家族で集まることが多いので、クリスマスまでには子どもたちを Fully Vaccinated にさせてあげれるようにということで、ボストン近郊に関しては、1回目の接種は先週の木曜日からもう2週間で終わらせれるようにというふうに頑張ってくれています。

私は小児精神科医なので、今日も外来でお子さん(患者さん)をたくさん診たんですが、今日診た5歳から11歳のお子さんに関しては、なんと全員既に1回目接種済でした。

まだ承認から5日目なんですが、5日で全員接種しているこのスピード感、やはりボストン近郊のこの医療リテラシーの高さと、承認前から準備を進めていた医療システムは素晴らしいな、ありがたいな、と感じましたね。


子どもへの接種の安全性

内田舞
実際の接種に関するお話は、そんなところです。

「本当に子どもにとって安全なの?」「打つ意義あるの?」という質問をたくさんいただいていますので、ちょっとこの機会にデータを使って、それに対して答えていこうと思います。

子どもの治験が始まったのは、先ほど申し上げました通り、今年の3月でした。

私の友人のお子さんも何人も参加されてましたし、子ども達の友達にも参加してた子が結構いるので、この過程を私もリアルタイムで追っていました。

最初は子どもが必要なワクチン量を決める試験から始まりました。

ファイザー・ビオンテックのワクチンに関しては、114人の5歳から11歳のお子さんが参加して3つの量が用意されていました。

それぞれの量のワクチンを接種したお子さんたちの副反応と免疫反応を比べて、1番副反応が低く保てて、でも充分な免疫反応を起こすのはどのくらいの量なのか、そういうスイートスポットを見つけるための試験でした。

その結果、この年齢に関しては大人の1/3の量で充分な免疫反応をして、副反応も低く保てるということが確認されました。

「子どもはどうして大人より少ない量でもいいの?」という質問、多いんですが、体重とかサイズが小さいからではなくて、免疫システムの成熟度(maturity)によるもので、子どもの免疫反応が大人よりも強いということが原因です。

そんな感じで量が決まって、次はランダム化比較試験(RCT)で、4647人のお子さんが4か国、90か所以上の病院で治験に参加されました。

この RCT は1対2で、2/3のお子さんがワクチンを打って、1/3のお子さんがプラセボを打つというタイプの試験でした。

ここで調べるポイントは、

①この年代の子たちが大人の1/3の量を打ったところで、16歳以上の人たちが通常量で接種した時と、同じだけの抗体量を作れるか
②感染発症予防効果があるか
③安全か(安全性)

という3つでした。

この3つが調べられた結果、

・効果に関しては大人の1/3量を接種した5歳から11歳のお子さん達も16歳以上の方々と、同じ程度の抗体価が認められ、予防効果に関しては90.7%の非常に高い予防効果がある

・安全性に関しては、実はこの年齢の子たちの副反応は、16歳以上で報告されている副反応の頻度に比べて断然低い

ということが分かりました。

副反応については、

発熱:16歳から20歳の方々は発熱17.2%だったんですが、5歳から11歳の子達は6.5%のみ
筋肉痛など:16歳から20歳の方々は40%の方が筋肉痛を経験したんですが、これに関しても5歳から11歳の子達は11%
心筋炎:この治験の中では0件でした。リアル・ワールドの症例では、今接種が進んでいる12歳以上では、まずは頻度が極めて低く、起こってしまったとしてもほとんどが軽症で心臓機能などに関しては全く影響を及ぼさないケースがほとんどです。検査などのために1泊ほど入院することが多いんですが、翌日イブプロフェンなどの解熱鎮痛薬の処方を得て退院して完全に回復されたケースが97%です。アメリカは、ワクチンの副反応がしっかり調べられている国の1つなんですが、アメリカにおいては接種による心筋炎での死亡例は1件も報告されておりません。また、心筋炎は、ワクチンと関係なく発生頻度が1番高いのが思春期から20代なので、同じように12歳未満は、ワクチンによる心筋炎の発生頻度は上の年代よりも低いんじゃないかと予想されていると、アメリカの小児科医たちは言っております。

もちろん今後も観察が必要なんですが、今のところあるデータに関しては安心材料の方がずっと多いです。


子どもへの接種の意義

内田舞
ここまでのお話で、効果もあるし、安全性も高いということが分かったと思いますが、では子どもに接種する意義はどうなんだということに関して、アメリカの状況を紹介します。

