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今こそ、オール仏教!宗派の垣根を越えてシェア | 妙法寺 久住謙昭 × COTEN

株式会社COTENの挑戦を応援してくださる、法人COTEN CREW企業の皆様をご紹介します。
COTENを通じて人文知に投資することを決めた彼ら。
日頃、どのような問題意識を持って活動されているのでしょうか。

今回は妙法寺住職の久住謙昭さんです。

※COTENのフラットな空気感をお伝えするため、今回のインタビューはニックネームで実施し、記事もそのままお届けします。

久住謙昭(くすみ・けんしょう)
1976年 横浜市生まれ。日蓮宗 宗門史跡 妙法寺 第47代目住職。
一般社団法人 みんなの仏教 代表理事。認定NPO法人 おてらおやつクラブ 広報部員。
中学を卒業後、山梨県の身延山にて6年間の修行生活を送り、その後200日の荒行修行を経て、妙法寺住職に就任。「今を生きる智恵と勇気、共に学び歩むお寺」を理念に掲げる。仏教の伝統を守りながらも現代に相応しいカタチに再編集し人々に届けるため、一般社団法人「みんなの仏教」を設立。昨年「地獄VR」をリリースし地獄体験を定期的に開催。

宗派の垣根を超えて仏教を学ぶ「浄心道場」

COTENインタビュアー(以下、ーー):妙法寺さんは他のお寺では見かけない「浄心道場」という活動をしているみたいですが、どういう活動なんですか?

久住謙昭(以下、ケンショー):「浄心道場」は、住職が皆さんにお話しを聞いてもらいたいと思った方をお招きしてお話しをしていただくという活動です。その中には他宗のお坊さんを招くことも。2023年は10周年特別企画として、日本に仏教が伝わってきてからの歴史をテーマに、聖徳太子からはじまり日蓮まで、他宗のお坊さんが勢揃いします。そして最後は仏教学者の佐々木閑先生にお釈迦様を語っていただきます。

ーー「浄心道場」を始めた背景は?

ケンショー:もともとお寺って檀家さんや信徒さんとか関係なく、教育や福祉の場を担っていて開かれた場だったんですね。
聖徳太子の頃には、病院や学校、老人ホームだったし、清水寺に舞台があるのは舞やコンサートなどの芸能発信の場だったからです。

ケンショー:江戸時代に檀家制度ができてそれが役所の役割を担ったり、駆け込み寺や社会的弱者の避難場所にもなりました。そんな昔のお寺を取り戻していきたいという思いがありました。そして、仏教ってこんなに素晴らしいんです!ということを発信する場でもありたいんです。

ケンショー:ふつう、イベントの開催には会場費や参加費がかかるけど、お寺が会場であれば「参加費無料で、お気持ちをお賽銭箱に」と参加のハードルが低く活動ができるので。

ーー10年前にそういった活動ををやろうとしたきっかけはありますか?

ケンショー:その頃、急に師匠である先代の住職が交通事故で亡くなったんです。それで、僕は31歳で住職になりました。当時、横浜市内では一番若い住職でしたし、もうとにかく試行錯誤の毎日でした。
先代は大学の先生や日蓮宗で本部の役職、総本山の役員もしていたりと、とても偉いお坊さんだったんです。それが、急に若い息子が住職になったので、「こんな若い坊さんを住職にさせていいのか」と言われることもよくありましたね。だから、より良くしていかなければならないというプレッシャーの毎日でした。試行錯誤しながら、今後の仏教界について危機感や意識のあるお坊さんたちと集まって、壁打ちや議論をしてお寺を作ってきた10年です。

原点回帰、「開かれたお寺」を目指す

ケンショー:「浄心道場」以外にも、色々と10年ぐらい取り組んできました。

ーー根底にはどのような思いがあるのでしょうか?

ケンショー:仏教界では、自分の宗派以外のお坊さんを呼ぶ文化はまず無いんです。基本的には、考え方が違うから宗派が別れたので、同じ仏教を教えているけどライバルでもある。でも一般の方の多くは、仏教の教えや文化には興味はあるけど、宗派に固執していないという人も多いですよね。

ケンショー:宗派それぞれに生きる仏教の智恵がたくさんあります。さまざまな宗派の話を聞いていただいて、「この宗祖の生き方かっこいい」「生きるヒントをもらえた」と思ってもらえるといいなと。

ケンショー:宗派にこだわらずに聞くことで、仏教の智恵がひと通り分かるんですよね。それを一つのお寺でやってみるのは面白いんじゃないかと思って始めたんです。

ーー今まで、このような宗派を越えた講演会のような取り組みってあるんですか?

ケンショー:自分の知る限りでは珍しいと思います。「浄心道場」でそれぞれ自分の宗派の話をした後に、日蓮宗と曹洞宗とか真言宗のお坊さんが、それこそコテンラジオの番外編のように語り合ったりもします。そして、イベント参加者の7割が、檀家さんでも信徒さんでもありません。そういう意味でも面白いですね。

ーー……例えば、日蓮宗の檀家さんが、「浄心道場」で話を聞いて「やっぱり別の宗派がいい」となっても大丈夫なんでしょうか?

