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「当たり前」以外の選択肢を増やすために | 中村 俊介(しくみデザイン) × 深井龍之介


法人COTEN CREWになってくださった企業の方々と深井龍之介との対談連載。今回は、深井の古くからの知人でもある、しくみデザイン代表の中村俊介さん。かつての深井を振り返る対談は、中村さんの拠点でもある、福岡というテーマに及びました。

中村俊介(なかむら・しゅんすけ):九州芸術工科大学大学院在学中に体の動きを音楽に変える「KAGURA」で特許を取得。博士(芸術工学)取得後、2005年にしくみデザイン設立。米インテル社主催の技術コンテストや欧州最大の音楽フェスSónar+Dにて日本人初の世界一を獲得するなど、国内外30個以上のアワードを受賞。2017年にアプリ「Springin’」を開発し、クリエイターの立場から世界中の人たちをクリエイターにするべく活動中。

COTEN RADIOへの背中を押してもらった

中村俊介(以下中村):龍ちゃん、最近物凄く忙しそうだね。

深井龍之介(以下深井):ええ、おかげさまで……。

中村:COTEN RADIOも聞いてるけど、すごく面白いよ。いつも「やっぱり龍ちゃんだなあ」と思いながら聞いてる。

深井:というのは?

中村:はじめて会った8年前から変わらず、龍ちゃんは龍ちゃんだなと。他人に迎合しないし、無駄に話を合わせることもない。だんだん研ぎ澄まされてきて、芯の部分だけになってきた感じはするけど……。

深井:でも、福岡で(中村)俊介さんにはじめて会ったころは子どもでしたよ、僕(笑)。その頃の僕は新卒で入社した会社を辞めてスタートアップの世界に入ったばかりでしたけど、福岡のスタートアップ界隈って若手ばかりで、僕に限らずみんな子どもだったじゃないですか。その上みんな血気盛んだから、すぐケンカする(笑)。「なんでボクを見てくれないんだ!」みたいなくだらない理由で(笑)。
そこに年上で大人の俊介さんがいてくれたのは、本当に助かりました。いろいろ相談させてもらいましたよね。

中村:そうだね。でも、龍ちゃんからはじめて世界史データベースの構想を聞いたときは、ぜんぜんピンと来なかったな。「何が面白いのかわからないから、教えて」って言った記憶がある。

深井:よく覚えてます。俊介さんたちと旅館に行った時ですよね。

中村:そうそう。そうしたら龍ちゃんが歴史の話をしてくれたんだけど、その話が物凄く面白かった。だから、「龍ちゃんがしゃべったら?」って言って、しばらくしたらはじまっていたのがCOTEN RADIO。

深井:俊介さんに背中を押してもらったんですよね。僕はずっとどういうコンテンツを出せばいいのか悩んでたんですけど、別に自分を前面に出したくはないから、僕が喋るって発想はなかった。

中村:ポッドキャストになるとは思ってなかったけど、大成功だよね。そんな旧知の龍ちゃんが法人COTEN CREWを募集するとなっては、応援しない手はない……というわけで、今回は法人COTEN CREWになりました(笑)。
あと、最近の龍ちゃんがよく言ってる「新しい資本主義」みたいなのを応援したいのもある。僕は資本主義に乗っかって稼ごうとして四苦八苦してるけど、そうじゃない選択肢もあっていいと思う。つまり、金銭的な利益が発生しなくても「いいもの」に対してはお金が払われるっていう選択肢。

深井:しょうもないことにはお金が流れるのに、大事なことにお金が行かない世界でいいのかな、とは思いますね。

中村:僕は稼ぐことがあまり得意じゃないので(笑)、龍ちゃんの社会実験がうまくいけば、自分にとってもいい世界になるしね。そんな人は多いと思うよ。稼ぐことも大事だけど、選択肢が増えればいい。

スマホでプログラムができるSpringin’(スプリンギン)

深井:ありがとうございます! 最近の俊介さんのお仕事というと、前にCOTEN RADIOでも話してもらいましたが(番外編 #49~51)、やっぱりSpringin’(スプリンギン)ですよね。スマホで、文字を使わずにプログラミングができるアプリで、ゲームとか絵本が作れてしまうという。

