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新型コロナ陽性者の入院調整、空港検疫について(9月7日こびナビTwitter spacesまとめ)

※こちらの記事は、2021年9月7日時点での情報を基にされています。※

2021年9月7日(火)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:吉村健佑

吉村健佑
おはようございます。

さて、9月7日ですね。こびナビの吉村がお送りします最新医療ニュース、始めたいと思います。
安川先生も来られていますね、おはようございます。

まず最初に感染状況や自治体の取り組みから始めようと思います。
昨夜は岡田先生に招かれて、Instagram の方で話をさせていただきました。

▼こびナビ Instagram Live 21.9.6(アーカイブ)
「コロナ禍のメンタルヘルス まったり相談会」
ホスト:岡田玲緒奈 ゲスト:吉村健佑
https://www.instagram.com/p/CTe7hL4Atz2/

久しぶりに精神科医としてメンタルヘルスの話をさせてもらったのですが、長くこういう緊急事態やコロナ感染拡大の中にいらっしゃると、皆さん環境の変化が大きくて、適応しづらくなって、軽い抑うつや不安などの症状を訴えられる方が多いんだなと感じました。
インスタの方では「またメンタルヘルスの話もしてね」とリクエストをいただきまして、別の機会もありそうです。


【首都圏1都3県の状況と自治体の対応(千葉県の例)】

吉村健佑
さて私は千葉県の対策本部のお手伝いをしていますが、やはり感染者数は徐々に減ってきていますね。
これはとてもいいことで、一時期千葉県で1日1,500~1,600人の陽性者が出ていて「困ったね」という状況だったんですが、今は600~700人というペースに下がってきました。(陽性者数のグラフの)山も半分くらいのサイズになってくると、当然病床の逼迫なども少しは緩和してきてるかなと思います。

ただやはり今入院されている方は県内全体を見渡してだいたい1,000人弱くらい。ホテルに療養されている方は400人くらいで、あと11,000人くらいの方は自宅で療養されています。重要なのは数字そのものではなく、これらの比率なんですね。
陽性者の方のうち、どれくらいの方が入院できているか、ご自身のお住まいの各自治体の比率をご覧ください。
郡部・地方へ行きますと、陽性者のうちほぼ7割入院されている地域もあったりしますが、1都3県・特に首都圏では入院している方が1割を切って、数パーセントです。千葉県ですと約7~9%ですが、これは患者さんをある程度選んで優先順位をつけ、重症の方から順に入院する必要があるというのが1都3県の状況です。

それに対して、例えば神奈川県だと、今朝 NHK のニュースを見てましたら、さらに病床を拡大してコロナ向けの医療提供体制を拡張するため
・公立病院は病床の8.8%
・私立の一般の医療法人は6.8%
これを「コロナ用の病床にしてください」と知事から呼びかけをしました。応じられない場合、ないしは様々な事情でできない場合は、県が設置する、例えば酸素投与の緊急的な救護所のスタッフになってほしいとか、そんな要請も知事から出されていましたね。

我々千葉県では、9月5日から入院待機ステーションが稼動開始しまして、10床でスタートしています。ご自宅などで療養されている方が低酸素状態になられて、救急搬送などを要請されたときに受け入れ先がすぐ見つからない場合は、そこの酸素ステーションで一時期しのげるようになりました。つまり、搬送困難な事例に一旦対応できる場所を作っています。

一昨日からなので、まだ「どんどん使ってるよ」という話はないようですが、今後そういったことがあれば、以前 Twitterスペースでも紹介したとおり「救急車を呼んだけど行き先がないので、酸素投与をして、救急車の中でしばらく待っている」といった状態が起こらないようにしていく体制を各自治体がとっている状況です。

調整を進める上で、行政が制度設計のときに想定してない事例が結構出てきています。例えば「ご自宅で低酸素状態になった全部の患者さんがすぐに入院を希望するか」についてです。
行政・体制としては「当然、本人は苦しいだろうし、医師としても入院先を探して早く入院させてあげたい」と思うかもしれません。
しかし、中にはご自身の希望等で「いやいや、私はちょっと病院は結構です」「そんなにしんどくもないので、自宅にいます」という方もいらっしゃったりするんですね。

