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コロナ禍での医療資源の集約化について議論しました(7月20日こびナビTwitter spacesまとめ)

※こちらの記事は、2021年7月20日時点での情報を基にされています。※

2021年7月20日(火)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:吉村健佑


吉村健佑
おはようございます。こびナビの吉村が解説する…今日はですね…『医療政策ニュース』という題にしております。
7月20日ですね、今日は私こびナビの吉村が朝の30分の時間帯を担当したいと思います、よろしくお願いします。
スピーカーに黑川先生来てくださってますね、おはようございます。

黑川友哉
おはようございます、お願いします。

吉村健佑
いつも私、だいたい医療政策に関連したお話をお届けしています。
こびナビにはいろんなメンバーがおりまして、例えば峰先生は基礎医学の研究などを担当しておりますし、木下先生は臨床研究・疫学研究などを専門としておりますけれど、今日は少し社会医学、政策研究という分野の話から内容を紹介していきたいなと思っています。
コロナ禍を受けて今後の入院医療をどのように変えていったらいいのかとか、対応していったらいいのかというのをこの30分で考えたいのですが、内容が大きいのでもしかしたら今回だけで終わらず、来週以降にも続きをすることになるかもしれません。
とても大事な話なのかなと思っていろいろ情報をまとめてきました。
こびナビをなぜやってるかという話にも関わってくることです。


【ワクチンを普及させたい理由】

吉村健佑
この話はこびナビのホームページを作ったときから、私が少し長い文章で説明しています。
そもそもなぜワクチン啓発をしてワクチンの普及と接種が進んで欲しいと思っているか、これは人によっていろんな思いがあると思います。
私はこの活動に入る前に、千葉県で入院される患者さんの行き先を決めるお手伝いをする仕事をしていました。
新型コロナウイルスが広がって病床が次々埋まって、医療が非常に逼迫して、通常であれば治療を受けたり当然命を助けることができるところを、新型コロナウイルスの影響で通常の医療が思うようにいかないという状況を目にして、これを何とかしなきゃいけないと思って活動を始めました。

患者さんの診療をどうすれば確保できるのか、必要なときに必要な医療を受けられるという状況をどうやって作るのかというのがスタートです。
ワクチンを打つことによって感染を予防し、発症を予防し、重症化を予防し、死亡を予防することで大きく医療資源を使わずに済むことが出来ます。
そうすると必要な方に必要な医療を届けられることに繋がります。
それがとても大事で実現したいので、ワクチンが広がってほしいと思っています。

そういうことで今回は、新型コロナウイルスの影響を受けて、日本の入院の医療とか病院の医療をどのように準備していったらいいのかという話をしていきたいと思います。

これはちょっと中長期的な話というか、明日明後日の話ではないのですが、今回日本中の病院や医療機関が困ったわけですよね。
急に新型コロナウイルスが来たので、今までのやり方では成り立たないということで、国や自治体、病院が対応を1年半ぐらい急いでやって、現場の医師看護師など医療従事者も急いでやって、今の状況が何とかあります。
今後またこのようなパンデミックが来た時に備えて、今からどういう準備をしていって、どれぐらいの期間でそれを達成したらいいのかな、なんて話を国の検討状況とか、政策の検討状況について、自治体の状況を含めてお話していきたいなと思っています。

そもそも、この入院の医療提供体制をどうやって変更するかというと、国は地域医療構想というものを長く目標に掲げて、入院の医療提供のあり方を変えようとしていました。
この地域医療構想というのは、端的にいうと需要に応じて医療の提供を変えていこうという政策で、コロナ禍の前からずっと検討され、進められてきました。
医療法という法律に基づいてそれを進めています。
最近いろんなメディアや国会でのやりとりを見ていると、この地域医療構想とか入院医療提供体制の変更について、誤解があるなと感じます。
例えば地域医療構想をもとに病床の再編や効率化を進めていった結果、入院ベッドが減ってしまう、そうすると新型コロナウイルスに対する対応力も下がってしまうんじゃないか、といった意見ですね。
ウラを返せば、日本中に多くのベッドを維持して医療機関を大量に維持しておけば、新型コロナウイルスの対応力は維持される、上がっていくんじゃないか、といった意見です。
そういった質問や意見から、地域医療構想を推進するのはけしからんというふうなコメントも出たりしています。
こういった意見に対しては、少し短絡すぎるなと感じます。


