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12歳未満のワクチン接種、子供へのワクチン接種量について議論しました(10月1日こびナビTwitter spacesまとめ)

※こちらの記事は、2021年10月1日時点での情報を基にされています。※

2021年10月1日(金)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:岡田玲緒奈


岡田玲緒奈
おはようございます。
安川先生、お久しぶりじゃないですか?

安川康介
おはようございます。お久しぶりです。
内田先生、元気ですか?

内田舞
元気ですよ。安川先生元気ですか?

安川康介
お誕生日、おめでとうございます。

内田舞
あは! どうもありがとうございます。

安川康介
ええと……誕生日会しなくて、Twitterスペースに出ていていいんですか?

内田舞
大丈夫、大丈夫。週末に家族で祝うことにしてます。

安川康介
何するの?

内田舞
うちの長男が私に帽子をプレゼントしたいらしくて、白い帽子を買って、そこに兄弟みんなで絵を描くそうです。

安川康介
へー、帽子に? ベースボールキャップみたいな?

内田舞
そう、まさにベースボールキャップ。

安川康介
へええ……可愛い。どんな絵を描くのか興味深いです。

内田舞
私も気になりますね😊

岡田玲緒奈
今日でしたっけ? 昨日?

内田舞
アメリカの今日、日本の昨日ですね。

岡田玲緒奈
おめでとうございます。
安川先生、元気ですか?

安川康介
元気です元気です。

岡田玲緒奈
最近 Twitter にもなかなか登場しないから。


ポイントオブケア超音波/医療を変えるエコー

安川康介
最近ツイートしてないですね。昨日と今日は超音波(=超音波検査。通称エコー)を教えています。「ポイントオブケア超音波」というものです。

今お聴きの方に従来の超音波の流れを説明しますと、

患者さんを診ている医者が超音波をオーダーする
→超音波を循環器内科の先生や検査技師の方が行う
→それについて放射線科の先生が報告書を作成する
→オーダーした医師に報告書が返ってくる

アメリカではこのような流れが一般的でした。しかし最近は、担当している主治医自身がベッドサイドで患者さんに超音波を行い、診療方針を立てていく流れが加速しています。これを「ポイントオブケア超音波」といいますが、今後の医療を変えていくほどの大きな変化だと考えています。僕はたまにそれを指導していて、昨日と今日は、アメリカ人の内科医と麻酔科医に心臓や肺の診かたなどを教えていました。

岡田玲緒奈
なるほど、ええと、今までと何が違うんですか?
(註: 後述の通り、日本では主治医がベッドサイドでやるケースも以前から普通にあるため戸惑っている)

内田舞
ポータブルなエコーなんですよね。持ち歩いて病室の中でポンってやるような。

安川康介
そうなんですよ。ポケット・ウルトラサウンドとかも言いますが、ポケットに入るサイズで、プローブだけが iPhone などに繋げられるようになって、その場で超音波検査が可能になりました。すごい便利になっていて。あとは、フジフィルムのソノサイトという、ラップトップ系の超音波を普通にベッドサイドに持って行ってやったりとかですね。
今後、医学教育にもアメリカではどんどん取り入れられて、医学生が入学したときに全員に超音波を配るみたいな医学部もあるんですよ。

前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生
聴診する感覚でエコーをしちゃう感じですね。それで方針立てちゃうみたいな。

安川康介
そう! そうなんですよ。だからもう聴診器がいらなくなるんじゃないかっていうぐらい。

前田陽平先生
おーっと、それはそれでまた過激な(笑)

内田舞
あと、発展途上国での医療で役立つのではないかと言われていますね。大きな機械が要らないし、簡単にできるものっていうことで。

安川康介
そうなんです。まさに僕は去年の3月に、ナミビアに教えに行っていたんですよ。それは超音波検査をする技師さんとかが少なくて、臨床医の人がその場でできたらいろいろ役に立つので。

前田陽平先生
それだったらすごいですよね。CT とか無くても遠隔で「心臓あやしいけどわかんないから、ちょっと循環器のプロに診てもらおう」とエコーをそのまま同時中継したりとか、そういう可能性もありますよね。

