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「ワクチン接種済の人が感染を広げている」のは事実なのか?、モデルナアーム、学校再開について(7月19日こびナビTwitter spacesまとめ)

※こちらの記事は、2021年7月19日時点での情報を基にされています。※

2021年7月19日(月)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:木下喬弘


木下喬弘
おはようございます!

(メンバーから応答なし)

木下喬弘
おはようございます!!!

峰宗太郎
おはよう…ござい…まーす。

木下喬弘
もうねぇ、止めようかと思いましたよ、いま。お返事なかったので。危なかったです(笑)
おはようございます、峰先生。どうですか? アメリカは。


【真夏の熱波で蒸される峰先生】

峰宗太郎
アメリカはねぇ、暑いね!
これ、熱波が来ちゃってるんで……今日はちょっとマシなんですけど、やっぱり34-5℃あって、東京と同じぐらいですかね。それで、夕立があるんでね。こっちもけっこう夕方は、じめじめして暑いんですよね。

木下喬弘
アメリカの東海岸って、なんというか、真上から太陽が来てけっこうキツイですよね。

峰宗太郎
キツイっす、けっこうね。日本のネトネト、ジメジメ、蒸し蒸しというのもありますけど、アメリカもなんかこう、蒸し料理にされてるようで暑いですね。

木下喬弘
安川先生はどうですか?

安川先生
僕は、涼しい病院の中にずっといました。

木下喬弘
ふふふ……相変わらず、何とも言えないコメントですね(笑)
黑ちゃんは、山、どうでしたか?

黑川友哉
山、最高でしたよ!
もう本当に美しくて、ワクチンデマとか「もうどうでもええわ!」という気持ちに一瞬なりました(笑)

木下喬弘
(爆笑) どういうこと!?

黑川友哉
いや、心がね、本当に洗われましたね。

木下喬弘
黑ちゃんは元々、登山が趣味なんですか?

黑川友哉
いや、全然そんなことないんですけど、今回はちょっと機会をいただいて。
職場に登山のプロ、キリマンジャロとか登っちゃうような人がいらっしゃって。その方に「山に行かないか」って言われて、八ヶ岳の赤岳っていうところを登って来たんです。本当に、天気にも恵まれて……夜の満天の星空、いまの時季は天の川がきれいに北から南に延びている様子とか、夏の大三角とかカシオペアとかもきれいに見えまして。
まあ〜洗われてきました。あ〜よかった!

木下喬弘
じゃあこれからバリバリ働いてください!

黑川友哉
バリバリ働くしかないですね。頑張ります!

木下喬弘
ちなみに、山登りってそんな、何か特別な技術とかなくっても行けるもんなんですか? ちょっと訓練をしてから行きますか?

黑川友哉
ああでも、最低限足腰はある程度は鍛えておかないと、途中でへばっちゃったり……体重の移動のさせ方とか重心の持っていき方って、ちょっと間違えると、変に筋肉に負荷が掛かっちゃうので……途中でへばっちゃうと大変かなと思いますね。
なので、私も初めてだったんですけど、プロの方とか経験のある方と一緒に行くのがいいかな、と思います。とっても良かったですよ、本当に。

木下喬弘
なるほど……じゃあ、プロの人と一緒に行ったら、初心者でも行けるぐらいなんですね? その赤岳は。

黑川友哉
赤岳は中級者編なんで……そうですね、プロと行けば大丈夫だと思います。

木下喬弘
わかりました。まあ、別に、行かないと思うんですけど(笑)
もし行く機会があったら、私も。

黑川友哉
そうですねぇ、初級の山とかでもけっこうオススメだなと思いました。
山はいいと思いました。自然に触れるのはいいことです……何の話か分かんないや。

木下喬弘
たまには wi-fi の繋がらないところもいいですかね?

黑川友哉
そうですね(笑)
それもかなり大きかったですよ。夜、通知が入りようがないところに行っちゃたんで。それもとても良かった……デジタル・デトックスをやって。
いろいろご迷惑をお掛けしたかもしれません。申し訳ありません。

木下喬弘
いえ、全然大丈夫です!


