見出し画像

12-15歳での子供のワクチン接種について議論しました(9月6日こびナビTwitter spacesまとめ)

※こちらの記事は、2021年9月6日時点での情報を基にされています。※

2021年9月6日(月)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:木下喬弘

木下喬弘
おはようございます。

黑川友哉
おはようございます。

木下喬弘
黑川先生、どうですか?

黑川友哉
今日は寝坊しましたね。
やっぱり最近はですね、朝4時ぐらいに起きて、なんかいろいろ作業しているんですけど。
なんかそのリズムに慣れると、日曜日にこびナビの会議とかがあって11時半ぐらいまで起きていると、なんかちょっとこうリズムが狂っちゃいますよね。

木下喬弘
なるほど。
内田先生はどうですか?

内田舞
こちらは今、夜の7時半なんですけれども、ボストンで。
今週末は Labor Day(労働者の日・9月の第1月曜日)で3連休なんですね。

そして、アメリカでは9月が年度初めになるので、楽しみなのは、月曜日の Labor Day の次の日の火曜日がうちの息子の1年生で小学校デビューですね。それに向けて一家で盛り上がっております。

木下喬弘
おお、いいですね。
おめでとうございます。

内田舞
ありがとうございます。

木下喬弘
はい、ありがとうございます。
安川先生と遠藤先生も入ってきていただきましたので、ぼちぼち始めていきたいと思います。


To vaccinate or not to vaccinate.That is the question for kids.
「子どもって何歳?」という定義から

木下喬弘
今日はですね、もうタイトルにある通りで。
シェイクスピアが好きな教養のある私としてはですね、こういうタイトルを付けざるを得なかったということになるわけですけれども。

〈注〉シェイクスピアの戯曲「ハムレット」で主人公が苦悩のあまり呟く「To be,or not to be: that is the question」、日本でも「生か、死か。それが疑問だ」、「生きるべきか、死ぬべきか。そこが問題だ」などさまざまに翻訳された「世界で一番有名なセリフ」をもじった(らしい)。

「子どもにワクチンを打つべきかどうか?」というところで、これ結構難しいところなんですが、まあどういう風に考えていくべきなのかっていうことを議論していきたいと思います。
安川先生。

安川康介
はい。

木下喬弘
子どもって何歳なんですか?

安川康介
子ども、だいたい18歳未満。

木下喬弘
なるほど。

安川康介
どう定義するかによりますよね。20代未満とか。

木下喬弘
そうなんですね。

安川康介
一応米国だと「18歳未満」が1つの区切りになるかなと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
内田先生も同じでいいですかね。

内田舞
そうですね。
18歳未満がアメリカの中では子どもと定義されます。

でも、よく child(~11歳) と adolescent(12~18歳) とで分かれているところはあって。
adolescent(12~18歳)は直訳すると「思春期」っですかね。12歳未満が child って言われていますね。

木下喬弘
なるほど。
12歳から18歳が adolescent 。

内田舞
そうですね。

木下喬弘
19歳は? 

内田舞
19歳はですね、adult で。
でも、transitional age youth(18~24歳)っていわれたりもします。
子どもから大人になる過渡期の transition中の年代の若者ということですね。あとは young adult といわれたりもしますね。

木下喬弘
ありがとうございます。
岡田先生、どうですか? 子どもって何歳なんですか? 日本では。

岡田玲緒奈
日本ではっていうか、「小児科」が診るのは、多くは中学生15歳までですかね。
高校に入ったら小児科じゃない区切りになっているところが多いと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。私も実は同じ認識です。

ということでですね、まず「子どもにワクチンを打つべきかどうか」っていうことを議論する時、子どもって一体何歳やねんっていうことをきっちりしないといけないと思うんですよね。

ファイザーのワクチンに関しては、第3相試験を16歳以上でやっていて。
アメリカでも、もうこの年代には完璧にどんどん打っていって、データも蓄積してるわけですから。特別懸念はないと思うので。
16歳以上ってワクチン推奨というかですね、「接種してもらって大丈夫です」っていうふうに言っても大丈夫だと思うんです。

「子どもってワクチン打った方がいいですか? 」って質問をされている方って、それを16歳以上と思って聞いているのか、12~15歳と思って聞いているのか、11歳以下だと思って聞いているのか、人によって結構まちまちなんだと思うんですよね。
それに対して一言で答えるっていうのは不可能なので、そこをまずちょっと注意していきたいと思います。

今日は子どもの中でも12~15歳の話をしていきたいと思います。


登壇者それぞれに聞く「子どもへの接種」をどう考える?