安川康介
そうですね。クリップ(画像)取って、どっかクラウドみたいに上げて、アドバイスを聞いたり……まあ、その人ができるようになれば、要らないんですよね。

本当に基本的な心臓・肺・胸水・腹部・大動脈・静脈・腎臓・膀胱の検査ならば習熟するのにそんなに時間がかからないので、みっちり教えれば、ある程度みんなできるようになるんで、それをやるとすごく役に立つんですよね。

途上国だと特に、例えばリウマチ熱っていって、まあ日本だともう見られないと思うんですけれども、バイ菌に感染して、僧帽弁というのがやられて、20代とかで本当に末期の心不全になっている人とかも本当にたくさんいたりですね。他にも結核がすごい多いんで、結核で胸水がたまったりとか、腹部のリンパ節が腫れたりとかしてですね。

結核ってなかなか診断がつかなかったりするんですけども、そういう超音波を組み合わせることで、診断しやすいとか、ポイントオブケア超音波は、今後、日本の医学教育でもどんどん広まっていくんじゃないかなと思っています。

岡田玲緒奈
これ、ポイントは携帯性なんですか? 要は日本だと普通に内科医というか主治医が、デカい機械のことも多いですけど、病室までエコーを引きずって行ってやるわけですよ。僕もつい最近も冠動脈のエコーしてましたけど、なんで冠動脈をみるためだけにこのデカいの持って行かなあかんねんみたいな感じが解決するってこと?

安川康介
あ、いやいや、ベッドサイドで実際に担当している医者がやればもうポイントオブケア超音波なんで、岡田先生がやってることはまさにポイントオブケア超音波だと思うんですよ。ただ、アメリカだと、専門性が分かれてたりとか、一般の内科医が心臓を超音波で見るとかって、あんまりないんですよね。循環器内科でトレーニングを受けている人に来てもらってやるとか、検査技師さんがやるっていうのが一般的だったんで、それを診療している医者本人がもうやろうっていうのが、ポイントオブケア超音波ですかね。

中には、例えば今、集中治療とかだと、集中治療医が自分でやる人がすごく増えていて、多分循環器の方よりも上手い集中治療医がいたりします。特殊なドップラーを使って計測したりとかっていうのも非常に盛んになってきていて、大きく変化がある領域です。

すいません、9分経っちゃったんで別の話に行きましょう!


どうなる? 12歳未満のワクチン接種

岡田玲緒奈
ということで、今日のネタはですね、ニューヨーク・タイムズが12歳未満の新型コロナワクチンについてまとめてくれた記事をご紹介します。

▼Vaccines for Young Kids?
https://www.nytimes.com/2021/09/22/us/vaccines-for-young-kids.html
出典:The New York Times 2021/9/22

ファイザー/ビオンテック社新型コロナワクチンの、5-11歳に対する臨床試験のデータが FDA(アメリカ食品医薬品局)に提出されました。このあたりの話も進んでいくのかなということで取り上げました。このあたりの経緯と今後の展望・展開については内田先生のツイートを見てください。

▼Mai Uchida, M.D.(内田舞) @mai_uchida
https://twitter.com/mai_uchida/status/1442892912321200130?s=21
Twitter 2021/9/29

そういうわけで、内田先生が最後に書いてくださっていたように、ハロウィン、要は10月末ごろには緊急使用許可が出て、この年代の子どもたちがワクチンを接種できるようになるのではないかと言われています。

さて、記事の方は、アメリカで実際どう進んでいくかという内容なのですが、「早く欲しい」と言っている親がいる一方で、もちろん抵抗感のある親もいます。アメリカでも。

現時点では日本と同様に、アメリカでも12-15歳は新型コロナウイルスの予防接種を受けられるわけですが、この年代は40%くらいしか fully vaccinated となっていません。成人は66%なので、ちょっと低くなっています。世論調査では、やはり子どもの年齢が低くなるにつれて、親の抵抗感が増すということです。

この件について、感情としてはわからんでもないというか、わかりたいとは思うのですが、16歳でOKのものが、なぜ12歳でダメかと考えちゃうと、僕は個人的には「うーん」となってしまうところがありまして。まあ乳児にも、というかむしろ乳児に、大人にできないような強力な治療をする変わった専門を持っていることも、この考え方に少なからず関係しているような気はしています。

この辺りの感覚について、何かよさげなコメントいただけませんか。
じゃあ、これは「困った時の安川先生」を久々に発動してみますか。

安川康介
ええと、「良さげな」というのは、12歳未満の話ですか?

