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こんな日こそ、あたたかくて笑える秋ドラマを。

暑すぎず、適度に涼しい秋(ずいぶん寒くなってきたけど)は、ちょっぴり憂鬱になる季節でもある。冬の足音が近づくなかで「ああ、今年も終わっちゃう」と、何だかしんみり寂しくなるのだ。

そんな「おセンチ」な秋は物語に癒されたい。クスッと笑えて心に浸透する、2023年秋ドラマを2作紹介しよう。

時をかけるな、恋人たち(火23時)

人気劇団『ヨーロッパ企画』の上田誠さんが脚本を務めた本作。未来からやってきたタイムパトロール隊員・翔(かける:永山瑛太)と、令和に生きる廻(めぐ:吉岡里帆)がつくり出す、大人が楽しめるSFラブコメディだ。

舞台作家×俳優陣がつくる、魅力的なキャラクター

舞台作家ならではの、鮮やかではっきりした展開とキャラクター像が特徴で、1話30分と気軽に観られるのにしっかりとおもしろい。

『時をかけるな、恋人たち』公式Xより

翔の絶妙な挙動のおかしさが心をくすぐる「思わず微笑んでしまう感じ」が魅力のひとつ。突然カタコトになるのは未来人だからなのか。

廻を演じる吉岡里帆さんのコメディ演技と言えば『ゆとりですがなにか』や『カルテット』での「少し不思議なかわいい女の子」の印象が強い。本作では等身大の「大人」と、これまでとはガラリと役柄が違う、新しいコメディ演技が見られるのも注目ポイント。

エンディングまで見逃せない

エンディングではエピローグ映像が主題歌『I like you』(Chilli Beans.)に合わせて流れる。セリフはなくても、登場人物たちが自分の人生を生きていることがわかるエンドロールに、心がじんわりとあたたかくなる

全体としては起承転結がわかりやすい構成ながら「語りすぎないスタンス」で、受け手のやさしい想像力に委ねられている部分が多い。

今を生きる意味や、過去と向き合う苦しさ、普遍的なテーマが散りばめられていて、まさに「クスッと笑えて心に浸透する」ドラマだ。

セクシー田中さん(日22時半)

会社では目立たない存在だが、実はセクシーなベリーダンサーの田中さん(木南晴夏)と、若くてかわいいことしか取り柄がないと悩み焦る朱里(あかり:生見愛瑠)が織り成すヒューマンコメディ。正反対なふたりが絶妙にマッチし、回を重ねるごとに「愛しい度」が加速する

片思いの解像度高すぎ問題

純度100%の田中さんの片思い、恐ろしいほど解像度が高い。心にポっと灯りがともった瞬間の思い出し方や、嫉妬したときの自分の納得のさせ方がリアルすぎる。

漫画原作でわざとらしくならずに「ベタだけどリアル。わかる。」に落とし込めるのは、良質な脚本・演出・俳優陣のおかげである。

恋をしている田中さんがかわいらしく、恋に不器用な姿がいじらしく、応援したくなる。応援したくなるキャラクターがいるドラマはそれだけで素敵だと思う。

「愛せる自分」を模索する、成長ストーリー

“自分がこうありたい正解を自分で選びとるしかない”

(ドラマ『セクシー田中さん』2話)

「自分軸で生きると選ぶこと」こそ、田中さんの魅力であり、本作のメッセージのひとつである。

自分のコンフォートゾーンに居続けていては本当の意味で幸せにはなれない。「本当はどうしたいのか」自分自身に問い続け、これまで立っていた場所から一歩外へ踏み出すこと。

ドラマ『セクシー田中さん』公式X

田中さんと朱里の葛藤と成長を見ていると、自分自身も「よく生きる」ための問いとエネルギーをもらえる。

生見愛瑠さんは『日曜の夜ぐらいは』に引き続き、素敵なドラマを選ばれていて、俳優としてもっと見たい存在に。

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笑って泣ける、ハートフルなドラマが好きだ。人を泣かせるより笑わせるほうが難しいと言われている。笑って泣ける、なんだかありふれた表現だが「ドラマを観て笑える」って結構すごいことだと思う。

忙しなく過ぎる日々に、ドラマという楽しみを。心をあたたかな気持ちにさせる週に1度の時間を大切にしよう。

(執筆:こつ / アイキャッチ撮影:いづ

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