中村:COTEN RADIOに出させてもらったときは教育用としての話が中心だったし、実際、学校や塾とか教育機関での需要が多いのはありがたいんだけど、実は別に子ども専用というわけではないんだよね。
COTEN RADIOでも話したけど、僕の根底には「どうしたら、より楽に創造力を発揮させられるか」という発想がある。本当はクリエイターになれる潜在能力があるのに、技術的な理由とかで能力を発揮できてない人って多いじゃない。
Springin’に関して言うと。一般的にプログラミングって専用の言語を覚えるのが大変で、そこで脱落してしまう人がとても多い。でも僕は、プログラミングを「勉強すること」よりも、プログラムを「使う」ことのほうが大事だと思ってる。だから、勉強せずにプログラムを使えるSpringin’を作ったんだね。これならば、誰でもプログラミング的な思考が身につくし、自分の中の創造性にも気づきやすいから。

深井:なるほど。

中村:学校で英単語や英文法を詰め込むよりも、実際に外国に行って英語を使うほうが大事じゃない? それに似てるかな。勉強することがゴールじゃなくて、実際に使ってなにかを創造することがゴールのはずだから。

深井:たしかに。他にも、楽器を使えなくても演奏ができるアプリ「KAGURA」とか、俊介さんの発想は面白いですよね。

中村:楽をするために、ライバルが少ない領域で、人がやらないことをやりたいと昔から思ってたからね。自分は九州芸術工科大学(現九州大学)でユニバーサルデザインの研究をして芸術工学の博士号をとったんだけど、CAD開発のバイトもしてたからプログラミングも経験もある。だから、昔はやっている人が少なかったデザインやグラフィックとテクノロジーとの組み合わせを自分のビジネスにしたんだ。

深井:そうか、俊介さんは院から九州だったんですね。

福岡のクオリティ・オブ・ライフの高さ

中村:そう、たまたま福岡に住み着いただけ。社会人になってから福岡に来た龍ちゃんと同じだね。

深井:そうそう。僕らは自分を「福岡の人」とはまったく思ってなくて、たまたま来て、めちゃ住みやすかったから住んでるだけなんですよね。
でも、福岡のクオリティ・オブ・ライフはめちゃ高い。東京と比較になるレベルじゃないです。殺伐としてないし、なんといっても「電車に乗る」っていう苦行がいらない。こっちはタクシーが安いから、移動を全部タクシーにしても月5万円かからないくらいです。
まあ、安さは福岡の課題でもあるけど……。

中村:僕は東京には住んだことがなくて、好きではあるししょっちゅう行くんだけど、住む場所かというと、少し考えるかな。近いことをやっている会社が日本には少ないから、福岡にいても日本中から依頼が来るしね。

深井:あと福岡に住む理由はもう一つあって、俊介さんも同じだと思うんですけど、東京よりも海外を見てるから。刺激を求めるなら東京にこだわる必要はなくて、深圳でもシリコンバレーでも行けばいい。

中村:それ、わかるな。自分もアプリをリリースするときは、必ず最初から英語版も出すようにしてる。まだ海外展開はできていないんだけど、「東京だけを見てるわけじゃないぞ」という意思表示のつもり。
今は月に2回くらい東京に行く福岡―東京の二拠点生活だけど、このくらいが自分にはちょうどいいと思う。

深井:僕も東京と福岡を行ったり来たりですが、同意です。これも福岡の強みだけど、東京が近いんですよね。しかも福岡の中心地から空港までが近くて、ドアtoドアで4時間くらいだから、気軽に行ける。

住む場所も選ぶ時代へ

中村:正直言うと、福岡に来た時は、センスが時代遅れになるんじゃないかって恐怖はあったよね。でも、今はそうじゃないとわかった。変に東京を意識しなくなったというのかな、福岡から客観的に見ると、東京は世界にたくさんある都市の一つだってことがわかるんだよね。

深井:ずっと東京への一極集中が言われてきましたけど、これからは住む場所も選ぶ時代になると思いますよ。もちろん東京に住んでもいいけど、福岡でもいい。今までは東京に住むのが「当たり前」だったかもしれないけど、そういう「当たり前」とは別の選択肢が出てきてるんです。

中村:そうだね。住む場所が「当たり前」にとらわれなくなったことは、龍ちゃんが挑戦してる新しい資本主義とも無関係じゃないと思う。どちらも、今までの「当たり前」に対して、新しい選択肢を提示するチャレンジだからさ。
とにかく、選択肢を増やすっていうのが大事だね。
僕がやっているのも「つくる」選択肢をみんなに増やそうとすることだし、龍ちゃんがやっているのも視点や考え方の選択肢を増やそうとしているわけだし。
そんなCOTENのチャレンジをこれからも全力で応援していくよ!


ここまでお読みいただきありがとうございました。

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