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5-11歳へのワクチン接種、追加接種や交差接種など情報をまとめました(10月27日こびナビTwitter spacesまとめ)

こちらの記事は、2021年10月27日時点での情報を基にされています。

2021年10月27日(水)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:安川康介


クローズアップ現代+ ~オープニングトーク~

安川康介
皆さんおはようございます。

先週、うちの母親が日本でテレビを見ていて、こびナビの人が出てるよって動画送ってきて。黑川先生だったんですよ。これ知ってる人だよって返信しました。

黑川友哉
知ってる人っていうか、一緒にやってる人だよってなんで言ってくれないんですか?
これ、僕もやってるやつだよって言ってくださいよ、そこは。

安川康介
いや、すごい良かったですよ。

黑川友哉
ありがとうございます。恐れ入ります。スタッフの皆さんのおかげで。

安川康介
スタジオ入りされてて。緊張しました?

黑川友哉
死ぬほど緊張しましたけど、でも皆さんすごい優しくてですね、スタッフの方が。
すごい褒めてくれるんですよね、喋ると。ひとこと喋るとすごい褒めてくれて。幼稚園児のお遊戯会ぐらい褒めてくれてたんで、本番は安心して臨むことができました。ちょっと緊張しましたけど。

安川康介
これ、聞いている方に何の番組に出たのかちょっと話していただいてもよろしいですか?

黑川友哉
そうですね。
先週の木曜日に、NHK の長寿番組である「クローズアップ現代+」に生放送で出演させていただきました。
副反応報告でワクチン接種後に死亡と報告された方のうち、ほとんどが評価不能になっちゃってるこの現状はいかがなものか、というテーマで、NHK のスタッフのみなさんが番組を作ってくださって。
評価のシステムはどうなっているのかなとか、日本の評価の限界。それからこの評価結果の公表の仕方の問題点や、今後どういった取り組みをすべきかなど。
こびナビの Twitterスペースでもずっと話していますけど、アメリカで行われている VSD(Vaccine Safety Datalink)みたいな客観的で科学的な評価のシステムを日本でも作っていかなきゃいけないよね、っていうテーマだったんです。
そこでコメントをさせてもらったという経緯ですね。
こんな感じで大丈夫ですか?

安川康介
大丈夫です。なんかすごく重要なトピックを取り上げていただいたなあって思います。

黑川友哉
本当にそう思います。30分じゃちょっと足りなかったんですけど。
でも30分以上やっても専門じゃない方が30分以上見れるテーマかって言われると、なかなか厳しいですよね。そのあたりはさすが NHK の方がうまく30分にまとめていただいたな、と思って。

安川康介
そうですね。
番組のタイトルだけ見るとちょっと批判的な要素が強いのかなと思うんですけど、しっかり考えてくださって。こびナビの Twitterスペースにも参加していただいたことがある紙谷先生*も出演されてたんですよね?
*紙谷聡医師:エモリー大学小児感染症科助教授/米国疾病予防管理センター客員研究員

黑川友哉
そうなんです。
当日の夜7時ぐらいに NHK に入らせてもらって、そこから最後の打ち合わせが始まったんです。そこで初めて VTR を見させてもらったんですね。そしたら冒頭の始まり方がえらいシリアスで。まあシリアスな内容なんだ、とは聞いてたんですけど、すごい怖い始まり方だったので、これどんな番組になるんだろう?って思っていました。
一緒に共演いただいた副反応検討部会の部会長されている東京医科歯科大学の森尾先生**がとてもうまくまとめていただいたのと、キャスターの方が進行していただいたので、未来に向けた問題点の洗い出しがうまくできたかな、と思ってるんですけど。
最初はめちゃくちゃ心配しましたけどね。あの始まり方。
**森尾友宏医師:厚生労働省副反応検討部会部会長/東京医科歯科大学教授

安川康介
峰先生もテレビ出演されたんですよね?「世界一受けたい授業」に。

黑川友哉
すごいですよね! 峰先生。朝の情報番組とかも生出演されてることありますよね?

安川康介
いや、すごいと思います。峰先生は緊張されないですか?

