動物と新型コロナウイルス感染症(11月24日こびナビTwitter spacesまとめ)
こちらの記事は、2021年11月24日時点での情報を基にされています。
2021年11月24日(水)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:安川康介
安川康介
おはようございます。
木下喬弘
おはようございます。
安川康介
めちゃくちゃ元気いいですね。ひろゆきさんとのライブどうでした?
木下喬弘
めっちゃ良かったでしょあれ。最高でしょ?
安川康介
最初の30分ぐらいしかまだ見れてないんでね。
木下喬弘
ちゃんと全部見てください(笑)
安川康介
宣伝をしてもらっていいですか?
木下喬弘
ありがとうございます。
実はひろゆき夫妻は HPVワクチンのことに関心をお持ちで、みんパピ!の活動に協力していただいています。
特に奥さんが非常に熱心で「HPVワクチン、日本もちゃんとやらないといけないですね」と、我々とお話をしていただきました。
その後、奥さんにみんパピ!の YouTube に出ていただいたんですけど、ついでに「ひろゆきさんもみんパピ!と HPV の話を、ひろゆきさんの YouTube でやってくれませんか?」
とお願いしたらOKをいただきました。
それで昨日、日本時間の夜9時から1時間40分ほど、ひろゆきさんと、
・HPV のこと全般
・なぜ HPV の積極的勧奨が中止になったのか
・名古屋市長河村たかしさんが、なぜ名古屋スタディの結果を揉み消したのか
そんな話をしました。
これが結構おもしろい動画ですので、ぜひ皆さんにご覧いただけると嬉しいです。
ひろゆきさんの YouTubeチャンネルで「切り抜き」をされているのを皆さんご存知ですか?
安川康介
知ってます知ってます。
木下喬弘
1つのテーマに関して大体2分程度で、テロップも付けて、しゃべっているところが切り抜かれるんですよね。
あれがですね、すごくいいんですよ。
そのひろゆきの切り抜き=「ひろ抜き」に、僕は出たくて出たくて仕方がなくてですね。僕とひろゆきさんが切り抜かれたテロップが付いた動画が上がるのを、すごく楽しみにしています。
安川康介
最初、木下先生が「切り抜かれるのを楽しみにしてます」って言って、ひろゆきさんは全く反応が無くて。「これスベったなー」と思いました(笑)
木下喬弘
そうそう(笑) ガチのスルーでした。悪意ある人があそこだけ切り抜いてくれたらすごく嬉しいんですけどね。
安川康介
それでは始めていきたいと思います。
まず、僕が11月12日に新型コロナワクチンのブースター接種を受けたのでその体験を簡単にお伝えした後、動物とコロナについて話していきます。
新型コロナワクチン ブースター接種体験談:安川康介の場合
安川康介
僕は新型コロナワクチンの1回目を昨年12月に、2回目を1月1日に、3回目を今月受けてきました。アメリカの場合は昨年9月にブースターが承認されたので、本当はもっと早く受けても良かったのです。
しかし、次の日に副反応でダウンしても大丈夫な日に受けたかったのと、たまたま都合のいい時間に予約ができず、これくらいの日程になりました。
僕の個人的な体験談になりますが、3回目は、2回目よりも倦怠感や接種部位の痛みは無かったように思います。ただ、まわりでは大半の同僚がブースター接種を既に受けていて、副反応にはやはり個人差があると感じます。
なんともなかった人が結構いる一方で、熱が出て辛かった人もいました。
今あるファイザーワクチンの3回目のデータを見る限り、副反応の度合いは、2回目とあまり大きく変わらないという印象があります。
実はアメリカでは、免疫機能が低下した方に対して、3回目接種が、ブースター接種の前に始まっていたんですね。免疫機能が低下している方に対する3回目接種は、抗体が充分に上がっていない可能性がある人に対し、抗体をつけさせる意味があります。
このため、免疫機能が低下している方に対する3回目接種は、ブースター接種ではなく「アディショナル・ドーズ(=追加接種)」と呼ばれています。
追加接種を受けた人たちの V-safe のデータでは、今のところ、局所反応は2回目よりもやや強く、全身性の反応は2回目よりもやや低いという結果です。
※V-safe・・・アメリカのワクチン接種後の安全性追跡調査システムの1つ。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)がワクチン接種者にスマートフォン上で調査メッセージを送ることができる。