岡田玲緒奈
つまり、年齢が下がるにつれて抵抗感が増すことについて、本当にそんなに「わかるわかる!」っていうことか?というところを伺いたいです。

安川康介
ああ、なるほど。

やはり子どもへのリスクを回避したい思いが強いからじゃないですかね。自分というよりも、最終的に決断するのは大人なわけじゃないですか。つまり、その大人は自分自身の決断をするのではなく自分の子どもの決断をするので、やはり少しでもリスクがあるなら避けたいという心理が働いていることが、まず1つあります。

もう1つは、大人よりもまだ受けている人数が少ない、今回の5-11歳というのは、2268人のうちの2/3が接種したので、千数百人のデータなので、もっとこう稀な副反応がどれぐらいの頻度で起きるのか、様子見たいっていう人が多いのだと思います。

あとは、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクは、やはり高齢の方や基礎疾患を持った方が多いので、リスクとベネフィットのバランスを考えて、どれぐらいベネフィットがあるんだろうと躊躇しているという、それくらいだと思うんですよね。

4割といっても、州によっては大人と同じくらいの割合で打っていたりします。アメリカ全体でならすとその程度のパーセンテージですが、地域によっては12歳以上の大半が打っているところもあるということは、お伝えしておこうかなと思いました。

岡田玲緒奈
そうですね。ありがとうございます。安川先生に喋らせると先の内容をほとんどしゃべられちゃって危険だというのを、久々にやって思い出しました。

安川康介
僕に当てないでください!(笑)

岡田玲緒奈
あらかた先に言われた上に、考えてあったいい喩えまでかぶるっていう、最悪な事態になることもあるんですよ。

おっしゃった通り、子どもの臨床試験の規模は、やはり成人のものより小さいです。成人の臨床試験は、皆さんご存知の通り万の単位の参加者ですが、子どもについては千の単位の参加者で、比較すると少ないと言えます。また、子どもの重症化率の低さが、このリスクとベネフィットの評価を難しくしています。

この人数の問題で、「あと数百万人くらい打ってから自分の子どもに打つか決めるわ」というコメントも掲載されていました。これも「感情としてはわからんでもない」の案件ですが、皆がそう言ったら譲りあっちゃって進まないことについてはどう考えてるんだろう?と思うわけです。

集団免疫の閾値が何パーセントみたいな話は、僕はほとんどしないのですが、なぜかというと「で、それを聞いてあなたはどうするの?」という話なのであんまりしたくないんです。
もちろんこれは「だから打ちなさいよ」と言っているわけでなく、もっと純粋な疑問として「誰か打つだろう」という気持ちなのか、どういうつもりなんだろうという疑問が、いつもあるのです。

一応制度上必要な設定で臨床試験は行われているわけですから、ごく稀な副反応は、たくさんの人に打たないとわかりません。臨床試験の規模では見つからなかったということになりますから。

まあ、こんな感じで答えがなかったり、理屈では割り切れない部分というのを皆さんと一緒に考えていきたいなと今日は思っております。今言っていたような「他の人が打てばいいのか」という話について、この辺り内田先生どうですか?

