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変異ウイルスに対してのワクチンの効果、3回目の接種について(7月13日こびナビTwitter spacesまとめ)

2021年7月13日(火)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:木下喬弘

木下喬弘
おはようございます。

峰宗太郎
おっはようさんでございます👶🎵

黑川友哉
おはようございます。

安川康介
おはようございます。

峰宗太郎
おはようございます👶

木下喬弘
あれ、わりかし音途切れたの僕だけですかね。

峰宗太郎
おはようございます👶

木下喬弘
おはようございます。

峰宗太郎
おはようございます👶

木下喬弘
いけてるよ。OKOK。

峰宗太郎
おはようございます👶

木下喬弘
壊れるなw
はい、ではそろそろ始めていきたいと思います。
こびスペということでね、もうなんか色々ちゃんと説明を書くのが最近邪魔臭くなってきておりますけど皆さんいかがですか。

峰宗太郎
おはようございます👶

木下喬弘
ふふふ、大丈夫か(笑)。
黑ちゃんどうですか。

黑川友哉
ちょっと遅くまでかかっちゃいましたけど、昨日ついにガイドブックの入稿をしました!

木下喬弘
いやお疲れ様でした!

黑川友哉
これ本当にしっかりした冊子なので、入稿してからお届けするまでにだいたいやっぱり2週間ぐらいかかっちゃうんですね。
自治体の皆さんにはもうすぐ届きますのでよろしくお願いします。
それから、他にももし欲しいよという自治体や医師会の方など団体の方がいらっしゃいましたら、こびナビHPのお問い合わせフォームからご連絡いただければ幸いです。

木下喬弘
はい、ありがとうございます。
ガイドブックの広報をしていただいてありがとうございます。
ご指摘の通り、他の自治体の方でもお配りできるように、その場合は印刷費用をいただくかもしれないですけど、これから広報していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは始めていきたいと思います。
まず今日は、イスラエルの状況とファイザー3回目のブースターショットがいるか問題について解説をしていきたいと思います。


【ワクチンはデルタに対してまだ効果がある】

まず1つ目のニュースです。
約1週間前、ニューヨーク・タイムズの7月6日付けのニュースですけれども、変異ウイルスデルタが広がってるということへの懸念が広がっているが、研究上はワクチンはデルタに対してまだ効果があるというタイトルのものです。

The world is worried about the Delta virus variant. Studies show vaccines are effective against it.
Pfizer Vaccine in Israel: How It Works Against Delta Variant - The New York Times
https://www.nytimes.com/2021/07/06/science/Israel-Pfizer-covid-vaccine.html
出典: nytimes.com 2021/07/06

この記事は世界中に広がっているデルタについて、様々な研究者がワクチンの効果を調べていて、それぞれ少し違う結果を報告している、といった書き出しで始まってます。
イギリスでは、5月にファイザー/ビオンテック社のワクチンを2回打った後の、デルタの症状のある感染に対する有効性が88%だと言っています。
スコットランドで6月に出てきた研究では79%の有効性だったと報告されて、カナダで先々週の土曜日(7月3日)に報告された研究では87%という結果が出たと報告されています。
それに引き続いて、先週の月曜日(7月5日)にイスラエルの健康省がアナウンスしたところによりますと、ファイザー/ビオンテックのワクチンはこの新型コロナウイルスの感染に対する有効性が64%にまで下がっているとのことです。

まだデルタが入ってきていなかった5月の時点では95%の有効性という状況であったにもかかわらず、このデルタの変異が入ってきたことによってかなり有効性が下がってきてるということと、今イスラエルは一時新規感染者数がほぼ0になっていた中でデルタが入ってきて拡がっているということで、ほぼデルタの感染になっているという状況です。
この記事は結構重要です。