ファイザーの報告では、2回目よりも3回目の方がリンパ節が腫れると報告されています。3回目接種が広がるにつれて、これについてはもう少し周知して行く必要があるかなと思っています。
僕も今まで何回もリンパ節の腫れについて話そうと思ったのですが、他に重要な話題がたくさん出てきたので、お伝えできていませんでした。今後もし機会があればやろうと思います。
ちなみに、僕の娘も、数日前に新型コロナワクチンを受けて来ました。副反応はほとんどなかったですね。その日の夜に「打ったところが痛い」と言っていたのでアセトアミノフェンを飲ませると、次の日からはもう普通にしていました。
なぜ打たせたかというと、本当に簡単に言うとまだ僕の地域では、新型コロナウイルス感染症の方がまだいて、子どもも感染しているからです。(子どもたちの感染について)学校から通知が来るんですよ。
「2年生の人が感染しました。でも隔離する必要はありません」
といったお知らせがほぼ毎週届きます。
新型コロナウイルスに感染するリスクがリアルにあり、感染するよりもワクチンを受けるほうがはるかにいいと思いますので、それで受けさせたということがあります。
内田先生も記事等で書かれていましたが、全身性の副反応っていうのは、12歳以上の子どものデータに比べると、発熱の割合とかを見ても低いんですよね。
一応今回用量が1/3ということで、そのせいか、若い子どもの免疫との反応の関係になってくるんですけれども、全身性の副反応が12歳以上の子に比べると何となく低いだろうっていう結果が出ているので、そこは少し安心して見ています。
そんなに大きなデータがあるわけではないので、今後、この年齢のグループの子どもに心筋炎等がどれくらいの割合で起きるのかを、しっかり見て行く必要があると思っています。
木下先生はブースター接種を受けられましたか?
木下喬弘
私打ったふり(笑)してたんで、打ったのが6月と7月なんですよね。
安川康介
はい、はい(笑)
木下喬弘
だから、やはり半年は空けた方がいいと思っていて、次回を打つのが…来年の1月かな。
思うんですけど、さすがに3か月か4か月ではない方がいいですよね。
安川康介
そうですね。もう少し空けてもいいかなとは思いますね。
木下喬弘
なんか普通に安川先生に相談してもうたけど(笑)さすがに4か月で打つのはナシかなと思ってるんですけど、どうなんでしょう?
安川康介
ワクチンって、期間が空いたほうが効果が高いと言われているんですよね。だから、ブースターに関しても、期間をそれなりに空けてもいいんじゃないかなと思います。
木下先生のために申し上げますが、木下先生は、「打ったふり」はしていなかったんですよね。あれはただ冗談で言ったと思いますし、実際に YouTube のインタビューやその他のライブでも「まだ打っていません」と言っていたんです。
あれが切り抜かれて、今も僕のコメント欄に貼り付けられたりするんですけれども(笑)「打ったふりはしていない」とお伝えしておきます。
木下喬弘
すみません、お手数かけて。ていうか、打ったしね、どっちにしろ。
一応言い訳をしておくと、僕は米国では優先接種対象ではないので、打てないままビザが切れて、4月に日本に帰ってきました。
根性出したら別に打てないことはなかったのですが、まだワクチンが足りていない時期だったので、日本で医療従事者として働いていないのに優先枠を使うのはさすがにいかがなものかと思っていました。
その後、ようやく色々状況が落ち着いて、6月からワクチン接種のお手伝いをさせていただくことになりました。その際に、自分も打てるなら安全にお手伝いができるかなと考え、その接種会場で自分も打って、ワクチン接種のお手伝いをさせていただいたわけです。
その当時、毎日「お前は打ったのか」というメッセージが山ほど来ていたわけですね。もしそれらのメッセージに対して「打っていません」と返したら、なんかもうえらいことになりそうな感じだったので、まあそれを「打ったふりをして」というのは言い方が悪かったのですが、スルーをしていたというだけの話なのです。
まあ、それが伝説に残る切り抜き、スクショになってしまったことで、ここにご登壇の皆さんには本当にご迷惑をおかけしています。本当に申し訳なかったなと思っています。
黑川友哉
こびナビのメンバーに届く2大切り抜きの1つですからね。「打ったふり」のやつ。
木下喬弘
もう1つは何? 電通のやつ?