峰宗太郎
僕は基本的に、緊張するっていう脳の部分が多分壊れちゃってるんで。

安川康介
なるほど。
そろそろ本題に入って行きたいと思います。
最近あんまりネタがない、とか言っていた方もいるんですけれども、新型コロナウイルスのワクチンに関して、アメリカで大きな動きがいくつもありました。


アメリカからワクチンに関して大きな動き

安川康介
トピックの1つはアメリカで5歳から11歳への新型コロナウイルスワクチン接種が推奨される、という動きです。
木下先生(木下喬弘)や内田先生(内田舞)もツイートされてたんですけれども、FDA の VRBPAC(Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting)という諮問委員会で、5歳から11歳の小児へのファイザーのワクチンへの緊急使用許可を推奨する動きになりました。
諮問委員会で投票して17対0。確か棄権が1人いたと思うんですが、推奨となりました。

▼FDA Briefing Document:EUA amendment request for Pfizer-BioNTec COVID-19 vaccine for use in children 5 through 11 years of age
https://www.fda.gov/media/153447/download
出典:VRBPAC meeting 2021/10/26

今後 FDA はおそらくすぐ推奨して(この後10月29日に緊急使用許可が発表された)、次は CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の ACIP(Advisory Committee on Immunization Practices:予防接種の実施に関する諮問委員会)で協議がなされます。その後、最終的に CDC が推奨を決定するという流れになります。
もしかしたら来週ぐらいにアメリカでは5歳から11歳へのワクチン接種が開始されるかもしれません。

▼米 FDA ファイザーのワクチン 接種可能年齢を5~11歳に拡大
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211030/k10013327911000.html
出典:NHK NEWS WEB 2021/10/30

▼FDA authorizes Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine for Emergency Use in Children 5 through 11 Years of Age
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-authorizes-pfizer-biontech-covid-19-vaccine-emergency-use-children-5-through-11-years-age
出典:FDA 2021/10/29

もう2つトピックがあります。
前回、峰先生の回でも少し触れたんですけれども、アメリカの CDC が10月21日にモデルナとジョンソン・エンド・ジョンソン(以下J&J)のワクチンを接種した人へのブースター接種に関して新しい推奨を出しました。

さらに、ブースター接種に関して「以前接種した会社のワクチン以外を打っても良い」「Mix and Match(色々な組み合わせ)でも良い」という大きな決断がなされました。
日本語では「交差接種」と言われているものです。
Mix and Match は「色々な組み合わせを選ぶ」という意味です。アメリカのマクドナルドだと、6ドルで Mix and Match deal というものがあって、どのハンバーガーを2つ選んでもいいよ、というような注文方法です。


「ブースター接種」の推奨

安川康介
アメリカではファイザー・モデルナ・ J&J の3社のワクチンで primary series が終わったら、次の接種はどの会社のワクチンを打っても良い、という決定をしました。

もしかしたら今年の年末くらいに、日本でも3回目の接種が始まるかもしれないということなので、今日はアメリカでのワクチンの推奨についての最新情報をまとめてみます。
この Twitterスペースを聞いている方はワクチン接種済んでいる方が多いようなので、3回目接種が可能になった時にどうするのか、日本でもひょっとしたら交差接種っていう話も出るかもしれないのでよかったら聞いてください。

まず COVID-19 ワクチンの terminology(用語)がちょっと分かりにくいので、少しまとめておきたいと思います。

英語での「primary series」これは「最初の接種のシリーズ」という意味になるんです。ファイザーは2回、モデルナも2回、J&J なら1回接種する。日本で使用されているアストラゼネカは2回接種になります。
ファイザーは12歳、モデルナは18歳(日本の場合は12歳)、J&J も18歳以上。

これとは別にアメリカでは「additional dose」と言いますが、これは「追加接種」という意味です。「ブースター接種」ということではなく、「追加接種」です。
primary series だけでは免疫が充分に作られない人に対して行う追加のワクチン接種ということです。
この点は重要なのですが、アメリカでは、ブースター接種が推奨される以前から、免疫機能が中等度から重度低下している方に対して追加接種が開始されていました。

そして最近始まったブースター接種があります。これは primary series 後に免疫が減弱した段階で行う接種、という定義がされています。
日本でも免疫機能が下がった方に対して追加接種が始まるかもしれないんですけども、CDC では追加接種とブースター接種とは区別する表現になっています。