木下喬弘
皆さんですね、登壇している方々には一応お聞きしたいんですけれど、皆さんは12~15歳ではワクチンを打った方がいいと思いますか?
これ順番にちょっと聞いていきたいと思いますけど、まずじゃあ前田先生お願いできます? 

前田陽平先生(Twitterネーム「ひまみみ」先生)
いきなり僕ですか?
そうですね。これってかなり難しい質問だと思うんですよ。
まず「周りの大人が打っている」っていう前提の中でっていうことであれば、原則論としてはやっぱり打った方がいいんじゃないかなっていう風に思うんですけれども。

木下喬弘
ありがとうございます。

前田陽平先生
まあ原則としてはそうですね。

木下喬弘
安川先生、どうですか? 

安川康介
うーん、これは多分その感染流行状況とか、その子どもとか、あと家族構成とか、その子どもがどういう大人と接する機会があるのかとか、どのワクチンにするのかによって、ちょっと変わってくると僕は思っているんですね。

木下喬弘
なるほど。

安川康介
つまり簡単な話を言ってしまうと、周りの大人が全員接種していて、感染がもうある程度、かなり抑え込められている社会の中ではですね、ベネフィットっていうのがすごく少なくなるので接種しないという選択肢ももしかしたら出てくるかもしれませんし。

かなり流行状況が続いている、他には、子供に基礎疾患がある、その子ども自身は重症化しないですけども、周りの大人で免疫不全の方がいて、かかったら亡くなってしまう可能性があるとかですね。そういう方がいる場合は、子どもでも接種した方がメリットは大きいという風に考えられますし。

すごくいろいろな因子を含んだ式でですね、ブースターをするべきかどうかという議論でもしたと思うんですけども。
いろいろな変数がある式だと思うので、子どもは受けるべきか受けないべきか、Yes or No みたいな感じでハムレットみたいに答えるのはちょっと難しいかなと思います。

木下喬弘
ハムレットって Yes か No か答えるんですか?(笑)
死ぬっていう選択肢ないでしょう、いきなり。

安川康介
いやいやいや、To be or not to beという二択じゃないですか。
to vaccinate or not to vaccinate.

木下喬弘
わかりました。ありがとうございます。
内田先生、どうですか?

内田舞
私はもっとクリアで「接種した方がいい」と思っています。
感染状況や家族の状況などのいろんな因子あるっていうのはもちろんなんですけれども。

先日、岡田先生の回で私がお話させていただいたのが、うちの子どもが行く学校に関しては、職員、教職員、その他スタッフ全員がワクチンの接種をしていて、さらにマスクをしていて 少人数のクラスでcohorting をしていて、換気システムが update されていて、少し安心できる状況だということは言いました。

しかし、子どもがワクチンを打たなくても「少し安心」と言えるこの状況が sustainable(持続可能)かどうかという点が私は一番大きな論点です。
子どもが打たなくてもいい状況というのは、地域の感染状況を抑えられること、そして周りの大人が自分が感染しないことで感染源にならないこと。

ということで、子どもが打たなくても子どもの感染を防ぐ方法がたくさんあるんですけれども、その場合に「これをやっていれば」っていう条件があまりにも多すぎて、今は大丈夫と思えたとしても、これを10年間続けられるかっていったらできないことが多いと思うんですね。

そういった点で、そんな中でデルタウイルスが流行っていますけれども、蔓延してしまう変異ウイルスがデルタで終わりではない可能性の方が高いです。デルタ以上に強いウイルスが出てきてしまったり、もしくは子どもにさらに感染しやすい変異ウイルスが出てきてしまった時っていうのを見据えて、そんな状況を「大人が感染源にならなければ大丈夫」と、大人に頼っているのであれば、うちの子どもが感染してしまうことはあるではないかと、と思います。