黑川友哉
そうそうそう(笑)むっかーしの、電通の。
木下喬弘
ああいうのって何なんですかね。
文脈抜きで切り抜くということもそうですが、その後にどれだけ峰先生がワクチンのことを情報提供して接種の判断をさせていたかを、あの一言で全て台無しにしようとしてくる勢力っていうのは……何なんですかね、本当に。
黑川友哉
まあ、それを切り抜きっていうんでしょうね。
木下喬弘
「切り抜かれたい」とか言ってたけど(笑)
安川康介
もう十分切り抜かれていますね。
木下喬弘
夢、叶ってるやん。
コロナと人間と動物と
安川康介
では先に進みたいと思います。
最近、小児のワクチン接種の話やブースターショットの話が多かったので、「もう人間の話はいいから動物の話をしてくれ」という声が幻聴で聞こえてきました。
なので、今日は「コロナと人間と動物と」というトピックで、残りの時間を使って話していきます。
そもそも、感染症を考えるときに、どういう動物とか、生物に感染するのかは、感染症学の観点では非常に重要な知識になるわけですね。
感染症は、非常に数多くあるのですが、人間にしか感染しない感染症というのは、実はそんなに多くありません。
有名なところで言うと、結核、梅毒、チフス菌、峰先生が研究されている Epstein-Barrウイルス、A型肝炎、ヘリコバクターピロリ菌なども人間にしか感染しないと言われています。
それ以外の感染症は、動物とか蚊とか虫とか、そういったものが関連してきます。ここ最近話題になったジカウイルス、エボラウイルス、SARS や MERS も、他の動物や虫を介して感染します。
エボラウイルスもコウモリ等に感染します。
もともと新型コロナウイルス感染症も、おそらくコウモリのウイルスに起源があると考えられています。
こびナビTwitterスペースでも以前少し話したことがあると思いますが、具体的に言うと、コウモリの RaTG13 というウイルスがいて、RaTG13 と SARS-CoV-2 とは96-97%ほど遺伝子配列が近いために、コウモリから来たのではないかと言われています。
ただ、スパイク蛋白が SARS-CoV-2 と少し違うため、センザンコウが中間宿主になったのではないかとも言われています。
*センザンコウ・・・アジアとアフリカに分布する希少動物。安川先生曰く「うろこを持った、見た目がかっこいい哺乳類」。
いずれにせよ、もともと新型コロナウイルスは他の動物から人間にうつったわけなので、このパンデミックから、動物を切り離して考えることはできないと思います。なので、今回は動物についてお話をいたします。
他の動物に感染するのかについてですが、そもそも、最初どういう動物に感染するのかが、はっきり言ってわかっていなかったんですね。そして、2020年2月、流行が始まって間もないときに、香港に住むある女性の方が SARS-CoV-2 に感染し、その後、その方が飼っていたポメラニアンが感染したことが分かりました。
その後、ペットだけでなく色々な動物で感染が確認されています。
まずは、犬や猫といったペットに感染が起こることは、はっきりしています。特に飼い主が感染するとペットに感染するリスクが高いことがわかっています。今のところ、犬よりも猫の方が感染しやすいのではないかと言われています。
日本でも、ペットは多いですよね。
ペットフード協会の推計によると、日本にいる犬は、848万匹、猫が964万匹なので、日本ではペットを飼っている方は非常に多いと言えます。
犬とか猫以外では、ミンク、フェレット、ライオン、トラ、ピューマ、ハムスター、オジロジカ、サル、ゴリラ、うさぎ、カワウソ、豚などで新型コロナウイルス感染症が確認されています。今のところ、ニワトリやアヒルといった鳥類にはあまり感染していません。
どういう症状を引き起こすかというと、無症状や軽症が多いです。咳、鼻水、倦怠感、食欲不振が出るところは、人間と症状が似ています。
重症化するかについてですが、そもそも動物の具合が悪くなったときに、新型コロナウイルス感染の検査自体あまりしないので、はっきりとした割合はわかりません。
しかし、猫が感染して、安楽死が必要なほど症状が進んでしまった事例が報告されています。
あとは、ネブラスカ州の動物園のユキヒョウ3頭が COVID-19 で亡くなったことが、アメリカではニュースになっていました。
それ以外でも、インドではライオン、パキスタンでは虎が、それぞれ COVID-19 で亡くなったと報告がありました。
今ある動物の中で一番感染しやすいというか、感染が有名になったのはミンクなんですね。
木下先生が以前少しふれたことがありますが、去年デンマークでミンクが大量感染して、1700万頭が殺処分になりました。
ミンクとヒトの ACE2受容体は、アミノ酸配列が92%ほど似ていると言われていて、もしかしたら動物によって感染のしやすさはだいぶ違ってきているのだろうなと思います。
今、アメリカの動物園では、新型コロナワクチンの接種が非常に進んでいます。動物用のワクチンを開発したのはゾエティスという家畜やペットの医薬品の会社で、元々ファイザーの子会社だそうですが、2012年に、ファイザーから独立しています。僕は知らなかったのですが、結構有名な会社みたいですね。
S&P 500 って木下先生知ってますか?
