RG Midrenge Guide-ゲームの焦点とデッキの特性を理解する-
※各種表現を訂正し、【各種墓地対策を採用する基準】を追記しました。
2月の上旬に2度目のnoteを投稿してからおよそ半年が経過した。
専門的な内容であったが、記事は望外の反響を頂いた。その期待に応えるべく新たな記事を出したいとは思っていたのだが、専門性の高い内容かつ読者全員にとって参考になる内容の両立を模索しているうちに、随分と間が開いてしまった。その点については申し訳ないと感じている。
また今回初めて私のnoteをお読みいただいた方には、是非初回の記事もおお勧めしておく。昨年秋期のスタンダードの内容ではあるが普遍的な知識についての記載も多いため、有料記事ではあるが値段に見合った内容であると自負している。
そして今回の記事も同様前半部は無料、後半部は有料となっている。前半部では、基本セット2021発売後のメタゲームにおける推移、負け試合から適切な構築を逆算する方法のうち1つを、後半部ではもう1つの方法、構築思想、プレイの指針、今回のリストに至るまでに試したカード1枚1枚についての評価、最後にサイドボードガイドを掲載する。この記事を執筆するにあたり、様々な構築を試す中で約100マッチをこなしてきた。その中で私が得た考え方は、普段モダンをプレイしていない方であっても参考になる部分も多いはずだ。是非最後まで目を通していただきたい。
☆プロローグ
この半年間、magicの環境は変化し続けてきた。ことモダンにおいては、2つの大きな変化があった。
1つ目は、4/17(金)に発売された『イコリア:巨獣の棲処』で導入された相棒というキーワード能力だ。制約を守る構築であればサイドボードからいつでも唱えることが出来るこの能力は、多くのプレイヤーの予想通りゲームバランスを崩壊させるほど強力であり結果として《夢の巣のルールス》を筆頭にした相棒を採用したデッキによる環境の支配を生みだした。当然そのような状態が看過されるわけもなく、相棒はルール改訂により大幅な弱体化を食らった。
2つ目は、氷雪系コントロールの台頭だ。相棒環境が収束した後は、その色拘束の緩さを生かし《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、《氷牙のコアトル》、《アーカムの天測儀》のパッケージを採用した青黒緑のスゥルタイコントロール、白青緑のバントコントロール、また《レンと六番》を採用し赤を加えた4C氷雪コントロールが環境を支配した。
しかしその天下も短く、6/13(土)の改訂により件の氷雪系コントロールを支えた《アーカムの天測儀》が禁止された。これにより氷雪系は今までのような色拘束を無視した構築が出来なくなったため、弱体化を余儀なくされた。
☆基本セット2021発売後のメタゲームにおける推移
そしてその3週間後『基本セット2021』が発売。そしてまず環境の覇権を握ったのは、新カードである《嵐翼の精体》を採用した赤青果敢であった。
《魔力変》や《はらわた撃ち》を使うと2ターン目に降臨するこの破格の性能を持ったエレメンタルには、モダンの標準的な除去スペルである《致命的な一押し》が効かず、果敢(あなたがクリーチャーでない呪文を1つ唱えるたび、ターン終了時まで、このクリーチャーは+1/+1の修整を受ける。)という能力から《稲妻》といったダメージによる除去も効き辛い。『イコリア:巨獣の棲処』で収録された、疑似的な果敢能力を持つ《スプライトのドラゴン》と合わせ飛行クリーチャーが8枚体制になった青赤果敢は、一気に環境のトップデッキへと駆け上がった。
しかしこのデッキが件の2つのデッキのようにMagic Online(以下MO)で勝ち続けることはなかった。流行り廃りが速いMOでは日常茶飯事であるが、所詮ただのビートダウンである青赤果敢は、ジャンドといった除去コントロールが《終止》等の確定除去を採用し始めると、あっという間に対応されてしまい圧倒的優位性と言えるものは失われ始めた。
挙句の果てに青赤果敢に有利とされる発掘が台頭(※)し、このデッキの支配は終わりを告げた。私はこのようなアグロデッキを好むため何か有効なサイドプランはないかと検討し、ありったけのサイドを用意したが対策の割に勝率が伸びなかったため次なるデッキを探すこととなった。