「ワクチン接種済の人が感染を広げている」の真偽

木下喬弘
今日はですね、ニュースをいくつかピックアップしてみたんですけど、いま話題になっている「ブレイクスルー感染」の話題を少しお話したいと思います。まず最初に取り上げるのは、BUSINESS INSIDER JAPAN という媒体の記事です。

▼米専門家、ワクチン接種済みの人がデルタ株の拡大を助けていることは「疑いようがない」
https://www.businessinsider.jp/post-238324
出典: BUSINESS INSIDER JAPAN(21.07.12)

これは、タイトル的にどうなん? という気もちょっとしなくはないですが。
まず最初に「ワクチン接種を済ませた人は、変異ウイルス デルタの感染が広がったとしても、重症化したり死亡する可能性が低いだろう」というところから始まっています。「だが、2回のワクチン接種を済ませた人が無症状のまま周囲にウイルスを広げる可能性はある」ということです。

いまアメリカで議論されているのが、感染拡大が少し見られる中で、もう一度マスクをするとすべきかどうか? というところです。
2回目のワクチン接種をしたのに、マスクをするなんてあり得ないと思っている人もいれば、実際問題としてブレイクスルー感染を懸念して「マスクをして欲しい」と言っている感染の専門家で、少し駆け引きがあるような感じです。

そんな話から始まり、バーとかで見ず知らずの客が密集して、あるいは屋内のライブ会場で詰めかけたファンが一緒に歌うだとか、そういうリスク行動が取られている、と。一度は、大統領が7月4日(アメリカの建国記念日)に「ウイルスは打ち負かされたわけではないが、もはや私たちの生活を支配していない。アメリカは一つになる!」みたいなことを言っていたんですが、残念ながらやはり、どこの国もデルタの感染が広がってきつつあります。その新規感染者数が増えてきているところで、「ワクチン接種を済ませた個人間の感染を、私たちはおそらく大量に見逃しているだろう」ということで、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のマレー所長がお話をされています。

デルタに対して「ワクチンはどれぐらい感染予防効果があるか?」というのは、もちろん、簡単には分かりません。(従来のウイルスでは)発症予防効果95%といわれていたのが、デルタでは80%後半、スコットランドの報告では79%というデータもありましたし、最近のイスラエルでのデータでは64%という数値が出ています。
これはいろいろな要因があると思うんですけれども、従来の Non VOC、Non VOI (要は従来のウイルスということ)に比べると、やはり、ワクチンの効果は下がるだろうと考えられるわけで、そうすると感染予防効果自体も下がってしまうと考えるのは自然かな、と思います。

※用語解説:
VOC(Variants of Concern・懸念される変異株)

VOI(Variants of Interest・注目すべき変異株)

mRNAワクチンでは、いまのところ「重症感染の予防効果は90%程度保たれている」というデータがほとんどですが、接種を済ませた人からまだ接種していない人に感染が広がって、感染者数が増える、発症者数も増える、重症になる人も一定数いる。この「ワクチン接種済み者を介した感染をどう考えるか?」が、いまアメリカで少し話題になっている、ところかと思います。

この件に関して、先生方にコメントいただければと思いますけれども、いかがでしょうか?
誰も立候補がいなければ、安川先生で(笑)

安川康介
まず、タイトルのような「ワクチンを接種した人がデルタの変異を広げているのは疑いようがない」というのは、ちょっと言いすぎというか、そこまではっきりデータがあることじゃないんじゃないかな、と思います。

確かに、いろいろな州でデルタが広がっているんですけども、やはり、すごく増えてきているのは、ワクチンの接種率が低い州なんですね。アーカンソーとかミズーリとか、あの辺りの接種率って1/3ぐらいなんです。接種率が高い州、バーモントやマサチューセッツ州では60%台後半と、かなり差があります。
感染が広がって来ているといっても、それは未接種の人がほとんどで、重症化したり入院したりする方も、ワクチン接種してない人がほとんどということは、まず認識しておいた方がいいと思います。

一方で、アメリカでは一時期、感染者が12,000人ぐらいに減っていたんですけど、最近はまた上がってきて3万人以上になってきてしまっています。「マスクをしなくてもいいよ」というのがけっこう早かったんですが、アメリカはちょっと油断し過ぎたんじゃないかな、というところはあります。
確か今日から、ロサンゼルス・カウンティ(郡)などでは「室内ではマスクをしましょう」という方向になっていますし、WHO(世界保健機関)も「ワクチン接種を受けても、引き続きマスクをしましょう」という方向に転換してきています。