【人口の減少、人口構造の変化】

吉村健佑
まずは地域医療構想にはどのような背景があるのかというのを話をして、コロナ後の医療提供を少し冷静に考えてみる必要があるのと思います。
そもそもなぜ地域医療構想という病床の入院医療提供体制の変更がこの国には必要なのかと言いますと、1番大きい理由としては、2010年頃からこの国の人口が減ってきていることです。
その人口減少の速度が年々増していて、だいたい昨年1年間で60万人ぐらい日本の人口が減ってるということが推計されています。
60万人人口減るということは大きな市町村、例えば千葉県内だと船橋市とか柏市とか、そういった規模の市町村に相当する人口が1年間で日本全体から姿を消すということになるわけです。
人口が減ってきても、「いやいや高齢者の数は減ってないよね」っていう意見があります。
高齢者の数は、2010年以降もしばらくは伸び続けています。
2021年の現在でも高齢者の数はやんわりと増えているのですが、これもいずれ減少に転じます。
いつ減少に転じるかというと、2030~2040年…都道府県や地域によりますが、その頃から高齢者の絶対数もじんわりと減ってくることになってきます。
そうすると何が起こるかというと、医療を受けている多くの方は65歳以上の高齢者である、ないしはお子さんであるということを考えると、日本中に多くの医療提供体制を維持したとしても、2030年以降はそれに対する需要が全国的に減ってきてしまうということになるわけです。

都市部は一部2045年とかそれぐらいまで延びることもありますが、2050年には全ての地域で医療需要の減少が予想されています。
そうするとやはり医療提供の体制も人口構造の変化に対応しなければいけません。
人口が減ると医療需要が減るだけではなく、専門治療のニーズも減ってきます。
例えば癌に対する専門手術とか、高度急性期といわれるような急に脳や心臓の血管が詰まったり破れたみたいなことに対して緊急の手術を行う、こういった医療の需要も減ってきます。
そうすると、いつでも緊急対応ができます、専門治療ができますと各病院がいくら準備をしていても、患者さんの数がどうしても全体で減ってくるということになります。
新型コロナウイルスの対応もそうなのですが、1施設当たりの緊急対応の数が減ってくると、そこで働いている医師や看護師、医療専門職の習熟度、経験から得るいろんな技術の修練を維持するのも難しくなってきて、医療提供を行った際の最終的な結果が良くないということが、既に日本の研究でもわかっています。
これは NCD(National Clinical Database)などの研究からもわかっていて、そうすると1施設あたりそれなりの数の高度医療を集約してこないと、医療の質が維持できなくなる可能性があるということです。

専門的なのですがもう少し話をしたいと思います。
一方で肺炎とか、糖尿病による一時的な入院とか、そういう一般的な診療、一般的な医療での入院治療というのは、高齢者の増加や全体的な人口構成の高齢化によって需要が増えるということがわかっています。
つまり、20-30年後には一般診療の需要は上昇ないしは維持されて、専門治療の需要は維持ないし低下してくるということがわかっているということです。