ちなみに青赤果敢のサイドボードを試行錯誤する中で、最も発掘に効果的なプランは《虚空の力線》を採用することだった。もし今青赤果敢を使っているプレイヤーはぜひ参考にしてほしい。
(※Arenaからこのゲームを始めた方は俄かに信じられないかもしれないが、MOというゲームは試合を行うためにゲーム内通貨であるticketを払わなければならず、その勝利数に応じてticketのようなものが帰ってくるという仕組みである。勝率で言うと6割弱無ければ基本破産というゲームであるため、本気で取り組んでいるプレイヤーが多くリアルと違いメタゲームの推移が速い。)
☆使用に至ったきっかけ
何か魅力的なデッキがないものかと探していた私に天啓が舞い込んだ。このツイートを見る限り、どうやらみっくす氏(※)曰く今はRGミッドレンジがおすすめらしい。確かに5‐0ラインや大会の上位に食い込んでいるのを見たことはあったが、私も宇都宮プロと同じくこのようなデッキを忌避する傾向があるため実際に回したことは一度もなかった。しかしエキスパートが勧めるデッキという事で可能性があると感じ、とりあえずMOで組むことにした。
(※この記事をお読みの方であればご存じだろうが、みっくす氏について少し紹介しておくとGPのチャンピオン経験もあるモダンのエキスパートである。私が親和を組むきっかけとなった1つであるため、時間のある方はURL先のカバレージを読んで欲しい。)
☆一般的なリストが抱える課題
このデッキを回すのは初めてであったため、とりあえず直近の6/25のモダンチャレンジで7位(6-1)であったリストを参考にした。
初見の印象として《嵐の乗りきり》や《大始祖の遺産》といったサイドボードのカード選択が怪しいと感じたが、とりあえず1枚も変えずリーグに潜ると、細かなカード選択以前の問題が噴出した。
1つ目は、《漁る軟泥》といった2マナ域があまり強くない点。
2つ目は、高マナ域の枚数に対し土地枚数が20枚と少ない点。
3つ目は、なぜか《血染めの月》が優先されている点。
一方で《歴戦の紅蓮術士》、《運命の神、クローティス》などといったカードの感触は非常に良く、また1マナから3マナにつながる構造自体にポテンシャルは感じたため、もう少しリーグを続けることに。
その部分を少し改良しこの形にした所、リーグにおいて3連続で4-1をたたき出した。しかし負けた2試合は共に件の青赤果敢であったため、対策札を増量する必要があると感じた。
そこで私は日曜日のモダンチャレンジに向け、通常アグロ対策として採用される《台所の嫌がらせ屋》や《強情なベイロス》の枚数を増やした。
15枠のうち追加で2枠を割いたため、これで青赤果敢にも勝ちうるだろうと考えていたが、本戦の結果は最終のバブルマッチ敗退⇒オポ落ちと振るわなかった。しかも負けた試合の1つは対策札を増やした青赤果敢で、内容も事故による敗北ではなく枠を割いた2枚を引き込んだものの、クリーチャーが止まらないといったもの。その瞬間は相手の回りが良かっただけかと思ったが、翌日再度試合を確認すると相手の回りは決して完璧というわけではなく、むしろこちらが優勢になる場面さえあった。結局、そのゲームはとあるカードがプレイされたことにより敗北。リプレイを見る限りそれまでの試合も、そのカードに負け続けておりゲームの焦点はこのカードであると分かった。
このように対策札を厚く取ったにも関わらず、その試合を落としてしまった経験は誰にでもあるだろう。当然厚く取れば必ず引くことが出来るわけではないため一概には言えないが、今回のように枠を割いたカードを引いたにもかかわらず勝てない場合はそもそもアプローチが間違っていたことになる。本稿では当時の私の思考と共に、一体どの地点からアプローチを間違えてしまったかについて振り返っていこう。
☆負けパターンの分析
ここからは、RGミッドレンジを使用したことが無い読者の皆様にも分かりやすいように、RGミッドレンジと青赤果敢における具体的なMOの盤面をキャプチャーしながら進めていく。以下2つはRGミッドレンジ側が負けた試合での最終局面である。
そして以下が勝った試合での最終局面である。
聡明な読者である皆様であればもうお分かりだろう。そう、負け試合にはすべて早いターンに着地した飛行クリーチャーが絡んでいる。
