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新型コロナウイルス感染症の治療まとめ(7月6日こびナビTwitter spacesまとめ)

2021年7月6日(火)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:谷口俊文


谷口俊文
あの……まだ開始時間前なんですが、少しお話をしたいなと思って。
峰先生と安川先生、調子はいかがでしょうか?
ちょうどアメリカの独立記念日が終わって、安川先生はその間もずーっと働いていたみたいなんですけど、どうですか?(笑)

安川康介
そうなんです(笑)。
こびナビの仕事していたら、花火、全く見れませんでした……🥦💦

谷口俊文
残念ですね。

安川康介
(笑)でも峰先生がバッチリ見てて写真アップしていたので、その写真を見て味わいました。

谷口俊文
峰先生の花火の写真、すごいきれいでしたね。
僕、本当に感動しましたよ。

峰宗太郎
いやすいません、花火見に行っちゃいました👶(笑)。
もうね、どうしても息抜きしたかったんですよね。

谷口俊文
Facebook を見ていたら、僕のアメリカの友人たちもマスクしないで、みんなすごい楽しんでいるという感じがしてて、なんか羨ましいですね。
今、ワシントンD.C. 辺りはそんな感じですか?
もうみんなマスクなしで外食して、独立記念日を楽しんで、って感じなんですかね?

峰宗太郎
まぁ、大体ですけど、肌感覚で言うと半分ぐらいですかね。
半分ぐらいの方はしっかりマスクしてますし、半分ぐらいの方は、開放感に浸っているというか。
昨日の帰りはメトロで帰ってきたんですが、やっぱりマスクしてない人が来ると緊張しますよね。
ちょっと嫌な感じがして、マスクして欲しいなー、ワクチンしてるのかなー?なんて思って。
そういうような、ちょっとまだスッキリしない感じなんですが、盛り上がってきている方、開放的になっている方も結構いるという状況になっています。

谷口俊文
いやぁ、すごい羨ましいですね。
やっぱり、日本もワクチンがどんどん進んで行って欲しいですね。
僕ね、自分の子どもたちに花火を見せたくてたまらないんですよ。
ドーン!!っていうね。
そういう日がいつか来ることを願って活動してます。

では、時間にもなってきましたので、そろそろ始めたいと思います。
皆さん、おはようございます。

今日は、Twitter で治療薬についてお話を聞いてみたいという方がいらっしゃったので、新型コロナウイルスの治療薬の話をします。
治療薬については、なかなかお話できる人って少ないと思うので、僕がワーッて話して終わっちゃう可能性がありますが、ご容赦いただければと思います。
あと、実は、今日こびナビのスペースに参加できる人が少なくて……
本当は今日はお休みでもいいんじゃないかっていう話も出たぐらいなんですが、一応短くてもいいからやりましょう、という話で、私が代わりにやらせていただきます。

どうして治療薬の話をしようと思ったかというと、ちょうど先週、中外製薬から新しい治療薬が承認申請されたという話が出たのと、興和がイベルメクチンの臨床試験を開始することがニュースになって、話題になっているので、このタイミングでいろいろ話してみたいなと思いました。


【これまでの新型コロナウイルス治療の経緯】

まずは、これまでの治療の経緯などを簡単に話してみたいと思います。
僕は、2020年の1月からずっと患者さんを診てきてるんですね。
千葉県第1号の患者さんは、千葉大学病院に入院されました。
ふらっと外来の総合受付にやってきて、「新型コロナウイルス陽性の人と接触歴があったんですけど」というお話で。
それで検査をしたら、実は陽性だったということが分かったんです。
その方は20代前半の女性で、すごい軽症だったんですね。
風邪をひいたぐらいの症状で、大したことないなと思ってたんですが、CT 撮ったら肺炎がバッチリあるんですね。
入院中に「髪の毛が抜ける」と看護師に訴えられていたんですが、僕、その時にそれには気づかなくてですね。
PCR が陰転化したら退院された、という感じでした。