「日本じゃないじゃん!」っていう方もいらっしゃると思うんですが、でも、これはやはりグローバル・パンデミックで、同じウイルスが各国いろんなところでいろんな流行り方をしているので、他国の状況を見て、分析して、「我が国はこうしよう」と自分の国の対策を決めなきゃいけないという側面があるので、やはり他の国の状況を知るのは重要なんですね。

例えば、ワクチンを早くから広く打ったイスラエルはどうなんだろう?と観察したり、初期の頃に自然免疫を考えたスウェーデンはどうなったんだろう?と見たり、感染対策を怠って世界一の感染拡大を見せたアメリカでは今どうなんだろう?というように、他国のことを参考にしていかなければならない側面があるので、参考に聞いてください。

アメリカの中で、子どもの感染者数は630万人、入院に関しては24,000人以上、うち1/3 は ICU治療が必要でした。

感染後、特に小児に起こる多系統炎症性症候群(MIS-C、色々な臓器が炎症をおこしてしまう症候群)を起こした方は5000人以上でした。

また、入院した子どもたちの31%は基礎疾患がない子、いわゆる健康な子どもと言われる子ども達が、入院した子供たちの1/3だったので、それも気に留めた数字でした。

そして、もう本当に残念ながら、コロナ感染症で亡くなってしまったお子さんが600人(10月時点)で、アメリカの中では子どもの死因の第8位になっております。

子どもは大人と比べて重症化しにくいということは、もちろん事実です。

でも、重症化しないわけではない、ということもまた事実です。

アメリカのように感染対策を怠った場合は、小児の感染は全く無視できるものではないんですね。

パンデミック中、学校に行けなかった子どもも、アメリカの中で100万人以上いて、パンデミック中に小児精神科の受診率は3割増という結果が出ています。

これは私自身の専門分野なので、この1年半、この状況を見てきて、子どもたちの精神的な影響に関しては、本当にヤバいなっていうのを、毎日患者さんを診る中で感じています。

そのようなアメリカの状況で、対して日本では感染対策を本当にバッチリやってきたので、これ自体、世界に誇れるものだと思うんですが、「アメリカのような状況に陥っていなくても、子どもの接種をする意味あるか?」って言われたら、私の見解では「急がなくてもいいけども、打った方がいいかどうか聞かれたら、私の答えはYES」ですね。

それはどうしてかというと、今のように感染状況を抑えられているのは日本中の皆さんが感染対策をされているからで、しかしこれを社会として何年間も続けられるか、続けられなかった場合、感染は再拡大します。その際、一番影響を受けるのは自己防御策を持たない、つまりは抗体を持たない人たちで、それは子どもも例外ではありません。

また、このウイルス、本当にどこで急な変化球が飛んでくるか分からないウイルスで、デルタのように変化が起きた瞬間に感染者数が爆発して重症化する年代が変わるケースもある中で、Fully Vaccinated まで最初の接種から1か月半かかるワクチンの接種を、そんな状況になってから考え始めるというのは遅い、というのが現実なんですよね。

日本のデルタの波(第5波)の最中、8月末から9月末までの状況を考えていただけると良いかと思います。

私にとってこの時期、本当にもう忘れられない出来事というのは、紛れもなく、今聞いてくださっている谷口先生が紹介してくださった、妊婦さんのケースです。

重症化してしまった妊婦さんが、ご自宅で早産になってしまって、その結果、赤ちゃんが亡くなってしまった、千葉のケースなんですが、未だに私の頭から離れなくて… 本当にご本人もご家族も言葉にならないような辛い思いをされたと思います。

私自身は、1月に妊娠中にワクチン接種をして、日本のワクチン接種の重要性というのをこの1年ずっと語ってきているわけですが、その中で1番多かった日本からの反応は、「どんなに理論的に納得してもやっぱり不安だから、妊婦さんに関しては、日本の感染率はまぁ低いし、妊婦さんが多い年代で20代、30代、40代というのは心配しなくてもいいような状況だから、心配しなくていいし、様子見でいいんじゃないかな」という意見でした。

もちろん、その気持ちはすごく分かりますし、そのような選択をされた方に関して、私はサポートします。

でも、そんなことを言ってるうちにデルタの第5波がやってきて、今までとうってかわって20代から40代の感染者数が劇的に増えて、妊婦さんと同じ年代の方が多いので、妊婦さんも感染されて重症化されてしまう方もいて、その中で赤ちゃんが亡くなってしまったんですよね…