CDC のサイトに、追加接種対象者である「中等度重度に免疫機能が低下している方」がどういった方を指すのか、定義が示されています。

▼Considerations for COVID-19 vaccination in moderately and severely immunocompromised people
https://www.cdc.gov/vaccines/covid-19/clinical-considerations/covid-19-vaccines-us.html#considerations-covid19-vax-immunocopromised
出典:CDC updated 2021/10/25

・固形癌、血液癌で治療中
・臓器移植後で免疫抑制剤を使用中
・造血幹細胞移植後2年以内
・HIV 感染者で CD4数が200以下
・ステロイドのプレドニゾロンを20mg以上/日を2週間以上服用中
・TNFα 阻害剤(商品名:インフリキシマブなどの免疫抑制剤)を使用中

こういった方に対してはブースター接種が推奨される以前から、追加接種が可能となっていました。

それでは現在ブースター接種は誰に推奨されているのかを説明します。
実は、推奨にも強弱が有ります。

▼Considerations for use of a COVID-19 vaccine booster dose
https://www.cdc.gov/vaccines/covid-19/clinical-considerations/covid-19-vaccines-us.html#considerations-covid19-vax-immunocopromised
出典:CDC updated 2021/10/25

以下の方たちは、 primary series が終わった6か月後にブースター接種を「受けた方がいい」と推奨されています。

・65歳以上
・18歳以上で長期療養施設入所中
・50歳から64歳で特定の基礎疾患がある(新型コロナウイルス感染症重症化リスクがある:糖尿病、心不全、冠動脈疾患、癌、慢性腎障害、慢性の肺疾患、肝硬変、肥満など)

これ以外にも may receive つまり「受けても良い」とされている方々もいます。以下の方たちは、個々のリスクとベネフィットを考えて検討してくださいということです。

・18歳から49歳で特定の基礎疾患を持っている
・18歳から64歳で SARS-CoV-2 への曝露リスクが高い

J&J の場合は primary series は1回接種ですので、その後2か月経過したらブースター接種を検討しても良い、となっています。
また、モデルナの primary series と追加接種は100μg、ブースター接種は50μgとなっています。

CDC のサイトには、個々のリスクとベネフィットをどのように考えるのかについての記載もあります。

1. SARS-CoV-2 への曝露リスク
自分の周囲でどれぐらい流行しているのか? ワクチン接種した人がどれぐらいいるのか?

2. 新型コロナウイルス感染症発症/重症化リスク
基礎疾患がある、妊娠しているなどのリスク要因がある。

3. primary series 後どの程度経過しているか

4. 感染した場合の周囲への影響
家庭内に免疫機能が低下している者がいる。感染によって仕事に影響があるなど。

こうしたリスク要因を考慮してブースター接種を検討するべきとしています。


「mix and match」(交差接種)とは

安川康介
次に mix and match についてです。英語では heterologous ですね。「異種のワクチン接種」という意味ですが、日本語では「交差接種」と表現されることが多いと思います。
交差接種に関して、現在どのような情報があるのか簡単にまとめておきます。

まず、米国ではprimary series と追加接種はできるだけ同じ会社のワクチンを接種したほうが良いという推奨になっています。
ただ、どうしても手に入らない場合は別の mRNAワクチンでも良い。つまり1回目ファイザーを受けて、何らかの理由で2回目にファイザーを受けられない方はモデルナを接種してもいいんじゃないかと書いてあります。ただし、多少接種の間隔が開いても同じ会社のワクチンが接種できるならば、そうした方が良い、となっています。

つまり mix and match は許可されているんですけども、primary series に関しては同じ会社のワクチンを接種する方が良いということです。
ですから厳密には、交差接種と言っても、primary series とブースター接種では分けて考えるべきだと思います。

primary series での交差接種の科学的エビデンスの情報が、現在どの程度あるのかお話します。
1回目がアストラゼネカのウイルスベクターワクチンで2回目が他社の mRNAワクチン、という場合のエビデンスはある程度あります。これはヨーロッパではアストラゼネカの接種を開始したものの、途中で中止した経緯があるからです。
ですから、1回目接種をアストラゼネカで受けたが、中止になったので2回目がモデルナまたはファイザーだったという方がいます。