木下喬弘
いやー、ちょっとわかんないです。
安川康介
今、インデックス投資が話題になっていて、スタンダード・アンド・プア 500 という、アメリカの優良な銘柄500を集めたインデックスがあるのですが、このインデックスにゾエティス社が入っていることを僕は知りました。
この分野では業績が良い、有名な会社みたいですね。
木下喬弘
アメリカの優良企業500に入っているんですか? そのワクチンの会社が。
安川康介
そうです。ゾエティスという、ペットや家畜の医薬品を扱っている会社が入ってるんですよ。大きな会社で、日本にも支部があるようです。たぶん獣医さんならご存知でしょうね。
このゾエティス社が、アメリカにある70の動物園に11,000回分のワクチンを供給しています。
▼Zoetis Donates COVID-19 Vaccines to Help Support the Health of Zoo Animals
出典:ゾエティス社プレスリリース 2021/07/02
このワクチンについてはあまり情報がないのですが、メカニズムで言えば、ノババックス社の組み換えタンパクワクチンに似ているという資料があります。ここに使われているアジュバントをかなり調べたのですが、何なのかはわかりませんでした。
犬と猫にこのようなタンパクワクチンを打って抗体価が上がったという資料が公開されています。一番最初に動物園でゾエティスのワクチンが接種されたのは今年の3月で、カリフォルニア州のサンディエゴ動物園のオランウータンとボノボが対象でした。
ちなみに、ロシアでは動物のワクチンが3月に承認されています。
名前が「カルニワク・コブ」というワクチンです。
▼ロシア、動物向けコロナワクチンを承認 世界初を主張
出典:CNN co.jp 2021/04/01
これは不活化ワクチンですね。
ということで、今は色々な動物園でワクチンを打っている状況です。
ここまでで何かありますか? 峰先生。
峰宗太郎
いいですね。動物の話題も大事ですね。
ゾエティスって、すっごいおっきい会社なんですよ。
研究部門も強い会社で、実は職場へ、ゾエティスへの就職案内みたいなメールがきたりします。しっかりしたワクチンを作っている会社です。
僕もゾエティスに関してはアジュバントは知らないですね。ただ、組み換えタンパクワクチンで、結構効くという話です。
動物実験がそのまま治験になっているということで、動物用ワクチンを1万回以上寄付していることもあり、今すごく有名になっている会社ですよね。
木下喬弘
副反応が起きていたりしないですか?「ワクチン打った後に動物が全部死んだ」とか、そんな噂は流れてないですか?
峰宗太郎
それはないですね。動物に危害が加わったということはないですし、動物は痛み等を訴えないので。本当に重篤な場合以外で副反応はあまり出てこないので、そういうデータも無いみたいですね。
木下喬弘
VAERS とか無いんですか?
