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創作

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自作の詩や掌編、とりとめのない戯言など。
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記事一覧

秋の空気

秋がくると 空気がしんみりとやわらかくなる じぶんがじぶんにひたりと かさなるような気がす…

こと
1か月前
1

寝癖

 昨晩は早めに床へ入った。枕元にはカンテラと文庫本が置いてある。いつもの習慣で寝る前にす…

こと
1か月前
2

大地

はるの かわへ ひとかけら ながしてください なつの うみへ ひとかけら ほうってください あ…

こと
1か月前
1

汽車が来るまで

 自分は駅の歩廊のベンチに腰掛けて、汽車が来るまでの間、 小さな本を開いている。汽車が到…

こと
1か月前
2

狐の神様

変われるものなら変わってあげたい 子狐の頭を撫でながら母狐はいつもそう思っていた 狐の子は…

こと
2か月前

冬帽子

 私は帽子屋に来た。しんとした昼下がりの薄明に、埃をうっすらとのせた冬帽子が並んでいる。…

こと
2か月前

なみだ

しあわせではないけれど しあわせなひとをみて ほほえんでいる ふしあわせではないけれど ふしあわせなひとをみて なみだをながしている ほほえんでいるけれど しあわせなひとをみて なみだをながしている なみだをながしているけれど ふしあわせなひとをみて ほほえんでいる

Valeur

うらぶれた画家が公園でスケッチをしていた。 そこへ貴婦人が通りかかった。 「あら、あなた画…

こと
2か月前

あべこべ

ある朝ぼくが起きたら みんなの声があべこべになっていた お母さんはお父さんの声で お父さん…

こと
2か月前
1

ひかえめ

ただしさも ひかえめでなかったら ただしくない うつくしさも ひかえめでなかったら うつくし…

こと
2か月前
2

忘れられた物語

 喫茶店のテーブルに、誰かの忘れていった本がある。 街を見下ろす窓際に、持ち主のいない小…

こと
2か月前
4

うつくしいもの

光は うつくしくない 光を あびたものが うつくしい 愛は うつくしくない 愛を そそいだもの…

こと
3か月前

ナスとぼく

スーパーマーケットへ行くと いろんな野菜やくだものが わいわいがやがやあつまっている リン…

こと
3か月前
1

さようなら

 さようなら。  別れぎわにそう言うとたいていの人は、はっとした顔をする。あるいは冗談だとおもって愛想笑いをされる。ふだんの、何気ない別れぎわのことである。  子どものときはだれしも言わされたはずだ。  せんせい、さようなら。  みなさん、さようなら。  今でも幼稚園バスが路肩にとまれば、きっと園児の頓狂な声でさようならが聞こえてくる。  通信技術や移動手段が発達した末、人と人との距離は格段に近くなった。別れても会える。会わなくても会える。別れぎわの深刻さは、ない。  そ