内田舞
実際問題は、おそらくアメリカから始まるとは思うので、世界の他の国に住んでいらっしゃる方、特に日本の親御さんは、他の国の様子を見てから決められる余裕はあるのではないでしょうか。大人の接種もそうだったかと思います。その気持ちはわからなくはないですね。

さっき質問で、小さい子に医学的な介入をすることについて、何か躊躇する気持ちがあるのは、私自身も親としてわかります。例えば、痛み止めなどでも大人だったら「うん、頭痛あるのね。じゃあこれ飲みましょう」と言うところを、子どもだと「これ、今飲ませていいのかな」と悩むような、そんな感覚なんだろうなと思います。

しかし、ワクチンに関しては、大人以上に子どもの方が打ってますよね(笑)
新型コロナワクチンではなくて…

岡田玲緒奈
他のワクチンということですね。

内田舞
そうそうそう。他の予防接種という点で、四種混合だったりとか。2か月健診からほぼ毎回、健診の時に赤ちゃんはいろいろな予防接種を打っていくので、予防接種については育っていく中である程度必要な物という捉え方をしてもいいのかな、と思うところはあります。

でも、確かにこのワクチンに関しては、まだデータが世界的に無いということで、様子を見たいという気持ちは分かります。ちなみに安川先生がおっしゃったように、アメリカの中で地域差はあります。

私が住んでいるボストン界隈では、12歳以上は全体の約99%がワクチンを接種しているので、周りのご家族を見ていると、大抵12歳の誕生日の日にワクチン会場で打っています。ワクチン会場というか、こちらでは薬局で打てるので、薬局で新型コロナワクチンの接種を受けている状況です。

また、私の子どもたちがかかっている小児科のクリニックからのメッセージでも、常に「いま何歳以上のワクチンの状況はこんな感じです」というアップデートが送られてきます。
この5-11歳のワクチン接種に関しても、「なるべく早く皆さんのもとにワクチンが届けられるように、私たちも本当に願っています」という感じのメッセージですし、「予約はこちらです」って、まだできないんですけど、既に予約したい親がたくさんいます。
メッセージ的には「打てる年齢になったら皆さん打ってください」というのが、小児科医から発信されているメッセージですね。

また、アメリカの中で学校に対面で行くためには、12才以上では、学校区がワクチンを義務化する動きがある地区もあります。私が住んでいるマサチューセッツの中でも、いくつかの学校区が義務化を決めました。なので、12月までに打たないと対面では学校に来れませんよということらしいです。アメリカ国内ではロサンゼルスが1番最初にそれを決めました。このように、子どもの接種は意義あるものと捉えられていますね。

岡田玲緒奈
ありがとうございます。毎回驚くのですが、接種可能年齢の人全体で99%接種を完了している地域もあるということで、いかにアメリカの抱える分断が大きいかを感じさせられます。アメリカには、余力というか、そのくらいに到達できるキャパシティがあるにもかかわらず、全体としてはなかなか進んでないところもあるということですよね。

内田舞
そうですね。今はもう残念ながらワクチンが余っちゃってるのが現状です。この余っちゃった分を、発展途上国などに送れたらどんなにいいことだろうと、いっつも思っています。

岡田玲緒奈
本当にそうですね。低温保存の問題などがあるので、なかなかハードルが高い部分もありますが。

では、子どもたちにワクチンを打つことにどういう効果があるかを考えていきます。もちろん、本人を守る効果はあるわけですけど。

アメリカには5-11歳の子どもが2800万人いて、12-15歳の1700万人と比べても遥かに多いですから、この年代に接種が進むと、全体の接種率に寄与する割合は大きいです。

また、今やアメリカでは新規発症者の5分の1が小児で、小児の入院者数もかつてない水準になっていますから、ワクチン接種はやはり急いだ方がいいということになるわけです。

先ほど内田先生もおっしゃっていましたが、ロサンゼルスは12歳以上でのワクチン接種を義務化しています。ワシントンD.C. はもう少しマイルドですが、学校などで働く大人と、学生アスリート……これは運動部ガチ勢の人という感じですか? プロになるような人たちっていうことなんですかね?

安川康介
いや、たぶん課外活動ですね。

岡田玲緒奈
じゃあ、普通に部活をやってるような人ってこと?