※VAERS・・・Vaccine Adverse Event Reporting System:ワクチン有害事象報告制度
峰宗太郎
……無いと思います(笑)
木下喬弘
しょうもないこと言って、退場させられそう(笑)
安川康介
ワシントンポストを読んでいたら、動物園で接種を進めているじゃないですか。それで唯一ヒグマ=Brown Bear が接種部位の痛みを訴えたと書いてあって、これどうやって……
木下喬弘
ベアーズだけに?(VAERSとBearをかけている)
安川康介
……スルーして行きますが(笑)
どうやってヒグマが接種部位の痛みを訴えたのかが、すごく気になりました。たぶん痛そうにしていたと思うのですが、副反応はあまり見られていないようです。
キリンに打って、そのキリンが1か月後に亡くなったのではないかということで、ワクチン忌避派の方が「動物へのワクチンは危ないんじゃないか」というのがあり、一応「そんなことは起きていない」というファクトチェックの記事も出ました。
そのようなわけで、今のところ、ワクチンによって動物が亡くなっているという事実はありません。
子どもにワクチンを打つときは、泣いていたりして難しいんですよね。だから動物のワクチン接種はもっと難しそうだなと思っていたら、これもワシントンポストに、どのようにワクチンを打っているのかという記事がありました。
今日お聴きの方の中に将来的に動物園で動物にワクチンを打つ人も、もしかしたらいるかもしれないので、一応テクニックをお伝えしておきます。
10月25日にワシントンポストに掲載された記事で、カリフォルニアのオークランド動物園というサンフランシスコの東にある動物園で、どのようにワクチンを接種しているかが書いてありました。
虎やライオンは、ワクチンを受けた後に口の中にヤギのミルクをスプレーしてあげるとすごく喜ぶそうです。
They really love it. =すごく好きだ と書いてあります。
木下喬弘
打つ手順はないんかい?(笑)
安川康介
いやいやだから「これ打ったらヤギのミルクあげるよ」って言ったら、打たせてくれる。
木下喬弘
なんで人語が通じてるんですか(笑)おかしい。いろいろおかしい。
安川康介
でも結構頭いいですよ、動物って。はい。
木下喬弘
びっくりしたわ今(笑)
どうやって打つかめっちゃ勉強しよう思ったら、打った後のケアの話が出て。
安川康介
柵の近くまで近づいてきてくれるみたいです。それでサッと打つんですね。
オークランド動物園の話の続きですが、
・クマにはホイップクリームとアイスクリーム
・チンパンジーにはマシュマロと M&Mチョコレート
ということなので、もし動物園で働かれていて動物にワクチンを接種する方は、このコンビネーションを試してみてください。
僕はワクチン打った後に何もデザートがなかったので、なんかこれいいなと思いながら読んでいました。
少し話を戻して、11月12日に USDA 米国農務省が、ミンクの新型コロナワクチンの申請を受け付けるという通知を出しています。
ゾエティス社は、もともとペット用のワクチンを開発して、それを承認して欲しかったようなのですが、今のところペットからヒトへの感染がほぼ報告されていないので、それは不要だろうということですね。
ただ、ミンクの集団感染が起きたので、これは多分もうじきゾエティス社が申請して、承認されるのではないかと思っています。
動物のワクチン接種や予防がなぜ大切かというと、まず1つは動物の命を守るためということはありますが、ミンクが感染したときに、ヒトからミンクへ、その後ミンクからまたヒトへ感染しただろうとわかっているからです。
これはヒトに感染したウイルスとミンクに感染したウイルスの変異をそれぞれ調べ、どういう感染が起きていたのかを調べた研究で、おそらくミンクからヒトへ感染したと言われています。
▼Transmission of SARS-CoV-2 on mink farms between humans and mink and back to humans
出典:Science 2021/01/06
人間で感染を抑えても、感染した他の動物の中で新しい変異が起き、それがまた人間に返ってくる可能性もあるので、動物の予防も、少し頭の隅に入れておくべき問題なのかなと思います。
最後に CDC が作成した、「ペットと COVID-19 について知っておくべきこと」みたいな特別なサイトがあったので、それをさらっと説明して、今回は終わりにします。
▼Animals and COVID-19
出典:CDC 2021/11/18
今わかっているのは、ヒトからペットには感染するだろうということです。もし新型コロナウイルスに感染していたら、猫や犬から少し距離をとり、感染予防には注意した方がいいだろうと言われています。
逆にペットからヒトへ感染することはあまり報告されていません。おそらくそのリスクは低いだろうと言われています。
なので、CDC は
「Do not put masks on pets =ペットにマスクをしないで」
と言っています。木下先生がもし犬や猫を飼っていたら、マスクをしないでください。
木下喬弘
飼ってないです。
安川康介
他には、
「アルコールなどの殺菌剤にペットを浸さないでください」
と書いてあります。
これを書いてあるところが非常にアメリカらしいなと思いました。
書いていないと、本当にアルコールに浸けてしまう人がいるのではないかと思いながら読んでいました。
ペットが病気の場合は獣医さんと話して、検査することもあると思いますが、できれば隔離した方がいいと書いてあります。
以上、今回は、動物と人間とコロナウイルスについて話しました。かなりニッチな話でしたが、何か追加したい方はいらっしゃいますか?