こびナビでも何回もこの話をしているんですが、ワクチンは「スイスチーズ」の1枚です。分厚いけれども1枚に過ぎないので、いろいろな感染予防対策は、流行状況に応じて取っていかなければいけないと思います。

※用語解説:
スイスチーズ(理論)…穴があいたスイスチーズであっても、何枚も重ね合わせることで隙間を減らして穴を通さないようにするという考え方。単体では完全ではない感染対策であっても、いくつも重ねることで感染を防ごうとすること。

木下喬弘
ありがとうございます。
そうですね、僕もここはもちろん、クリアにしないといけないと思っています。
「ワクチンを接種済みの人が感染の拡大を広げていることを疑いようがない」といっても、ワクチンを接種していない人に比べて接種した人の方が広げているという意味では全くないんです。

ただ、このコメント自体は、ワシントン大学の医学部保健指標評価研究所という機関の、クリストファーマレーという方のコメントで、「もしワクチン接種者の間で感染が広がってなければ、こんなにも感染が広がることはありえない」みたいなことを言っている、と。これは別に、BUSINESS INSIDER JAPAN が独自のコメントを付けているわけでもありません。
ただ、ちょっと誤解を生むというか……確かに、マレーさんの言っていること自体が、どの程度意味があるのか? 要は、0じゃないといえばもちろん0じゃないんですけれども、それがマジョリティ(大多数、過半数など)なのか? あくまで問題は「ワクチン接種していない人がまだけっこうな割合いる」というところなのか?

ただし、安川先生にご指摘いただいた通り、感染拡大の主体、そのメインになっている州は、まだほとんどワクチンを打っていない。ほとんどは言い過ぎですけど、30〜40%ぐらいの接種率のところ(ミシシッピ、アーカンソーなど)で感染者が増えている。かつ、重症者も増えているのは、けっこう重要なポイントかと思いました。

他どうでしょう?

峰宗太郎
あ〜、一つだけ!

木下喬弘
はい、峰先生。

峰宗太郎
これ、確かにタイトルの付け方がね、「ちょっとちょっと〜、そこ引き抜いたか!」みたいな感じでありますよね(笑) 
ワクチンを打った人からも感染してることがあるよ、という言い方だったら分かりやすいですね。

ただ、どうしても考えておかなきゃいけないことは、確かに、デルタに対して発症予防だとか感染予防が下がっているのは事実だと思うんですけど、それでもまだ70%か60%後半はありそうだ、というのも事実なんですね。
冷静に考えて、槍玉にあげるつもりはないんですけど、ジョンソン・エンド・ジョンソンとかアストラゼネカのワクチンは、そもそも従来株に対しても、そのぐらいなんですよ。だからこれ、充分に「効果はある」んですね。

ですから、まるで「ワクチンの効果が0になった!」みたいに錯覚しちゃった、変な言論をけっこう見かけて。「変異ウイルスには効かない! 打つ意味ないじゃないか! わ〜い!」みたいな、ワクチンが効かなくて喜んでいる変な人たちも観測しているんです(笑)
そうじゃないだろ〜ということで、ちょっと言っておきたいのは、やっぱりちゃんと打った上で、多少効果が下がるというのは事実でしょうから、他の予防策と併せてしっかりやっていきましょうね! ということ。

あとは安川先生、木下先生ご指摘の通り、まだワクチンを打っていない人が多いところでは、広がる確率が高い。そして重症化する人も多いという事実を見つめて、ワクチンというものを戦略的に使っていく。やはり、それ一本槍でいってしまったイスラエル、イギリス、アメリカの、イケイケドンドンのリスクの取り過ぎは、やり過ぎだったのかな、という感じは正直、受けてますよね。

木下喬弘
ありがとうございます。
ちなみに先生、いまチラッとですね、従来“株”って言いましたけど……もうそろそろ、変異“体”は諦めた?

