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【音楽×珈琲 鑑賞録】2月26日~エドワード・エルガー 愛のあいさつ × 亀山珈琲焙煎所 タンザニア コンゴニ農園(深)

音楽観を鍛える鑑賞録。
とそれにあう珈琲をそえて。
2月26日のテーマは【音楽史】

とりあげる作品は、
エドワード・エルガー /
愛のあいさつ

×
あわせる珈琲は、
亀山珈琲焙煎所 /
タンザニア コンゴニ農園(深)

です。

エドワード・エルガーの名言
"I always said God was against art and I still believe it. Anything obscene or trivial is blessed in this world and has a reward - I ask for no reward - only to live and to hear my work."
「私はいつも神は芸術に反対していると言っていましたが、今でもそれを信じています。わいせつなものや些細なものがこの世界で祝福され、報酬があります。私は報酬を求めません。生きて私の仕事を聞くだけです。」

サー・エドワード・ウィリアム・エルガー
Sir Edward William Elgar
1857年6月2日 - 1934年2月23日
イングランドの作曲家、指揮者。

数ポンドの名曲

クラシック音楽のなかで、イギリス出身の代表的作曲家といえばエルガーです。
なかでもこの『愛のあいさつ(Salut d'amour)』はほんとうにメロディが良い曲。
シンプルにピアノとヴァイオリンの演奏だけで目を瞑り聴き入りたくなります。
有名曲なので多くのひとが聴いたことがあるでしょうし、なぜかつい最近も聴いた気がしてくる不思議な曲です。なんかタイアップあったかな?

この楽曲のエピソードは、とても美談。
1888年にエルガーのピアノの生徒であったキャロライン・アリス・ロバーツへの婚約記念に贈った曲です。
無名の作曲家と陸軍少将の娘という身分格差から、アリスの親族は2人の仲を認めていませんでした。反対を押し切っての結婚の際に贈った曲のタイトルは当初、ドイツ語を得意としていたアリスのために “Liebesgruss(愛のあいさつ)” と名付けられました。
出版に際して出版社からフランス語に変更を求められ、“Salut d'amour” とされたものの、楽譜の売れ行きは好調。しかしエルガーには数ポンドの収入しかもたらさなかったといいます。

その後、エルガーは名声を高めていくことになりますが、不遇の時代は『エニグマ変奏曲』が現れるまで続くことになります。作曲家として求められはするものの、経済的には食いつなぐだけであり、認められることもなかった。
そういった時期を経て、ようやく日の目を見たころに上記の名言を遺しています。

エルガーにとって『愛のあいさつ』は大切な曲であり、素晴らしい曲でありながら、当時の業界体制では恩恵をもたらすことがなかった。エルガーからしてみたら、悔しかった過去の思い出を述懐したものだと思いますが、こういった神も仏もない不条理さを噛み締めることは、思い当たる節があります。

世の中には、ほんとうに不条理なことはあります。
デッドスポットに落ちたかのような、いくらもがいても浮かばれないこともある。
しかし、それでも、やる。
間違った方向に努力していないかと自問自答しながら、軌道修正しながら。
それで報われなくても、徒手空拳を延々とやり続けても、
やりたいから、やる。

朝、目覚めたらぜひ、『愛のあいさつ』を聴いて、
今日やるべきやりたいことに全力を注ぐ決意をしてみてください。
"only to live and to hear my work."
「生きて、わたしの仕事を聴くだけ」
そこに悦びを見出しましょう。

音楽にあう珈琲を考えてみる

このエルガーの音楽を受けて、淹れる珈琲も思考してみましょう。
エルガーが『愛のあいさつ』を手がけていた時期は、生涯のパートナーはいたものの、経済的には不遇だった時代。
それでも希望の灯を絶やさず、前にすすむ努力をしていました。

今回淹れたコーヒーは、
長野県上田市、亀山珈琲焙煎所のタンザニア コンゴニ農園の深煎りです。

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タンザニアはアフリカの東部にあり、キリマンジャロが有名です。
国立公園、自然保全地域の多い国で、コンゴニ農園はンゴロンゴロ国立公園付近とあり、野生動物もいる大きなカルデラがある地域のようです。

コーヒーのキリマンジャロは知名度があるように思えますが、
世界的にみたら人気があるとはいえないそうです。
ヘミングウェイの『キリマンジャロの雪』という作品から知名度が高まったとは知りませんでした。
そのキリマンジャロからは遠い地域ですが、その広大で自然と野生に満ちた場所から、はるばる日本の海なし県に届く道のりを思うと、ありがたいものだと思わずにはいられません。

このコーヒーを飲むと未知の味わいがあります。
言語化しようにも困難な特別な味です。
でも、素晴らしい香気とコク、圧倒的な複雑性があります。
コーヒーがもつ多様性の豊かさに驚きました。

タンザニアはかつてドイツ、そしてイギリスと植民地支配を受けていました。
2019年のデータでは、名目GDPは60,810(単位:百万米ドル)
成長傾向にあるとはいえ、実態経済はいまだに厳しいことが想像できます。
エルガーが嘆いたように、経済的不遇なのは神の仕業なのでしょうか。
だとしても素晴らしいコーヒーを生産する農家さんは、いまに生きながら、未来へ希望の灯をつないでいます。
そんなコーヒーの魅力を堪能したらきっと、なにかしらの想いを馳せる。
そして知れば知るほど、大切な行動はなにかと考えます。

ぜひ飲んでみて、想いを馳せてみてください。

うかがった珈琲店の情報です。
亀山珈琲焙煎所
長野県上田市中央5丁目6−26
営業: 10:30~19:00 日曜10:30~17:30
定休: 金曜

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