黑川友哉
よろしいですか?遠藤先生が挙手されていますが、ひとことだけ。
動物のワクチンや医薬品に関しては、日本では農林水産省が所轄となっており、その承認にはやはり審査があります。審査の最終段階では、なぜか厚生労働省にも諮問をされます。
厚生労働省は基本的に人と暮らしと未来のための省庁なので、動物のことも見るのは私も初めて知りまして、不思議なのですがそういう流れになっているそうです。
もしかしたら動物のお薬にもドラッグ・ラグがあるのかもしれませんが、日本でも承認されるかもしれませんね。
以上、情報提供でした。
安川康介
ありがとうございます。
アメリカでは
・ペットが感染したかもしれないがどうやって検査すればいいのか
・自分のペットにコロナワクチンを受けさせられるか
など、いろいろ記事化されているんですよね。
しかし、日本のメディアにはこういった視点はそんなに出てこないので、今回取り扱いたかったということもあります。遠藤先生、どうぞ。
感染症の制御を困難にするリザーバーの存在
遠藤彰
人獣共通感染症としての COVID-19 についてちょっと補足です。
人の中でたくさんうつるウイルスについて、動物にもうつるのか、あるいはその動物からさらにまたヒトへうつるのかが大事というのは、先ほど安川先生もおっしゃっていた通りで、今後の流行の未来にかなり大きく関わってきます。その感染サイクルの中に重要なエージェントとして(動物が)入ってくるかがすごく大事です。
というのは、ある動物種の中で、安定的に増殖のサイクルが進んでしまう病気って、すごく撲滅が難しくなるというか、ほぼ事実上不可能に近くなるというのがあります。
動物園等なら動物へのワクチンをがんばって打つこともできますが、野生動物にワクチンを十分に打つことや、あるいはソーシャルディスタンスをとらせることは、普通は無理です。
人間の中だけで安定的に流行している場合は、人間が頑張ればどうにかなります。しかし、動物の中でも完全にその感染サイクルが回ってしまう場合は、基本的に手を付けられなくなります。
そうすると、ウイルス自体を撲滅するというよりは、「そのウイルスは動物の中で広がるけれども、人間の方に来ないように頑張って止める」という方向の防御しかできなくなるので、結構そこは大事なポイントになります。
今回の SARS-CoV-2 の場合、一番最初にヒトにうつした元の動物がいるはずなので、ウイルスの流行が安定的に続く動物種は、少なくとも1つは存在することがほぼ確定しています。
ただ、オリジナルの一番元の株が今のところあまり復活していなさそうなことを考えると、ウイルスが動物からヒト人口に漏れてくる(「動物からヒトへのスピルオーバー」と表現します)のが、そう頻繁に起きない程度には、ヒトの生活から遠い動物なんだなと考えています。
しかし逆に、ヒトの中で大きな流行が起こっている最中に、ペットや家禽・家畜など、ヒトに身近な動物で「うつしやすい・うつされやすい」ことが、今のところ確認できていないのは、かなりラッキーなニュースです。
もしペットの中に「うつしやすい・うつされやすい」動物がいた場合、そこでウイルスが増えてまた人に戻ってきて…ということが起こるので、この流行の制圧が非常に難しくなったはずだということも、大事なポイントだと思います。
補足でした。
安川康介
ありがとうございます。そうなんですよ。
動物に感染するかとか、動物にどれくらい広がるかというのは、すごく重要なトピックです。
少し話はそれますが、例えば耐性菌の問題もあります。抗生剤が効かない耐性菌も、近年医療の現場で非常に問題になっています。
家畜産業では抗生剤が使われるんですよね。50%以上の抗生剤が家畜に使われて、家畜の中で耐性が生じて、それが人間にも感染する可能性というのが言われています。
ですから、この動物と人間のインタラクション(相互作用)はすごく重要だと思います。
ただ、他の動物でどれくらい検査しているのかにもよるでしょう。多分あまり検査していないので、もしかしたら僕たちが思っている以上に動物の方で感染が起きている可能性はあるのではないかと考えています。
すみません、峰先生、どうぞ。
峰宗太郎
遠藤先生のお話は、具体的に例を出すと、まずはインフルエンザですね。鳥や豚などの家禽類や家畜が、人獣共通感染症としてリザーバーになるんですよね。
毎年同じタイプのインフルエンザが、北米大陸でも中国でも流行するんです。これって理由ご存知ですか?