このような「予防できた死」というのは1件でも減らしたいし、できれば0にしたいっていう思いを、私はずっと強く持っていまして、それ以来、本当に更に強くなっております。

子どもに関しても同じように言えるところがあって、このウイルス、本当にどこで急な変化が起きるかわからないわけですよね。

その時になってから考えるのでは遅すぎるというのは、本当に現実です。

お子さんたちは、みんな日常的にワクチン接種されてると思うんですが、その際、例えば「麻疹は日本では流行ってないし、流行りだしたら麻疹の予防接種を受ければいいかな」と考えることはなくて、むしろ「流行ってしまったら大変だから、流行らせないために予防接種を受ける」という方がほとんどですよね。

もちろん並列には比較できないことなんですが、やはり予防のためのワクチンなんです。

早めに予防して、「もし罹ってしまったら……」と心配せずに生活できるようにすることも悪くないんじゃないか、というのが私の見解です。

日本でもアメリカでも、学校において子どもたちは感染対策を頑張ってくれているわけです。

でも、日本もアメリカも同じで、うちの子どもたちを見ていてもそうなんですが、この感染対策、サステイナブルではないと思うんですよね。

やはりワクチンを打って、すぐに元通りの生活に戻るわけではないんですが、より多くの方がワクチン接種をして抗体を持つようになることで、今ある抑制は少しずつ軽減できることにはなります。

やはり普通に子ども同士が笑いながら給食を食べてもらいたいですし、思いっきり子ども達で一緒に遊んで、習い事とかもさせてあげたいですし、それに近づくために「ワクチンなしでは無理なのか?」と言われたら「無理ではないかもしれないですが、非常に難しい」というのが現実です。

そう考えて、私も子どもに接種させました。

日本ではまだ12歳未満は接種対象ではないんですが、これはアメリカのひとりの医師からの意見として参考にしていただけたらなと思います。

ちょっとモノローグ長くなってしまったんですが(笑)、意見、コメント、質問などある先生方、ぜひお願いします。

(間)

……じゃあ、困った時の安川先生、お願いします!(笑)


子どもへの接種のリスクとベネフィット

安川康介
(笑)内田先生、本当にたくさんまとめてくださって、ありがとうございます。

まず、ボストンと僕が住んでいる地域との状況がちょっと違うな、と思いました。

さすがハーバード周辺!という感想で、僕のところはまだそこまで5歳から11歳の接種が進んでいません。

僕も子どもがいるんですが、小児科に電話したら、「また11日ぐらいに電話してください」といわれまして。

CVS とかの街の薬局(retail pharmacy)で接種できるか調べたんですが、まだあまり空きがない状況でした。

でも、こちらでも多分どんどん進んでいくんじゃないかなと思っています。

5歳から11歳の接種は、やはり悩む方は日本で多いんじゃないかなと思います。

やはり流行状況によってリスク・ベネフィットも変わってくるっていうのは、もちろんあると思うんです。

アメリカの場合は、流行状況(今の流行状況、ちょっと前の流行状況とか)によって、リスクとベネフィット(具体的には、入院する数、亡くなってしまう子どもの数、それに対して、心筋炎とかで入院になる可能性とか)を表にして分析して、パブリックに公開してコミュニケーションをしている、ここが1つ、大きいです。

日本でも子どもの接種を始める場合は、データもしっかり日本の状況を出さないと、あまり納得されない方もいるかなと思います。

幸い日本の場合は、多分時間差があって5歳から11歳の接種もはじまると思うので、その頃にはかなり情報が今よりも集まっているんじゃないかと思います。

今日、New England Journal of Medicine に論文が掲載されました。

FDA のワクチンの諮問員会である VRBPAC(ワクチン並びに関連の生物学的製剤に関する諮問委員会)で公開された情報とほとんど同じような内容なんですが、この臨床試験でワクチンを受けた人が1500人、プラセボ打った人が750人で、実は、FDA は心筋炎のことがあったので、追加で人数増やしてください、ということで、さらに1500人が打って700人がプラセボを打ったっていうことで、まあ合計 3000人対1500人ぐらいのデータが今フォローしている段階だと思います。どちらにしてもそんなに数が多くないので、比較的まれな副反応があるかどうかは、今後調べられることになります。