スウェーデンでは、アストラゼネカのワクチンを2回受けた人より、1回目がアストラゼネカで2回目にモデルナかファイザーを受けた人の方が発症予防効果が少し高かったということが報告されています。
デンマークもアストラゼネカのワクチンを4月に中止したんですね。1回目アストラゼネカで2回目はファイザーのワクチンを受けた方と比べても、ファイザーを2回打った方と同等の発症予防効果があったということが報告されています。
フランスでも同様にアストラゼネカを打ってからファイザーを打った方のデータはある程度あります。
これらのように、1回目はウイルスベクターワクチン、2回目は mRNAワクチンというケースに関してはある程度情報はあります。

ただ、今回アメリカで推奨されることになったブースターに関しての情報は、すごく限られています。
つまり、primary series が mRNAワクチンで、ブースターはウィルスベクターワクチンを打つ。もしくはその逆の primary series がアストラゼネカや J&J のウイルスベクターワクチンで、ブースターが mRNAワクチンというケース。これに関しての情報はかなり少ないと思います。

今回推奨されるにあたって、アメリカで行われた研究を CDC のサイトでも引用しています。

▼DMID 21-0021-Heterologous Platform Boost Study
https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2021-10-20-21/04-COVID-Atmar-508.pdf
出典:ACIP 2021/10/21

▼Heterologous SARS-CoV-2 Booster Vaccinations-Preliminary Report
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.10.10.21264827v1.full.pdf
出典:medrxiv preprint (プレプリント) 2021/10/13

これは Robert L.Atmar 先生らが出した研究報告です。実は、この先生は僕の元上司なんです。Baylor College of Medicine(ベイラー医科大学)で僕が感染症のフェローをしていたときの上司にあたる方で、すごく真面目な方です。ちなみに VRBPAC の chair(議長)をやっている Hanna El Sahly という方も僕の感染症研修医時代の上司です。
皆さんが VRBPAC や CDC の研究の話を聞くと、かなり遠い世界の話だと思われるかもしれません。でも、皆さんは僕のことをなんとなく知っていて、僕はこうしたところで働く先生のことを知っているいうことで、結構近い世界の話だと感じられるかもしれません。

では、アメリカで行われた、この「ブースターで別のワクチンを接種した」研究がどういうものだったのかを解説します。

primary series をファイザー・モデルナ・ J&J で打った人たちにそれぞれ異なるワクチンのブースターを行って抗体価を調べたという研究です。3つのワクチンの種類に対して3つのワクチンのブースターが使われているので、3✕3で9グループあります。各グループに50人ずついます。
ただ、これはランダム化比較試験でもなく、primary series からブースターまでの期間も調整されていません。
比較的、小さな研究であることにかなり注意が必要です。

この研究の結果ではどのブースター接種を行っても、ある程度抗体が上がったということでした。
J&J で primary series をし、J&J でブースターをしたときは、他社の mRNAワクチンでブースターしたときよりも抗体価が低い、との結果があります。
どのワクチンをブースターに選ぶかを、こういった効果に対しての現在ある情報だけを見て判断するなら、同じウイルスベクターワクチンのブースターを打つよりも、mRNAワクチンのブースターを打つ方がもしかしたら良いかもしれない、ということになります。ただ、日本でアストラゼネカのワクチンを打った方は少ないと思いますが。

効果だけでなくて、副反応などのリスクも考えなくてはなりません。
こびナビの Twitterスペースでも何回も話題にしましたが、mRNAワクチンの場合は
特に30歳以下の男性に心筋炎が起こりやすいということがわかっています。
また、J&J やアストラゼネカのウイルスベクターワクチンは VITT(Vaccine-indused immune thrombotic thrombocytopenia:ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症)や TTS(Thrombosis with thrombocytopenia syndrome:血小板減少症を伴う血栓症)と呼ばれる特殊な血栓症やギラン・バレー症候群が起こることがあるといわれています。
ギラン・バレー症候群は50歳から64歳ぐらいまでの男性、TTS などの特殊な血栓症は50歳以下の女性に起こりやすいということが知られています。こういった方は、ベクターワクチンよりも mRNAワクチンを受けたほうがいいかもしれない、ということになります。

ただ、ブースターに関してはアメリカ国内でも見解が揺れています。
昨日のニューヨーク・タイムズでも、VRBPAC や CDC の諮問委員会に実際にいる人達が疑念を感じて懸念を表明している、という記事も出ています。ここら辺を皆さんとディスカッションします。
木下先生、どうぞ。