……あれ? 安川先生?
木下喬弘
……研究所から流出……
安川康介
(慌てて)みず! 湖に集まるんですよね。
峰宗太郎
はい。そこら辺の話を今度僕の Voicy でしようかなと思ってたんですけど、それはですね、スピルオーバーが常に起こってくるんですね。
スピルオーバーについては遠藤先生にも説明していただきましたが、動物のリザーバーからヒトに漏れ出してくることは、毎年起こっています。
鳥さんから豚さんへ、豚さんからヒトなどへうつるのですが、一方で、スピルオーバーが起きなくても大流行になることがあります。
これは HIV なんかを考えていただくといいですね。
あれはおそらくチンパンジーなどの霊長類からやって来たと考えられていますが、そんなに何度もスピルオーバーが起こっているわけではないです。
特に、HIV タイプ1と2の2つしかなくて、基本的には、一度起こったスピルオーバーがヒトの集団の中で大流行してしまっています。
このように常に動物界からやってくるわけではないけれど制御が難しくなる、という例もあるんですよね。
エボラもそれに近くて、おそらくコウモリなんかが(エボラウイルスを)持っているのではないかと考えられています。
エボラは比較的頻繁にスピルオーバーするけれども、インフルエンザほどではありません。
制御がしにくくなるのはもちろんですが、ヒトの世界の中でどの程度制御がしやすいかは、とても大事な要素であることも間違いありません。
特にワクチンによって制圧ができるだろうと見込まれているウイルス感染症は、基本的に
・もうスピルオーバーが起こらず
・人獣共通感染症ではなくなって
・ヒト界にいるウイルスである
ということは、まずは1つの大きな、人類にとってのアドバンテージになり得るんですよね。
例えば天然痘がそうでしたね。動物との共通感染がないわけではありませんが、基本的にヒトでしか流行しません。それから麻しんやポリオもそうです。
今回のコロナの場合は、スピルオーバーがどのくらい起こってくるかというと、あまり起こらないんじゃないかというところなんですが、もしミンク等が大きなリザーバーになり、そこで感染がずっと続いてしまうと確かに制御が難しくなります。
ということで、その要素は常に考えておかなきゃいけないっていうのは大事な視点ですよね。
今日の動物の話はすごくおもしろかっただけではなく、視点として忘れてはいけないところだとは強く思いました。ありがとうございました。
安川康介
ありがとうございます。では9分過ぎてしまったので、これで終わりにいたします。
最後、何か付け加えたい方はいらっしゃいますか。
木下喬弘
宣伝していいですか?
安川康介
どうぞどうぞ!
木下喬弘
吉村先生のお手元には既に私の著書が届いたようで、吉村先生にはいずれ感想をいただければと思います。
11月26日発売になりますので、皆さん是非チェックしていただければというのが1つと、あともう1つ、安川先生に最初に紹介していただいたのですが、みんパピ! のクラウドファンディングが残り少なくなってきましたので、それもありまして、明日11月25日から5日間連続で、基本は夜9時からにさせていただく予定ですが、こびナビメンバーとみんパピ! メンバーでインスタライブを復活させたいと思っています。
初回は今西先生と内田先生で、残りのところは日程調整中です。
インスタライブ勢の皆さんもたくさんいらっしゃいますので、久しぶりのインスタライブ、怒涛の5日間をぜひお楽しみに。
よろしくお願いいたします。
*クラウドファンディング、インスタライブ共に終了致しました。
安川康介
ありがとうございます。それでは今日はこれで終わりにしたいと思います。皆さんご視聴ありがとうございました。
良い一日をお過ごしください。
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