妾馬 (八五郎出世)
ある師匠を知るきっかけになり、江戸で一番好きな噺です
2018.6 根多出しをされ、やっと生で聴けるチャンス
落語贔屓の会と言うより、地元密着型な会。
初心者向けに丁寧に優しく落語の所作などを説明された後、一席目《黄金の大黒》
仲入りと言うより5分程度で藤色のお着物に早替えだったので客席から拍手喝采でした。
そして《妾馬》へ テレビじゃなくやっぱり目の前で
聴けるのは別物。自然と泣いてた自分。何度もたくさんの二ツ目さん、師匠方で拝聴しましたが、私その師匠の《妾馬》が江戸噺mybest1 他と比べる事も出来ない全く別物レベル。
私は、この噺は四場面構成と思っています。
①大家宅にて
②屋敷にて
③大広間での宴席〜お鶴と再会
④宴席〜都々逸
四場面の中でも③大広間にて宴席~お鶴と再会 がこの噺の醍醐味はここから。どこまで拡げるか、どこを端折るかでガラっと変わってしまうかと。三太夫さん、殿様との掛け合い、ご老女様弄り・・・ 初めて目の前の殿様からずらした視線の先に、妹・お鶴が笑顔で八五郎を見ていることに気づき満面の笑みなる八五郎(この時師匠の目もうるうるなのさ) ※演者によってはこの場面に赤さんが傍にいることもあります
「あ~ お鶴だよな? そんなに綺麗になってるから、あんちゃんわからなかったよ」にっこり満面の笑みになり久しぶりに見る妹へ続けて語りかける八五郎。
「お前 男の子生んだんだってな おめでとう あんちゃんお前が【鳥を産んだ】って聞いてびっくりしたよ そしたら男の子を産む事を【およとり】って言うんだってな お前のおかげであんちゃんどんどん利口にならぁ でもなお鶴 男の子産んだからって高慢になって駄目だよ如才なく みなさんに可愛がって貰うんだよ (目線がお鶴さんから少しズレながら 溜息混じりにゆっくりと) 出掛けにお袋がぽろぽろ泣くんだよ 身分の違いは情けない 初孫をこの手で抱くことも出来ないって オヤジが死んだ時に涙ひとつこぼさなかった気丈なお袋がさぁ あんちゃんはもういいから 今度はお袋を呼んでやってくれや」本当に綺麗な着物姿の笑顔の【お鶴の方】が見えるんですその妹を優しく見るうるうる目の八五郎さんがそこにいるんです。あったか~い なんとも言えない優しい空間 演者ではなく《お鶴の方様お兄上・八五郎殿》がそこにいるんです。なかなか師匠がこの噺を高座にかける事が少ない為、初聴から3年。2回目のチャンス到来は難しい。特にこの1年ほど、直接何度も繰り返し師匠にこの噺が好きなので、是非音源かDVD発売をと懇願しているのですが、残念ながら叶う事のない無理難題な夢と諦めていたのですが、先日とある場所で演ったと知ったショックは計り知れず。涙が止まらない状態になってしまいました。他の小屋や地方なら諦められますが、馴染み深い場所でだったので、悲しいやら情けないやら‥自分の愚かしさを目の辺りにして、感情のコントロールができなくなり、翌日の独演会では、笑う事もなくただ目の前の【動くモノ】が目に映るだけとなってました。そんなことくらで大人げない 演者へのリスペクトが欠落していると批判、出禁は覚悟の上です。それだけ私にとってはとても大切な噺です。この先もずっとリスペクトしていきたい噺家のおひとりです。だからこその状況になったコトを残しておきたかった。横に関係者がいたのは認識していたんですが、ご心配・ご迷惑をおかけしない配慮をするだけの余裕が全くありませんでした。夜【大丈夫?】のご連絡頂き恐縮しきりです。いつもわがまなお願いばかりなのに笑顔で優しく対応してくださる関係皆様には深謝以外の言葉はありません。
※きっちり都々逸場面まで演れる方は少ない?
※亭号によって?《妾馬》《八五郎出世》になる?
※上方版でも演る方いるそうですが、拝聴チャンスなし
是非拝聴してみたい!!
六代目三遊亭圓生師匠が「古典落語は単に笑わすのじゃなくて泣かすことも大事なのだ。」ということを悟り、新しい芸の境地を開拓したと文献に残されているそうです。