その後、ダイヤモンドプリンセス(もうなんか懐かしい感じもしちゃいますが)、こちらの患者さんが自衛隊で運ばれてきました。
この方は結構重症で、ECMO(体外式膜型人工肺)とかに2か月間に乗せていたんですけど、結局亡くなってしまったんですね。
この時に、厚生労働省の方を通して NIAID(アメリカ国立アレルギー・感染症研究所)の先生と繋いでもらって、どうにかレムデシビルという抗ウイルス薬を使えないかということを交渉させてもらいました。
僕自身、アメリカのベセスダ(注:NIAID の本拠地)と電話のやり取りをして、日本で使用できる分量を確保できないかと働きかけて、もう少しで入手できるところまで行ったんですが、その患者さんが腎不全になって、透析が必要になってしまいました。
その時レムデシビルは透析の患者さんには使えない、という話だったので、結局使えなくなり、その当時有効かもしれないと言われていた抗HIV薬(カレトラ)を使ったり、非常に早い時期だったんですが、アビガンを使用したりしましたが、やはりダメでした。

その後、第1波というのも経験しまして、介護施設などでクラスターが発生して、介護施設で働く20代の患者さんに対する ECMO とかもそのとき経験しました。
「ハッピー・ハイポキシア(幸せな低酸素症)」と呼びますが、酸素のレベルがどう考えても足りないのに、本人全く苦しくなさそうで。
酸素飽和度を見ていると、このままだと死ぬでしょうと思って、もう集中治療の先生を呼んで、喉にチューブを通して(気管内挿管と言います)、それで人工呼吸器管理にしていただいたら、あっという間に ECMO になりまして。
この方は一応 ECMO も離脱できて、人工呼吸器管理も離脱できて、無事退院されましたが、今でも私たちの病院の外来に通院されています。
もう1年経ってるんですが、やはり少しだけ胸痛とか、そういった後遺症が残ってるみたいです。
「若いから重症化しない」とか言ってる人は、本当考え直して欲しいなって、こういう時に思うんですね。
第1波のときから、割と20代、30代の若い方でも人工呼吸器に繋げて救命してるっていう人結構いるんですよ。
若年層への感染を α(アルファ)ウイルスとか、δ(デルタ)ウイルスといった色々な変異ウイルスのせいにしてる人もいるんですが、第1波の時は本当に苦しくて、重症化した人が多かったという印象を持っています。
あと、Long COVID と言いますが、若年者は後遺症がかなり長く続くことがあるので、やはりワクチンを接種して予防した方が絶対お得だと思います。
僕自身が1番嫌だなと思う後遺症は頭がやられる症状です。
Nature Medicine という雑誌に出た論文で、16歳から30歳までの若年者で、発症してから6か月経過していても、13%は集中力低下、11%に記憶障害に残っているということで、まあこんな後遺症が残ってたら仕事できないじゃん!って普通に思いますよね。
疲労感とかも21%残っていたり、あとは味覚嗅覚障害28%残ってるので、やっぱ結構きついと思うんです。
あとは、「子どもは全然重症化しないんじゃないか」と言う方が一部いらっしゃいます。今年の5月に入ってからの症例なので、αウイルスだと思うんですが、千葉医療圏の中で、11歳の子どもでも普通に肺炎を起こして酸素が足りなくなって、レムデシビルとステロイドで治療している方もいるんです。
Twitter とか SNS を見ていると、「BCG 接種している国では、小児患者は MIS-C(小児COVID–19関連多系統炎症症候群という川崎病みたいな症状)にならない」と断言してる人がいて、悲しくなっちゃいましたね。
日本小児科学会のページを見てみると、やはり日本でも MIS-C の症例がパラパラと報告されていて、もし全体としてアメリカ並みに流行していたら同じ割合で MIS-C も出てたんじゃないかなと考えています。
ファクターX とか BCG とか色々流行りましたけど、あまりそういう影響はないんじゃないかなと考えています。

一部のツイッタラーや学会レベルでも、イベルメクチンを推す方が結構いるようですが、僕は正直言ってそれがよく分からないですね。
実は使っている施設を見たことがあるんですが、全く効果を実感できるものではなかったです。
エビデンスという意味でも、今出ている論文などを見ても、効くか効かないか、本当によく分からないような状況が続いてると思います。
これは、本当の有効性が分からないということなので、僕自身はどんどん研究して欲しいと思っています。
だから興和が日本で臨床試験するっていうんだったら、僕は応援してますよ。

