見出し画像

「エモさ」と「構造」のバランス | Co-Lift 木下寛大 × 深井龍之介


法人COTEN CREWになってくださった企業の方々と深井龍之介との対談連載。今回は、「文章の論理構造を図解する」というユニークなサービスをリリースされた株式会社Co-Lift 代表取締役、木下寛大さん。ものごとの本質や構造に興味があるという木下さんは、深井との共通点を多くお持ちのようです。

木下寛大(きのした かんた):株式会社Co-Lift 代表取締役。新規事業開発の戦略コンサルティング、ソフトウェア開発、組織開発を手掛ける傍ら、「メタ思考を加速する」Nodebaseというサービスを運営。物事をメタに考えるのがクセで、社員からはよく「ちょっと何言ってるかよく分からない」とか「よくできたAI」と言われる。

文章の構造を視覚化する「Nodebase」

木下寛大(以下木下):僕はCo-Liftという、コンサルティングとシステム開発を主とする会社を経営しているんですが、深井さんに強いシンパシーを感じているんです。それで今回、法人COTEN CREWになりました。

深井龍之介(以下深井):ありがとうございます。シンパシーというと?

木下:日本での歴史系コンテンツは歴史上の人物への親近感やエモーショナルな物語性に偏る傾向があると思うのですが、COTEN RADIOはそうではなく、歴史の「構造」に着目しますよね。そこに惹かれたんです。実はCOTEN RADIOを知ってからまだ半年くらいなのですが、あっという間にすべて聞いてしまいました。

深井:たしかにそうですね。僕が、社会学や人類学など、個別のストーリーよりも抽象的な構造を重視する学問を勉強していたせいなのかな。あるいは、もともと、僕にはものごとを抽象的にとらえる傾向があったのかもしれません。
歴史学者は基本的に自分のエリアだけ研究しますから、他の時代と比較して共通の構造をひき出す……みたいなことは得意じゃないんですね。だから、歴史学畑の人は、僕みたいにならない気がします。

木下:そうですよね。僕も深井さんと同じで、対象を抽象的に見る傾向があるんです。だから歴史データベースという発想にも共感して応援しているのですが、実は「構造」は、僕たちが最近リリースしたサービスのキーワードでもあります。

深井:どんなサービスですか?

木下:文章の論理構造を図解するサービス「Nodebase」です。実演してみますね。まずは、こういうふうに画面の左側にテキストが来ます。

深井:あ、文章が図になってる!

木下:そうそう。それで、文章の右側に、ダイアグラム(図)という形式で文章の論理構造がビジュアルで表現出来るんです。

深井:すごい、これめちゃめちゃ便利ですね。本を書くときにあったらよかったのに……。文章ではなく喋る場合でも、論理構造を図にできたら最高ですね。COTEN RADIOの台本作りでも使えるかもしれません。
木下さんはなぜこういうシステムを作ろうと思ったんですか?

木下:僕はずっと、「本質的な論点に基づいた議論って難しいなあ」と感じていたんです。

深井:本質?

木下:ええ、皆、共感だったり怒りといったエモーショナルな部分にばかり引っ張られて、肝心の問題解決に向かうための論点がおざなりになってしまう。だから、末節ではなくて、本質的な論点を簡単に抜き出して可視化出来る仕組みが欲しかったんです。

深井:たしかに!

木下:でも、ビジネスモデルはまだあまり考えていません(笑)。僕が欲しかったから作っただけで、どのようにビジネスにつながるかはわからないんです。でも、僕以外にも価値を感じてくれる人がいると信じてはいます。

得意な領域で稼いで先行者に投資する

木下:僕が法人COTEN CREWになりたいと思ったのは、深井さんたちが歴史データベースという、やはり、どのようにビジネスになるかわからないものを作っているからでもあります。そこにもシンパシーを感じたんですよ。
僕たちは、自分たちと近いビジョンを持つ先行者を見つけたら、自分たちのビジネスで得た利益を再投資することにしています。コンサルティングとかシステム開発とか、自分が得意とする領域できちんと収益を挙げて、それを元手に深井さんのような人々に再投資すると。

深井:ありがとうございます。僕も、木下さんのやりかたにシンパシーを感じました。というのも、僕も株式会社COTENという組織を使って「投資」している感覚があるんですよ。歴史データベースという、どうなるかわからない対象に。
そもそも僕は、投資のリターンは厳密に見積もれるはずだとか、見積もるべきだという考え方そのものが人類の勘違いという気がするんです。リターンが予測できるものだけに投資していたら、人類は滅びるんじゃない? とさえ思う。そこも含めて、木下さんに感覚は近いかもしれません。

木下:あと、月額5万円という法人COTEN CREWの金額設定が絶妙だということもありましたね(笑)。短期的な金銭的リターンの期待なしに出せる金額の上限という感じで。

深井:でも、残念ながら、僕はそんなに効率よく稼げるモデルを持ってない。だから今回、一種の社会実験として法人COTEN CREWという試みをやらせてもらっています。
僕らのチャレンジは成功するかもしれないし、しないかもしれません。ただ、どうなるにしても、僕たちと似た考えを持っている人は他にもいるはずなんですね。だから、COTENの試みが先行事例として後に続く人々の参考になればと思っています。