【医師の働き方改革】

吉村健佑
もう1つ、一般の方には聞きなじみがないかもしれませんが、医師の働き方改革というものがあります。
一般の、医師以外の仕事については、2019年に働き方改革関連法というのが適用されて、労働時間の上限規制が行われておりますが、医師を含むいくつかの職種については上限規制がまだ先送りされています。
2024年4月になると先送りが終了して医師も働き方改革の適用になります。
何が起こるかと言いますと、日本中の勤務医は非常に労働時間が長いのですが、それに対して上限規制されまして、その上限を突破するとその医師を雇用している病院長とか、理事長とか、そういった経営者が罰則を受けるという時代がきます。
そうすると医師1人当たりの労働時間が減ります。
これは医師個人にとっては健康上とてもいいことなのですが、一方で医療提供の面から見ると量が減ってしまうわけです。
例えば夜間2人当直していた体制から1人になる、1人当直していた体制からオンコール(病院に滞在していなくてもよいが、いつでも呼び出せる状態)になるということです。
そういった形で全体としては医療提供の時間が減りますから、医療を効率よく配分していかないと、医療提供そのものも今のような状況は維持できないということになります。
こういった需要の変化や医療提供側の量の変化が、もうここから10年以内、少なくとも3年後には働き方改革がやってきますので、こういう状況に入院医療も対応していこうというのが地域医療構想の狙いです。

ではこの内容を受けて少し前に進みたいと思います。
コロナ後の入院医療をどのように考えたらいいのかということですね。
先ほど誤解があると述べたのは、今の医療提供を維持していけば、新型コロナウイルスへの対応力は上がる、ないしは維持されるのではないかという話を例に出しましたが、そうとも言えないところです。
このように医療需要が変化したり、労働時間の上限がある世界になってきますと、人口がどんどん減っていく中で全ての高度な医療を巨大なまま維持しても、現実的に患者さんはそんなに来ないということになりますし、コストもかかってきます。
時々来る患者さんに対してすごく大きな資源とトレーニングされた人材を常に準備するというのは、効率は決して良くないということ、それは持続可能ではないということで、やはりそこに対して、効率化ないしは必要な体制に変化していく必要があるということです。


【新型コロナウイルスへの対応力を持つために】

吉村健佑
新型コロナウイルスへの対応力を入院医療が持つためにはどういったことが必要かを述べていきます。
まず少数の病院に中核病院として高度な医療を担っていただき、その高度な医療機関を中心に、それをサポートしていくような病院を地域の中につくることが理想です。
前者を高度な医療を支える医療機関、後者を地域の医療を支える医療機関とに仮に呼ぶとしますと、その2つをきちんと役割分担して、その地域の中に医療機関のチームとして設置していく必要があります。

新型コロナウイルスの対応をしている病院を日本中で見ていくと、そういったチームで連携をとれている地域では新型コロナウイルスへの対応がしっかりできているというのが実際にわかります。
実際に患者さんを受け入れられている病院、なかなかそれができない病院というのが、今回の1年半の医療提供の実績を見てわかってきました。
簡単に言うと、先ほど述べたような、中規模の病院が4個5個という形で地域の中で残っていても、新型コロナウイルスに対応する余力がなく、地域全体としては対応力はなかなか上がらない。
そこで中規模の病院が4個5個あるのではなく、中核の病院を1個か2個置いて、その周辺にそれをサポートする病院を3個4個置いていく、そういったチームをそれぞれの地域で作っていくということで、地域全体で新型コロナウイルスのような緊急事態にも対応力を上げていこうというのが今の考え方です。
これは従来の地域医療構想と完全に一致した考え方なので、地域医療構想と新型コロナウイルス対応は一直線上に並んでると理解して、地域医療構想をきちんと進めていくことが必要だと思います。

実際にこの内容については、最近活発に色々なところで話題になっています。
やはりコロナ後の病床再編とか入院医療提供体制の変更というのは大きな関心事項になっているようです。
例えば先週の報道などを見ていきますと、東京都病院協会長の猪口正孝会長という方がコメントを出していまして、コロナの影響によって、医療提供のあり方はより明確になったと話をしています。
つまりこのままの提供体制ではなくて何らかの体制の適正化、変更が必要になったということと、やはり今回東京都の病院を見ても、対応できた医療機関とできなかった医療機関がより鮮明になったことも話しています。
千葉県でも同様に、いわゆる中核の病院として地域の中である程度余力を発揮できる病院と、中・小規模で新型コロナウイルス用にマンパワーを捻出できないところが大きくわかれているようです。

