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岩明均『骨の音』と1980年代の和光大学と吉田芳夫先生


岩明均先生と言えば『寄生獣』なわけですが、『骨の音』では、それ以前の、試行錯誤時代の岩明先生を感じることができます。

わたしがマンガをバンバン読んでいたのは30年ほど前でしょうか、岩明先生は『風子のいる店』っていう、地味目な、あんまり面白くない作品をモーニングに連載してました。


そのため、『寄生獣』が連載されている間中、わたしの中では「『風子のいる店』を描いた、あんまり面白くない漫画家の作品」だと思って読んでいなかったんです。いや、通しで読むと面白いのかもしれませんが、連載で細切れで読んでるとあんまし面白くないな、と。


が、大間違いでしたね。日本漫画史上に残る傑作でした。すいませんでした。

それから次々と、重厚な世界観を持つ、抜群に面白い作品を連発されて、


同じ作家が、こんなに面白くなるのか


と、たいそう驚きました。


その岩明先生のデビュー作から最初期の作品集が『骨の音』です。


この本を読んで特別な感慨を感じるのは、なんか妙に懐かしい風景が描かれてるんですよ。


調べてみますと、岩明均先生というのは、わたしと同じ和光大学という所を中退されてまして、ちなみにわたしも中退なんですが(笑)、さらに、お父さんが和光大学名誉教授の考古学者・岩城正夫先生だ、と。


岩城正夫先生、わたしは直接講義を受けたことはないんですが、古代の道具を使って火をおこすような、面白い講義をされていて人気の先生でした。


そうか。そんなわけで、妙に懐かしい風景なのか、と。


すると、あれだ、この作品に出てくる彫刻研究室の指導官は彫刻家の吉田芳夫先生ぢゃん。


いやー、懐かしいなぁ。


吉田先生、わたしが学生の頃はもうちょっとお年を召してたけど、確かにあんな感じでダンディで飄々としてたなー、と。


というわけで、『骨の音』、岩明均先生の『寄生獣』以前の表現を知りたい方と、1980年代に和光大学に通っていた方にお薦めです。