1つの研究があってその研究結果を報告するときに有効性何%という数値が出てきます。
これを点推定と言います。
信頼区間というのは、それがどれぐらいの確実性なのかを表しています。例えば信頼区間が50%から80%だった場合、64%の有効性という数値は出ているけど、低かったら50%かもしれないし高かったら80%ぐらいは実はあるかもしれないみたいな解釈をできるというものです。
このように、研究自体の点推定値だけで見ていくと研究ごとに違う値になるのは当然なのですが、それがどの程度信頼できるかというのは別問題だよということがここから解説されています。

一番最初にこの Emory 大学の Natalie Dean さんっていう方が出てきて、そういった内容を話しています。
いわゆる有効性を最初に報告された治験の段階では、ランダム化比較試験という非常にクリアな"ワクチンを打った人"と"プラセボを打った人"で発症した人の割合のガチンコ勝負をやりました。
しかしこの実世界での有効性を議論するときにはワクチンを打った人は打っていない人よりも、例えばリスク行動を取りにくかったり、年齢が高かったりと背景が様々なので、打った人と打ってない人の感染率、発症率、重症化率の比がそのままワクチンの効果となかなか言えないところがあります。
この記事では、そういった背景因子が調整されていない状態で単純に1つの研究の結果を信じたらいいわけではないといった重要な指摘がされています。
イスラエルでの発症予防効果64%というのは、イスラエルでは1月とか2月に接種をした人はワクチン接種からもう半年近く経過してしまっているので、抗体が少し下がってきていて、それに加えてデルタが入ってきているという状況です。時間が経ったことによる抗体価の減少+変異で効きにくくなったという2つの合わせ技で64%という少し低い数値が出るのではないかといった解釈をしている人が多いのですが、まずその1つの研究結果を信じていいのかというところから疑ってかかりましょうといった記事になっています。

次に、3-4日後に出た2つ目の記事も一気にやってから皆さんのコメントをいただこうと思います。


【ファイザー/ビオンテックは3回目のブースターショットの許可申請を出そうとしている】

Pfizer, BioNTech to seek authorization for COVID booster shot as Delta variant spreads
https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/pfizer-ask-fda-authorize-booster-dose-covid-vaccine-delta-variant-spreads-2021-07-08/
出典:Reuters通信 2021/07/09

こちらは7月9日にロイターから出たもので、イスラエルでは有効性が64%まで低下したという報告を受けて、ファイザー/ビオンテックは、FDA(アメリカ食品医薬品局)と EMA(欧州医薬品庁)に3回目のブースターショットの許可申請を出すというニュースになっています。
繰り返しになりますけれども、デルタがかなり広がっていてワクチンの有効性が落ちているというデータをもとにこの申請を行ったというところから始まっています。
一方で、アメリカでは今のところ、Fully Vaccinated、つまり例えばファイザー/ビオンテックであればワクチンを2回打ってから2週間経った人では、現時点では COVID-19 に対する3回目のブースターショットは必要ないという共同声明を CDC と FDA が出しています。
更に EMA も基本的には同じように、現時点ではそのブースターショットが必要という解釈はしてないということを言っています。

しかし有効性が64%にまで落ちているとか、あるいは時間が経って抗体価が下がってるといった話が出てきて、そういった現状を合わせると、ファイザー/ビオンテック社としてはイスラエルでのデータをもとに3回打った方がいいんじゃないかということです。抗体価が下がってくることは確かに事実ですし、従来の VOC(Variant of Concern:懸念される変異体)ではないものに対しては6か月時点でも91.3%と高い有効性を出していたのですが、デルタ VOC に関しては64%まで低下したというところも合わせて、3回目を打つことの許可を企業側から求めているというニュースです。
この3回目のワクチン接種について…今日はかなり豪華なメンバーですね、ありがとうございます。
ご登壇いただいてる先生方、積極的にコメントいただければと思いますけどいかがでしょうか?
初心に戻ってアペタイザー安川先生から始めましょうか。

安川康介
それを見越してミュートを外してました。

木下喬弘
あはは(笑)