ここで青赤果敢が持つ2つのゲームプランについて説明しよう。
1つ目のゲームプランは、1ターン目に出てきた《僧院の速槍》や《損魂魔導士》といった地上クリーチャーによるビートダウン。しかし両者にはトランプルがないため画像からも分かる通り、RGミッドレンジ側の《歴戦の紅蓮術士》のトークンや多数のクリーチャーを乗り超えることが出来ず、このプランは完遂できないことが多い。サイドボード後は《台所の嫌がらせ屋》と《強情なベイロス》といったさらなるクリーチャーが投入されるため、このプランならばRGミッドレンジ側に優位がある。
2つ目のゲームプランは、《嵐翼の精体》や《スプライトのドラゴン》といった飛行クリーチャーでのビートダウンである。残念ながら上のRGミッドレンジのリストはこのパターンに無策である(真顔)。1体であれば奇跡的に数点の回復でしのがれる場合があるかもしれないが、火力によって複数体の果敢を持ったクリーチャーが誘発した場合、爆発的な点数となるため当然凌ぎきれない。
☆ゲームの焦点を理解する
私はサイドボードの内容を吟味する時、主に2つの軸で判断している。ここではその1つ目であるゲームの焦点を理解するについて触れよう。そのためにもう一度、先ほどの青赤果敢のゲームプランについて構造化してみよう。
ゲームプラン1 《損魂魔導士》による地上クリーチャーのビートダウン
⇒《歴戦の紅蓮術士》やその他クリーチャーで妨害。
ゲームプラン2 《嵐翼の精体》による飛行クリーチャーのビートダウン
⇒特に策がない。
太線部が現状このリストが抱える問題点である。このようなクリーチャーによるビートダウンに対して、ミッドレンジ側がサイドボードから対処する方法は主に3つ存在する。
1つ目が、除去呪文を増やす方法である。青赤果敢はどちらのゲームプランを取ったとしても、本質的には強化したクリーチャーによる一点突破を狙うデッキであるため、《殺害》のような確定除去の呪文に対し耐性が低い。しかし今回は赤緑というカラーを使っている以上、基本的に《稲妻》といったダメージを与える除去しかないため、果敢を持ったクリーチャー群には効果が薄かった。
2つ目が、回復呪文を増やす方法である。これは直接火力を多く搭載したバーンなどに効果的な策である。しかしこのマッチアップの焦点は、相手のクリーチャーによるダメージをどれだけ減らすことが出来るかにかかっているため、効果的とは言えない。今回私が陥った部分はここにある。
3つ目が、クリーチャーで盤面を制圧する方法だ。今回であれば飛行クリーチャーによるビートダウンを阻止する必要があるため、飛行or到達を持つクリーチャーの採用が最も効果的であると判断した。
☆デッキにマッチしているか
前の章では役割的観点からサイドボードについて触れたが、もう1つ大切にすべきことがある。それはそのカードがデッキの動きにマッチしているかどうかだ。新しいデッキを組む際、そのデッキにどのようなカードが採用されているかといった客観的な部分は議題に上がることが多いが、デッキの動きにマッチしているか否かといった一見すると主観的なこの部分は、ないがしろにされやすい。
RGミッドレンジで言えば《レンと六番》などがそれにあたる。
このカードはモダンのジャンドというデッキが採用している非常に強力なプレインズウォーカーの1つであり、各能力の具体的な使い方として、
+1 マナ基盤の安定とサイクリングランドによるドローエンジン
‐1 《稲妻》などと合わせ苦手とするタフネス4を除去できる
-7 《コラガンの命令》といった強力な呪文の使いまわし
などアドバンテージ&除去の補助といった役割があり、八面六臂の活躍を見せている。しかしRGミッドレンジについてはどうか。
+1 マナ基盤の安定とサイクリングランドによるドローエンジン
⇒マナ基盤は安定するかもしれないが、後者は満たすことが出来ない。
‐1 《稲妻》などと合わせ苦手とするタフネス4を除去できる
⇒間違ってはいないが、このデッキは《反逆の先導者、チャンドラ》や《栄光をもたらすもの》といった実質的な4点除去を多く搭載しているため、ジャンドほどタフネス4を除去することが苦手ではない。
-7 《コラガンの命令》といった強力な呪文の使いまわし