▼Are Vaccine Boosters Widely Needed? Some Federal Advisers Have Misgivings
https://www.nytimes.com/2021/10/25/health/covid-boosters-cdc-fda.html
出典:The New York Times 2021/10/25


科学的なデータをどう扱うのか

木下喬弘
そうですね、色々あるんですけど。
最近、子どものモデルナ接種に関する危険性があまりにも強調されすぎていることに、僕はずっとイライラしているんです。
ファイザーと「比べたら」モデルナの方が多いというだけであって、モデルナ単体でリスクが取れないほどの高い率で心筋炎を発症してる、って言うのは、明らかに言い過ぎだと思っています。
1回目接種でモデルナを打った人は2回目接種はファイザーにしたほうがいい、と厚労省でも真剣に議論したっぽいんですけど、ワクチンを替えたら副反応が下がるっていう根拠は実は全くないし、むしろ違うワクチンを打ったら抗体価が高くなることもあるわけですから。
それを考えると副反応がさらに上がっちゃう可能性もあるわけなので、この議論は本当に止めて欲しいとずっと思っています。
モデルナの12歳から17歳への心筋炎のリスクが受け入れられないほど高いんだ、と言うんだったら、今すぐアストラゼネカを止めたほうがいいと思うんですよね。
どう考えても、アストラゼネカの方が色々なリスクが高いし、有効性も低いのですから。

こうしたすごいアンバランスな、一部のリスクだけを切り取った報道とか発言に対して、なんかめちゃくちゃイライラしてて、これをちょっとなんとかしてくださいよ安川先生。

安川康介
いやいやいやいや。
アメリカでは12歳から18歳へはモデルナのワクチンは使われていないんですよね。日本では使われているんですが。
年齢層によって心筋炎のリスクの差がどれくらいあるのかについては、海外ではあまり調べられていないと思います。
そもそも心筋炎は非常に稀なんですけども、リスクだけ見たら確かにモデルナの方が高いかもしれないということなのです。
しかし、木下先生がおっしゃった通り、1回目モデルナで2回目ファイザーを打ったからといって、リスクが下がるかどうかはわからないですよね。ここらへんは難しいです。

ブースターに関しても、ファイザーよりもモデルナの方が抗体の持続性が高いということがあるんです。実際、モデルナはブースターいらないんじゃないか?っていう人もいるんですよ。
ニューヨーク・タイムズの記事を読むと「ファイザーを打った人たちにブースター接種を推奨しているから、それ以外の方にも推奨しなきゃいけない感じになってしまった」ということを言っていたりしています。
なんかアメリカの最近の決定に関しては、完全に科学的なエビデンスに基づいていない部分が出始めているような印象を受けます。
これに関して峰先生、何かありますか?

峰宗太郎
私もイライラしてることが1つあってですね。
木下先生の言ったことは僕もイライラしてるんですよ。本当になんなんだよって。モデルナに対して、なんでそんな攻撃を始めてるのかよく分からないですが、リスクのバランスの問題があるっていうのが1つ。
それから今、安川先生のおっしゃった、アメリカではあんなに科学とかいわゆるエビデンスに忠実で、ACIP とか慎重に議論していたのが、プロセスの中ですごく軽視されてきて政策先行みたいなところが出てきてますよね。で、それがすごくよくない動きなんじゃないかなって思っています。
データをもとにちゃんと丁寧に議論して、決めるべきは決める、っていうことが、だんだんこう…。
YouTube で会議の様子が流れてるじゃないですか? 最近その会議での議論が科学的じゃないことがあるんですよね。「お気持ち」っていうか。そういうのがね、ちょっと良くないな、って感じるイライラが1つ。

もう1つ、すごく大きいイライラがあって。
アメリカは3回目の接種以前の問題で、1回目と2回目の primary series をちゃんと接種せえって言う。
3回目とか言ってる場合じゃないんですけど。G7 の中でも先進国の中でも最低の接種率になってますし、全く進んでないし。
ワクチンだけじゃなくて、基本的予防策も完全に緩めちゃって推奨とかぜんぜんしなくなってきましたよね。そもそも最近言ってないですよね。これはね、良くない。
イギリスもそうなんですけど、とにかく基本に戻るってことと、1回目、2回目としっかり接種していこうね、って呼びかけができないのに、3回目接種やブースター接種をすれば何かが改善すると思い込んでるのだとしたら、違う方向に向かっているのかな、とちょっとイライラを感じちゃうんですよね。

安川康介
ありがとうございます。いやー、すごく重要なことですね。
今後、日本でどういうふうにこういった情報を判断するのかなっていうのはすごく興味があるんですけれど。
黑川先生、吉村先生、何かコメントありますか?

