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被災地にいない私たちが私たちのためにいまできること | 京都・四条の心理カウンセリング カウンセリングオフィスSHIPS 認知行動療法・ブリーフセラピー

 こんにちは。カウンセリングオフィスSHIPSです。京都 四条烏丸でカウンセリングルームをしています。オンラインカウンセリングもしていますので、全国からアクセス可能です。
 当オフィスは、ブリーフセラピー、認知行動療法を中心にしたアプローチで、プラグマティック(実用主義的な)支援を掲げてカウンセリングをおこなっています。

 まず、この度の1月1日に起きた能登半島地震、1月2日の羽田空港での衝突事故によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。相次ぐ余震と厳しい寒さのなか、人的資源も生活物資も限られ、精神的にも肉体的にも蓄積する心労、疲労もいかばかりかと拝察いたします。一日も早く、皆さまが再び安全と安心を生活の中に取り戻せる日がきますよう心よりお祈り申し上げます。

 また、被災者の救助、支援のために尽力されている関係者の方々に深く敬意を表します。

被災地から離れた場所にいるけど辛くなっている方へ

能登半島地震の惨状を伝えるニュースが連日、流れています。こうした情報に触れていても心には負担がかかることがあります。

気持ちが沈んだり、どこか心がザワついて落ち着かない気分になったり、不安な気持ちがずっと続いたり、眠れなくなったり。自分が平穏な日常を送っていることに罪悪感を抱いたり、なにかしなければならないような焦燥感にかられたり。過去にトラウマ体験がある方の中には、それらの辛さも連鎖的に思い出されたり、体調が悪くなったりする方もおられるかもしれません。

そんな方に、知っておいてほしいことがあります。

急激に大きなストレスイベントに見舞われた際には、心に負担がかかっています。それは被災していなくても、被災地のニュースを見聞きし、被災地で生死に関わる苦境に立つ方々を想い、心を痛めている私たちも同様です。
そんなときに生じることがある症状はおもに4つです。

ここで大事なのは、いずれも、「異常な事態に対するこころの(防衛反応としての)正常な反応」であるということです。自分の心身を守り、元に戻そうとするための自己治療的側面があるものです。

トラウマティックなストレス症状が生じているときというのは、いわば、心が怪我している状態です。それは、被災していない私たちでも同じです。

身体が怪我した場合は、赤い血が流れて痛みを感じるわけですが、それも正常で必要な反応ですよね(出血は、赤血球・白血球・血小板が集まって組織をもとに戻そうとしてくれますし、痛みはここに危険が迫っているということを教えてくれる危険信号として機能してくれますね)。子どもが血をみるとパニックになるけど、そういうものだと知ることでずいぶんと落ち着き楽になりますね。

でも心の怪我の場合には、どういう症状がでるかは学校ではあまり教えてくれないし、あまり知られていません。だからそれを知っておきましょう、あわてないために。代表的な4つの症状を説明しますね。

主なストレス症状

過覚醒

いらいら感、過剰な警戒心、常に焦っている感じ、追い詰められている感じ、些細な刺激でもビクッと驚いてしまうような感じ(驚愕反応)、動悸、発汗、不安、不眠といった症状です。交感神経の働きが強くなっている状態です。

これは、頭のなかで常に警報が鳴り響いて臨戦態勢になっているような、心身が「非常事態」の設定になっているような状態です。非常事態なのですから、こころが警戒して非常事態モードになることは当然といえば当然ですね。なんとか、心と身体が気を張って、自分で自分の身を守ろうとしてくれている正常な防衛反応です。

フラッシュバック

侵入ともいいますが、心の傷に関する記憶の自動再生です。過去に体験した嫌な記憶が勝手に思い出されて、あたかも今起きている現実かのような生々しい記憶に圧倒されてしまうような体験です。

なにか事件が起きた時に防犯カメラの映像を何度も何度もチェックするのと同様で、自分の脳内にあるデータを何度も何度も再生して、危険から身を守るためにどんな細かな情報も見逃さないように心身が必死になっている状態です。危険から身を守ろうとする心身の自然な適応反応であるといえます。

回避

フラッシュバックや辛い気持ちになりそうな刺激を避けることです。出来事に関して思い出したり考えたりすることを避けたり、そうなりそうな刺激(ニュースなど)や行いを避けることです。

言うまでもなく、苦痛をもたらす「フラッシュバック」や「嫌な気持ち」をできるだけ避けようとすることは、ごく自然な適応反応ですね。

ネガティブな認知と気分

否定的な考えが浮かんできたり、楽しいはずだったものに興味や関心がもてなくなったり、罪悪感がわいたり、自分を責めるような自責感が沸いてきたりします。

人によっては、「今でも被災地ではろくに食べられない人がいるのに」「ろくに寝られていないで苦しんでいる人がいるのに」「楽しみを奪われた人がいるのに」「悲しみに暮れる人がいるのに」と思って、自分が安全な空間で食事をとったり眠ったりすること、休んだり、楽しいことをしたり趣味をしたりすることに罪悪感を抱く場合があります。