今後またコロナのようなパンデミックが来るかもしれないということを織り込んで、医療提供体制を計画的に作るということが必要だと思います。
単に現行の医療提供を維持していけば対応できるということではなくて、各医療機関をきちんと色分けして役割分担をして、それがお互いに連携するという体制をつくっていく必要があるでしょう。
ここまで一気に話してしまいましたが、皆さん何かコメント、質問ありますか。


【感染症対応可能な人材の配置、育成】

谷口俊文
そのコロナの診療を地域を守る病院に下ろしていったりとか、複雑なところに関しては中核の病院でやるというのは非常に大切な考え方だとは思います。
問題点として、今地域を守る病院のうち、少し小さめの病院では感染症対応ができる医療従事者が少ないことがあげられます。
感染症専門医が少ない、これは感染症専門医でなくても別にいいと思うのですが、感染管理看護師などがいるだけでも、新型コロナウイルス対応などが相当違ってくるので、今後例えばこういう形で新型コロナウイルスの診療を進めるとしたら、少なくても全ての病院に感染管理看護師を、看護師だけでもいいのでちゃんと感染の指導ができるような医療従事者を置くというのがすごく大切になってくるかなと考えます。

吉村健佑
谷口先生、おっしゃる通りとても大事な指摘です。
今のお話を少し振り返りながら補足しますと、やはり高度な医療を支える中核病院、これがやはり地域の中で必ず1つはなければならないと思います。
例えば ECMO や人工呼吸器など、そこでしかできない高度で集中的な治療を一時的に行う医療機関が必要です。
それをサポートする病院というのは周辺に必要で、そこが一般的な診療を支えていくということになります。

そこで重要になるのはまさに人材の問題です。
日本では谷口先生など感染症の専門医を持たれている方がとっても少ない状況ですので、その専門医を各地域を支える病院にまで配置していくことはおそらく不可能だと思います。
高度な中核病院で複数のチームとして存在して、そこが助言しながら、新型コロナウイルスのようなパンデミックが起こったときには司令塔となって、まさに今の谷口先生の役割を担っていただき、地域全体を支えるということが必要になってくるでしょう。
また人材としては専門の看護師を地域のサポート病院にも配置して、日々トレーニングをするということが重要だと思います。
医療提供体制と合わせて人材の育成と配置を計画的に進めていかないと、今回のように起こってから慌ててしまうということになりますので、そこも同時に重要かなと思います。
ありがとうございました。他いかがでしょうか?


【医療機関の集約化】

池田早希
地域との連携は、今の現状の体制だとても一番重要なことだと思うのですが、今後数十年後のパンデミックを見据えた上で、また効率よく医療を提供するためにも、集約化していくという流れは現実的にいかがでしょうか。
海外の国々では日本のように小さな病院や小さなクリニックが散在するのではなく、集約化されることによって、人員配置とかトレーニングを効率よく積めるのですが、そういった流れはいかがでしょうか?