私は世界の大人を信頼できないから、子どもは自分を守れるような抗体を持っていた方がいいと思っています。

木下喬弘
ありがとうございます。
意外と Yes or No アンサーかと思いきや、皆さんたくさんご説明いただいて。

このままだと私が喋る内容は今日なくなってしまいそうなので、岡田先生、黒川先生、遠藤先生、ちょっと後に回させていただいて進めていきたいと思います。

前田陽平先生
僕ももうちょっと喋りたかったのに結構短く頑張ってしました。
もうちょっと喋りたかったなあ。

すみません、1つだけ補足しておくと、子ども個人のメリット・デメリットで判断すると、やっぱりちょっと「その原則的に」とかそういう言葉をちょっとつけざるを得ないかなっていうふうに思うんですけども。
その子どもがずっと安定して、その社会生活とか学校生活とか、そういうのを送っていけるためにという視点まで入れると、僕は原則的に打った方がいいんじゃないかな。

ただ、今後の治験で、またこのワクチンだったらより安全だとか、そういうのもさらにつけ加わってくるかもしれないな、というふうに考えています。
はい、すみません。

木下喬弘
ありがとうございます。
私もシンプルにですね、自分に12~15歳の子どもがいたら接種させるか? って言うと、させますね。ただ、その12~15歳の方に絶対接種した方がいいよって、まあ強くゴリゴリいくかっていうと、そこまでではないです。正直。
いろいろな要素があって「よく考えてね」っていう感じなんですが。


ワクチン接種についての有用性とリスクのバランス

木下喬弘
今、日本がどういう状況かっていうのを、ちょっと見てみましょう。
だいたい一日あたりの感染の報告っていうのが、一番ピークが8月中旬、25,000人を超えてたんですけれども。今、15,000人ぐらいなんですよね。
で、その中で12~15歳の感染者数ってどれぐらいなのか? って。
実はこれ、ちょっとはっきりとは出てきてないんですけれども、20歳未満の感染て実は20%を超えてるんですね、最近。

これ皆さんご存知でしたか? 
高齢者のワクチン接種が進んで、明らかに60歳以上っていうのが6月ぐらいからぐぐぐっと減っていって。40~50代はほぼ変わらず、20~30代っていうのもまあボリュームゾーンであることは同じなんですけれども。

60歳以上が減った分、ほぼほぼ10代と0~10歳がカバーしているというか、比率としてはそこに移っていっているっていう感じなんですよね。なので、実は一日あたり3000人ぐらい10代以下の人が感染しているっていう状況なわけです。

まず最初にですね、ワクチンを打った方がいいかどうかっていうことを考える時に、個人レベルでのメリット・デメリットを見ていきましょうっていう話になると思うんですよね。
これはどうやって計算するのか、結構難しいんですけれども、一応 CDC(アメリカ疾病予防管理センター)はですね、そのようなことを目指して benefit risk comparison(リスク便益分析)をやっています。メリット・デメリットの比較をやっているということなんですが。

▼Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine and myocarditis in individuals aged 16-29 years: Benefits-Risk Discussion
https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2021-08-30/06-COVID-Rosenblum-508.pdf
出典:CDC presentation Hannah Rosenblum, MD ACIP Meeting 2021/8/30

私のツイートにぶら下げているんですけれども、これ、どういうふうにして計算しているかというとですね。
ワクチンの効果が入院予防効果が95%であり、しかも効果が120日続くとして、ワクチンによってどれぐらい入院を防げたかとか。発症予防効果95%の前提でどれぐらい発症を防げたかとか、あるいは死亡を防げたかということをまず計算しますね。
これは地域の流行状況によるわけですね。

一方で、ワクチンのデメリットとして、心筋炎という病気があると。
これを年齢とか性別ごとにどれぐらいの報告があるかを、アメリカの VAERS(Vaccine Adverse Event Reporting System)というシステムを元に計算してですね。それが21日ぐらいのリスクウィンドウだということで、それを元にどれぐらい心筋炎で入院が必要になったとかいう風なことを見るということをやっています。

これ、実は12~15歳はアメリカでもやっていないです。16~17歳ではどういうふうになっているかというと、女性では77,800人の新型コロナウイルス感染症を防ぎ、520人の入院を防ぎ、100人の ICU 入室を防ぎ、4人の死亡を防いだと。
一方で、8人が心筋炎になるということですね。
男性だと56,700人の新型コロナウィルス感染症を防ぎ、500人の入院を防ぎ、170人の ICU 入室を防ぎ、4人の死亡を防ぎ、一方で心筋炎になる人は73人だという風なことを計算しています。