参考:新型コロナウイルス感染症患者を対象とした イベルメクチンの臨床試験【開発コード:K-237】を開始
https://www.kowa.co.jp/news/2021/press210701.pdf

その結果すごく有効性が高ければ、どんどん使えばいいと思うんです。
ただ、現時点では有効性が全く分からないので、万人に推奨できるような薬ではないです。
1つ言えるのは、使ったらコロナがすっきり良くなるよっていうような薬ではないと思うんですね。
有効性があったとしても、結構微妙なんじゃないかなと予測しています。
僕たちは、初期の頃はアビガンを使ってましたが、アビガンは少しましで、ないよりはあった方が良い、という感触で、使ったら使ったなりに手応えは感じてました。
ただ、エビデンスとして有効性を示していないので、これに関しては自分の感触が誤っていた可能性も充分あると思っています。

これらに対して、レムデシビルを使ってみたら、患者さんのつらさがなくなって、ものすごく臨床的に効果を実感できる、つまり本当に「良くなる」という感じでした。
やっぱり使った時の臨床的な効果の実感が全然違っていて、仮にこの薬の臨床試験が終わってなくて、お試しで使っていたとしても(有効性のエビデンスがなくても)、これだけ効果を実感できる薬だったら絶対使ってると思うんです。
アビガンとかでは得られなかった効果が、レムデシビルでは得られるという実感ががありました。

もう1つはっきり分かったのは、ステロイドという免疫を抑える薬を早く使いすぎると、めちゃくちゃ肺炎が悪くなるということですね。
ステロイドは、うまく使うとすごく効果抜群で、重症化を防ぐこともできるし、死亡率もすごく下げることができるんですが、使うタイミングを誤るとすごく悪くなる。
ステロイドをどこかのメディアが「肺炎予防薬」とか言っていて、これを聞いた時には本当に椅子から転げ落ちそうになりました。
やはりタイミング次第で効果抜群の治療薬にもなるし、めちゃくちゃ悪くなる薬にもなるので、モニタリングをきちんとしながら使用すべき薬です。

トシリズマブ(商品名:アクテムラ)という薬もあります。これは、レムデシビルで治療してデキサメタゾンというステロイドで治療して、それでも効果が見られない、もうめちゃくちゃ悪い状態、人工呼吸器につなぐか繋がないかっていうような判断を迷うようなタイミングで使うと、かなり効果を実感できるような薬です。
最終的に人工呼吸器に乗ってしまったりとか ECMO に乗ってしまったりしても、割と離脱が速くなるので、僕はトシリズマブを相当重症化している患者さんには積極的に使っています。

JAK 阻害薬のオルミエント(バリシチニブ)に関しては、最近使い始めてますが、割と早めに使い始めないとあまり感触が良くないという印象を持っています。
オルミエントはエビデンスはしっかりと出ているので自信を持って使えますが、新しい薬なので、今後色々感触を確かめながら、使っていきたいと思っています。
感触確かめながら、というのが、私たち臨床医の仕事だと思っています。

ちょっと長い前置きになったんですが、今まで治療をしてきた感想をお話ししました。


【新型コロナウイルス治療のパイプライン】

ここからは今日の本題、新型コロナウイルス治療のパイプラインについて簡単にお話します。

中外製薬の承認申請の話を聞いたことがありますでしょうか。あれは新型コロナウイルスに対する抗体カクテル療法というものでカシリビマブとイムデビマブいう抗体を2つ組み合わせることで、新型コロナウイルスを抑え込むというお薬ですね。

参考:カシリビマブとイムデビマブの抗体カクテル療法、COVID-19に対する治療薬として製造販売承認申請
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210629170000_1122.html

これは Regeneron という会社が開発した抗体なんですが、国内では中外製薬が扱うということです。
これはまだ論文化されていないんですが、アメリカの NIH(アメリカ国立衛生研究所)のガイドラインなどでは、軽症患者さんにこれを使うのは非常に良いと、推奨されている薬です。