日本に入ってくる頃には、もっとすごくまれな副反応とか、5歳から11歳だけにしか起こらない(おそらく無いとは思うんですが、100%ないと言い切ることもできないので)副反応など、安全性に関してはもっと情報が出てくるんですね。

それを判断材料にできると思います。

内田先生のお子さんのビデオ、僕も見ました。

ワクチンうんぬんよりも、「この子の将来が楽しみだな」と感心して見ました。

僕、6才の時なんか、多分チョコレート食べることと、スーパーマリオブラザーズをファミコンでやることしか考えてなかったので、すごいなあって思いました。

内田舞
ありがとうございます。

もちろん、うちの子どもたちもスーパーマリオブラザーズ、大好きです。

ただ、うちの子どもたち、実はチョコレートが食べられないんです。

私も小さい頃はうちの子どもたちのようにチョコが食べられなくて、食べるたびに吐き気がしたんですね。

大人になってから食べれるようになって、最近はモリモリ食べてます(笑)。

そうですね、安川先生がおっしゃったように、VRBPACと、あと CDC の ACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)の議論は、専門家たちが議論しているところがライブストリーミングで公開されています。

これってすごいなって何度見ても思うんです。

これだけ世界に影響力がある議論を、生で公開してできるっていう、知識の深さとデータの敬意、そういったものを本当にすごいなと思っていつも見ています。

その中で、感染率状況によってリスク/ベネフィットの比重は変わると言うプレゼンテーションがあり、心筋炎による入院者数とコロナ感染症による入院者数が、感染状況のセッティングを変えてリスク評価がされていました。

もちろんアメリカの中ではベネフィットの方が多いという結果になったんですが、これは入院者数を比較しているリスク評価で、「コロナ感染症のリスクというのは入院者数だけでは測れないところがあるよね」という話が、公開議論の中で出ていたことが、印象的でした。

やはり先ほど言ったように、小児精神科の受診率が今年かなり増えたことだったり、学校に行けなかった子どもたちが100万人以上いるということだったり、コロナ感染症による後遺症に悩まされるお子さんがいること、ご家族に移してしまい重症化あるいは死亡される家族を見るお子さんがいること、そういったことを考えると、「入院者数」という数字に現れないリスクがあって、それを定量することは難しいんじゃないかというようなことが議論されていて、それも印象に残りました。

でも、そのリスク評価自体は非常に重要なので、確かに日本においてはどういったリスク・ベネフィット、リスクとリスクがあるのかを比較することは重要だと思います。

他にどなたかコメントありますか?

安川康介
これ、もう振っちゃったほうが良いと思います(笑)

内田舞
あ、振っちゃった方が良いですか?(笑)

そうですね、吉村先生、もしよかったら子ども向けの接種会場とか、ワクチンの供給に関して、アメリカのボストン近郊の状況を話したんですが、なにかご感想などありますか?


子どもへのワクチン啓発

吉村健佑
密度の濃い情報提供をありがとうございます。

日本では、これからロジスティック(供給)については議論されると思います。

1つ先生の話で気になったのが、お子さん達に対する説明です。

ワクチンの有効性や安全性を、どのような形で説明したのか?何かツールがあったかどうか?そのあたり、お話ありましたら教えてもらえますか?

内田舞
そういった説明に関しては、接種会場とか、そういうところでは全くありませんでした。

接種会場には決断をしている人がそこに来るという形だったので、おそらく情報提供はその前の段階で、親がメインターゲットになってくるんじゃないかと思います。

・小児科のクリニックが親に対して提供している例で、かかりつけの小児科のクリニックからは、ここ1か月くらい「こういったデータが出ていますよ」「こういう感じで供給が進むと思うので、この時期になったら、この電話番号に電話してください」といった内容が、本当に毎週のようにメールで来ていました。

・昨日、ニューヨーク・タイムズがまさにこのTwitterスペースを主催して、そこに小児科の先生を3人ぐらい呼んで「このデータはどういう意味なのか」「こういったことを悩んでる人にはどういうことを言いたいですか?」というようなインタビューがあったりとか。

・SNSでいろいろ情報は流れてきていました。おそらくこびナビのようなチームがアメリカにもいろいろいて、治験のデータをまとめてくれる人だったりとかが、そういう方が親向けに情報を発信している姿は目にしましたね。

吉村健佑
はい、ありがとうございます。

アメリカで子どもへのワクチンに対する慎重論が出てきていないかご存じでしょうか。

内田舞
ないですね(笑)。

吉村健佑
ないんですね(笑)

