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ゼロから生み出す空間について考える | RYOPLUS株式会社 小林良 × COTEN

株式会社COTENの挑戦を応援してくださる、法人COTEN CREW企業の皆様をご紹介します。
COTENを通じて人文知に投資することを決めた彼ら。
日頃、どのような問題意識を持って活動されているのでしょうか。

今回はRYOPLUS株式会社の小林良さんです。

※COTENのフラットな空気感をお伝えするため、今回のインタビューはニックネームで実施し、記事もそのままお届けします。

小林 良(こばやし・りょう)
1976年茨城県生まれ。建築家。RYOPLUS株式会社代表取締役。
14歳の時に建築家を志す。大学院終了後、9ヶ月の就業経験を経て、独立を決意。大工の見習いをしつつ建築士の資格を取得し、2003年設計事務所立ち上げ。紆余曲折を経て2019年にRYOPLUS株式会社を設立、今年で20年。

建築と哲学

COTENインタビュアー(以下、ーー):まずは事業内容を教えてください。

小林良さん(以下、りょうさん):建築設計事務所を経営しています。オフィス・店舗から戸建て住宅まで設計する建物は多岐に渡ります。

ーーホームページを拝見しましたが、そもそもを問いかけるような哲学的なコラムがあったことが印象的でした。

りょうさん:そうですね。建築(特に不動産業界や建設業界)界隈では哲学的な話に共感してくれる人は少ないので興味を持ってもらえて嬉しいです。哲学的な話は生産性の面からみると対極にあるので、なかなか理解されづらい部分です。

ーー建築と思想は、その建物を作るためのコンセプト作りとか、経済合理性ではない何かを作るときに大事な視点のような気がします。

りょうさん:はい、建築は人が暮らすための場所作りだから、本来的には思想と親和性が非常に高いものだと思います。経済合理性の物差しでみると理解されないことが多いですが、ハマる人は僕にハマっていきますね(笑)

始まりは子ども時代のものづくり

ーー建築はどんなきっかけで志したんでしょうか?

りょうさん:子どものときからものづくりが身近だったんです。建築はあの頃の遊びの延長ですね。

僕の地元は茨城の山奥で何もない場所で、おもちゃ屋さんもないので遊びは道具から遊び方まで自分の頭で考えてつくっていました。
初めてのものづくりは5歳のときに作った笹舟。笹の葉っぱを折り曲げて舟を作るのですが、全く同じように折っても笹の葉一枚一枚が違うので決して同じようにはならない。それが楽しくて、ひたすら作っては川で流すっていうのが最高の遊びでした。

ーーそれは最高ですね!

りょうさん:幼少期からものづくりが日常だったのは家族の影響も大きいです。うちはひいおじいちゃんが山師と言って木こりを生業にしていて、おばあちゃんは製材所で働いていました。おもちゃを買うお店はなかったですが、大工道具や材木、釘や金物など道具と材料は普通にあったんですね。

最初は笹舟だったけど、小学校1年生ぐらいになると今度は木の船を作りたくなって。木をノミで削って船の形にして釘を刺してみたいな感じで、ものづくりが自然と進む環境だったと思います。

ーーつくるものが自然と進化していったんですね。

りょうさん:そうなんです、その次は友達と秘密基地を作りました。スタートはただ洞穴に毛布と本を持って行って過ごすという原始的なものでしたが、それが僕にとっては空間というものを初めて意識した出来事でした。

ーーへえ。

りょうさん:洞穴の次は、河原に生えている篠を切って束ねて竪穴住居のようなものを作り、その次は、家から大工道具と金物を持ちだして森に入り、周りに落ちている木材やトタンなどの廃材を使って秘密基地を作りました。その当時の、試行錯誤しながら「自分で空間を生み出した」という経験が今の建築に携わる原風景になっている気がします。

ーーなるほどなあ。

りょうさん:ないものを想像し、そこに空間を創造する。そんな0→1が自分にとっては幸せなことだと気づきました。

「場所」を再定義した家

ーーゼロから生み出していく仕事って、お客様の思いもありますし面白さと難しさがあるのかなと思います。

りょうさん:もちろんあります。そんな中で1番印象に残ってるのが、3年前に手がけた建築で、『内原の家』です。お客さんは20年間仕事をともにしてきた大工さんでした。彼自身が僕のデザインで家を建てたんです。

ーーへえ!素敵なご縁ですね。

りょうさん:はい、「お前がいいと思うものを考えてくれ」って言ってもらえたので、これだと閃いたアイディアを持っていき、その案で即決でした。

ーーどんなデザインになったんですか?

りょうさん:360度ガラス張りになってて透け透けの家です。室内にも間仕切の壁を設けてなくて、木造ではかなり画期的な構造にチャレンジしました。

りょうさん:設計コンセプトは人が何かをすることで場所が生まれる』なんです。つまり、最初から場所を規定しない家。

ーーどうしてそのようなデザインに?

りょうさん:最初に外壁を作ってしまうと、外を見たくなっても後から壁を取るのは難しい。また、最初から間仕切壁で「寝室」「リビング」みたいに部屋の役割を決めて区切ってしまうと、生活が規定されてしまって、暮らしの制限になると思うんです。あらかじめ透け透けのガラス張り・かつ壁を取り払った仕切りの無い空間にしておくることで、住む人のリズムに応じて空間を切り替えることができます。

ーー面白い、最高。ホームページのトップにも載ってますね。写真を見ると屋根が三角で片側に尖ってますが、それも理由があるんですか?

りょうさん:実は構造的にも極めてバランスよく作ってます。メインとなる空間が正方形なのに対して対角に屋根がかかるようになっていて、どこから見ても水平線がありません。そうすると天井に水平な部分ができないので、空気が必ず一番高いところに流れていきます。そして1番高いところに窓をつけることで、室内を風が吹き抜けていく構造なんです。

ーーそういった挑戦的なデザインも、その大工さんだからこそ実現できたんですね。

既存の枠を外す対話に期待

ーー今までお話を聞いてきて、りょうさんがCOTEN RADIOにハマるのはとてもわかります(笑)

りょうさん:COTEN RADIOを聞くときはいつも激しく心の中で頷いてるんです。僕自身思考を止めることができないメタメタなところがあるので、人付き合いがちょっと苦手なのですが、法人COTEN CREWの方々とはそこを抑圧することなく話ができそうだと思って参加しました。

ーー法人COTEN CREWは、既存の枠組みから外側に俯瞰して見るメタ認知のきっかけを提供する場所だと思います。りょうさんにとって心地の良い場所になったら嬉しいです。

りょうさん:先ほどご紹介した内原の家も、長年一緒にやってきた大工さんだからこそ僕のメタ認知を解放でき、実現したものだと思います。COTEN RADIOを聞くなかで得たメタ認知も活かされています。

ーーまさに既存の枠や価値観の外側にあるデザインでしたね。

りょうさん:そう。もう完全に住宅の常識や建築のセオリーの埒外のところで考えて、何のルールもない空間を作りました僕にとっての設計デザインという仕事は、「ものさし」と「リズム」という空間の関係性・場所性みたいなものをずっと考え続けることなんですよね。それはCOTENが事象や人について深掘るという意味では同じだと思います。思考停止せずにいられることが僕にとってはすごく幸せですね。

(編集:株式会社COTEN 内山千咲/ライター:丸岡愛美)



ここまでお読みいただきありがとうございました!

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