皆さんご存知かと思いますが、トランプ前大統領が新型コロナウイルスに感染した時にこの抗体カクテル療法を受けてるんですよね。
トランプ前大統領が感染した時、僕は結構重症化するんじゃないかなと思ったんですが、割と早く回復したので、びっくりしたんですよ。
もしかしたら抗体カクテル療法はよく効くんじゃないかと、それ以来ずっと注目していたんです。
第3相臨床試験の外来患者さんを対象にした試験の結果を見てみると、例えば、今推奨されている用量は600mg なんですが、抗体カクテル療法を使用した群で736人中7人(1%)が入院もしくは死亡、プラセボ群は748人中24名(3.2%)が入院もしくは死亡ということで、有意差が結構ついて、効果があるだろうという結論が示されたので、現時点ではアメリカでは推奨されている薬剤になっています。
もう1つ面白いのは、濃厚接触者に対する投薬も臨床試験をやっているんです。
いわゆる曝露後予防という考え方ですね。
発症した患者さんを治療する際は点滴(静脈注射)で投与するんですが、曝露後予防は皮下注射で、多分インフルエンザのワクチンとかと同じような感じで注射すると思います。
曝露後予防効果としては、症状を伴う感染の発症のリスクが81%減少し、症状を伴う感染を発症した人でも、平均1週間以内に症状が消失する、プラセボ群は消失するまで3週間かかったというデータが出ていて、濃厚接触者に対する投薬としても非常に有効ではないかと言われています。
問題点としては、値段が相当高いことです。
現実的にこういった薬がポンポン使えるかどうかというと、それは結構微妙だなと実は思っています。
今まで、軽症の患者さんの重症化を防ぐための薬っていうのは、あまり感触として良い薬がなかったんですが、こういった薬が出て、適応をちゃんと選べば、もしかしたら有用になるかもしれません。
特に基礎疾患をお持ちの方とか、高齢者で新型コロナウイルスに感染された方に、こういった薬を投与することで、重症化を防ぐことができたら、高い薬でも結果的には安上がりになるかもしれないとか、そういった考え方があると思うので、この薬には結構期待をしています。

もう1つ、アメリカのメルク(Merck)という会社が開発しているモルヌピラビルというプロテアーゼ阻害剤があります。
これは新型コロナウイルスをターゲットにした飲み薬です。
飲み薬でコロナを治療できるということで、自宅療養とかホテル療養の患者さんに対する治療薬として非常に有望視されているものです。
この薬自体は、MOVe-IN という名前の臨床試験で入院患者、MOVe-OUT という名前の臨床試験で外来患者に対する有効性を検証しています。
残念ながら MOVe-IN試験、すわなち入院患者に対する治療は第2相試験の結果、臨床的有用性を示す可能性は低いとのことで、試験が中止されました。
MOVe-OUT、外来患者に対する臨床試験の結果は最近プレプリントで発表されていますが、5日間の治療でウイルス量を検出感度以下に持っていったのに対して、プラセボ群ではウイルス検出が11%残っていたということで、まあ、なんだかんだ言って有効性は割と高いんじゃないか、と結論づけています。

参考:Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.とRidgeback Biotherapeutics
軽度から中等度の新型コロナウイルス感染症の経口治療薬として開発中のmolnupiravirの臨床開発プログラムの進捗状況を公表
https://www.msd.co.jp/newsroom/msd-archive/2021/chq_0419.xhtml

この結果を見てみると、少し微妙な感じもするんですよね。
ただ、軽症の患者さんに使える薬のオプションが本当に少ないので、こういった経口ウイルス薬には少し期待することにしてます。

もう一つ、ファイザー(Pfizer)の PF-07321332 というのも話題に上がっている薬です。こちらも似たような、プロテアーゼ阻害薬の一つで飲み薬ですね。こちらは第1相の臨床試験が開始されていますので、今後どうなるかというところを期待するしかないと思います。

参考:Pfizer Initiates Phase 1 Study of Novel Oral Antiviral Therapeutic Agent Against SARS-CoV-2https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-initiates-phase-1-study-novel-oral-antiviral