⇒《略奪》の使いまわしは魅力的ではあるが、それは所詮有利を助長するだけであり、いわゆるオーバーキルである。
このようにカードは強いが、デッキにマッチしていないといったことはよく見られる。もし今あなたの使っているデッキに、あまり活躍しないと感じているカードが入っているならば、「みんな使っているから」となるのではなく一度抜いてみることをお勧めする。
今回のRGミッドレンジであれば2ターン目に3マナor4マナのカードがプレイできることを強みとしているため、3マナor4マナのカードの中で飛行・到達を持つものをwisdom guildで検索した。残念ながらこの検索フォームは直感的ではないが、使いこなすことが出来ればカード検索などがとても捗ると思うので、ぜひ活用してほしい。
そしてその中で、白羽の矢が立ったのがサムネイルにも起用されている《終わりなき巣網のアラスタ》である。
このカードは求めていた到達という条件を満たすだけでなく、相手のスペルに反応して到達を持ったトークンを生み出すため、件の青赤果敢がとる戦略を強く否定している。またグリクシスシャドウなどにも一定の効果が認められるため、条件を満たす中では最高の一枚であった。
goldfish等に掲載されている優勝リストをコピーしたもののサイドインするタイミングが分からず、でたらめなカードに差し替えてしまうプレイヤーは多い。しかしそのような時はこのように一度ゲームの内容を要素ごとに分析することが大切だ。思考したプランが試合の中で有効でないと気付いたならば、またもう一度考え直せばよいのだから…。
☆デッキ紹介と構築思想
そして出来上がったデッキがこちら。各種トーナメントにはそれぞれ独特のメタゲームが存在するため、ほとんど意味を持たない数字であるがMOの戦績ベース(40勝17敗)で見ると70%強の勝率を誇っているため、そこまで悪いデッキではないだろう。
従来のリストとの構造的な違いは2つある。
1つ目は、21枚目の土地である《新緑の地下墓地》を採用している事。
このデッキは《東屋のエルフ》or《楽園の拡散》が初手にあれば、土地が2枚しか無くてもキープする。しかし《東屋のエルフ》は青赤果敢が使う《溶岩の投げ矢》や《はらわた撃ち》のような1点除去に当たるため、3マナ目として担保されず3マナのカードがプレイできないという事が多発した。それを解消するために《極楽鳥》の採用を検討したが、これもタフネス1ということで1点除去に引っかかるため結果土地の枚数を1枚増やすことにした。その分マナフラッドはしやすくなっているが、多少であれば《歴戦の紅蓮術士》などで受けることが出来るため問題になることは少ない。
2つ目は、《台所の嫌がらせ屋》や《強情なベイロス》といったクリーチャーベースでサイドボードを組んだ事。
これは《月の大魔術師》というカードが関係している。このカードは効果的な相手に対しては強力だが、効果的でない相手に対してはただの3/2/2でしかない。そのような場合は真っ先にサイドアウトされるのだが代わりに入れるクリーチャーがいなかったため、信心が足りず《運命の神、クローティス》がクリーチャーにならないといった問題が発生した。そのためサイドボードには、4枚の《月の大魔術師》と入れ替えることが出来るクリーチャーが必要だと感じ上記の2種類を採用した。
☆プレイの指針とマリガン基準
基本的な指針として、
1ターン目 《東屋のエルフ》or《楽園の拡散》を《森》(※)にエンチャント
2ターン目 各種3マナor4マナのカード
という動きを理想としているため、メインボードにおいては《東屋のエルフ》or《楽園の拡散》がない手札はマリガンする。ちなみに両方手札にある場合は、2ターン目に4マナを出すことが出来るため《東屋のエルフ》からプレイすべきだが、相手が除去を多く採用しており生き残る見込みがない場合は《楽園の拡散》から始める場合もある。3マナ域の優先度は相手のデッキによって大きく変わるが、基本的には5マナにジャンプアップできる《運命の神、クローティス》から置くことが多い。
仮にこのような初手が来てしまった場合、思わずキープしてしまいそうになるが
