闇は、いつだって...1
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「おいっ!どないすんねん!はよ決めよーや!」
健智が慌ただしく俺に言い放った。
「やばいて!まじ!俺、イヤやで!なんか俺が迷ってるみたいな空気」
俺が考える間も無くまくし立ててくる。
結局、健智は俺が決めないからと先に進まない事で自分に火の粉が降りかかるのを良しとしていないようだ。
「空気て、、、」
俺は健智に聞こえるか聞こえないか微妙なラインの、答えにならない合いの手をため息と共に吐き出した。
空を見上げると雲だらけなはずなのに、垣間見える真っ青な空。雲が遠慮したかのように、太陽の周りだけは何も邪魔するものなく容赦なく紫外線と共に熱を降り注ぐ。周りは俺たちと同じ服を着た名前はわからないがよく見る顔の男女が、これまた俺たちと同じようにチャリンコを漕ぎながら、友人と話す奴。ブルートゥースイヤフォンから流れてるミュージックに乗って軽く首が揺れている奴。いや、それどころかあいつはもう歌っている。あれはケンシ版パプリカだな。思い思いに同じ場所を目指してチャリンコを漕いでいる。
夏休みを目前に控えた俺たちは、浮かれた気持ちを隠しきれずに、妙なテンションで走り慣れた通学路を縦横無尽に突き進んでいた。
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