この辺はなかなかニュースやテレビには出てこない側面かもしれません。
理由を伺うと「うちの家族の事情で、ちょっといま家を離れられない」だとか、中には「ペットをお世話をする人がいないので入院は少し待って欲しい」とか、そういうご希望が出たりしているようです。

このように、なかなか一般的な制度設計にはまらなかったり、ニュースにならないような状況が現場では当然あって、1件1件調整が必要なんですね。
じゃあそのペットを誰が面倒みるかご相談して「いついつまでにもう一回考えましょう」とかそういったやり取りを、丁寧に保健所の方々や自治体の方々がやっています。以上、千葉県の状況でした。

こんな話をしていたら8分ほど経ちましたけど、どうでしょうか?
ここまでスピーカーの方、コメントや質問はありますか?
こんな現状で日本の自治体は回っています。


【個人的な「入院できない」に対する備えを!】

黑川友哉
吉村先生、ありがとうございます。おはようございます。
これって確かに、自宅療養中に症状が悪化されて、家族やペットの事情で入院できない方はいて、確かに「当たり前だよな」って思いますよね。
いきなり自分が家から消えて大丈夫な家庭って、そんなに多くないと思うんですよ。他の家族の方と一緒に住んでる場合も多いでしょうから。
そういう方って結構いらっしゃるという話でしたが、やっぱりほっとくわけにはいかないじゃないですか。そういう方って、実際に今どういうふうな…保健所の負担が、また大きくなるという理解でいいんですか?

吉村健佑
そうですね。ハッピー・ハイポキシア(低酸素状態だが本人はそんなに苦痛を感じない)の方もいらっしゃるので、医学的な所見で言うと非常にマズイのですが、本人は「結構ケロッとしてるよ、なので入院は…」ということを言ったり、あとは今言ったようなご家庭の事情などで難しい方もいらっしゃいます。そういった方々には、頻回に健康チェックを行いながら様子をうかがいます。

さっき言ったいろいろな事情が「調整されましたか?」とおうちのことを聞いて「今ちょっと相談中です」だとか「今お隣に頼んでる」だとか「ちょっと待ってください」だとか……そんなことを共有し、引き継ぎをしながら、24時間体制で本人さんのフォローをしています。
保健所が行う場合もありますし、県庁の職員が担当する場合もありますが、そういった1件1件に対するエフォートが大きくかかっているよということですね。
どうでしょう? 黒川先生、答えになってます?

黑川友哉
大変ですよね、そうなるとね。
「感染予防策」って、皆さんも本当に耳にタコができるくらい聞き飽きてきているかもしれませんし、重要なことなので皆さん繰り返し叫ばれています。
しかしそれと同時に、陽性になった時にどうするかを考えていただくことも必要だと感じました。

自分が飼っている犬は誰に預けるだとか、子どもの保育園は誰に行ってもらうだとか、遠く離れた両親や義理のお父さん・お母さんに頼れる状態なのかどうかは家庭によって全然違うので、これはさすがに行政がサポートできる範囲を完全に超えていると思うんですよね。
ですから「感染したときのことを意識して準備しておいてくださいね」というメッセージも大事なのかなと思いました。

あまり起きて欲しくはないですが、敢えて意識しないと考えつかないことかなと思います。普段から「地震が起きたときは避難用のバッグを備えましょう」と伝えるのと同じように、そういえば確かに今って災害時なわけだから、そこも考えておかなきゃいけないなと勉強になりました。

吉村健佑
はい、ありがとうございます。
臨床現場で仕事をしていると、患者さんの病状が悪いけれど入院を希望しないことは当たり前にあるわけです。当然そういう事態が現場で行われていることに、少し想像を巡らせてもらえるといいかなと思って紹介しました。

このまま感染者数が下がってきて、多分第5波は少し下りになってきたのかなというところです。
1年間で第1波・第2波・第3波、と合計3波きたんですね。2年目、今年が9月で第5波が終わりかけて、次に第6波が年内に来るのかな? という感じでしょうかね。
第5波までの課題をちゃんと反省したり振り返ったりして第6波に備えましょう、とよく言われますが、ワクチンが行き渡るまではそういう状況が続くのかなと思います。


