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【好きな小説】スナックちどり / よしもとばなな著

何度も手放しては手に入れて 繰り返し読んでいる小説のひとつ。

よしもとばなな著の作品でいちばん好きかもしれない。
物語の展開がどうこう というより心情描写に動きのある ばななさんの小説は、内省期にだけスッと入ってくる。

大切な人と別れたばかりの”いとこ”同士の2人が イギリス最西端の街ペンザンスで過ごすおはなし。
それぞれ悲しみに暗く沈んでて 過去と現在をいったりきたりしながら寄り添う。

幽霊のよう、と表現されているのがまさに。
たぶん人生でこんなときは何度かあるはずで 寂しくて苦しくて辛いトンネルなんだけど どうしても美しさがあるんだよね。

熱を出したさっちゃんがベッドの上で食べた フライドポテトとギネスビール。
島の売店の建物にあるレストランでの クリームティのクロテッドクリーム。
いつも 今すぐ食べたくなる。

絶望しながらも美味しそうで
希望があってちゃんとエロくて
どんな人生でもそれぞれに必ず光があるんだよな、
ということも あらためて感じられる。

読むたびに心に残る一文があってね 今回はね
「人にほんとうになにかをしてあげることは、常に少し痛みのあることなのだと思う」

ちなみに私は主人公に共感するのではなく いつでもその脇役 この物語でいう「ちどり」みたいだ。

また読み終わってしまった…
いつかふたたび この世界に入りたいぜ。

Eko

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