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「己」を乗り越えた先にあるもの | 戸川良太 × 深井龍之介

法人COTEN CREWになってくださった企業の方々と深井龍之介との対談連載。今回は、幅広い事業を手掛けるZenshin Groupの戸川良太さん。波乱万丈の半生を送り、ついには出家するに至った戸川さんは、株式会社COTENの事業にも通じる、ある重要なことに気付きました。

戸川良太 (とがわ・りょうた)
2011年にフリーピース創業。現在は、ゼンシングループの代表を務める。グループ全体の調和と「人づくり」の実践のため、各事業会社の経営幹部との一対一での対話・新卒メンバーに向けた研修などを実施している。

夜の世界から昼の世界へ

深井龍之介(以下深井):戸川さん、この度は法人COTEN CREWになってくださってありがとうございます。戸川さんが代表を務めるZenshin Groupは、どういうビジネスをされているんですか?

戸川良太(以下戸川):うちのメインは金融ですかね。通称「ミニ保険」とも言われる、ニッチなニーズにもお応えできる少額短期保険事業の運営、そしてファイナンシャルプランニング事業の運営を軸に、様々な分野に展開しています。
コールセンターや24時間緊急駆けつけサービスの運営、カンボジアのプノンペンで飲食を手掛けたりもしています。深井さんがお住いの福岡も会社もあるのでよく行きます。福岡の人たち、好きですしね。

深井:すごい、めちゃめちゃ幅広いですね。

戸川:といっても、結局は「人作り」ですよ、僕がやりたいことは。

深井:人作り?

戸川:ええ。社会からの要請に応えたくても、普通は「人」で詰まるじゃないですか。その課題をこなせる人材がいなくて。だから、社会に貢献できるトップ人材を作ることが僕のビジネスの根底ですかね。

深井:なるほど。ちなみにCOTEN RADIOを聞き始めたきっかけはなんですか?

戸川:あまりポッドキャストは聞かないので、たまたまですかね(笑)。深井さんがやろうとしていることが面白そうだと思って聞き始めたんです。

深井:ありがとうございます。どういう点にご興味を持たれましたか?

戸川:どこかの人の役に立とうとしているところ、ですかね。損得を超えて、僕にはできないことやろうとしているのが深井さんの美学が面白いなと。

深井:美学ですか。でも戸川さんも、東日本大震災のときには支援団体を作り、人助けをされてたそうですね。

戸川:ああ、たしかにあの震災は転機でした。東北が大変なことになっているのに何もしていない自分にイライラして、数日後にはトラックで福島県に入っていましたね。当時は会社員だったんですが、ちゃんと徳を積まなきゃと思ってね(笑)

深井:徳を?

戸川:その前段階があって、僕はもともとヤンチャでして、他人様にたくさんご迷惑をおかけしてしまってきたんですよね。……まあ詳細はやめましょうか(笑)。
しかし20歳の時に痛い目にあって、それで少しは目を覚ますことができたんです。それからは「夜の世界」に身をおいていたんですが、「あっ、ここも違うかも」と思って、ようやく「昼の世界」に辿り着きました。

深井:おお、大きな転換があったんですね。

戸川:まあ、育ててくれた母ちゃんのおかげで、人間としての根っこはちゃんと出来ていたとは思いますよ。でもね、力の使い方を間違い続けていたんです。それでしっぺ返しを喰らったんですね。
就職活動をはじめたら、奇跡的に大手不動産会社に受かってサラリーマンになりました。28歳の時に世界一周するために辞めたんですが、その後証券会社に入って、東日本大震災を経て起業、そして今に至るというわけです。
ああ、後、僕は40歳の時に出家してますから、今は禅僧ということにもなりますね。

禅僧との出会い

深井:出家!夜の街といい、めちゃめちゃに波乱万丈ですね……。
今までお話しした法人COTEN CREWの方の中でも、いちばん振れ幅が大きい人生かもしれません(笑)。

戸川:振れ幅は大事だと思っていますよ。
一時期、カンボジアと日本を往復する生活をしていましたが、日本―カンボジアの振れ幅から得たものもたくさんあります。
一つのことを突き詰めるのもいいけれど、思いっきりブレながら本質に近づいていってもいいんです。

深井:たしかに。しかし戸川さんは、どういった経緯で僧侶に?