内田舞
やはりアメリカの感染状況、先ほどお話しましたが、これだけの人数が亡くなってしまっているっていう状況考えると、リスク・ベネフィットの評価が、大きくベネフィット側に傾くことが、これくらいの感染状況だと明らかなので、専門家からの情報発信は、「なるべく早く受けてください」という内容が、統一されたメッセージでした。

とはいえ、アメリカは分断の国なので、私が住んでいるボストン近郊と、中西部や南部では受け取っている情報の質や内容までも違う可能性があります。それが感染状況の地域差に直接つながっているので、残念dwすね。

谷口先生、何かコメントはありますか?

谷口俊文
非常に大切なお話で、本当に感銘を受けました。

日本で少し懸念しているのは、日本の専門家の先生方のご意見が割れていることです。

見解が統一されてないことを凄く感じていて、とても慎重論の方が結構多くて、そういった方がメディアに出て、ネガティブなことを言うわけじゃないんですが、そこまで推奨するような感じではないスタンスの方も結構いらっしゃるように感じていて。

やはりこれから5歳から11歳の接種のことについて色々情報発信をして行かないと、なかなか厳しいだろうなと思いました。

あと、アメリカの方で僕、すごい気になってたのが、セサミストリートで「ABCs of COVID Vaccine」という番組を出したらしいんですよ。

これ、僕、すごい気になってるんですが、日本にいるから見れないわけですよ……

誰か見た人がいたら教えてほしいなーと思ったのと、日本でもこういう子ども向けの「ABCs of COVID Vaccine」みたいなものを誰か作ってくれないかしら、と思ったので、リスナーさんで何かこういう子ども向けのテレビ番組とかを作れるよという方がいたら、ぜひ検討していただきたいなと思いました。

以上です。

▼Sesame Street: The ABCs of COVID Vaccines

出典:YouTube Sesame Street公式 2021/11/09


内田舞
素敵ですね。

私、それ見ていないんですが、探してみますね。

きっと、ビッグバードとかクッキーモンスターが、コロナワクチンってこういうものだよ、と教えてくれるんですよね。

谷口俊文
多分そうだと思います。

セサミストリートのツイッターアカウントがあるので、11月6日の投稿を見ると、予告編で少しだけ動画が見れるんですが、これ、すごい、もう、僕自身、すごい見てみたいんですけどね……

コロナワクチンに関して、こういう形で子ども向けにも説明しようというスタンスがすごくいいなと思いました。

アメリカ、やはり、さすがですね。

内田舞
そうですね。

私、ちょうど大学生の時、アメリカで医学生として実習をしている時に、9.11のテロがあって、しばらく日本に帰れなくなっちゃったことがあるんです。

その時に、子ども向け番組で、子ども達を招いて、テロリズムについて話すとか、そこから発生する人種差別について話すとか、それがいかにいけないものかということを話すとか、こういったひどいことが起きた時に、自分の不安な状態や家族の不安な状態にどうやって向き合っていくか、そういったことを話す番組をやっていて、テロが起きてから1週間以内にこういった番組が放映されていて、感動したんですよね。

子どもには難しいかもしれない、という話でも、子どもは大人の言っていることや、ニュースが耳に入ってきていて知らないわけはないので、隠すのではなく、ちゃんと説明をする、子どもが分かる範囲で、言葉を使って説明することは、すごく重要です。

コロナワクチンについても同じかなと感じますので、セサミストリートについてはリサーチしてみます。

谷口俊文
ありがとうございます(笑)。

内田舞
じゃあ、Taka先生、どうでしょう?

木下喬弘
結局、打ちたくない理由とか、ひょっとしたら打たないほうがいいかもしれない理由とか、探そうと思って探せば出てきちゃうんですよ。

日本の感染者数が少なくてとか、ワクチンは100%副反応がないわけじゃないからとか、心筋炎でも入院だとか、探せば出てきちゃうんです。

そういうつもりでデータを見ると、そういう結論を出すことはそんな難しくないので、そういった意見に対して、こっちは一応ディフェンスしないといけないという立場でもあるので、なかなか情報発信が難しいというところもあるんです。

隙のない情報発信を詰めていこうとすると、結構難しいところがあるので、なんて発言するのが良いかって難しいですけど、「お薦めとしては打った方がいいですよね」っていうのはいいんじゃないかなって思うんです。