【水際対策の防人、変異ウイルスも出る「空港検疫」の仕組みとは?】

さあ、今日は次に検疫の話を少しいたします。
実は今お話をしてくれた黑川先生も私も、成田空港検疫所の非常勤の医師・検疫官として仕事もしています。
去年の12月、厚生労働省で働いていたときの仲間から「成田空港検疫所の医師が足りない。ちょっとどなたか行ってくれないか。千葉大からも成田は近いでしょう?」ということで連絡をいただいて。「そうかそうか、仲間が困っているなら、なんとかお手伝いしようか。まずは自分で行ってみて、どんな感じの仕事か確認してから皆さんに声掛けしよう」と考えたのが、検疫の仕事をするようになったきっかけでした。
「コロナが収まるまでちょっと手伝おうか」などというノリで始めたら、あっという間にもう9か月くらいやっているんですね。24時間体制で検疫官として医者が詰めていますので、今でもだいたい月に2回くらい、そのシフトに入っています。

ちょうど9月4・5日の土日に検疫所に行ってきまして、その時もやはり入国者から陽性患者が出て対応しました。空港検疫はあまりニュースになったりしないのですが、これはこれで大事なので、どの辺にやる意味があるのかなど、少し整理して皆さんの意見も聞きたいなと思いました。

まず、空港の検疫がいま、どういう仕組みになっているか簡単に説明します。
外国から日本へ入ってくる方が、日本中の全部の空港を合わせて約3,000人です。以前は全部で2,000人くらいに抑えようとしていたのですが、最近は少し緩和されています。成田空港に入ってくるのが約1,000人、多いときは1,500人を超えますが、それくらいの方が入国されています。

オリンピック・パラリンピックの時はやはり入国者は多かったのですが、それが少し落ち着いて、パラリンピックの方も多くは出国され、オリパラ対応についてはひと山越えたかなという感じです。
原則全件、陰性証明を持った上で入国してもらうのですが、さらに原則全件で唾液の抗原定量でコロナの検査を行います。場合によっては PCR検査を追加して、きちっと全件検査をした上で、陽性が出た場合は、検疫所の準備したホテルに約10~11日間入ってもらいます。陽性の出た検体は、国立感染症研究所などの国の機関に送付して、陽性者の検体も回収します。
ここは結構重要なことで、後からちょっと効いてくるんですが、そのように感染研に対して要請の検体を送ります。

陰性であった場合も、残りの方々に「じゃあ皆さん入国していいですよ」となるかというとそうではありません。国や地域によっては3泊とか6泊とか10泊とか、リスクの高い変異ウイルスの蔓延地域などから来られた方については、陰性であっても健康観察を行います。
例えばアイルランドやギリシャから入国された方は3泊、バングラディシュ・アフガニスタンから来た方は6泊、インドネシア・キルギスから来たら10日間と、定期的に更新されながら決まっていて、陰性であっても検疫所の管理の下で健康観察を行う仕組みになっています。
陰性で待機中の方や入国者の中から、1日だいたい10人とか15人とかの陽性者が出てるんですね。

全国ニュースの中でも、全都道府県の外れたところに「検疫など」という欄ができていて、人数が出るんですよ。
これを見ている人はあまりいないかもしれませんが、この仕事をやっていると結構気になって「あ、今日は10人か、12人か」などの数字をチェックしてしまいます。もし、ニュースを見た時に「検疫など」というのを見つけたら「この人数が吉村が言っていたやつか!」と思い出して、検疫の役割にも光を当てていただければ幸いです。

先ほど陰性証明がないと入国できないとお話ししましたが、検疫の現場で、ワクチン接種の有無による扱いの差は今のところありません。この間の土日も、海外から来られた陽性の方を診察しましたが、ワクチン接種の有無を聞いたら「打ってないよ」と言っていました。
そんな感じで、ワクチン接種の有無では扱いを変えずに健康観察をしていきます。