吉村健佑
池田先生ありがとうございます。池田先生がいらっしゃったようなテキサスの巨大な病院・病院群とまでは集約できないかもしれないですけれど、それに近いような状況を日本も目指していると言えます。
そうでないと、必要なときに必要な医療を受けられるという提供体制が安定してできないと思います。
なぜ医療機関を集約する必要があるかといいますと、先ほど少し例にも出しましたが、中規模の病院が複数あったとしても、例えば救急対応が夜間に必要になった場合、各病院とも先ほど医師の働き方改革などで人員が薄くなってしまう状況がありますので、どこの医療機関も救急車を受けられないとか、急性期疾患の患者さんを受けられないとか、集中治療ができないとなってしまう状況が起こりえます。
そうすると地域の方も当然困るわけで、そうならないように少なくとも1か所には厚い人材を配置して、潤沢な医療資源を1つに集中しておいて、そこがある程度対応するというように、集約が必要だろうと考えます。
さらには先ほど少し触れたように、1つの医療機関にある程度集中しておかないと、医師のトレーニングや看護師のトレーニングをやるためには、よい環境とは言えないんですね。
集中的な医療機関にトレーニング期間の医師を配置して、そこでトレーニングをして一人前になったら各周辺の病院で指揮を執る、といった人員体制ができますので、そういう意味でも集約を進めて、そこが中核病院として診療と教育の拠点となるということが期待されているかと思います。

そんな形で今後進んでいけばいいかなとイメージはするのですが、まだまだ実は課題がめちゃくちゃいっぱいあります。
今のコンセプトを実現しようとすると、いろんなクリアしなければならない障壁があります。
例えば先ほど述べたような高度な医療を支える医療機関と地域の医療を支える医療機関をどこがどう役割分担するのか、自分の医療機関はどちら側に入るのかということは、各医療機関として見たら非常に死活問題になります。
これまで中核的な病院を目指すために人員配置を進めたり、投資をしてきた病院が、「いやあなたの病院は地域の中での役割はどちらかというと地域を支えるサポート側の病院だからそっちに回ってくれ」といった要請をされてしまった場合、「いやいやちょっと待ってください、これは病院の経営に直結します、多くの人を雇用したりとか、いろんな機器も投資してしまっているので、できれば私は中核的な病院としてやっていきたいんです」と主張されると思います。
実際このようなことは日本中で起きていまして、多くの医療機関が中核病院として今後中心的な役割を担うんだという状況になっていて、サポートしていく病院のなり手がなかなか少なく、自然に任せていくと適した数になりません。
そこで地域医療構想調整会議という場を作って、どこがどういった役割を果たすかを話し合いで進めようとするのですが、当然その話し合いもそう簡単には進みません。
各医療機関の経営や雇用に直結する問題なので、なかなかスピードが上がってこない現状があります。
地域医療構想調整会議は、千葉県内では2次医療圏別に9つの地域に分けて議論しています。
ちなみに地域医療構想調整会議は日本中で約350の地域に分けて議論しているのですが、その中でも必ずしも活発な議論をされてるとはなかなか言えない状況です。ここに今回の新型コロナウイルスを受けて、時間をかけてじっくりやるということも、なかなか難しくなってくる、少し急いでいかないといけない、テンポを上げていかなければいけないと思うんですよね。
そうでないと、例えばパンデミックがまた5年後10年後15年後いつなのかわかりませんが、もし仮に起こったときにもう一度同じ苦労をしてしまうことになりますから、そこの議論を進めていかなくてはならないということを私個人もとても強く感じています。

今日はかなり自分の仕事の専門に寄せた話を進めていますが、あと数分でまとめていきたいと思います。
いかがでしょうか皆さん何かコメントや質問ございますか。

内田舞
どの病院になるかっていうことで、病院へのインセンティブはあるのでしょうか。
例えば中核病院になった方が支援額が高くなって、医師やスタッフに払える給料が高くなるとか、そういうことはあるんでしょうかね。

吉村健佑
内田先生ありがとうございます。
そこはとても大事なところで、実際はあります。
例えば平成2年の診療報酬改定の中では、救急車を実績としてたくさん取ってる病院などに対して診療報酬を多くつけるとか、そういった資源配置のメリハリはついています。
ただこれをやってはいるのですが、これをドラスティックに大幅にやろうとすると、それもそれで現場の医療が大きく混乱してしまうという意見もあって、どちらかというとちょっと小出しになってるという状況かと思います。
今おっしゃったような中核病院に対する資源は大幅投下し、逆に言うと、サポート的な病院から資源を中核に回すように、バランスをとるということになってくるのかと思います。
有限な資源の再配分となるとそうなってしまうので、そこの議論を早く進めすぎても混乱してしまうということで、ゆっくりやっています。
でもゆっくりやってると間に合わなくなってしまうということで、とてもジレンマがあるところなのですが、政策としてはおっしゃる通り、そういったインセンティブをつけながら議論が進むように、国も投資をしているという状況です。