黑川友哉
うん、なかなか難しいですし、科学的じゃない議論がすごく走ってるっていうのはすごい実感しています。きっと何かに焦っていて。
綺麗なデータ出すのもなかなか難しいじゃないですか?こういうブースター接種に関することって。
じゃあそのデータをずっと待つのか、どこまで待てばいいのかっていうところも、なかなかコンセンサス意見を一致させずに議論ばっかりが進んじゃって、何か結論を出さなきゃいけないっていう動きになっているんだろうなと思います。そこが科学と実際の医療をどう実装させていくかの、はざまの難しさなんだろうなって思いながら聞いてました。

吉村健佑
日本の状況を共有します。
ちょうど10月の半ばに国から自治体向けにブースター接種についての説明がされています。昨日、千葉県の会議でも紹介されました。
2回目接種終了後8か月の方が出始める12月から3回目接種が開始されて、流通するのはファイザー社のみと聴きました。モデルナについてはまだ流通の予定が立っていないようです。
アメリカで議論されているような、交差接種について科学的に検証するという状況にはなく、まずはファイザーを接種した医療従事者の方々から順番に回ってくるのが日本の状況、とのことです。

▼新型コロナワクチン追加接種(3回目接種)に使用するファイザー社ワクチンの配分(3回目第1クール)について
https://www.mhlw.go.jp/content/000845349.pdf
出典:厚生労働省健康局健康課予防接種室 2021/10/15

安川康介
ありがとうございます。
ブースター、追加接種、交差接種と非常に複雑になってきて、どれぐらい科学的な情報があるのかということもそんなに詳しく話されていない状況です。
接種が始まってなんとなく進むんじゃなくて、しっかり議論して、しっかり情報を皆さんにキャッチして判断していただきたいなと思っています。結構わかりにくかったと思うんですけれども、今回は話してみました。
ファイザー・ファイザー・モデルナとかモデルナ・モデルナ・ファイザーとか、わかりにくいので、次回はファ・ファ・モとかモ・モ・ファというように略して話していこうかと思います。

何か最後コメントありますか?

吉村健佑
国内の primary series の接種率がまだまだ上がってるというのが、日本のいいニュースです。
先ほど峰先生がおっしゃったように、日本でもまずは primary series を終わらせるというアナウンスをより強調した上で、3回目接種についてのアナウンスメントがされるといいと思います。
primary series に比べ、3回目接種は医学的エビデンスがまだ積みあがっていない、というのが状況なので、新たな情報がでるたびに、こびナビからできるだけ正確な発信を実施したいと思います。

岡田玲緒奈
アメリカはブースター接種も無料で打ってるんですか?

安川康介
はい。

岡田玲緒奈
特に何か、例えばブーストの対象者だということを示す何かは必要はないわけですよね。
何回でも打てるんですかね?

安川康介
何回でも打とうと思えば打てます。
ブースター接種が始まる前から何回も打っている人は少しはいた、という話もあるんです。

岡田玲緒奈
なるほど。
もう1つは峰先生がおっしゃってた内容なんですけど、結局もうアメリカは「打たない人は打たないから、打った人がブレイクスルー感染するのを防ぐのにブースターも進めていこう」みたいな若干グダグダな感じになっているという理解でいいですか?
峰先生がおっしゃったように「primary series の接種率をあげようよ」と、普通はなると思うんですけど。それはもう諦めているんですか?

安川康介
ここまであの手この手でやって来て、今まだ受けてない方は説得しにくい方もいるんじゃないかな、とは思いますね。ただ、もっとやれることは確かにあるんですけれども。頭打ちになってきて接種率が伸びていない状況があります。

岡田玲緒奈
わかりました。ありがとうございます。

安川康介
それでは、日本の皆さんありがとうございました。
今日も良い一日をお過ごしください。
ありがとうございました。


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