【アンカーの思い出】(20)スタッフの人たちへの評価
これはテレビに限った話ではないのだが、わたしはマスメディアの内部にいる人たちのインテリジェンスというものを基本的に信用していない。なぜなら彼らは情報収集のための経路を確保することや、情報調達のための技術を磨くことに余念がなく、集めてきた情報をどう活用するか、そこから何を引き出すかというインテリジェンスを重視しているようにはとても見えないからである。例えるなら素材を集めてくるのは上手いが、素材の質に頼るあまり料理の腕が伴っていない料理人のようなもので、そんな人物が料理の名人と呼ばれることなどありえないだろう。それ以外にも、たとえば以前問題にしたような「事実と意見の区別」があやしい人物が散見されるなど、問題点は複数存在する。
したがってわたしはアンカーに関しても、たとえば裏側で構成を担当しているようなテレビ局の人についてはまるで評価していなかった。「ニュースDEズバリ!」や「ニュースの熱点」があのクオリティを保っているのは、青山繁晴氏や有本香氏など相応の能力とポリシーを持った外部の人たちが関わっているからであって、そういう人たちの関与がなくなればたちまち破綻するだろう、と見ていたからである。わたしが要約を始めた頃は、そうした考えがTwitterで暗に出てしまうことが何度となくあった。一方、有本氏はTwitterを使ってアンカーの舞台裏などを軽く紹介することがあり、スタッフの人たちの貢献について述べることも多かった。それでもわたしが漠然と抱いている不信感は相変わらず根強かったが、しかし「熱点」の視聴を重ねるにつれて、テレビ局の中にいる人たちにも少しずつ注目するようになっていった。
アンカーのスタッフの貢献をわたしがはっきり認識するきっかけになったのは、2014年9月末に放送された「熱点」である。有本氏が「熱点」の解説を担当するのは本来なら月初めであったが、この時はそれが1週間前倒しされた。というのも、もともと「香港の民主派デモ」をテーマに調整されていたのだが、香港の状況が一転緊迫した状態になったからである。この前倒しの経緯については有本氏が番組の中で語っており、同時にスタッフの人たちの貢献についても明言している。さらにその日の「熱点」は有本氏の解説もさることながら、スタッフの人たちの貢献をはっきり感じることができるものだった。有本氏がレギュラーになってから放送された火曜アンカーの中で、この時の「熱点」が一番だとわたしは思っている。なお手前味噌ではあるが、わたしが昨年末、勝手に開催した「火曜アンカー大賞2014」でもこの時の「熱点」を「大賞」に選んでいる。この企画を考えたときは「2015」も考えていたのだが、結果的に1度きりになってしまったのは残念である。
テレビ全般について言えば、諦めの気持ちの方がいまだ強いが、しかしそういう中で良い仕事をしている人の存在を確認することができた。テレビの可能性を見直す機会をもたらしてくれたという意味でも、わたしは有本氏に深く感謝しているのである。(第21回に続く)
(※この文章は筆者の個人的な回想であり、事実を正確に反映したものであるとは限りません。)