こういった仕組みで検疫を回して健康管理をしていますが、先ほどの地域の話と重ねて現状を見ていくと、千葉県や東京都などではデルタが8割から9割を占めていて、従来株はほとんど見られないわけですよね。そんな中、ふと空いた時間に「これだけ変異ウイルスが蔓延している状況で、検疫って一体何の意味があるのかな」という考えが浮かびました。
水際対策は検疫法に基づいて行う行為ですから、それはそれで当然法律に準じて行いますが、デルタ株が既にこれだけ国内にある状況で、水際で一生懸命止めて、そもそも公衆衛生としてどんな意味があるのかなと思ったのです。
そして、やはり意味があるなと思った点がありました。

デルタは確かに8割9割と蔓延していますが、例えば先月ラムダ株というのが国内で発見され、報告されたんですよね。ラムダはどこで検出されたかというと、羽田空港なのです。
羽田空港で検体検査を行って、先ほど言った国立感染症研究所などでの検査を経て、新たな変異ウイルスの事例報告がされました。
さらに、9月1日に厚生労働省が発表したのですが「変異ウイルスのミューが国内初確認」というニュースが出ました。
これは NHK のニュースにもなったのですが、6月26日に UAE(アラブ首長国連邦)から成田に入国した40代の女性から、7月5日にイギリスから羽田に入国した50代の男性から、それぞれ検出されたそうです。

ミューそのものの情報はまだまだ少ないのですが、1月頃にコロンビアで報告がされて、その後南米やヨーロッパで次々確認されている変異ウイルスです。
こういった新規のウイルスの症例が国内で確認されるのは、いまのところ、すべて検疫で発見されているんですよね。なので、この点においてはやはり意義があると思います。
これだけデルタが国内に蔓延したとしても、新規の変異ウイルスを発見する「見張り台」、そういう意味で、変異ウイルスの発見機能というのが検疫にはあるんだろうなと感じました。

あともう1個あるとしたら…検疫所で陽性者の方々を一旦ホテルに留め置いているわけですね。
その方々が陽性のまま入国されてしまった場合、変異ウイルスかどうかという型の確認までは空港での唾液抗原定量などではできません。仮に変異ウイルスだった場合、その蔓延を防止するという意味でも、一旦留め置いて健康観察を行う、そして感染性がなくなったことを確認してから、それぞれ入国していただくことは必要なんだろうなと思います。
こういう水際対策についてどんな意義があるか、どんな課題があるか、ぜひ何か教えて欲しいです。

前田陽平先生(Twitterネーム「ひまみみ」)
おはようございます。
ちょっと知りたいんですけれども、陰性証明を持って来て、症状の無い方にスクリーニングをしてるっていうことなんですね?

吉村健佑
ありがとうございます。陰性証明を持って来た方で、症状があってもなくても検査に進みます。

前田陽平先生
ああ、なるほど。症状があって陰性だった場合っていうのはどうなるんですか?

吉村健佑
そうすると基本的に別の疾患ですよね。
入国した時点で、例えば「発熱あるけどコロナ陰性」となった場合は、ほかの可能性を考えて対応します。まれに見つかるのがマラリアやデング熱などですね。

前田陽平先生
やっぱり、本来配慮するべき疾患が見つかるということですね。

吉村健佑
そういった方が見つかったりしますね。はい。

前田陽平先生
なるほど、なるほど。
さっきの質問は、いわゆる偽陰性の可能性を考えた対応とかは、今のところあまり行っていないんですか? ということだったんですけども。

吉村健佑
やっぱり症状があったら慎重に見ていくし、PCR も頻回に実施していて、いわゆる偽陰性が出にくいような検査体制にはなっています。

前田陽平先生
偽陰性の可能性を考えて、また必要に応じて検査を行ってフォローしていると。

吉村健佑
おっしゃるとおりです。

前田陽平先生
あともう1つは、症状がなくて抗原検査とかで陽性になってくる方も、空港で見ていると実際結構いらっしゃるんでしょうか? 症状はないけれど検査で陽性という方。

吉村健佑
当然おられます。

前田陽平先生
要するに、それがいま検疫をしているメインの対象ですか?