非常事態には、自分にとって危険な刺激・情報への関心が高まるのは当然ですね。自分の身を守るためですから。その反面、自分にとって安全・安心であったり、幸福だったりするような刺激・情報への関心が下がるのも無理はありません。

また罪悪感については、自力で事態を解決するために、自分の行動を振りかえったり反省したりすることは、本来は適応的な反応ですよね。だから、自分になにかできることはないか、自分の力でコントロールできるものはないかと、必死に探しているような状態です。それ自体は、早く状況を解決しようと試みる心身の自然な適応反応ともいえるでしょう。

しかし、災害が起きたことは、自分の力では解決できない事柄(自分の責任ではない事柄)なのですが、脳はそういうことまで自分でどうにかしようと空回りしてしまう結果、自責的な考えが出てきてしまいます。

今自分のためにできること

被災地にいない私たちが、自分のために、自分の健康と生活を守るために今できることにおいて、もっとも大切なのは、被災していない自分自身も、安全や安心を確保できる範囲で確保することです。

被災していないで心身が守られている人は、いま家も仕事もある、普段通りの日常生活を送れていることに感謝して、できるだけその状態を維持すること、できるだけ健康に精一杯の日常を送ることです。

辛いニュースを目にして気持ちが重くなることは当然の反応であり、ちゃんといたわりながら過ごすことで自然回復します。今ある反応を重大な病気かのように誇張して警告するような情報に注意しましょう。

症状や感情を当然の反応といわたりましょう

上に書いたような心身の反応は、非常事態における自然な適応反応のひとつです。体が怪我したときと同じように、自分の自然治癒力が最大限発揮されるように、自分の心身をいたわりましょう。

苦しい気持ちになることは当然の反応であり、なにもおかしいことではありません。ニュースや関連情報を苦痛に感じたら、それらの情報からいったん遠ざかってもいいです。それは何も悪いことではありません。

今どうすべきか、というよりも、どうしたいかを自分に問いかけながら過ごしましょう。お腹が空いたなと思えば、自分を労るように食べられるものを食べましょう。休みたくなったら眠たくなったら、自分の欲求が赴くままに休みましょう。

食事も満足にとれず休めてもいない被災者のことを案じて、自分がそれらを我慢しても、被災者の方々が救われるわけではありません。生活や心身が保たれていて、いてもたってもいられず焦燥に駆られる人は、いつかなんらかの被災者支援ができるようになったときのために、健康を維持しながら、出番を待ちましょう。

これまでの日課やスケジュールをこなしましょう

いまは大きな変化をするときではありません。できるだけいつもどおりの日常を送りましょう。いつもの生活が送れていると、脳も安全や安心を感じて非常事態モードを和らげてくれます。

すでに計画、予定されていた旅行や集まりなどの行事がある人は、できれば予定通りやってほしいです。それも日常生活の一部です。

自粛ムードだといってみんなが活動を制限したり狭めたりしては、経済も回りません。余力がある方は、募金という形で支援の想いを表現するのもいいでしょう。
今できる日常を普通に送ることも、大切な間接支援です。

誰かとつながりましょう

飛び込んでくるニュースに心を痛め、共感し、疲れてしまっている人は、ひとりで抱えず誰かと話をしたり過ごしたりしましょう。

孤独でないことは、安全や安心を形作るために必須の要素です。もちろん、無理に話す必要はありません。人それぞれのタイミングがあります。

共感疲労という言葉もありますが、被災者の心情に感情移入して辛くなっていたら、だれかにそれを話したいなと思ったら、それを共有しましょう。

ただし、お互いに感情を否定しないで共有してくれる相手でないと、かえってつらくなってしまうかもしれませんね。身近に気持ちを打ち明けられる人がいないと感じたら、そんなときはカウンセリングにきてください。

今ある生活に感謝して、今の生活を精一杯送りましょう。


長くなってきたので、ひとまずこんな感じです。最後までお読みいただいた方、本当にありがとうございました。ちょっとでもヒントになることがあったならうれしいです。

もし、こころと人間関係の問題で、悩んでいることや、抱えている気持ちを誰にも話せずにいたら、あるいは誰か身近な人に話したけど、どうしていいかわからないなっていうときは、一人で抱えずカウンセリングを行ってみることも検討してみてください。

悩みに大きいも小さいもありません。こんなことで相談していいのかな?と思うようなことだったとしても、気にしなくて大丈夫です。

まずひとりで悩んで、つぎに身近な人と悩んでみて、それでもどうにもならないようなら心の専門家の出番です。

カウンセリングオフィスSHIPSの詳細はこちらです。公式ホームページです。

https://counselingships.com/

カウンセリングオフィスSHIPSでは、ブリーフセラピーや認知行動療法に基づくカウンセリングをメインに実践しています。

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