戸川:なんだろうな、出家する直前までまったく興味はなかったんですが、39歳くらいのころから、自分で自分を抑えているような感じがしはじめたんですね。
自分が自分で自分の限界を超えるのを邪魔している。
僕の限界はそのままグループの限界になりますから、「このままではまずいな」と思い始めたんですよ。

深井:ええ。

戸川:自分という個の壁を突破するためにはどうしたもんか、そんなときふと「出家でもするか」という思いが自然と湧き上がってきました。
それで、以前からつながりのあった今の師匠に連絡をして思いを伝えたこところ、「じゃあうちにおいで」と快諾してもらいました。
青森県にあるお寺で出家して、それから一か月くらいは青森県の山の中を歩いていたんですが、あるとき、景色と自分が一体になって「自分は生かされて生きている」という絶対的な感覚を覚えました。
それ以来「オレは生かされている」という感覚がずっと離れないんですよ。だから、COTEN RADIOの仏教の回も面白かったですよ。精神世界を言葉にするのは難しいですが……。

深井:ですね。特に仏教は実際に行を積まないと会得できないから、難しいな……。
僕にも、お師匠じゃないですが、仏教について色々教えてくれる方が京都にいるんですが、よく言われます。「やってみないとわからない」って。

戸川:今は1日2時間くらいは座禅をするようにしていて、実は深井さんと話す前もやっていたんです。

利他を体現する

深井:凄い人生ですが、事業のほうはこの後、どう展開される予定なんですか?

戸川:具体的なビジョンはそれぞれの会社のトップが決めることなので、僕が口を出すことじゃないですね。
僕の仕事は、さっき言ったように、人作りです。損得勘定を超えて、内発的な動機で生きられるヤツを何人作れるか。
欲求じゃダメなんです。「やらずにはいられない」っていう、強い内発的な衝動です。

深井:そこに仏教の影響はありますか?

戸川:いや、特にないですね。でも、お坊さんたちが言ってることも結局は同じじゃないですか。だから、もともと自分の中にあったものを禅がクリアにしてくれたのかもしれないな。
でも禅と経営は近いと思いますよ。深井さんがやろうとしていることも、似ているんじゃないですか?

深井:いやいや、僕はそこまで壮大じゃないですが……。

戸川:COTEN RADIOを聞くたびに深井さんへのシンパシーを感じますよ。深井さんご本人はそう思ってないかもしれないですが、歴史データベースという事業を通じて人のためになろうとしている。
利他的というのともちょっと違います。ただの利他ではなく、深井さんは具体的に体現している。そこが凄いところです。
深井龍之介という人間が世の中にいることが嬉しいし、勝手に仲間だと思っていますよ。今回、法人COTEN CREWになったのも自然な流れです。

少しずつ、己を捨てていく

戸川:そもそも、「利己」と「利他」を対比するのがちょっとおかしいと思うんです。なぜなら、いかに「己」を捨てるかが大事だから。利他的になるんじゃなく、利己と利他という区別がなくなるんです。

深井:僕もその意識でやっているんですが、全然できていない(笑)。コンビニのレジに列ができているだけでイライラするくらいの小物なので(笑)。
ただ、「己」を捨てることの重要性はわかります。そもそも、僕が作りたい歴史データベースも、歴史から属人性、つまりさまざまな「己」を消す事業ですしね。
僕としては、僕個人ががんばってなんとかなるフェーズはもう過ぎたと思っていて、これからは組織でがんばりたいと考えています。僕個人が有名になることにはまったく意味を感じないので、起業家として、もっとデカいことをやりたい。他にやることもないし(笑)。
なので、戸川さんとノリは違うかもしれませんが、本質は近いかもしれませんね。ホモ・サピエンスは己を抑えて仲間を助けることに喜びを感じるように作られているらしいし、僕も己を乗り越えようと思います。

戸川:個人の欲求のレベルを超えないと、デカいことはやれないですよ。深井さんの生き様、応援しています。

深井:生き様を見ていただいているのは恐縮ですが(笑)、がんばります。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

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