安川康介
今されている議論は、"デルタが出てきて有効性が下がっている"さらに"抗体価が少し下がってきてるっていうことでブースターが必要じゃないか"という話なんですけれども、そもそもそのブースターが必要かという議論は結構複雑な議論で、以前岡田先生にこの話をしていただいたと思うんですけれども、大きく4つぐらいファクターがあるんですね。

1つ目は新型コロナウイルスの流行状況による点です。
例えば変異が出てきても、抗体価が下がってきても、2003年のSARSみたいに感染が完全に収束してしまえば、ブースターは必要なくなるわけです。
なので国とか社会での感染流行状況というのが1つの大きなファクターになってくると思います。

2つ目はどんな変異ウイルスがいるかです。
免疫逃避といって抗体が効かなくなる変異ウイルスがいるかとか、感染が広がりやすいデルタみたいなものが出てくるかとか、それが2つ目のファクターとしてあるかなと思います。

3つ目は感染する人です。
そのワクチンを受けた人がどれぐらい感染しやすくて、合併症のリスクがあるかというのが3つ目にあると思います。
おそらく3つ記事を用意していてどういう人にブースターが必要になってくるかという議論になっているので、その時に話すことになると思います。具体的にいうと免疫機能が低下してる方だと特に抗体がつきにくいということがわかってきているので、そういう方に対してはブースターが必要になってくるのではないかという議論があります。

4つ目は先ほども述べたどれぐらい免疫が持続するのかということです。
これは割と抗体だけ見がちなんですけれども、細胞性免疫というのも関係してくるので、抗体の量だけではわからない点があると思います。
今はすごく複雑な複数の変数がある式の答えを出そうとしている状況だと思います。

木下喬弘
非常にわかりやすい説明で本当にご指摘の通りだと思います。
まず整理をすると、繰り返しになりますけどイスラエルでの発症予防効果が64%まで低下したということの背景が可能性としては3つあると思っていて、1つ目は時間が経って発症予防効果が下がってきているということ、2つ目は変異の影響、3つ目は研究の精度ですね。
研究デザインの問題、要するに信頼できる研究結果なのかどうかという点に問題があって、この3つ目は割と見過ごされがちなんですけれども、実際にこれはまだ論文になってるわけでも、このデータをファイザーが公表してるわけでもありません。
ファイザーのこの発表を基に我々は議論をしているのですが、意外と背景因子が十分調整できていなかったりだとか、その研究の質の問題があって、64%ってことはないかも知れないという可能性も結構あると思ってるので、この辺りは注意しないといけないと思います。

ブースターをするかどうかはそのブースターを検討してる場所での流行状況であるとか、あるいはどのような変異があるかとか、抗体価だけでは測れない免疫機能が実際にどうなってるかといった問題がかなり複雑に絡んでるという点は本当にご指摘の通りです。
そういったいろんな問題があって簡単な議論は難しいのですが、実際に64%まで減っていたとして、次の記事にも出てくるのですがブレイクスルー感染で重症化した人も結構いるみたいなので、64%まで有効性が減少したとしてどういったブースターを打つのかという点も議論にはなってくるでしょう。
昨日谷口先生と僕は実地でお会いしてこの話をしていたのですが、具体的に今あるファイザー/ビオンテック社のワクチンを3回目に打つというよりは、打つならもう少しいいものを打ちたいなって思うんですけど。
変異に合わせたワクチンをブースターに使うってのは、谷口先生、ありですかね。

谷口俊文
いやそれはありだと思うんですけれども、臨床試験などを行って安全性とかも確認したいなと思うところはあります。
この辺りは峰先生の意見も伺ってみたいですね。

木下喬弘
そうですね、ありがとうございます。
峰先生、デルタに対する3回目のブースターショットってどう思いますか。

峰宗太郎
いやそれはですね、理論的にはとっても妥当なことで、何しろデルタの前、みんなベータに注目したときに臨床試験までやってるんですよね。
そういうことを考えると変異ウイルスに対してアジャストした改良版ワクチンをブースターとして使うのは非常に合理的でいい考えだと私は思います。
ただ問題は、これをちゃんと作って、安全性試験までやって、FDA は最後の部分は簡素化できると言っているので簡素化したとしても、2-3か月かかるんです。
そうするとその間に別の変異ウイルスの方が優勢になった場合どうするんだって話も出てくるので結局何をターゲットにするかって結構難しい課題です。
どこで何が流行ってるかにも結構かかってくるんですよね。