ケンショー:気持ち的には「わかる!〇〇宗もいいよね!でも主催者は妙法寺だから、そこも大事にしてね」といった感じでしょうか(笑)。

ーーこういうイベントって、参加したら「うちの宗派の信者になりませんか?」って言われるんじゃないかと、不安になる人もいそうですが。

ケンショー:「浄心道場」はそういうのは全くなくて、むしろいろいろな宗派を見てほしいという活動です。

ーー仏教界に対してはどのようなアプローチをしていきたいですか。

ケンショー: COTENラジオに出てきたたくさんの偉人が言っていたように、自分も仏教界に少しでもいいから、新しい取り組みや風を吹き込んでいけたらいいなと思っています。世の中が、日本がこれだけ大変で、仏教もお寺も危機的状況のときに、仏教界で内輪揉めしてる場合じゃないだろうと。今こそオール仏教で、変えられるところは変えていこうと。

仏教界のベンチャー企業

ーー「壁打ち」「オール仏教」という言葉遣いや喋り方からして、久住さんは、和尚というより、ベンチャー企業の社長のような印象があります(笑)

ケンショー:お寺の世界ではお金に関する事を口にするのは敬遠されてきましたが、お寺にも経営やマネジメントのノウハウが必要であると思っていて、参考になるものは意識して取り入れていますね。お寺に広報担当を置いたのもお寺や仏教の魅力を一般人目線で発信したいと考えたからです。

ーーでは、ビジネス風の聞き方をすると、資金調達はどうされているのでしょうか。

ケンショー:法事や葬儀などの供養のお布施が主な資金源になっています。一方で、妙法寺では、新しくお便り会員や妙法寺会員といった会員制度を作りました。別の宗派だけど妙法寺会員になっているみたいに、サロン的に入ってもらっていますね。

ーーおお、新しい!妙法寺と、檀家以外のライトな関わり方ができるんですね。

ケンショー:はい。今までは誰かが亡くなったり、お寺に墓地を持って檀家にならないとお寺と係わりを持つことができなかったんですね。でも、首都圏ではどこかのお寺に所属している檀家の人は全体の35%くらいのようなんです。なので残りの65%の方々に生きているうちからお寺や仏教に縁を持てるようにしました。かかりつけの病院があるように「何かあったら頼みたい」かかりつけのお寺になっていこうとしています。そんな感じで、良きお説法、良きお経、良き供養、現代的なお墓の販売など新旧の方法で資金を調達して、そこから法話会をしたりホームページを作ったり、COTENさんを応援したりしています。

ーー本当に、社長っぽい……!


ファーストペンギンになるための、法人COTEN CREW

ーー今回法人COTEN CREWになった背景を教えていただけますか。

ケンショー: COTENラジオはスゴく面白くて、経営面での学びも多く、仏教にも通じる話もたくさんあるので周囲のお坊さんにも薦めています。COTENさんのデータベースの取り組みもスゴく興味深くて応援したいんですよね。なので、先に手を挙げて「俺この船乗ってみるから、みんなもCOTENラジオを聞いてみて」と伝えていきたいと思ったんです。

ーー 何事においても、ファーストペンギン感がありますね?

ケンショー:よく言われるんですが、他人へ分け与えることへのハードルが低いみたいなんです。オリジナルのお経の本や仏具を作った時も見本としてほしい人には無料で送ったり情報もシェアしました。

ケンショー:結局、自分のお寺だけが良くなってもしょうがないし、仏教界全体を底上げするために、自分がファーストペンギンになれるところはどんどんやっています。まず直感的におもしろいと思ったことを信じてやってみる。そこで得られた気づきやノウハウを仏教界にシェアしてみんなで盛り上がっていけたら良いなと思っています。

ーーまさに仏教と社会の架け橋ですね。どうしてそんなにエネルギッシュなんでしょうか。久住さんの根本的な問題意識みたいなものを聞いてみたいです。

ケンショー:仏教には、人生を生きる智恵が詰まっていると思うんです。しかし、経典は漢字だらけで難解な言葉も多いことから理解されずらい。なので本質的な価値を曲げることなく、現代にふさわしい形に再編集して、世の中にリリースしたいんです。その部分では難しい歴史の本質部分をわかりやすく、しかも面白く伝えてくれるCOTENラジオにとてもシンパシーを感じているんです。

ーー仏教的なものの価値って、どのようなものでしょうか。

ケンショー:生きていく中で自分の力ではどうしようもない苦しいときに、人は祈りの場やすがる心の拠り所として神仏に頼ってお寺に来ると思うんです。コロナの真っ只中で、多くのお寺が参拝禁止にしていた中、うちは逆に開放したら結構人が来てくれたんですね。信仰を世の人はすごく求めているから、それを与えるのが仏教を担うお坊さんやお寺なんだと思うんです。

ーー不安なときほど、そういう場が必要ということですよね。

ケンショー:そうです。それで殻を破ろうとして、最初は結構叩かれました。でもCOTENラジオで、規制的なものを破って改革した偉人の話を聞くたび、自分の活動を続けてきて良かったと思います。偉人は大器晩成で最初はなかなか理解されない。勇気をもらいました。それと同じで、理解されなくてもいいから続ける。「浄心道場」で、たくさんの仏教をちゃんと世の中に届けていきたいです。

ーーありがとうございます。本当にCOTENにもつながる内容でした。

(編集:株式会社COTEN 内山千咲/ライター:村上光子


ここまでお読みいただきありがとうございました!

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