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予防・未病で「夢」を支える | 株式会社スポーツ医学 世良泰 × COTEN

株式会社COTENの挑戦を応援してくださる、法人COTEN CREW企業の皆様をご紹介します。
COTENを通じて人文知に投資することを決めた彼ら。
日頃、どのような問題意識を持って活動されているのでしょうか。

今回は、株式会社スポーツ医学の世良泰さんです。

※COTENには、メンバー同士がフラットに「タメ語」で話す文化があります。その空気感をお伝えするため、今回のインタビューはタメ語&ニックネームで実施し、記事もそのままお届けします。

世良 泰(せら やすし)
慶應義塾大学医学部卒業。トップアスリートをはじめ、スポーツ愛好家、学生アスリートのスポーツ外傷・障害の予防と治療から内科的問題やコンディショニングなど総合的なスポーツ医学サポートを行う。また、生活習慣病や高齢者の運動療法まで幅広くスポーツ医学の臨床に携わる。全ての夢や希望は健康が前提になっていると考え、スポーツや運動に関する研究や教育、コンサルティング活動も行っている。

病気になる「前」の部分をサポートする医療

COTENインタビュアー (以下、ーー):せらちゃんはなぜ、スポーツ医学の先生なんだろう?

世良泰(以下、せらちゃん):学生の時からスポーツ医学志望だったんです。きっかけは、人間が健康で過ごすために必要なことは、4つしかないと気づいたこと。つまり、運動・食事・メンタル・休養。当時、自分はバスケと陸上をやっていて、この4つの要素に1番関わることができるのって何かなと思った時に、もうスポーツ医学しかないなと。

ーーおもしろい。普通は外科や内科など特定の分野があって、それぞれ決められたところで病気を治すっていうのが医学とか医療のイメージだけど、運動・食事・メンタル・休養って、病気以前のところをサポートしているよね。それを業種として学べるところとか、探索できるところがスポーツ医学だったの?

せらちゃん:そう。究極、人は死ぬ時は死ぬと思ってて。病気の治療とかはもちろん大切なことだけど、自分はそれよりは病気になる前のところをやりたいと思った。今の日本の医療制度の仕組みとして、いわゆる未病、予防と言われる部分は医療保険が使えないっていう現状があって。だから健康意識が高い人は未病・予防にアプローチするけど、一方で低い人は全然やらないっていう。

ーーそんなイメージある。

せらちゃん:みんな自分が病気になるとはまったく考えずに、3年後、5年後こうだ!みたいな夢を持つ。でもその夢って全部、健康であることを前提にしてるんだよね。なのに健康に対してあまり意識してなくて、食事も適当、運動もしてません。やっと少し生活に余裕が出てくると、ジムに行き始めるみたいなパターンが多い。本質的に健康でいられるために何ができるかっていうのをすごくやりたかった。

ーー一度、大きなけがや病気をすると、そこで考えを改めるって人もいるけど、ずっと健康な人ほど、健康には関心がないよね。

せらちゃん:病気になって「生活を改めないと死んじゃうよ!」と言われて、初めて意識しようかなと思うパターンがほとんどなんじゃないかな。普段、あまり意識してない人が多いと思う。

ーーそこをどう自分ごと化すればいいんだろう。健康ってやっぱり重要だよねって日々意識できるみたいな、そういう認知にするためには、どうすればいいんだろうね。

せらちゃん:自分もいろいろやってはいるものの、正直難しい。ただ、自分の体がどういう状況なのかを認知すること、つまりメタ認知力は必要だと思ってる。これが、法人COTEN CREWになろうと思ったところにも、つながってくるんだ。

ーー自分の体の状況を把握するっていうことだよね。

スポーツ医学は一般の人々にも必要な知識の集積

せらちゃん:学生さんがスポーツドクターになりたいっていうと、ほとんどがサッカー日本代表のドクターのような、整形外科医をイメージしがちなんだけど、実際はちょっと違う。
アメリカのスポーツ医学の資格は、family medicine(家庭医学)、orthopaedic(整形外科)、pediatric(小児科)の3つの上にある。その中でも、意外かもしれないけどfamily medicineがメイン。実は、スポーツの国際試合では、風邪を引いたり、おなかを痛がったりする選手をケアする方がけがの治療より多い。そこで必要とされるのは家庭医学領域の知識だね。
一方で整形外科領域に関しては、試合の場で診断をする必要は必ずしもないので、整形外科医としてやれることは少ない。そうすると、整形外科医は手術で骨折などの治療を行うのがメインで、海外でスポーツドクターというと、ほぼfamily medicineってなるんだよね。

ーーなるほど。日本の一般的な人が持つイメージに、ちょっと偏りがあるってことだね。

せらちゃん:スポーツ選手って、他の人よりも健康に気を使わなきゃいけなくて。睡眠を確保する、休養をする、食事を気にする。でもこれはスポーツ選手じゃない人にも必要なこと。そういう意味で、スポーツ医学は、一般の人々に1番近い医療のジャンルだっていう風に思ってる。

ーー一般的な医療は、病気になってから始まるイメージだけど、せらちゃんから見ると、スポーツ医学の方がよりスポーツやってない人たちにも必要なメソッドって考えるのかなって。じゃあ、この流れでいくと、せらちゃんはスポーツ医学の中の内科領域を専門にしているの?

せらちゃん:いや、整形外科(笑)。なんで自分がスポーツ医学の中の整形外科領域を専門にしてるかっていうと、個人的には内科領域の診断って、いずれAIでできるようになると考えているんだよね。いつからどんな症状があって、熱があるとか酸素飽和度や血圧はこのぐらいで……といった情報から、じゃあこの病気っぽいね、と推測していくという作業ね。

ーーたしかに。最近は、WEB問診をするクリニックも増えているよね。

せらちゃん:もちろん内科もなくならないと思うけど、整形外科医という技術職に関しては、ロボットが自分で判断して手術をすることは今のところない。術者をサポートするロボットは出てきていたりするけどね。そういう意味で、整形外科医として働いてる。あとは一般的な医療は目の前の患者さんを治療する1対1のことだけど、今回のCOVID-19のように集団に対してどのようにアプローチしていくのかに興味があって、それをもっと広くやりたいと思って、ポピュレーションヘルスって呼ばれるような、公衆衛生領域の勉強もしたって感じかな。

構造・現場から感じる課題と、自分にできること

ーー医療っていうと、病気になった人を臨床の現場で治療するみたいなイメージがある。だけど、関係者全員がメタ認知して、未病や予防に注力できるよう、構造を変えていくっていうことが、重要なのかもね。でも、今のところあんまりやってないよね。

せらちゃん:結局お金にならないんだよね。国が運営する公的な医療保険には、リハビリの日数に上限があったり、再生医療やロボットを使った運動療法みたいな新たな医療には保険が適用されなかったりする。

ーー医療保険が極めて限定的なところになってるっていうのが、課題っていうことか。未病・予防に力を入れるインセンティブがないんだよね。

せらちゃん:こういうのを変えるのって、医療の中からではなかなか難しいなと感じてて。COTEN RADIOでも、歴史上、集団は外敵が入ってきて、変わらざるを得なくなると変化していく、という主旨のことを言ってたし。でも、まずは自分でできることからと思って、目の前の患者さんにスポーツ医学を実践すること、スポーツ医学を社会で実践するためにどうすればいいかを考えたいし、法人COTEN CREWのコミュニティでいろいろな価値観に触れたいと思っているよ。

ーー確かに、みんなでそういうテーマについても話していきたいよね。

(編集:株式会社COTEN 内山千咲/ライター:なるめろん


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