変わっていくCOTEN RADIO

深井:今、少しずつCOTEN RADIOの形を変えていこうとも思っているんです。COTEN RADIOというコンテンツから「深井龍之介」というキャラクターの影をちょっとずつ薄くできないかなと。属人性を低下させたいんですね。
というのも、僕がCOTEN RADIOにリソースを割きまくっている現状は、歴史データベースの完成という大きな目標を考えると必ずしも最適じゃないから。顔を売って有名人になりたいわけでもないですし……。
もちろん、コンテンツとしてのCOTEN RADIOと僕はセットになっている可能性があるので、COTEN RADIOから僕というキャラクターを外したら、一気に人気が落ちるかもしれない。でも、そうなったらそうなったでモデルケースにはなりますよね。

木下:それ、すごく面白い論点ですね。
人を引き寄せるコンテンツとその人や集団の本質は別ですが、そもそも看板としてのコンテンツに魅力がないと人に振り向いてもらうことは難しい。深井さんたちの場合、本質的には歴史データベースを作りたいわけで、そのためにCOTEN RADIOというコンテンツをやっているんですよね。
ですが、コンテンツが強くなりすぎると、本質のほうが置き去りになってしまう。そのバランスをとるのが難しいのですが、深井さんたちはあえてそこにチャレンジしているのかなと思っています。

深井:もっと言うと、僕らはCOTEN RADIOというコンテンツからスタートしましたが、最終的には、COTEN RADIOのようなコンテンツなしでもデータベースのような「面白いこと」にお金が支払われる仕組みを作りたいんですよ。
今って、人気のコンテンツがあって、そこに広告を織り交ぜてお金を稼ぐモデルばかりじゃないですか。たとえばYoutubeだと、動画コンテンツに広告を挟んでいますよね。それはそれでいいんですが、質の低いコンテンツがあふれる原因にもなっています。だから、広告モデルじゃない、新しいモデルを作りたいんですよ。
僕らもそういう方向に向けて、段階的に変わっていけばいいなと。

木下:もしかして深井さんは、ご自身が著名人として「コンテンツ」になることにあまり関心はないんですか?

深井:COTEN RADIOをやっている僕が言うのも変ですが、その通りです(笑)。深井龍之介という個人のファンが増えるのは、ありがたくはありますが、スーパーどうでもいいんです(笑)。というのも、目標は人気者になることじゃなくて社会変革だからです。

木下:でも、そういう深井さんがコンテンツとしてのCOTEN RADIOを続けられていられるのは不思議な気もしますが……。

深井:それは、僕の長期的な目標にとってメリットがあるからですよね。でも、さっき言ったように、制作にはリソースをとられるので、だんだん合理的でなくなってきているのも事実です。こういう言い方をすると冷たい人間みたいになってしまうんですが、理解してもらえるといいなあ……。

木下:僕、COTEN RADIOが面白い理由の一つは、そういう深井さんの二面性も大きいと思うんですよ。抽象的で本質的な構造にもしっかり触れる一方で、コンテンツとしてエモく語ることも忘れないじゃないですか。後者ばっかりに人気が集まっているとしたらそれは残念なのですが。

深井:やっぱり多くの人に好まれるのはエモいコンテンツですよね。僕が歴史の抽象的な構造について語っていることを面白がってくれるのは、それこそ木下さんじゃないですが、経営者に多い気がします。法人COTEN CREWになってくれる方はそのあたりを理解してくれているので、法人COTEN CREWと話すのは楽しいですね。
多くの人が共感できる形で届けるのは大切ですけど、そろそろ僕らは、人類のためにそのフェーズを出る時期かなと感じています。

木下:すごくよくわかります。僕にとってのコンテンツって、抽象的な本質を理解するための味付けなんですね。味付けがされていない料理は美味しくないけど、調味料だけじゃダメ。だからどちらも必要なはずです。
でも、広告モデルだと、どうしても「濃い味付け」に偏りがちですよね。多くの人を集めやすいのは洗練された新鮮な食材よりも、どぎつい味付けだったりするので。
法人COTEN CREWという形で、その限界を超えようとしている深井さんを応援できるのはとても嬉しいです。本質じゃない部分で人々がいがみあっているのを見るのは辛いですから。
そうそう、ちなみに僕が法人COTEN CREWになった理由はもう一つあって、これはもう下心100%なんですが(笑)、深井さんとどこかで絡めないかなと。それもある意味リターンなんです。

深井:光栄ですね。現にこうしてお話しできていますし……。

木下:言ったように、僕は本質を外した議論はとても苦手なんですが、逆に、生産的な議論は楽しい。だから今のこの時間は全然、リターンになってますよ!


ここまでお読みいただきありがとうございました。

COTEN CREW入会手続きは、個人・法人ともにこちらから!
🐦 
個人COTEN CREWに入会してCOTENをサポートいただくと、COTEN RADIO新シリーズが公開日に一気に聞ける「アーリーアクセス」をお楽しみいただけます。
🐦 法人COTEN CREW slackコミュニティでは、COTEN RADIOで考える会社経営・メタ認知からキャンプの話まで、様々な雑談が日々飛び交っています!