これでは出来損ないのミッドレンジの動きしかできないため、マリガンすべき。3マナ域による嵌めが決まれば多少の枚数差であれば、ひっくり返すことが出来るため中途半端な手札でキープすべきではない。
サイドボード後はこの限りではなく、相手にとって致命的なカードがあればキープする。
(※《森》にエンチャントするのは、《月の大魔術師》を出した場合《踏み鳴らされる地》が「森」でなくなり、《楽園の拡散》が墓地に置かれてしまうからだ。)
☆特徴的なカード
みっくす氏のツイートにより採用した。このデッキにおいては手札入れ替えによるブレの解消と貴重な飛行戦力という2つの役割がある。
このデッキは《月の大魔術師》のように2枚目以降が不要、また相手によってはそもそも1枚目すら不要といったカードが多いため、そういったカードを別のカードと入れ替えることが出来ることは大きい。イメージとしては追加の《歴戦の紅蓮術士》。また不要になった《東屋のエルフ》を搭乗要員として戦闘に参加させることができる点も素晴らしい。やはりエキスパートの発言は参考になる。
前述の利点からクリーチャーであるこのカードを採用している。回復効果に加え一定の除去耐性もあるため、フェアデッキ対決でも強くなにかとサイドインすることが多い。モダンというフォーマットは多種多様なアーキタイプが存在するため、このように複合的な役割を持つカードはスロットを圧縮することが出来る。
1⇒3のコンセプトに沿っているため、根っからの《窒息》派であったが、《荒野の再生》に対して効果が薄かったため採用した。決まると気持ち良いが、1ゲームに何度も打つ必要がないため1枚のみの採用となっている。
墓地対策としては二流だが、苦手としているネオブランドやヘリオッドカンパニーの対策ともなるため採用した。特にネオブランドはこのカードを引かない限り、能動的な勝ち目がないので厳しく探したほうが良い。
これはクリーチャーを除去する目的ではなく、《石鍛冶の神秘家》の装備品、《探検の地図》や《罠の橋》を破壊するために採用した。もしクリーチャー除去が主となるフィールドの場合は、最後まで1枚採用するか迷った《炎の斬りつけ》に差し替えるだろう。
☆不採用となったカードとその理由
弱くはないが、強くもないといった印象。回避能力という意味では飛行を持つ《栄光をもたらすもの》、アドバンテージ面においては《血編み髪のエルフ》がいるため、明確な役割を持たないこのカードは不採用となった。
カードは強いが、デッキにマッチしていないその1。指針に書いた通り、このデッキの強みとマッチしていないため不採用。
カードは強いが、デッキにマッチしていないその2。1⇒3のコンセプトにあっておらず、2マナ域として迫力もない。稀にこのカードを墓地対策として考えている人がいるが、モダンの墓地を活用するデッキはこのカードで止まるほど弱くはない。
《変異原性の成長》が採用されている環境でなければ採用しただろうが、この環境では4点除去である意味が薄かったためアーティファクト破壊を持つ《削剥》に枠を譲った。追加の除去としては悪くないため、もし普段通っているショップにクリーチャーデッキを使っているプレイヤーが多いのであれば枠を割く価値はあると感じている。
直接火力を多く採用したバーンに対しては非常に効果的なカードであるが、対策としてあまりに有名すぎるためMOに潜むバーンの巧者にはきれいに決まらない。また先述の青赤果敢といったクリーチャーによるビートダウンには全く効かないため不採用。
墓地対策としては効果がいまいちで、肝心の発掘などには間に合うわけがないため不採用。もし広くサイドインできることを理由に採用しているならば、その考えは改めたほうが良い。《外科的摘出》を墓地対策と考えている人と同じで、カードの役割を正しく認識できていない。
もう少しこのカードについて触れておくと、今《大祖始の遺産》を採用している有力なデッキはエルドラージトロンとゴブリンだろう。前者に関しては《大いなる創造者、カーン》で手札に加えることが出来る。また同様の利点を持つ《墓掘りの檻》も採用している。後者に関してはコンボデッキであるため、パーツにたどり着くためのラスト1ドローに価値がある。
一方このデッキは最初に置いたカードで相手の動きを制限する構造であるため、ラスト1ドローの価値が低い。いつでも及第点の動きをするためなんとなく入れてしまいがちだが、以上2つの点から不採用とするのが賢明である。