僕ばかりずっと話していて申し訳ないですけれども、もう2つ、この中で紹介させていただきます。
先ほど「めちゃくちゃ効果が実感できるよ」って話をしました、レムデシビルの吸入薬が現在開発中です。
どう使うか、色々議論が分かれるところで、まだ臨床的に有用かどうかも分かってないですが、例えば暴露後に吸入薬で、抗ウイルス薬を吸入して発症を防ぐ、もしくは重症化を防ぐ、など色々考えられると思うんです。
開発パイプラインとしてはレムデシビルの吸入薬も開発中であることがプレスリリースされて、公開されている情報ですので、ネット検索すれば最新情報が出てくると思います。

参考:外来患者さんを対象としたレムデシビル吸入剤の臨床試験を開始
https://www.gilead.co.jp/-/media/japan/pdfs/corporate/statement/07-14-2020/remdesivir-inhaled-trial-initiation-open-letter_200708.pdf?la=ja-jp&hash=FFD3B310B0DF0D508ABF93ACF5BA9A9C

最後にご紹介したいのは、高齢者の重症化を抑制する薬を塩野義製薬が BioAge と提携して開発しています。
これももう公開されている情報ですが、プロスタグランジン D2・DP1受容体拮抗薬です。
これどう読んだら良いか分からないですが、asapiprant(開発コード:S-555739)という DP1受容体拮抗薬を使うと、高齢者の重症化を抑制できるんじゃないかということで、開発を進めています。
ただ、これは、今後どうなるか分からないですね。
私は動物実験レベルで検証されていた去年の2020年の4月ぐらいから注目していました。
DP1受容体拮抗薬は抗アレルギー薬の一種だと思うので、使っている国はあるかもしれないのですが、簡単には手に入らなかったので、実臨床では使えなかったんです。
現在開発中ということで、こういった新薬にも期待をしています。

参考:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した高齢者の重症化抑制を目指したasapiprant(S-555739)の第2相臨床試験開始に関する BioAge社の発表について
https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2021/03/210323.html

色々な抗ウイルス薬(ウイルスを抑える薬)を作ってたり、重症化を抑える薬を作ってたり、様々なパイプラインがあるんですが、結局肺炎が重症化し始めたら止められないので、あとは免疫を抑える薬を使うしか選択肢がなくなって、そうなると肺には後遺症が残ってしまいます。
結論から言うと、新型コロナウイルス感染症の良い薬って全然ないんですよ。

新型コロナウイルスに感染すると、なぜ肺炎が出るか、そのメカニズムが分かれば、そこをターゲットとした薬は作れると思うんですが、まだそこまで解明されていないので、まだ良い薬が出てないという印象を持っています。
臨床医として非常に歯がゆいです。

まとめると、新型コロナウイルス治療薬に関しては僕自身は、短期的に見るとあまり良い状況じゃないと思っていて、本当に良い薬はなさそうと考えています。
これだったら、ワクチンを打った方が全然いいでしょうと思っているわけです。


【質疑応答】

以上になりますが、峰先生とか何かコメント等頂けますか?
ずっと喋ってて申し訳ないです。

峰宗太郎
いや、本当によくまとめていただいて、ありがたいです。
パイプラインの話に入る前に、谷口先生に最初にお伺いしたいことがひとつだけあります。
今回の第5波というか第4波の名残?か分からないんですが、東京の統計とか見ていると、若年者の方でも重症化の方が若干多い傾向にあると思うんですが、この原因や所感などはございますか?
それともこれは第1波から見られた傾向で、まだ注目に値するほどではないと感じておられますか?

谷口俊文
印象としては、最近明らかに若年者の方でしっかりと肺炎を発症される方が増えてきていて、重症化しやすくなっているという印象はやはり持っています。
もちろん第1波の時も重症化する方はいたんですが、当時は本当に戦い方が分からず、最適化された治療を受けられなかったというのはあると思うんですね。
今はそれなりの治療を実施しているにも関わらず、割と重症化している印象を持っているので、重症化しやすいといえば、やはりしやすいんじゃないかなという印象です。

峰宗太郎
なるほど、ありがとうございます。
実感を持っていただいてるのが非常に大事だなと感じたところです。

お薬についてですが、やはり施設ごとにかなり経験を積み重ねて、それぞれでガイドラインとして使い方の工夫を結構なさってるという理解でよろしいでしょうか?
現場のさじ加減がなかなか分からないところがありまして。
例えば、先ほどの、ステロイドを早く始めてはいけないというお話、炎症が余計悪化してしまうので、それは理論的にも理屈的にもすごく納得できますし、実際その加減がガイドラインにも出てると思うんですが、そういう細かいところはやはりガイドライン見るだけですとコツがわからないんですよね。
そういうところって結構今分かってきて、日本の国内で共有され始めているんでしょうか?