これは流行状況によって違って、いくつか出てきているんですけど。
そういうふうに比較するとどう見てもこれは、男性の方が心筋炎って多いんですけど、入院を500人防いで、一方で心筋炎は73人ということなので、ワクチンを打ったほうがメリットが大きいでしょうということを、CDC は計算上見せているわけです。しかもこれは「ワクチンの効果が120日で切れるという仮定」の下で、こうだということなんですよね。
ただ、皆さんご存知の通り、アメリカって日本よりもよっぽど感染状況がひどくて、小児でも肥満の人とかがいて、結構重症化して入院率が高かったりとかするんで。

これをこのままのデータでツイートすると「お前はアメリカ人なのか」とか「アメリカに帰れ」と。まあ「僕も帰りたい」っていう風にこう話が進んでいくわけなんですけれども。

まあ、確かに外挿性というのですが、日本でも同じことが言えるのかというのは結構微妙だというところになるわけです。一応こういう風に計算をすることができます.

ただ一方でですね、この計算って7月ぐらいまでだったかな? のデータを使っているんですけど、今デルタ変異ウィルスに置き換わっている状況でも同じことが言えるのか? という話もあるわけですよね。

なのでこれ3つ目をご紹介しますと、実はやっぱりデルタに置き換わってからですね、小児の入院増えてますよっていうデータもあるわけですね。

CDC の MMWR(Morbidity and Mortality Weekly Report・CDCの発行する疾病週報)ですね。週間レポートがあるわけなんですけども、それに最近載った研究で6月26日を最終日とする週と8月14日を最終日とする週を比較している研究だったと思いますけれども。

▼Hospitalizations Associated with COVID-19 Among Children and Adolescents — COVID-NET, 14 States, March 1, 2020–August 14, 2021
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7036e2.htm?s_cid=mm7036e2_w
出典:CDC Morbidity and Mortality Weekly Report 2021/9/3

実はですね、小児、 adolescent(12~18歳)ですから18歳までですかね、の入院10万人あたり何人入院したかっていうのを比べる、6月26日を最終日とする週は0.3人だったのが、8月14日の週は1.4人ということで約5倍になっていると。

さらに、0~4歳は今日はお話している対象じゃないっていうのは最初にお伝えした通りなんですけれども、0~4歳に関しては10倍ぐらいになっていると。

最後にワクチンを接種した人と接種してない人と比べると、ワクチン接種した人の方が10倍ぐらい入院しにくい、入院する確率が1/10ぐらいであるという風なデータが出てきているわけなんですね。

つまり、この CDC の risk benefit comparison(リスク便益分析)というかリスクとベネフィットを、メリット・デメリットを比べるこの比較の計算というのは、実はめちゃくちゃ流行状況によりますし、変異ウイルスの状況にもよりますし、いろいろ過程があってですね、そんな簡単に計算できるものじゃないわけですよね。
これはまさに、内田先生にご指摘いただいたところだと思うんです。

つまり、日本は感染者数が少ないから、アメリカみたいにこのメリット・デメリットを比べられないっていうのも、これは全くその通りではあるわけですけれども。
日本の感染状況でずっとこのままなのか? みたいなこと、流行が急にパッと出た時にですね、この入院予防効果、ワクチンを打っていれば防げたはずの入院というのは、平気で5倍10倍ぐらい変わってくるわけなんですね。
そうすると、Benefits and risks の表の左側、「入院を防ぐ効果」の側は、めちゃくちゃ不確実性が大きいと。

一方で心筋炎のリスクっていうのは、だいたい分かってきていると言う状況で、その不確実性をどう評価するかみたいなところになるわけです。

まあ有り体に言うと、一生12~15歳の子供が大人にならないわけではないし、一生日本から出て行かないわけではないし。

そもそも私は、感染症は人口のほとんどがワクチンを打ち終わるまで、特に3回打ち終わるまで終息しないと思っているので…2回打っておかないと3回は打てないので…そういうふうなことも考えるとですね。現時点で temporary(一時的)というか、今この瞬間のメリット・デメリットを比較して、どっちの方が大きいか? って結構微妙になる可能性はあるけれども、将来的なことを考えると「打った方がいいかなと思っている」という感じになるわけですね。

一方で、今この瞬間でのメリット・デメリットが微妙なんだったら打ちたくないっていう人もいて。それに対して「いやいや、それは考え直した方が良いです」って言いたいかというと、まあそこまでではないかなっていう感じもしていると。