峰宗太郎
そこ、いま“株”って言いましたけど、これね……(以下、オフレコ裏話が続く)……で、もうイラッとして、私は怒って。いま、ちょっとムカついたので“株”を使いましたけど、できれば変異“体”とか変異系統といって欲しいところではあります。

木下喬弘
分かりました(笑)
これですね、向こうが“株”と言ってくるインタビューに「変異ウイルス」って答えるの、けっこう大変なんですよ(笑)
変異株って言うの、まだちょっと許してもらえない?

峰宗太郎
ん〜まあ、分かる分かる。
でもまあ、デルタぐらいになってくると“株”って言ってもいいんじゃないか、という気配はしてるんですよ、実は。けっこうね、伝播性が変わってきてますからね。倍ぐらい、はちょっとアレですが、でもだいぶ変わってますよね。

木下喬弘
そうですねぇ、おっしゃる通り……なんか、デルタってけっこうすごいですよね。
アルファが出て、ベータが出て、「ベータの免疫逃避問題」とか言っていた数か月前が懐かしいぐらい、変異の世界を塗り替えてしまって。けっこう嫌だなと思ってるんですけど。

そういったところで、ちょっと名称の問題も話しつつ……。

ご指摘通り、私もなんでか分かんないんですけど、「ほら、お前たちは間違っていた」みたいな感じで、ワクチンの効果はこれだけ下がってる、「イスラエルの首相が意味がないと言った」みたいなことを、すごく投げかけられたんですけど。
免疫逃避があるウイルスが出てきて、変異が出てきて、それによってワクチンの有効性が下がるということは当然ありうるわけで、それは仕方がないわけです。

だからといって「打たない方がいい」ということには、もちろん全くならないわけなので。3回目を打つのか、変異に対応したワクチンを作るのか分かりませんが、そういった解決策を、ちゃんと探していくという方向性かと思っています。

はい、このニュースはこんな感じで……。
今日はもう一つピックアップしたニュースで、テキサスで共和党の議員が3人、完璧ブレイクする感染をしているっていうニュースとか出ていて。アメリカでは少しずつブレイクスルー感染(2回接種して fully vaccined の状況になった人、すなわち2回目の接種から2週間を経過した後に感染してしまった)という事例がちょこちょこ報告されています。そういうことがけっこうあるよ、というのは、少し注意が必要かなというふうに思います。
これには、明らかに経時的な抗体価の現象、抗体価だけじゃなくてもいいんですけど、感染防御能の低下が関与していると、私は思っています。だから、打ち始めてからまだ時間が経ってない日本ではそこまで有効性が下がらないんじゃないか、とは思うんですけれど、「一生効くわけじゃない」というのは事実っぽくて。それには2つの意味があって、「経時的に感染防御の方が下がる」こと、プラスアルファで、何か選択圧が掛かって「ワクチンが効きにくい変異が出てくる」ということも考えておく必要はあるかなと、と思いました。

※用語解説:
「変異に選択圧がかかる」というのは、ワクチンが普及することでワクチンが効きにくい変異が生き残りやすいという選択がされることを言います。


「モデルナ・アーム」に過剰な心配は不要です

木下喬弘
次にいきたいと思います。
皆さん、薄々感づいておられるかもしれませんけれども、最近こびナビは日テレと一緒に記事をけっこう出しております。皆さんはやられているかどうか分かりませんけれども、日テレNEWS(@ntv.news)という TikTok チャンネルがありまして、こちらに我々が出てお話させていただくという企画をやっています。

▼Tik Tok 日テレNEWS
https://www.tiktok.com/@ntv.news

一番最初に内田先生が「ワクチンを打つと不妊になる?」という話題を、TikTok 日テレさんのアカウントで出されて。これ、めちゃくちゃ見られて、途中経過で22万視聴ぐらいあったということです。我々は Twitter とかで情報発信することが多いんですが、まだ手が届いてない若者がよく見ている SNS 上で露出されるという、非常に価値のある情報提供かな、と思っています。

皆さんご存知ないかもしれないですけど、2番目は私が心筋炎の話をさせていただいて、これが多分、内田先生の100分の1ぐらいの視聴だと思うんですけど(笑) イイね!がね、内田先生に比べて非常に少なくて、私はもう TikTok はやりたくね〜な〜と思ってるんですが(笑)
まあ、それは冗談なんですけど、そんなお話がありました。