トロンの《探検の地図》やドレッジの《叫び角笛》に対して効果的という触れ込みで採用されているようだが、後手であれば大きく価値が下がり、かつ後引きは全く許容できないため不採用。クリーチャーである点は評価できるが、これならまだ《月の大魔術師》を残す方がましである。
カードは強いが、デッキにマッチしていないその3。採用している人は《血編み髪のエルフ》からめくれた場合を考えたほうが良い。不採用。
コンセプトに合わない5マナ、ETB能力なし、戦闘を介さないと特に何もしないの3拍子。肝心の回復効果が活きる展開では当然強いが、その時は別にどのクリーチャーでも勝っているためオーバーキルと感じた。もし採用する場合は《栄光をもたらすもの》と入れ替えて4枚とするなど、構築自体を変えたほうが良い。今回は不採用。
☆サイドボードガイド
最後の章では、ここまでの学びを生かしたサイドプランについて記載する。ここではよく当たるデッキについてのサイドチェンジを記入するが、同じアーキタイプであっても相手の構築によって、その都度変えることがあるため、サイドインしたカードではなく考え方を参考にしてほしい。
vs UR Blitz
考え方については先述のとおりであるため、ここではプランのみ記載する。《変異原性の成長》などの0マナスペルが存在するが、フルタップで出てきた果敢クリーチャーには勇気を持って《稲妻》等の除去を打った方がいい。こちらの除去はダメージであるため、待っていても除去できないことが多い。《砕骨の巨人》は弱くはないが、出来事モードの2点火力である《踏みつけ》が有効に使えないためサイドアウトする。ちなみに注意点として、《スプライトのドラゴン》はドラゴンであるため《栄光をもたらすもの》では除去できない。
in《削剥》1、《神々の憤怒》2、《終わりなき巣網のアラスタ》2、《強情なベイロス》1、《台所の嫌がらせ屋》2
out《月の大魔術師》4、《略奪》3、《砕骨の巨人》1
vs Mirror
先手2ターン目に《略奪》で相手の《楽園の拡散》が付いた土地を破壊、You win。つまり先手が強い。様々なプランを検討してみたものの、結局有効なサイドプランは見つからなかった。《神々の憤怒》は《歴戦の紅蓮術士》による横並び戦略を否定できるため、1枚程度であれば問題ない。
in《神々の憤怒》1、《強情なベイロス》1、《台所の嫌がらせ屋》2
out《月の大魔術師》4
vs Eldrazi Tron
《略奪》、《月の大魔術師》で減速させ《栄光をもたらすもの》で勝つ展開。先手ならば相手の《探検の地図》を破壊するために《削剥》をサイドインするが、後手ならばほとんど変えない。
in《強情なベイロス》1
out《稲妻》1
vs Burn
ありったけの回復手段を投入し粘り勝つ。相手は火力呪文によるダメージでの勝利を狙ってくるため、盤面の制圧をすることしかできない《終わりなき巣網のアラスタ》はサイドインしない。《月の大魔術師》はメインこそあまり役に立たないが、サイド後は白マナを潰すことで《流刑への道》や《コーの火歩き》といったカードを防ぐことが出来るため、意外と役に立つのでサイドアウトしない。
in《強情なベイロス》1、《台所の嫌がらせ屋》2
out《略奪》3
vs Jund
Burnと同じサイドインではあるが、今回は除去耐性の高さからこれらを採用する。《略奪》は《レンと六番》に無力であるため、サイドアウトする。
in《強情なベイロス》1、《台所の嫌がらせ屋》2
out《略奪》3
vs Dredge
碌な墓地対策を採用していないため、お祈りな一面もある。ある程度の展開は許し《神々の憤怒》で盤面を整理するイメージでゲームを運んでいこう。
in《神々の憤怒》2、《強情なベイロス》1、《墓掘りの檻》2
out《略奪》3、《稲妻》2
☆サイドインに困ったら
モダンには数えきれないほどのアーキタイプが存在するため、ある程度の指針は残しておく。いくら土地を嵌めようが、相手の土地を山にしようが、最終的に殴り勝つ事しかできないので、クリーチャー数は減らさない方向で検討してほしい。すべてのデッキに言える事だが、大切なのはバランスだ。
vs 青系Control