安川康介
多分、サッカーやってる子どもとか、そういうのが入ってくるんじゃないかなと思います。

岡田玲緒奈
なるほど。思ったより対象範囲が広いな。

これは11月1日までに fully vaccinated にならなければなりません。ただ、ロサンゼルスはリモート授業の選択肢がしっかりあるようで、義務化といっても、どうしても嫌なら接種させない手があるようです。しかし、リモートをあまりやっていないニューヨークやシカゴでは、親が拒否すると選択肢がかなり狭まってしまいます。ここまでがこの年代のワクチンの話です。

この後は学校の管理的な問題になっていきますが、ここについても少しお話しいたします。いま日本でも「ワクチン検査パッケージ」という話が出始めていますので、関係あるかなと思います。

アメリカは感染者数も多いので、学校で感染者が出て、濃厚接触者の生徒はみんな2週間休み!! とかやってると、すごい数になってしまいます。それで、”test-to-stay” プロトコルという、濃厚接触者も毎日検査を受けて、陰性である限り学校に通い続けて良いという取り組みを始めています。

具体的には、濃厚接触者になった生徒は始業前に検査を受けて、陰性だったら教室に行けるようなんですが、これ学校で検査してるんですかね?? ご存知ですか?

安川康介
学校によっても違うのですが、例えば僕の郡の小学校だと、症状がある子に、学校で迅速抗原検査ができるようになっています。その場で結果がわかるので、陰性ならそのまま登校しますが、一応 PCR検査も出します。PCR検査の結果が戻ってくるのは少し時間がかかるので、後でその結果をチェックします。多分、ここは郡によって違ってくるかなと思います。

岡田玲緒奈
これ、(検体採取は)鼻ですか?

安川康介
鼻です。

岡田玲緒奈
誰がやるんですか?

安川康介
学校にいるナースとかじゃないですかね。

内田舞
基本的に保健室のナースだと思います。あと、親がやる場合もありますね。学校に着いたところで親が綿棒でくるくるくるっと鼻の粘液を集めて試験管に入れてポンって提出する感じです。うちの子どもたちが通う学校も ”test-to-stay” プロトコルに参加していて、まさに安川先生がおっしゃったようなシステムでやっています。

岡田玲緒奈
じゃあ基本的には、これは抗原定性検査だということになりますね。

安川康介
基本的にはそうだと思います。なぜこういうのをやっているかというと、症状が出ている子を休ませて、その他の子も休ませて…とやっていると、公教育に大きな影響があります。その影響を最小限に抑えるため、休ませる子をできるだけ少なくするためにどうしたらいいのかを考えてやっています。

抗原検査の感度の問題で、実際に新型コロナウイルスに感染していても陽性に出る確率はそんなに高くありません。いろいろ医学的には批判がありますが、なんとか学業自体にあまり影響がないように、こういう検査をやっていると理解しています。

岡田玲緒奈
ありがとうございます。

ジョージア州の一地域では、8月3日~20日の期間に学校に関係する陽性者が51人出て、1000人が濃厚接触者として隔離されてしまっています。そのようなわけで、こういう新しいやり方 ”test-to-stay” プロトコルを9月になって導入したというのが、具体例として上がっていました。

実は CDC(アメリカ疾病予防管理センター)はこのやり方の効果についてはエビデンス不足と言っていて、fully vaccinated でない濃厚接触者は、これまで通り14日間自己隔離するよう推奨しています。

しかし、色々な研究結果が出て来ていて、 ”test-to-stay” プロトコルでは、きっちり隔離するのと比べて感染者数は変わらないとか、 ”test-to-stay” プロトコルの検査で陽性になったのは13,809人のうち0.7%で、裏返すと「その人たちをみんな隔離するのはどうなんだ」という話とか、色々あるわけです。

ということで後半では ”test-to-stay” プロトコルについて触れました。抗原定性検査となると、無症状期に抗原定性検査を行うことの感度の問題などがあり、このプロトコルのコスト-ベネフィットも含め、確かに、なかなか議論があるところです。