その次がモデルナ・アームについての記事で、池田先生が解説してくれています。
このモデルナ・アームって、そもそも「モデルナ・アームっていわない方がいい」という話から入ろうと思うんですけれども……ファイザーとモデルナでは、モデルナを接種した方に多いというのは事実ですが、ファイザー接種後にも起こるので、論文などでは“コビッド・アーム”という名前が付けられています。
ただ、日本のメディアでは、けっこうモデルナ・アームという名で定着しちゃいましたので、そこはモデルナ・アームでいってくださいみたいな話になって、記事上もモデルナ・アームという名前でいきます。

モデルナ・アームがどんなものかというと、ワクチンを打って数日から数週間経ってから、接種部位の腕に、比較的広い範囲の発心とか赤み、腫れ、そういう症状が出る副反応ですね。これが観測されているということです。

どれぐらいの頻度で出てくるか?っていうのが、実はあまりよく分かってなくて。
これは日本でも、医療従事者の先行接種と、モデルナに関しては自衛隊が打っているんですよね、まず最初に。
自衛隊はデータを取っていて、そのデータで年齢層別にみると、若年女性では10%を超えるぐらい起きているんじゃないか? みたいな話があります。その辺のデータは、まだ公開はされていないので、公式に「何%」というのは難しいんですが、特定の年齢層で見ると少し多いっていう話は少し出始めています。
一応、治験上では1回目接種後は0.8%、2回目接触で0.2%という数値になっているので、記事にはとりあえずそれを使って書かせていただいています。

基本的には自然に治るんですけれども、具体的な症状としては接種部位の周囲に痒みとか、熱感を伴う赤み、腫れ、しこり。そういうふうなものが出ます。1〜2cmのこともあるけど10cmを超えることもある、ということが分かっていて、痒みとかでけっこう不快だとは思うんですけれども、それ以外に基本的に害はないということが分かって来ています。
自然に良くなるため「特別な治療が必要なわけではありません。しかし、不快な場合は対症療法をおすすめします」みたいなことを池田先生に書いていただいています。具体的には「冷やす、痛みがひどいときは市販の鎮痛剤を飲む、あるいは痒み止めのような軟膏や、ステロイド軟膏を塗ってもらってもいいですよ。症状がひどかったり、数日経っても改善しなかったら皮膚科に相談してください」というようなことがポイントかなと思います。
その軟膏ですが、「腕に塗ったらワクチンの効きが弱くなるんじゃないか?」みたいな心配がありましたが、その心配はありません。局所の軟膏ですので、ワクチンの全身の免疫反応を阻害するとか、そういうこともありませんので、大丈夫です。

また、重要なこととして、接種1回目でこれが出たら2回目は打ちたくないと思う人もいると思うんですけど、2回目の接種をしてもらって大丈夫です。1回目でモデルナ・アーム、コビッド・アームの症状が出たとしても、2回目接種もためらわずに受けていただければ、というメッセージになるかと思います。

モデルナ・アームについて、何かコメントありますか?

安川康介
これ、知らないでいきなり出たりするとビックリすると思うので、こうやって情報を発信して、「こういうことが起こりうるよ。起きてもそんなに問題ないよ」と伝えることはけっこう重要かなと思います。
それと同時に、この Twitterスペースでも少し話したことがあるんですけども、リンパ節の腫れとか、そんなに心配する必要はないけれど、実際起きたらやっぱり心配しちゃうみたいなことがあります。それについては、皆さんにしっかり伝えていっていただきたいなと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
谷口先生、けっこうモデルナ・アームとか見ますか?