谷口俊文
いえ、あまり共有されてないと思うんですね。
共有するって本当に難しいです。
エビデンスとして出すのも非常に難しくて。
日本では例えばアビガンもイベルメクチンも結構前から言われているにも関わらず、臨床試験が全然できてない、やってはいるかもしれないですが、強いエビデンスが出るような臨床試験を終わらせていないと思うので、そういった状況を考えると、ステロイドの使用を開始するタイミングとか、そういった細かい話は非常に難易度の高い臨床試験だと思うので、なかなかエビデンスを出すのは難しいと思ってます。

峰宗太郎
そうですよね。
いや、先生の口からお話しにくいと思うので、私から言ってしまうと、結構施設間格差があるように思うんですよね。
やはり治療のやり方だとか、濃度だとか、どう言ったら……効果って言ったら失礼なんですが……そういったところも含めて、しっかり薬を使うのであれば日本発のエビデンスを出して欲しいと思いました。例えば研究目的であればしっかりデータを出す、そうでないものに関しては「ここならば良さそうだ」っていう、多く治療をされている専門家の意見や経験を積極的に取り入れて出来るだけエッジの効いた標準化した良い薬の使い方を開発して欲しいと、製薬企業にはしっかりと科学的な根拠のある薬を開発して欲しいと、今日の先生のお話を聞いて思いました。
感想になっちゃってましたけど、そんな感じで聞かせていただきました。
本当に分かりやすかったです。
ありがとうございます。

谷口俊文
ありがとうございます。
他にコメントある方はいらっしゃいますか?

前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生
ちょっと2〜3分遅れたんですが、めちゃくちゃ勉強になりました。
やはり新型コロナウイルスの治療薬なかなか難しいという状況はすごくよく分かりました。
あと、やはりプロテアーゼ阻害薬はまだ今のところ開発が始まったばかりで、臨床試験結果が分からないところがあると思いますが、抗体医薬は治療薬として新規で注目されている中では、まだ期待が出来る部類なのかなと思って聞いていました。
もちろん費用対効果の問題はありますが、そこのところが今後更に進めば、期待ができるのかなと思っています。
ただ、特に軽症の方で何か良い薬がなかなかないのも問題の1つだったので、抗体医薬が軽症の方でも使えれば、お金の問題はともかく、結構面白い、期待ができると思っていました。
治療薬として最近注目されている中のバランスっていう意味で、先生はどうお考えですか?

谷口俊文
ありがとうございます。
抗ウイルス薬に効果あれば1番良いですが、抗体療法で結構お金かかるのと、あと抗体なので、免疫逃避の話が出てきてしまうので、変異ウイルスにどれぐらい効果があるか、ウイルスってどんどん変異しているので、そこが本当に心配なところです。
昔のウイルスだったらよく効いていたかもしれないですが、新しい変異ウイルスには効かなくなってきたとか、そういったケースが出てくるかもしれないです。
そこがわからないので、やはり、ここは抗ウイルス薬に期待したいなと思うんです。
まぁ、アメリカのメルクの開発品とかを見ると、入院患者さんでは全然ダメだったとか、そういう話で、めちゃくちゃ効くというわけではなさそうだということで、本当に治療薬は開発が難しいという印象を持っています。

前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生
ありがとうございます。

谷口俊文
実は、今日、これからちょっと仕事が詰まってまして……💦
もっと色々コメントされたい方もいらっしゃると思うのですが、大変申し訳ないんですが、これでおしまいにさせて頂きます🙇‍
明日は、吉村先生から医療ニュースをご紹介させていただきます。
それでは、日本の皆様、良い1日をお過ごしください。
それでは失礼します。
ありがとうございました。


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