ただ、最後に、これは前田先生にもご指摘いただいたところなんですが。
これって「個人レベルでのメリット・デメリット」しか見ていないので、集団生活を考えるとワクチンを打っておくっていうことが結構重要になってくるっていうこともあるわけです。

つまり、デルタ変異ウイルスに置き換わってからですね、入院している子どもが5倍、0~4歳は10倍に増えています。5倍に増えているということはですね、その結果、他の大人にうつすというリスクも増えているということなわけですよね。
そうするとですね、やっぱり子どもが学校で感染をもらってきて、両親にうつしてしまって、片親を亡くしたみたいな事例というのは世界中にいくらでもあるわけです。

それってこう、何ていうか「個人レベルでのメリット・デメリットを考えましょう」という発想のもとでいうと、計算には入ってこないワクチンのメリットなわけです。

そういうことを言い出すとですね。また、両親さえワクチンを打っていれば、ブレークスルー感染はそんなに重症化するのは極めて稀ではないか、みたいな話もあって。とにかく確かにややこしい。

そういう細かな計算の元に decision(決断)もしたいという方を止めはしないけれども、私はその不確実性をうまく常に update(更新)しながらベストなタイミングでワクチンを打つという行為自体が、そもそもかなり難しいと思っているので、「打てるチャンスがあるんだったら打つかな」という感じで考えているというところなわけです。

結構長々喋りましたけれども、こういう論点があると思いますが、皆さんいかがでしょうか?
というところで、黒川先生どうでしょう?

黑川友哉
ありがとうございました。
あの、私はもともとワクチンの有効性というのは非常に強く信頼している立場なんですけど。

それに加えて、やっぱりですね、心筋炎のリスクっていうのは確かに出てきていると。
ただ、かなり稀であるということと、軽症が多いってこと。

あとは何よりもですね、そういったリスクを考え始めると、結構もうそこに注目してしまって自分の判断を正しく本当にできるかどうかって微妙だと思うので、私はあまり深く考えずに、「この心筋炎というのはどういった症状に注意しなければいけないのか?」
例えば胸の苦しさだったり、痛みとか不整脈みたいなものが子どもで出てないかどうか、ということを親がしっかりと意識して見てあげることによって、だいぶ安心感はあるのかなと思いますし。そういった症状が出てきた時に、すぐに近くのお医者さんであったり、病院に相談できるっていう、そういった相談先っていうのもしっかり確保しておくことで、安心して打っていただけるんじゃないかなとは私は思っていますし。
自分自身の子どもがもし打てるチャンスがあれば打たせてあげたいなと思っています。

木下喬弘
ありがとうございます。
クリアになりました。
遠藤先生、いかがですか?

遠藤彰
個人的にはそうですね。
やっぱり、おそらく打つことのメリットの方が確実に高いだろうなっていう印象なんですよ。

もちろん、さっき木下先生が仰られた通りで、本当にその厳密な意味でのリスクとベネフィットの比較をするためには、そもそも分かっていないものも含めて、結構いろいろなデータとか、いろいろな想定をしないといけなくて。それこそ今後の流行がどうなるかを予測する必要があるみたいな話のレベルになってくると思うんですね。

なので、そういう意味ではすごく難しいですし、最終的にやっぱり個人の判断にかかってくるというか、すごく強い推奨を出しにくい状況にあるというのは、多分そうだと思うんですけど。

繰り返しになりますけど、総合的に個人の、基本的にはもちろん個人のそのメリット・デメリットで決めるべきで、特に子どもっていうのは、ある意味 vulnerable group(社会的に弱い立場にある人々)というふうに言いますけども、ある程度判断能力が限られていて、大人の判断に従わないといけない。特にその保護者が、その最終的な責任を負うみたいな形になっているので、周りの大人が、本人に不利益の無いような形を作らないといけない、というのがあると思います。

まあ、そうは言っても、学校になかなか行けなかったり、いろいろな活動が制限されたり、そういうことを考えると、そういう意味でも、やっぱりワクチンを打ったことによるいろいろな安心感というのが、結構本人にとっても大きいのかな、というふうには思っています。

木下喬弘
ありがとうございます。
おっしゃる通りで、12~15歳に「自分で risk benefit comparison(リスク便益分析)をしてください」っていうのは結構無理があるわけなので、周りの大人がいて、判断を助けてあげないといけないっていうのはあると思うんですね。

一方で、ちょっと価値観も入る、純粋にメリット・デメリットで綺麗にこっち! っていうふうな状況ではないかなっていうところが、まあ難しいかなっていうところもあります。

将来的なことを見据えていくとメリットの方が上回るのは確実だろうというようなところかと思います。

ちょっと初登壇なんですけれども、ふらいと先生、小児科医ということでコメントいただければと思いますけれども、いかがですか?