谷口俊文
いや実は、医療従事者の接種ではファイザーが中心で、ファイザーでは1人もいなかったので……。

木下喬弘
ああ、そうですね。

谷口俊文
興味深く見てはいて、The New England Journal of Medicine でもCORRESPONDENCEか何かで出ていて、「だいたい2週間後には治っている」というような書きっぷりで、一時的な症状ですよね。だから、それほど心配することはないと思うんですけれども、安川先生がおっしゃったように、やっぱり「知らないとすごく不安になる」と思うので、これは周知が必要かなと思いました。

※参考:Delayed Large Local Reactions to mRNA-1273 Vaccine against SARS-CoV-2
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2102131
出典:NEJM 2021/4/1

木下喬弘
ありがとうございます。私も全く同意見です。「自然に良くなる」とか書くと、なぜかヤフコメが荒れるんですけども(笑)
まあ興味のある方は見ていただければと思いますけども、自然に良くなるので。別に、僕らはウソをついてるわけでもなんでもなくて、それは事実なんでしょうがないんです。やっぱり事前に「こんなことは起こりません」みたいなことを知っておいていただくことは重要かな、というふうには思います。

内田舞
木下先生、こんにちは! 内田です。

木下喬弘
あ、はーい! 内田先生どうぞ。

内田舞
モデルナ・アームは、私の義理の母がなりましたね。

木下喬弘
ほうほうほう!

内田舞
まさに写真の通りでした。打った一日後ぐらいになんとなく痒くなってきて、ぼわ〜んと、ちょっと不快感があるっていう感じで、ものすごく痒いわけでもないし、ものすごく痛いわけじゃないけれども、何かちょっと腕が使いにくくなる感じって言っていましたね。

で、見た感じ、やっぱりちょっと腫れてて、盛り上がってる感じもありましたが、本当に、この記事に書いてある通りに2週間ぐらいで、もう全く見えなくなりました。症状がきつかったというか、その不快感があったのは最初の3日くらいで、なんとなく痒そうな赤みっていうのは2週間ぐらい、ホンワリ続いてました。

でも、何にも治療せずにだんだんと良くなって、もう既に4か月ぐらい経っているわけですけれども、こういう一時的な副反応って、その時はすごく「これ大丈夫かな?」と思ったり「何だろう、これ」って思うものですが、治まると考えもしないものになってしまうので、この記事が出てくるまで、私自身もすっかり忘れていたぐらいです。
なので、起きてしまった場合にはちょっと不快だと思うんですけれども、2週間ぐらいで収まるので、安心していただけたらと思います。

因みに私もチーム・モデルナです。

木下喬弘
ありがとうございます。
チーム・モデルナの先生方に聞きたいんですけど、「20代、30代の女性では10%を超えるぐらい起きている」みたいな話を聞いたんですけど、アメリカではそんな感じでもないですか?

内田舞
う〜ん、その数字を聞くとそんなに多くはないんじゃないかなー、という印象ですね。私の周りでは、直接経験をしたのは私の義理の母だけだったんですけれども……わからないですね。

木下喬弘
ありがとうございます。
ちゃんとデータが出されたら、頻度もアップデータしますし、ちゃんとお伝えしますので、その辺りまで少し待っていただければなというふうに思います。


学校再開への危機感(アメリカ公立校)

木下喬弘
今日はいくつかお話をさせていただきましたけど、せっかくなので、最後に1分ぐらい復習をしようと思います。

まず、アメリカですね。少し感染拡大していて、昨日ニューヨーク・タイムズの記事とかを「何をやろうかな」と思って見ていたんですけれども、ラインナップに上がってくる記事がほぼ2つに分けられちゃう感じでした。
1つは、まだワクチンを打っていない州で感染が広がっていますということ。
もう1つはワクチンで、すでに打っている州でも少し感染が出ている。なので、既にワクチンを打ち終わった人や感染を経験した人も、改めて「マスクをした方がいいんじゃないか」みたいなことが議論になってます、みたいなやつですね。

皆さんご存知かどうか分かりませんけれども、X JAPAN の YOSHIKI さんという方が、最近、ロサンゼルスでワクチンを打った後にマスクをしていて、友人に「どうしてマスクしているの?」と言われたけれど、公衆衛生上必要だから〜みたいな文脈で「まだマスクをした方がいいと思って、私はしています」みたいなことを言った、とツイートされていました。まさにそういうふうな状況になっているんですね。

▼YOSHIKIさんのtweet
https://twitter.com/YoshikiOfficial/status/1416227373465292800

安川先生がおっしゃった、スイスチーズモデルでいう分厚い壁だけれども「完璧じゃなくて、わりかし突破してくる悪いヤツがいま広がっている」というお話。それ(マスク着用)を強制すべきかどうか、戻すべきかどうか、みたいなところで揉めていて。一方で、やっぱりマスクに対して根強い文化的な反発のある国でもあって、そんな簡単ではないみたいなところが、アメリカの主なニュースになっています。
とりあえずは、まずは日本でも感染をしっかり抑えて、まずまず減らすまでしっかり対策を続けていくということは基本となります。そのあと、どう開放していくのか? というのは、他国の例を見ながら、バランス良くなってから国がリーダーシップを取って情報を提供してくれるかな、と我々は思っています。
……という感じで、よろしいでしょうか?