トーンとしては、現時点でも未来永劫、どのタイムポイントでも100%絶対にメリットがデメリットを上回るということを保障できるか、と言われると、結構きついところもあったりするんですね。

言い方がちょっと雑になると、また怒られるんですけど、皆さん、この僕の気持ち、分かりますかね。

安川康介
思いますよ、思いますよ。

内田舞
お気持ちはもちろん、分かりますよ。

私はなにぶん、コロナワクチンの啓発で担当していたのが、妊婦と子どもへのワクチン接種なので、本当にセンシティブな人たちを対象にする部分を担当したところがあって、木下先生がおっしゃってること、よく分かります。

でも、やはりこの時には、私、妊婦さんの状況と同じような感じだな、と考えちゃいます。

例えば、私がこのワクチンを接種した1月の時点では、妊婦の臨床データがなかったわけです。

でも、基礎医学のmRNAワクチンのメカニズム、そぢて既にわかっている接種しないリスクを考えると、これは間違いなくベネフィットの方が圧倒的に大きく、安全性は高いだろう、ということが私の中で判断できたんですが、その中で、「でもじゃあ100%安全だと言えるのか?」と言われると、「100%安全だ」と将来的なことも含めて言える臨床的な根拠はなかったです。しかし、一方で「すごく危険ですか?」と聞かれたら、それは非常に可能性が低いと言えました。

そんなこんなでやはり、日本の産婦人科学会とかは、当初どうして必要か全くわからないエコーをワクチン接種前後に取るように進め、12週までは打つのやめるように、リスクが高い妊婦は接種しても良い、と言うこれを聞いて妊婦さんが打とうとは思わないだろうという提言を妊婦さんに向けて発信しました。

もちろん今は妊婦さんの接種は「推奨」になっているんですが、やはり最初に出すトーンって重要なところだと思っていて、最初にものすごく消極的な専門家の意見を聞いてしまうと、なかなかその印象を変えるのは難しいです。日本の妊婦さんも多くが、突然の推奨に戸惑ってらっしゃいました。

将来的なことも含めて100%大丈夫と言えないよって言うことが事実だったとしても、その中で何が分かっていなくて、何がわかっているのか、分かっている部分を分析するとどうなのかっていうことを一緒に考えて発信していかないと、間違ったトーンが根づいちゃうということが、私は妊婦さんへの情報発信に関して、日本の中での情報が渡るのを見ていてすごく感じたんですよね。

逆に CDC は本当にすごい情報発信のプロだなと思って見ていまして、残念ながらそれでもアメリカに関しては接種率が伸び悩んでいるんですが、1番最初から CDC は妊婦さんのワクチン接種に関して、「こういった情報がわかってて、こういったことは分かっていない。でも、分かっている情報を見る限り、接種のメリットの方がずっと大きい」と専門家たちは発信していました。

そして、「その分かっていない部分を分かるようにするために、こういった研究が今されています」ということを常にそういったトーンで発信していて、全く嘘は言っていなくて、事実だけを伝えているのに、でも向かっていく方向性は見える情報だったんですね。

それは私やはり素晴らしかったなと思って。

それに対して、日本に関しては、メディアも公的機関も学会も医療者個人達の多くのちょっと残念だったなと思うところが、大きいです。

私は子どもへの接種に関しても、将来的に「打たない方が良い」という結論に行く確率は、非常に低いと感じておりますし、それはこびナビ内皆同感だと思います。

やはり私たちこびナビに関しても、そのような予測(expectation)をもったトーンの元、とにかくデータに忠実に、嘘をつかずに拡大解釈もせずに発信して行くべきかなと思っています。

その一部を私も担っていきたいと思っていますので、これからもよろしくお願いします。

子どもに関しては、アメリカの状況によって、うちの子どもも V-safe に登録していますが、その情報などをもとにいろんなデータが出てくると思うので、その情報を基に、きっと日本の方々は判断できるかと思います。そしてやっぱり感染率が収まっているということは、時間を買えているっていうことなので、それに関しては日本人の本当に努力の賜物でありますので、その時間を買った分、他の国の状況というのを見ながら判断につながるのかなと思います。

最後、何か言い残したことがある先生、いらっしゃいますか?
ないようなので、では今日はこの辺で終わらせていただきます。

では、皆さん、どうもありがとうございました。

では、また会う日まで。

See you next time!

バイバイ。


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