こんな感じで今日は終わっちゃうんですけど、日本では5-11歳のところはどうなっていきますかね? アメリカでこの年齢の子どもへの接種が十分進んでからになるのか、12-15歳のようにアメリカの緊急使用許可が出て比較的速やかに可能になるのか。この辺り、全然予想もつきませんが、公的機関の発信を見ながら考えていく感じになるのかなと思っています。

まあ、10代、つまり12-15歳に関しては、日本でも思いのほか接種が進んでいますね。SNS等を見ていると、いろいろな声を聞きますが、実社会では淡々と進んでいる感じです。外来で聞いても「こないだ打ちました」とか「来週打ちます」とかいう子も結構いて、「なんか結構進んでんだな」と感じています。

ということで、何かコメントある先生いらっしゃいますか?

内田舞
”test-to-stay” プロトコルもその1つですが、とにかくアメリカでは、子どもたちをできるだけ対面で学校に通わせてあげようという動きが非常に強い印象です。それはやはり、アメリカの感染状況がどの国と比べても最悪だったことに起因します。学校に行けなかった子どもたちの数も、学校へ行けなかった期間も、おそらくほかの国と比べても多く、長くなってしまいました。子どもが学校に行けない影響に関しては、子どもだけでなくその家族に対しても、ものすごく重く出てきてしまっているんですね。

日本での学級閉鎖の期間がアメリカより短かったとしても、その期間に失った機会がたくさんあります。行事ができなかったこと、修学旅行に行けなかったこと、子どもの学校が閉まっている間に親が家から一生懸命リモートワークをしようと頑張ってもできなかったこと、そんな状況があって、言葉にはならないような相当な影響が出ていると思うんですね。

そういった影響も、やはり無視できないものです。ワクチン接種する/しないに関して、よく感染リスクに関することがメインで話されます。もちろんそれはメインで話されるべきですが、感染拡大が続くとか、感染しうる人がこれだけいて感染が続いてしまうのは、どんなに重症化リスクがそこまで高くなくても、二次的な被害が常に出ていることを忘れてはなりません。そういった点も考えながらのワクチン接種の推奨だったり、接種するかしないかの判断なんじゃないかなと私は思っています。

岡田玲緒奈
ありがとうございます。感染症なので、やはり周りへの影響や、隔離の必要性、全体的な学級閉鎖を含めて、学校の活動を止めなきゃいけないとか、さまざまな影響を考えながら、ワクチン接種も含め、感染対策というのものの価値を検討していかなきゃいけないということですね。

うまくバランスをとりながら考えていく必要がありますし、そういった判断の手助けになる情報を発信していきたいですね。

安川康介
もう子どもの用量の話はしてあるんですか? どういう結果が出たかとか。

岡田玲緒奈
これねえ、内田先生のツイートを見ることになってます(笑)


小児の新型コロナワクチンの接種量はどう決める?

安川康介
ああ、なるほど。なんか宿題的な。

一応、読んでいない方のためにお話しすると、ファイザー社の新型コロナワクチンについて
・12歳-成人の主成分量は30μg(マイクログラム)
・5-11歳は10μg 成人の1/3量
・いずれも21日あけて2回打つ
・接種後の抗体量は16-25歳と5-11歳とで大体同じだった
・副反応の頻度もあまり差はなかった
ということですが、一応プレスリリースなので、もう少し細かいデータは今後公表されると思います。

それ以下の子どもの臨床試験も今やっていて、
・生後6か月~5歳の子は 3μg で臨床試験中
・この結果は今年の終わり頃に出るだろう
・問題がなければ申請するだろう
ということなので、アメリカでは、来年初頭ごろには、もしかしたら生後6か月以上、つまり、アメリカ国内のほとんどの人がワクチンを打てる状況になるかもしれません。

日本の動きは大体アメリカに追従している感じなので、日本国内でも、もしかしたらもっと若い子どもにも接種可能になるかもしれません。

岡田玲緒奈
ありがとうございます。アメリカの話を見ていていつも思うのは、大前提として「大人が打てや!」ということです。下の年代がなんだかんだと言う前に、打てる大人は打って欲しいなと思うんですけどね。