木下喬弘
まさにおっしゃる通りで、多分2月3月ぐらいはとにかくベータの免疫逃避がきついと、ワクチンの有効性が結構下がってしまうということで、ベータに対するブースターショットが必要なのではないかという議論があって、これは峰先生ご指摘の通り実際にブースターとしてベータにアジャストしたワクチンを打つという臨床試験をやっているわけなのですが、そうこうしてる間に今や世界の関心事はほぼほぼデルタになってしまったわけです。
けれども、今度はデルタに対してワクチンを実際に開発してるみたいなのですが、やってる間に次はイオタかラムダかとかいう話もありますけど、そういったところに移っていくという難しさはあるかなと思います。

また、その開発自体はできたとして、それを従来のワクチンと同じように扱っていいのかどうかというところも結構問題です。変異したウイルスに対してターゲットを絞ったワクチンを作ったら、そのワクチンの安全性は今使ってるワクチンと同等と言えるものなんでしょうか?

峰宗太郎
これはですね、やってみないとわからないっていうところが本当の正確なところですよね。
蓋然性から言うとその配列を変える前までの部分、メッセンジャーRNA を体に投入する部分までっていうことであれば安全性は確認されてると思うのですが、発現するスパイクタンパク質はやっぱりちょっと違うものになるわけですね。
そこの差によって何が起こるかということを確認するという意味ではやってみないとわからないところがあるというのが一番誠実な答えかなと思います。

木下喬弘
もし何か懸念があるとしたらどういうところが変わるというのがありますか、谷口先生どうぞ。

谷口俊文
いや、非常に答えづらいところだと思うんですけれども、そのスパイクタンパクの領域によっては受容体結合ドメインとか N末端ドメインとかいろいろあると思うのですが、そういったところをいじることによって、やはり先ほど峰先生がおっしゃった通り、安全性がちょっと変わってくる可能性も出てくるとは思いますので、そういったところは一つひとつ臨床試験で確認していった方がいいと思います。

安川康介
ファイザーもモデルナも B.1.351 とかに対応した新しいワクチンを開発しているのですが、面白いことに従来の改良してないワクチンを打っても、B.1.351 とか P.1 に対する抗体が改良したワクチンと同じぐらい上がっているというプレプリントも出てきているので、必ずしも改良したワクチンを打たなくてもいいのかもしれないです。
ただ実際の人でのデータはまだない状況です。

木下喬弘
ありがとうございます内田先生どうぞ。

内田舞
ちょっと追加で、今はもちろんそのファイザーモデルナの mRNAワクチンが大勝利という感じで先頭を走っている状況であり、3回目のブースターも受けることになったら、エビデンスが一番高いmRNAワクチンを再度接種することになるでしょうが、やはりこの変異というのを重ねてスパイクタンパクに対する抗体や細胞性免疫だけには頼れないところに来るかもしれないということを見越して、スパイクタンパクだけに対するものではないようなワクチンの開発も進んでいるものがあります。例えばスパイクタンパクに加えて、 nucleocapsid というウイルスの中に存在するたんぱく質に対する免疫を誘導するものが今現在人で臨床試験に入っています。スパイク蛋白と比べると、変異しにくいターゲットだそうで、ヴァリアント(変異)に関係なく SARS-Cov 全体に対して効くのではないかと議論されています。
やはりパンデミックが伸びて伸びて伸びまくってしまった場合にそれを後追いするのではなくてもっと全体に効くものを作ろうといった動きが私の周りでは見られます。