今西洋介先生(Twitterネーム「ふらいと」先生)
皆さん、おはようございます。

⚫今西洋介先生 Twitter:@doctor_nw
大阪母子医療センター新生児科医長。小児科学会専門医、周産期新生児学会専門医。2006年富山大学卒業。大阪大学公衆衛生学博士課程在籍。講談社モーニング連載「コウノドリ」の漫画・ドラマの医療監修を務める。日本小児科学会健やか親子21委員。三姉妹の父、育休取得済み。m3(エムスリー)外部執筆者として公衆衛生学の視点から周産期医療の現状について発信。

木下喬弘
おはようございます。

今西洋介先生
今日は休みで初めて参加できたんだけど、非常に嬉しいです。

木下喬弘
ありがとうございます。
私はもうずっと、みんパピ!で一緒にやっているのでよく知ってるんですけれども。
このアイコンと裏腹にバリバリ関西弁だということに多分、皆さん結構驚かれていると思います。

今西洋介先生
あの個人的にはですね、小児科医としてはやはり12歳~15歳って非常に部活動の活発な時期でして。かなり学校でも集団生活せざるを得ない状況なんですよね。それでやはり学校の先生も含めてですね、どうしても感染のリスクになってしまうことは確かなんで。
実際に日本でも最前線ではあの同年代増えてますから。やはりワクチンの方は個人的には接種していただきたいかなと思っています。

木下喬弘
結構やっぱり子ども増えてますよね、日本も。

今西洋介先生
そうですね、増えてますね。はい。

木下喬弘
というところで、なかなかね、個人レベルでの変更のリスク・ベネフィットで見るとどうかっていう視点だけではなくて。
今、子どもがワクチンを打ててないせいでというか、要は感染が終息していなくて、感染対策が必要なせいでいろいろなことを制限されていて。その制限を取っ払うためにやっぱりワクチンしか難しいんじゃないかというところがあると。

具体的にいうと、部活動をするとかいうのをマスクでなんとかするとかいうのは、やっぱり現実的に無理なので。実際、デルタが小学校でのクラスターみたいなこともバリバリ起きているわけですから。
そういうふうなところを考えると、ワクチンを打つメリットは十分あるんじゃないかという風なところかなと思います。
何かちょっと言い残した人いますか?

内田舞
お願いします。

木下喬弘
はい、どうぞ。


子どもたちのメンタルヘルスを考える重要性

内田舞
そのお話のつながりなんですけれども。
この一年間、アメリカで感染状況がひどい状況の中、学校がオープンしなくて、オンラインの授業のみで過ごしてきた公立学校の子たちのメンタルヘルスをずっと診てきました。例えば高校生ですと希死念慮を持たれた高校生っていうのが例年に比べて4倍高いというデータが出ています。精神科の救急にいらっしゃるお子さんの数も、本当に多くなりました。

入院が必要になられたお子さんも多くなり、精神科の入院先が見つからないという状況で、救急に1ヶ月以上ベッド待ちでいたっていうような私の患者さんも実際いました。アメリカの小児のメンタルヘルスクライシスに関しては、冗談じゃない状況になっているんですね。

日本ではアメリカと同じ状況ではないと思うんですけれども、でも少なからずとも、みんな子ども達も、その親もストレスを感じていないわけはいなくて。
そんなストレスを感じていないわけはない状況で、実はアメリカのようなメンタルヘルスクライシスが起こっているのが、もしかしたら可視化していない所もあるのではないかなと私は予想しています。

そのようなことも考えても、今、2学期が始まってオンラインで始まったっていうような学校も多いと聞きますが、これは残念なことです。
大人はリモートワークをしているところもあれば、していないところもあって。大人は飲み会をしている人もいれば、していない人もいて。