吉村健佑
そうですね。
当然症状が出て陽性の方も対象というか意義がありますし、要は無症状だけど感染されているという方が結構いらっしゃるんですよね。とくにワクチン接種した方もそうですし、まだまだ症状が出ていないけれど、検査したら陽性だったというのは、結構いらっしゃいます。
なので、みんな入国した時には「私は元気だ、症状はない」とか「このまま仕事があるから入国させてほしい」とか、そういうやり取りになったりしますよね。

前田陽平先生
なるほど、ありがとうございます。
やはり無症状でも結構引っかかってくるっていうことなんですね。

吉村健佑
そうですね。
多くの場合無症状の方々が陽性として健康管理されています。
前田先生、ご質問くださってありがとうございます。

黑川友哉
吉村先生、オリンピックの時、結構大変でしたよね。

吉村健佑
大変だったねえ、あれねえ。

黑川友哉
症状ないけど陽性で「いやいや、もう数日後にオリンピック本番なんだけど!」みたいな。なんかそういう時の関係者の悲壮感というか……あれはなかなか体験できないなと思いました。

吉村健佑
一応補足しておくと、出場する選手本人は、基本的にオリンピック組織委員会などが管理してくれて、そちらが準備した医療管理・健康管理体制の方へ移行するのですが、同行しているコーチやスタッフ、プレスの方などは、空港検疫所の方で準備したホテルに入っていただきます。
そんな役割分担だったので、結構多くの方がいらっしゃいましたよね。選手だけでなくオリパラ関係者の方が入られたり、コーチの中には過去に世界でメダルを取った一流選手も空港検疫の管理下に置かれて健康観察を受けたりしました。
とりあえずひと山越えられて良かったです。


【ワクチン接種と陰性証明、どうなる?「入国制限や自主隔離の緩和」】

安川康介
僕はアメリカに住んでいるのでぜひ言わせていただきたいのですが、やはりワクチンをうけた方でも2週間の自主隔離があるとか、あと一部の地域から来たら3泊するという決まりもありますよね? あれが非常に敷居が高くて、日本にいない日本人のことも是非考えていただきたいなと思います。
つまり海外に住んでいる日本人は、こういう状況下で家族にも会えない時期がかなり続いています。海外で暮らしている日本人の方は、長く日本に帰っていないので日本に帰りたいんです。

いろいろな国が、例えばアメリカだとワクチン接種完了者と非完了者で扱いを少し変えているんですね。
ワクチン接種完了者の場合は、渡航前の検査で陰性証明が必要だとか、帰ってきてから検査しなきゃいけないだとかは一応ありますが、基本的に自主隔離はせず症状をモニタリングするだけです。
ワクチン接種していない場合は7日間、検査してネガティブだったらその時点で自主隔離がなくなって、検査しない場合は10日間自主隔離という形です。

ワクチン未接種だと日本の扱いに少し近い感じだと思うのですが、接種完了者で、しかも陰性証明がある方に、いつまで2週間隔離を要請するのかっていうのがすごく難しい問題だと思うんですよ。
もちろんデルタだけでなくて、いろいろな変異ウイルスというのは常に起こりうるとは思いますが、ワクチン接種をしっかりして、出発前にPCR検査して陰性証明もあって……という方が感染しているリスクは、結構少ないと思うんですよね。

なので、ぜひワクチン完了者の場合は、少し扱いを変えていただきたいです。そうすると、日本の外に住む日本人のストレスというか、帰る敷居が低くなると思うんですよね。
帰ろうと思っても、2週間隔離で何もできないとなると、なかなか帰れないんです。

前田陽平先生
僕らも海外に出張とか、今の状況だと現実的には行けないですね。
海外に住む友人は安川先生とめっちゃ似たことを言っていて、「日本よりもコロナが流行していない地域から fully vaccinated で陰性証明持って帰ってきて、2週間隔離して、自分のいた国よりも流行している日本にようやく出られるのは、論理的にどうなんだろう」という愚痴をよく聞きます。
「さすがに少しはそういう方向になってきていると思うよ」と話をしてはいるのですが。