木下喬弘
なるほど、それはすごく面白いのですが、僕の理解ではなぜスパイクタンパクをターゲットにしてるかというと、ACE2レセプターっていう細胞側の受容体にスパイクタンパクがくっついて、ウイルスが細胞に入ってくるために非常に重要な場所だから、そこに対して抗体を作るのが大事だという理解だったのですが、別段そこじゃなくてもいいわけですか。

内田舞
細胞の中に入るのを防ぐためということに関してはもちろんスパイクタンパクが重要になってくるので、スパイクタンパクに対する中和抗体を作れるワクチンは偉大ですね。
しかし、細胞の中に入った後に感染してしまった細胞を免疫系が殺していけばコロナの拡大っていうものは防げるわけですし、細胞の中に入った後のウイルスをもターゲットにという感じですかね。

木下喬弘
なるほど、それはどちらかというと抗体ではなくてキラーT細胞の働きとしてみたいな。

内田舞
その通りです。
細胞性免疫、T細胞の活性化をメインのターゲットにしたものですね。

峰宗太郎
これは一応追加で研究者の一部はそのユニバーサルコロナワクチンとか、ノンスパイクタンパクをターゲットにしたワクチンを今実際開発しています。
彼らの主張はそういうのは変異ウイルスにも効くと言うのですがこれはまだ話半分に聞いておいた方がいい面もあるんです。
というのは、変異ウイルスってスパイクタンパク質だけに変異が入ってるんじゃないんですよ。
ご存じの通り、変異ってあらゆるところにバンバン入るんですね。
なので、結構お金がおりるっていうのもあって彼らは結構いろんな理屈を出してきて、前からユニバーサルワクチンとかで T細胞ワクチンという開発を進めているのですが、そうは言っても今のところゴールドスタンダードは中和抗体形成がワクチンの大きな役割なので、ブースターショットとして使うならやはりスパイクタンパク質なんだろうなというところはあります。
その重症化ワクチンとか将来のワクチンということは今回のコロナに使われるか将来の研究になるかわからないのですが、そこはちょっと慎重に見た方がいいなと思いますし、いくつか日本のメディアからの取材を受けた際にも私はそういうお答えをするようにしています。

木下喬弘
なるほどありがとうございます。
結構おもしろい議論で盛り上がっている感じもするのですが、ちょっと時間も迫ってきたので、せっかくなので一応私は公衆衛生をやっている身としてちょっと別の観点から。

【イスラエルにおける3回目のブースターショットの方針】

3つ目の記事はさらっと流しますけど、今イスラエルで重症になって感染して入院している46人の内、だいたい半分がワクチン接種済みの人という状況です。
Israel offers third shot of Pfizer COVID-19 vaccine to adults at risk
https://www.reuters.com/world/middle-east/israel-offers-pfizer-covid-19-vaccine-booster-shots-adults-risk-2021-07-11/
出典:Reuters 2021/07/11

先ほど安川先生におっしゃっていただいた通り、リスクのある人、もともと合併症などを持っている人が、特にブレイクスルー感染を起こして重症化していくというのを防ぐために、イスラエルではすでにこの3回目のワクチン接種を、基礎疾患のある人に対してやっていくということを方針として打ち出すようです。
しかし大原則に戻って考えると、ワクチンの一番大きな目的というのは、重症な感染を防ぐことです。
個人としてワクチンを接種した人が、感染から守られるということが一番の目的ですね。
その次にもちろん発症予防効果とか、感染予防効果まであるならば、ワクチン接種が増えていく中で集団として守られるという効果もあって、これは結構劇的に効果があるので、非常に魅力的なのですが、根本的にまず一番重要なのは打った個人にそのメリットがある、つまりその決断をした人の命がちゃんと守られるということです。
基礎疾患のある人が現に重症化しているということは確かに問題ではあるのですが、今のところ半年ぐらいのスパンでいけば、例えば記憶B細胞が骨髄の中に残っていることなども確認されていて、普通の人はある程度重症化が防げるんじゃないかというところも重要なポイントだと思います。