内田舞
やはり人間なので頑張るには何かいいことがないと頑張りにくいので、非常に重要だと思いますね。
アメリカで私が勤めてる病院は、Massachusetts General Hospital といってかなりの大病院で、そこと全く同じことをしろとは、全く世界のどの病院にもいうつもりはないのですが、このコロナ禍で私が本当によかったなと思ったこととしては、スタッフがいろんなロールにフレキシブルに入れ替わり立ち代り入っていったということです。

もちろんそれはスタッフのトレーニングのレベルやとか医師の知識のレベルなど、いろんなものが関係してくるものなので、レプリケート(複製)はしにくいと思います。
例えば去年の3月にコロナでいろんなものがシャットダウンして、病院としてコロナメインになりますとなったときに、まず4日シフトで医者のチームがコロナ病棟にバンバン入っていって、バーンアウトを防ぐために4日働いたらあとは2週間ぐらい休みというシフトになりました。
感染症内科や呼吸器内科、内科の専門医がトップに就きながらも、その下で働いた医師はいろんな科の…例えば私のような小児精神科だったり、整形外科の先生だったり、その他いろんな人が働きました。
そういった人たちは感染症指導医のもとオーダーを入れたりとか、私だったら家族への説明を担ったりとかそういったことで関与して、コロナ病棟を手伝ったら医師個人に少しボーナスがあるとかそういったインセンティブもありました。
そういう協力体制は、1人の医師の負担っていうものを減らすためには良かったかなという印象を受けました。

吉村健佑
ありがとうございます。非常に潤沢で、ちょっと羨ましいところもあるなと思って聞いていました。
日本とアメリカ、以前も少しデータを紹介しましたが、例えば国でならしたときの100ベッドあたりの臨床医の数というのが、アメリカは100ベッド当たり90.9というデータが出ています。
一方日本は17.9と、4分の1以下なんですね。
4分の1以下の人員で入院の治療を担当してるというのが残念ながら日本の状況でして、病床当たりの医師を増やす方策としては、病床を少し絞っていくとか、医師を集約していく必要があると思います。
それが進んでいくと先ほど述べたようなチームを作ったり、役割分担する、時間をある程度決めて診療に当たるなど、そういった持続可能なやり方に繋がっていくのかなと思います。

今日はワクチン接種の先にあるものとテーマを据えて、今後5年10年15年後に日本の医療提供体制をどのように変更していったらいいかということをお話しました。
今日実は触れられなかったいくつかのテーマもありまして、同じように地域医療構想のキーワードで話をしたのですが、例えば医療計画というものがあって、今後その中に新興感染症等の対応を入れていくとか、いくつかの方策が既に打ち出されてきています。
またこれは別の機会に政策を紹介していきたいと思ってます。
ワクチンと一緒で、いろんなことに関して正確な情報をぜひ伝えていって建設的な議論ができればいいのかなと思い、そんな話を今日させていただきました。

9時5分となりました、今日はここまでとしたいと思います。
今日はこびナビの吉村が解説する医療政策ニュース、コロナの先を踏まえた医療提供体制について、少し紹介しながら意見交換できました。
今日火曜日ですね、7月20日…そろそろ夏休みとかいう時期にもなってきますが、今日は少し天気いいです。
よい1日をお過ごしください。
我々大人も頑張って仕事しましょう。
皆さんどうもご視聴ありがとうございました、引き続きこびナビの活動をご支援ください。
ではまた、皆さんありがとうございました。

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