このマッチアップは、2ターン目に何を置くことが出来るかが焦点となる。in/outの枚数がずれているのは、《石鍛冶の神秘家》が入っている場合は《削剥》を、《荒野の再生》が入っている場合は《燃えがら蔦》を採用するためである。
in《窒息》、《沸騰》
out《稲妻》
vsマナクリーチャーが採用されているデッキ
要は《月の大魔術師》が効かないデッキだ。最たるものがヘリオッドカンパニー。
in《神々の憤怒》、《強情なベイロス》、《台所の嫌がらせ屋》、(《墓掘りの檻》《集合した中隊》デッキである場合)
out《月の大魔術師》等
☆エピローグ
この記事で伝えたかったのは、《終わりなき巣網のアラスタ》の強さでも、この回答にたどり着いたことに対する自慢でもない。それは確立した理論の下、思考しながらデッキを構築する大切さである。初めから完璧にできなくとも、思考した経験は後々の大きな財産となるだろう。私もまだまだ道の途中であるが、これからも練習した中で得た経験を読者の皆様に還元していきたいと思っている。そのため引き続き応援いただけると幸いだ。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
☆追記:各種墓地対策を採用する基準
皆様のRTのおかげで、この記事は大変反響を頂いている。
そこで皆様に対して私からのささやかなお礼として、記事内で少し触れた墓地対策についてもう少し深堀りしていこう。使用率の高いカード群を紹介するだけでなく採用する基準も解説していくので、ぜひ今後サイドボードの墓地対策を選ぶ際は参考にしてほしい。
後引きも許容されるため、墓地対策としては最強。発掘が苦手かつ白いデッキで採用するとしたら、まずこのカードが挙げられる。
採用する基準:白いかつ発掘に弱いデッキ
モダンにおいて0マナである点はそこまで有効ではないが、デッキの色は関係なく採用できる点が良い。
採用する基準:《安らかなる眠り》を採用できないが、発掘に弱いデッキ
墓地対策のニューカマー。3マナと重いがフェッチランドの起動も制限できるため用途は広い一枚。しかし高速コンボには間に合わないケースも多いため、これに加え0or1マナも墓地対策を採用すれば盤石。
採用する基準:高速コンボに耐性があり、色マナを許容できるデッキ
墓地対策としては上記の3枚には遠く及ばないが、《集合した中隊》デッキには有効。
採用する基準:マナがタイトかつ、高速コンボに弱いデッキ
ニューカマーその2.起動にマナを必要とせず、時にはドローにも変換できるいぶし銀。生け贄という事で《夢の巣のルールス》と相性がいい。一方でインパクトは弱いため、墓地対策をこれに頼りきるのは危険。
採用する基準:すでに1種類採用しているor《夢の巣のルールス》を相棒としているデッキ。
《魂標ランタン》にお株を奪われた墓地対策その1。一応0マナであるため、《大いなる創造者、カーン》からすぐさま設置できる点は評価できる。
採用する基準:《大いなる創造者、カーン》を採用しているデッキ。
《魂標ランタン》にお株を奪われた墓地対策その2。ドローできる点から未だよく採用率は高いが、墓地対策としてはそこまで強くはない。あと《瞬唱の魔導士》に対して別に効果的ではない。
採用する基準:コンボデッキのようにラストのドローに価値があるデッキ
《夢を引き裂く者、アショク》にお株を奪われた墓地対策。これも《大祖始の遺産》と同様よく見かけるが、墓地対策としてはそこまで強くはない。
採用する基準:《夢を引き裂く者、アショク》のお供。
何度も言うが《外科的摘出》は墓地対策ではない。
この基準があれば、各種デッキの採用している墓地対策について想像がつくようになるだろう。そしてこの基準にそぐわないのに採用されているならば、それは間違っているケースが多い。
追記としては、このようなところだろう。私と言えば夏休みに突入したため、今回秋に開催される日本選手権に向けて最近はもっぱらスタンダードをしている。その中で気づいたことも多いため、次回はそのテーマについて書きたいと思っている。さわりだけしておくと、フォーマット別サイドチェンジのイメージについての記事だ。そちらもお楽しみに。
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