世界的にワクチンの供給が十分とは言えない現状で、アフリカなどまだワクチンを打てていない国がたくさんある中で、先進国が3回目のショットをするためにファイザー/ビオンテックのワクチンをさらに消費するのはありなのかという問題があります。
パンデミックは世界の問題なので、いわゆるグローバルヘルス的な、国際保健的な考え方をしないといけないと思うんですね。
そういったことを色々な視点でディスカッションすべき問題として深堀りできる時間は今日はもうないかもしれないですけど、ここを無視して先進国の都合だけで経済を再開するために感染予防効果を取りたいので3回目のショットを打つということは、開発途上国には回さずにさらに半分のワクチン供給を消費することになると自覚しておいた方がいいかなと思います。
何かこの点コメントある先生いらっしゃいますか。

安川康介
木下先生のその指摘は本当に重要で、3回目のブースターを承認するのはワクチンを確保しておきたい気持ちがあるからではないかと思ってしまう部分もあるんですよね。
イスラエルが今後もし、もっと必要になったときに早めに用意しておこうみたいな意図があるのかもしれないというふうに思ってしまいます。
先ほど言ったワクチンで一番期待したいのは、死亡者や重症の患者さんを減らすということなので、ある程度抗体価が下がってきても、発症は予防できないとしても重症感染と死亡は予防できるということは今のデータでもはっきりわかっています。やはりグローバルに考えた場合に、まだ打てていない国に供給を回すのが一番公衆衛生学的に正しいやり方なんじゃないかなと思います。

ちょっと免疫不全の方のワクチンの話が出たので言及したいのですが、免疫の機能が低下している方、抗体がつきにくい方がいるっていうのは今の研究でもいっぱいわかっていて、その点は心配しています。
例えば、ランセットオンコロジーという雑誌に出た論文では151人のがん患者さんにワクチンを打ったところ、血液がんがある方は1回接種後11%、2回接種後でも60%ぐらいしか抗体がつかなかったということです。
他にも、臓器移植を受けた400人以上の方を調べた研究では、1回打った後だと抗体が17%ぐらいしかつかなかったとか、最近の論文でも2回打っても80%の人は抗体がなかったということがありますので、こういう方に限って言えば将来的にはもしかしたら2回打った後に抗体価を測って、なかったらもう1回打つということは現実的に考えてもいいのかなと思っています。

参考:
https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(21)00213-8/fulltext
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2777685

木下喬弘
基礎疾患のある人はやはり別にして考えないといけないということですね。
そもそも感染のハイリスクですし、基礎疾患のない人と同じように抗体価が上がるとは限らないので、そういったところを測定しながら戦略を決めていくというのは重要な問題かと思います。
安川先生にも御指摘いただいた通り、イスラエルではファイザーのワクチンを余らしてたわけです。
それの期限がそろそろ切れるというので、今韓国に出しているんですね。
それとは別にブースターショットをやるために今ファイザーとネタニヤフが交渉してるというのは実際英語のニュースにはなっているのですが、日本のニュースではあまり流れていないようです。
ということで、3回目全員分打つぐらいの勢いでワクチンを確保するということをやっていて、世界的に見たら結構自分勝手な行動がイスラエルに見て取れるので、そういった問題を抱えてるということは知っておいた方がいいかなと思いました。
他に何か皆さんありますか。

谷口俊文
ちょっと質問です。
月曜日にファイザーがトニーファウチとか、NIH(アメリカ国立衛生研究所)、CDC、FDA の方に何か説明する、unpublished data ってもう公表されてるんでしたっけ。
まだそこはわかっていないですよね。
何かそういうニュースが流れていて、unpublished ってなんなんやねんみたいなところが Twitter とかですごく話題になっていたと思うのですが、何かご存知ですか。

木下喬弘
おっしゃる通り、記事の中でも出てくるんですけど、最初にいったこの64%、そもそも本当なのかっていう問題ですよね。
このデータ自体は公表されてないと思います。