谷口俊文
これ、本当にタイムリーな話です。
経団連の方がやはり同じようなことで、入国後の隔離を最長10日間に短縮、接種者は免除にしてくれという提言書を首相官邸で菅首相に渡したと、昨日の夜日経新聞が報じました。「首相は着実にやると応じた」と言っているらしいです。らしいんですけど、どうなることやらという感じで……ただ、もう皆おかしいなということは薄々気付いていて、やはりそういう流れになるんじゃないかなと思いますよね。

吉村健佑
ありがとうございます。
凄いですね。いかに検疫の要件を緩和するかという話で、こんなに盛り上がるとは思いませんでした。先生方、コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、現在の状況に応じて陰性証明、そしてワクチン接種して陰性証明もあり入国時に症状がない、という方について、少し緩和して自主隔離を減らそうということは、もうその通りの、筋の通った公衆衛生的な意見だと思います。

一方で、残念ながら科学的知見だけで検疫の要件が決まっているわけではなくて、いろいろな情勢として、検疫を緩和するというメッセージを今の政府が出せるか? という点があります。
日本は島国で、おそらく背景として検疫を厳しく行う思想があります。例えば、同じ島国のニュージーランドなど、非常に厳しい厳格な検疫を行って、今回の COVID-19 の感染拡大を抑えた事例もありました。

確かに今の状況の日本でそこまでやりますか? って話はあるのが1点と、もう1つはやはり、ちょうど総裁選挙や衆議院選の目前なんですよね。
検疫の要件を緩和するというメッセージを出したときに、それが果たして正確に理解され、ポジティブに支持されるかというと、いま言ったような若干複雑な背景もあり、なかなかそこまで説明しきれないのではないか。そこから、少し対応が後手に回りがちなのかな、という気がしています。
かと言って、そのままでいいと言ってるわけではありません。やはり現状に沿って要件を緩和し、合理的に運用して欲しいという思いは私も同じです。悩ましいですが、様々な情勢の影響もあるのかと現場に行って感じます。

周辺の検疫官に「どう思いますか?」という話はしています。
「これ、どこまでやりますかね?」とか「これ、状況が厳しすぎますよね」という話をすると、やはり多くの方は同意されます。
デルタがこれだけ蔓延している状況であれば、そこに対応する部分については緩和していく必要があります。新規の変異ウイルスへの対応については当然意義は残るのですが、もう少しシンプルに、動きやすくして経済活動との両立を図ることが必要と思います。

さらに言うと、検疫官もダイヤモンドプリンセスから始まった長期間の対応に疲れているんですね。なので、そろそろ緩和や合理化に向けた議論をして欲しいと感じます。
すみません、両論併記的な解説になってしまいましたが、現場の状況です。
安川先生も、安心して帰国できるような環境が整うといいですね。

安川康介
日本に帰りたいです。

吉村健佑
安川先生、お会いしたいですね!
実はまだ会ったことない(笑)

安川康介
峰先生と内田先生以外、こびナビのメンバーに会ったことないですね。

吉村健佑
そうなんですね(笑)
私も、峰先生とも内田舞先生ともお会いしたことないですからね。
木下先生とは1回だけお会いしました。
こびナビのメンバーも、そろそろ1回くらい会いたいなと思っていますけど……。

黑川友哉
僕、吉村先生の近くにいるはずなのに、それでもほとんどお会いしないですよ。

吉村健佑
そうですね(笑)
あんまり会っていないですね。
すみません、最後ちょっと雑談っぽくなっちゃいました。

今日はこびナビの吉村が、首都圏の感染状況や自治体の対応の話をしたのと、後半は水際対策、空港検疫所の勤務から、検疫の意義や緩和の方策について、皆さんと意見交換できました。楽しい時間でした。ありがとうございました。

さて今日は結構天気が良いですね。
みなさん今日1日はじまると思いますが、私も頑張っていきたいと思います。
いい1日にして行きましょう。ご視聴ありがとうございました。
じゃあね、バイバイ!

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