そんな大人がやっぱり行動制限を出来ていない中で、子どもに強制してこのような日常生活を送れない状況をきたしてしまっているのが、このパンデミックなんですよね。
そういったことも考えて、私は子どもの「大人の行動変容に頼らない」自己防衛策として、ワクチン接種っていうのは重要になってくると思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
その観点でいきますとですね、おっしゃる通りで、例えば緊急事態宣言下でもなんですか? 新橋とかあの辺りの居酒屋というのは、たくさん開いているわけなんですけど。
それを批判するというのはもう、なんか一旦やめようとは思いますが。

やっぱりその分、集団生活をしている子どもというのは、そういう自由は全然なくてですね、みんな規律を守っているということを考えると、それってどうなの? ってのは非常にあるわけで。
そういう状況なんで、子どもも打った方がいいというのもそうなんですが、結論として、そういう状況なのでまず周りの大人は絶対打ちましょうよというところかなと思います。

つまり子どもが打った方がいいかどうかという議論の結論として、やっぱりそれより前に周囲の大人がしっかり接種を進めましょうと、打てない人以外は接種を前向きに検討しましょうというのがやっぱり重要なところかなという感じです。

そろそろ時間が来ましたので、このへんで締めたいと思います。最後にひとこと言っておきたいことある人いますか?
あ、どうぞ安川先生。

安川康介
あのジュリエットが13歳なんですよ。
※ハムレットの作者シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」のヒロイン。

木下喬弘
え、そうなんですか?

安川康介
ロミオが13歳~21歳のどれかということなので、僕たちが議論したのはジュリエットがワクチンを受けるかべきかどうかっていうことだったなと思います。
以上です。

木下喬弘
まあ、ハムレットなんですけどね、タイトルは。ちょっと別のストーリーになりましたけれど。

今西洋介先生
先生、1ついいですか?

木下喬弘
はい、どうぞ。


日本小児科学会・文部科学省の提言「学校と医療の連携」を

今西洋介先生
先週ですね、2学期が始まる前に日本小児科学会と文科省がそれぞれ、コロナ対策に関する提言というの、学校現場への提言というのを出してまして。
皆さん、これは読んでおいていただきたいんですけど、かなり、学校と医療でその連携をとって感染対策をしていかないといけない場面が増えてきていますので、是非この辺りは連携をとっていけたらなと思っています。

木下喬弘
ありがとうございます。
それもじゃあ皆さん、ぜひチェックをということで。

実は最後に一言物申したいのは僕もあるんですけれども。
これ、皆さんですね…ご存知の通り、HPV ワクチンっていうのは積極的接種の勧奨を差し控えたワクチンですね、日本で。

あれはワクチンを打った後に全身の痛みが出たりとか、集中力が低下したりであるとか、物覚え悪くなったりとか、鼻血が出たとか髪の毛が抜けたとか、いろいろな症状を訴えた女性がいたわけですよね。それが研究をすると、ワクチンとの因果関係が証明されないということがだいぶ分かってきたわけなんです。

ワクチンとの因果関係が証明されずにそういう症状が出た方がいるということはですね。これは自然にそういう症状を発症する方がいるということなわけですよね。
つまり、何が言いたいかというと「コロナワクチンを打った後にもそういう症状が出てくるという人は必ず出てくる」ということなんです。伝わりますよね? 

これはワクチンの有害事象ではあるけれども副反応ではない。
すなわち「ワクチンのせいで起きているわけではない」ということは、ワクチンを打たなくても自然にそういう病気を発生する人もいるし、たまたまコロナワクチンを打ちに行った後にそういう病気が出てくる人もいるということなので、これから必ず、日本はもう一度騒ぎになると思っているので。
まあそういう時にですね、すぐに情報提供をできる準備を我々医療従事者はしておかないといけないと思いますし。

この HPV ワクチンで、よくよくジャーナリストの人とかに言われる、こじれた原因というのは「それをちゃんと診療しなかった医師が悪い」みたいなことを言ってですね。俺らは知らんとまでは言わないですけれども、そこが問題であって「報道だけのせいにするな」みたいなことをよく言われるわけですけれども。
それも確かに一理あるわけです。

ちゃんと医療従事者がそういうふうな症状が出たときに対処する準備をしておかないといけないというところだと思いますので、そういったところも忘れてはならない論点かなと思っております。

ということで、5分経過しましたけれども、本日のこびナビ朝のスペースは、この辺りにさせていただければと思います。

ご登壇いただいた先生方、どうもありがとうございました。
では、日本の皆さん良い一日をお過ごしください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?