谷口俊文
もう少し透明性が高い情報公開が今後おそらく出てくると思うので、そういったところでまた判断したいなと思いますよね。

木下喬弘
時間を置いた時点での有効性ってファイザーモデルナも90%ぐらいというのをプレスリリースで出してるんですけど、いかんせん僕らまだ1つもデータを目にしてないんですよね。
この64%に関しても本当にどれだけ信じていいのか、どんな解析をしてるのかについて、最初のニューヨーク・タイムズの記事でもハーバードの感染症疫学で有名な Marc Lipsitch 教授が、患者背景をしっかりマッチさせた NEJM(The New England Journal of Medicine)に載った最初のイスラエルの研究のような手法をちゃんと取っているのかと指摘しています。
なのでこのデータ自体をしっかり疑ってかかることも結構重要かなと思います。

今日はそんなところで、ファイザー3回目のブースターショットをどうするのか問題についてお話をさせていただきました。
いくつか宣伝をさせていただきます。
まずガイドブックの宣伝を安川先生どうぞ。


【こびナビガイドブックについて】

安川康介
こびナビの新型コロナワクチンに関するガイドブック、60ページぐらいの小冊子を最近こびナビメンバー全員で作りまして、それが今朝、黒川先生が最終入稿していただいたと思います。
最初は小金井市とか、新潟とか、いくつかの自治体に合計2万5000部ぐらい配布する予定です。
その後も希望があれば、増刷してできるだけ多くの方に読んでいただきたいなと思いますので、皆さん楽しみにしてください。

木下喬弘
データが入稿した状況ですので、Webサイト上に公開して応募のグーグルフォームとかを作っていきたいと思っています。
そういった形で基本的には各自治体ないし医師会さんに、1000部単位ぐらいで配っていただくようなことを検討しておりまして、そういう注文を受け付けようかなと思います。
個人利用に関してはデータのお渡し等々での対応にさせていただく可能性が高そうなんですけど、また検討してお知らせいたします。
いずれにせよ、新型コロナウイルスワクチンに関する正確な知識が身に付くガイドブックを製作して配布していきますので、皆さんぜひ楽しみにしていただければと思います。


【コロナ漫画大賞について】

私の方からも毎度の宣伝なんですけれども、新型コロナワクチンについて楽しく読める漫画コンテストを企画しております。
これは私が何回かツイートさせていただいてるのですが、新型コロナワクチンの仕組みであったりとか、あるいはコロナ禍の大変な生活、そしてワクチンが普及した後のコロナ後の生活に対して期待することみたいなのを、漫画ないし1枚絵のイラストで表現していただいて、こびナビ宛に応募していただければと思っております。
またツイッターの方でも定期的に紹介していきますけれども、いくつか既に応募いただいておりまして、それは随時ツイッターでご紹介させていただければと思っております。
また、審査員がかなり豪華で『Ns'あおい』で長期連載をされていたこしのりょう先生を審査員長に、ホリエモンこと堀江貴文さん、ゆうこすさん、そして『バガボンド』とか『宇宙兄弟』の編集をされていた佐渡島庸平さん、『鬼滅の刃』のゲームを今製作されているゲーム会社の松山洋さんなど、かなり漫画についてお詳しい著名人の方に皆さんが提出された作品を目にしていただけます。
そういったところも漫画やイラストを書くのが好きな方はモチベーションにしていただいて、ぜひチャレンジしていただければなと思っています。
たくさん応募があって盛り上がるとニュースにもなりやすいというところもあって、コロナワクチンに対して関心が高まっている中でポジティブな意見を表明する人が増えてるということを見せていけたらなと思っております。
絵を描くのが好きな人は1枚のイラストでも全く構いませんので、皆さんぜひ応募してください。

こびナビ「コロナマンガ大賞」 公式サイト
https://covnavi.jp/manga/


というところで本日はちょっと長くなってしまいましたけれども、久しぶりに木下が担当した『こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース』ということで、3回目のブースターショットについてお話をさせていただきました。
ご視聴いただいた皆様ご登壇いただいた皆様どうもありがとうございました。
日本の皆さん良い1日をお過ごしください。バイバイ!

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