いま、安川先生から5-11歳のワクチン投与量が成人の1/3という話がありましたが、なぜこの話に今回敢えてふれなかったかと言うと、この話をするとどうしても「じゃあ12歳と11歳の違いはなんだ」と訊かれることがあるからです。これは何が違うかというと、要は臨床試験のセッティングですね。どこかの年齢では区切る必要がありますので、ファイザーに関しては12-15歳、モデルナの場合は12-17歳で臨床試験をして、そこで有効性と安全性が確認されているという結果をもって、12-15歳は大人と同じ30μgで設定されているわけです。

内田先生のツイートにもありましたが、第3相より手前の臨床試験で下の年代、5-11歳に関しては成人の1/3量(10μg)で十分だろうということで、その量で臨床試験を行い、有効性と安全性が問題なさそうということで、この投与量になっているわけです。なので、別に11歳11か月と12歳で何か生物学的に違うということではなく、臨床試験をその設定でやって、データがとれているのでそれに従うということです。そんな説明でよいでしょうか?

内田舞
いいと思います。

まず春に子どもの臨床試験が始まったとき、お子さんでその親御さんと子どもが同意した方で、3つの異なる量を子どもに打ってみて、その後ワクチンに反応してどのくらいの抗体が作られるかが一番最初に調べられたんですね。

なるべく低用量で大人と同じ抗体価が得られるように設定しようということで、臨床試験の結果を見て、5-11歳は大人の1/3量に決まりました。

その後に、プラセボを用いたランダム化比較試験がありました。グループのうち、ランダムに2/3の方々がワクチンを打ち、1/3の方々はプラセボを打つという臨床試験が行われたのです。

今回発表されたのは、その臨床試験の中で大人の1/3の量のワクチンを接種した5-11歳のお子さんたちのデータです。2千数百人の子たちで、大人と同じだけの抗体価が得られるかどうかを調べ、その際に大きな副反応や、この歳に特化した副反応があるかを調査した臨床試験だったんですね。プレスリリースではその量で、
・全員大人と同じような抗体価が得られた
・安全性に関しても、大人と同じような副反応が見られた
ということでしたので、安心材料ではあります。しかし、これからもっと詳細なデータが発表され、その後 FDA でも CDC でもかなり厳しく審査されますので、その結果にも注目したいと思います。

岡田玲緒奈
ありがとうございます。結局、詳細な解説を加えて、9時を過ぎてしまいました。皆さん、おわかりいただけたかなと思います。というわけで、10分を過ぎようとしていますので、今日はこのあたりにしたいと思います。

来週はちょっとね、不規則なんですよね。来週は火・木にこびナビTwitterスペースを開催します。こんな感じで少し頻度が下がりますので、こびナビの公式アカウントの発信で日付をチェックしていただければ幸いです。

また、今日はばりすた先生とお話しできなかったのですが、ばりすた先生が昨日の深夜から今朝にかけて、コロナ後遺症と呼ばれているものに関して非常に面白い……面白いと言っていいのかな? 検討をされておりまして、朝から「さすが! ばりすた先生」と思って読んでいました。

▼ばりすた先生のコロナ後遺症に関する連続ツイートトップ
https://twitter.com/bar1star/status/1443614247259295748?s=20
Twitter ばりすた☕脳神経内科医 @bar1star 2021.10.1

第5波の後ということもあり、今後、後遺症の話はきっと、適切・不適切に関わらず、さまざまな形で出てきます。それを読み解く上で、1つ大事な視点ですので、ぜひ皆さんもご覧ください。…と勝手に宣伝しておきました。

今日は関東の方は台風で大変そうですが、どうか皆さんお足元にお気を付けください。コロナだけでなく、さまざまな自然…災害にまではならないで欲しいのですが、これにも気を付けてお過ごしいただければと思います。それでは皆さん今日もありがとうございました。よい週末をお迎えください。

安川康介
ありがとうございました。内田先生、お誕生日おめでとうございます。

岡田玲緒奈
おめでとうございます。

内田舞
ありがとう!(笑)

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