【アンカーの思い出】(19)要約こぼれ話

実を言うと、有本氏の発言を要約するのは非常に簡単である。なぜなら一切手を加えずそのまま文字にするだけでも、十分理解しやすいものになるからである。前にも述べたように、有本氏の紹介する情報は不確かなものが少なく、話が良く整理されていて、論旨も明快である。また「事実と意見の区別」がしっかりと行われているので、文字にしたときに生じる違和感が非常に少ない。逆にこういう点がいい加減な場合、そのまま文字に直すと粗が非常に目立つ。少なくともわたしにとってそのような発言は、目につくところがあまりに多すぎて機械的に文字にするのは抵抗があるし、かといって整理するために手を加えるのも簡単ではないので、とても要約しようという気にはならないだろう。その点、有本氏の場合はわたしのような文字起こしの初心者でもお手軽に始めることができたので、取っつきやすいものであると言える。

しかしひとつ注意点を挙げるなら、有本氏のコメントが歯切れ良いからと言って、要約するときに簡単に切り詰めるのは危険である。というのも実際には慎重な言い回しが選ばれているにもかかわらず、編集によって言い切られていないことが言い切られたようになってしまうおそれが出てくるからである。わたしが有本氏のコメントを要約するとき、一番気を配るのは要約としての読みやすさよりも、抑制された元発言を踏み外したものに改変しないという点である。この加減を間違えると何より有本氏が迷惑を被るおそれがあるため、慎重を要する。などと言っているわたしだが、これを毎回守れているという自信はない。ただ、わたしが公開してきた要約に対して「不正確だ」という指摘を受けたことは一度もなかった。わたし以上にアンカーを深く視聴しているような人から指摘が出る可能性は十分にあると想定していたが、幸運なことにそうした声は今までのところ受け取っていない。ついでに言うと有本氏本人からも指摘を受けたことはない。他のツイッターユーザーが有本氏の発言として紹介したツイートに、本人が「そんな主張はしていない」と抗議をしているところは以前に見かけたので、目こぼしされているわけではないものと思われる。ともかく、わたしは要約をずいぶん自由にやらせていただいたし、それを寛容な心で見守って下さっている読者の皆様には、深く感謝を申し述べる次第である。

そんなわけで注意点はあるものの、有本氏のコメントは文字起こし入門用の素材としても好適なので、興味のある人には是非おすすめしたい。一度文字起こしをしてみれば、わたしの要約が至って平凡なこともおそらくすぐにわかってしまうのではないかと思う。(第20回に続く)

(※この文章は筆者の個人的な回想であり、事実を正確に反映したものであるとは限りません。)