安川康介
いいと思います!

内田舞
すみません、私、最後5分だけで、デルタ株についての先生のお話を聞けなかったので、もしかしたらもうお話されてたかもしれないんですけども、私がいま一番不安に思っているのは、接種率が高い州で接種していない人っていうのは、その多くが12歳以下の子どもだということなんですよね。

うちの3人もそうなんですけれども、アメリカでも12歳以下の子どもは誰一人、治験に入っていない限りは、接種していないわけです。それで、いまサマーキャンプなど、マスクありでやってるところもあれば、マスクなしでやっているところも多くて。8月末から9月にかけて学年が始まるので、その年度が始まって、学校がオープンする。私はデルタ株の蔓延に関して、ワクチンを打っていない子ども達が学校で室内で様々な人と会うことになるということが非常に不安だなと思っています。

去年は、学校のオープンに関しては、もうとにかくみんな、怖い!怖い!でした。アメリカってけっこう白か? 黒か? All or Nothing の国なので、じゃあ「もう怖いから学校は全部クローズしましょう」といって公立学校を閉めちゃったんです。けれど今年は、先生たちがもうワクチンを打っているという点で、じゃあ「もう開けましょう、開けます」と、去年のような危機感だったりとか、対策の練られ方っていうのが全く感じないんですよね。
そのような形で学校を開けてしまった場合に、先生たちはワクチンを打っていて、確かに感染しにくい、感染しても重症化しにくいですが、12歳以下の子どもたち、小学生以下はまだワクチンを打っていないっていう状況です。そこでの感染拡大が、もし子どもたちの中で起きてしまったら、恐ろしいと思って、私はヒヤヒヤしてみています。

(お子さんが「ママ!ママ!」と呼ぶ声が聞こえて)

ごめんね、ちょっと待ってね🎵 
……えっと、そうそう、そうなんです! 本当に、この子たちを守るためにも、まずは大人たちが責任を持って感染予防をして、その一環としてワクチン接種を考えて! と感じているので、この子どもの叫びとともに共有できたらと思います(笑)

木下喬弘
ありがとうございました(笑)

いや、おっしゃる通りですね!
子どものワクチン接種もまた難しい問題があって、科学的にはちゃんと治験をやって、治験の結果で有効性、安全性が確認されたら承認していきます、淡々とやります、という話なのですが。

まあ〜なかなか、私のところにも反動が既に来ています。「子どもにワクチンを打たせるとか、おまえは悪魔か?」みたいなコメントがまあまあ寄せられておりまして。
最近ちょうど Abema TV に子どものワクチン接種について話させてもらいました。YouTube のコメント欄とか見ていただいたら、私がどんな感じで叩かれてるか見えます(笑)
この辺りも、ちょっとなんというか……やっぱり「若年者は重症化リスクが低い」ということと「重症化しない」ということは全く別のお話であって。比較すべきは「ワクチンを打った後に重篤な副反応が出るリスクと、感染した時に重症化するリスク」だ、と私は思うわけですけれども、その辺りをていねいにコミュニケーションしないと、感覚的には危機感を持っている人がまだ非常に多いんだなあと、いま身にしみて感じています。
その辺りも引き続き、情報を提供していければな、と思っています。

4分オーバーになりましたけれども、今日も大役・こびスペの司会を務めさせていただきましたので、安心して二度寝……はしないですけど(笑) 日常の業務に戻りたいと思います。
聴いていただいた皆さん、どうもありがとうございます。
そして、ご登壇いただいた先生方もありがとうございました。
ということで、日本の皆さん、良い1日をお過ごしください。

黑川友哉・安川康介
ありがとうございました。


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