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深井さんは、誰もが持つ「生きづらいエネルギー」を跳ね返す答えを、歴史に見出そうとずっと葛藤している | 諸藤 周平 × 深井 龍之介

COTENの資金調達を機にスタートしたCOTEN投資家陣とCEO深井龍之介との対談企画、第二弾はCOTENのリードインベスターであるReapraグループのFounder & CEO、諸藤 周平(モロフジ シュウヘイ)さんがお相手です。
諸藤さんと深井の出会い、COTENへの投資を決めた理由、諸藤さんが思うCOTENの魅力について、対談してもらいました。
聞き手は広報担当の下西です。

*この記事は2021年9月30日にコーポレートサイトにて公開された記事の再掲です。記事内の情報は2021年9月30日時点のものです。

諸藤 周平(モロフジ シュウヘイ)さんプロフィール:
Reapraグループ Founder & CEO
株式会社エス・エム・エスの創業者であり、11年間にわたり代表取締役社長として同社の東証一部上場・海外展開など成長を牽引。同社退任後2014年より、シンガポールにてReapraグループを創業。アジアを中心に産業規模のマーケットリーダーを創出することを目的に、ベンチャー企業への投資や共同での立ち上げ、長期視点で成長を伴走支援する活動等に取り組んでいる。1977年生まれ。九州大学経済学部卒業。

下西:本日はよろしくお願いいたします。二人が出会ったきっかけは何ですか?

深井:北川さん(※北川 拓也さん/楽天株式会社 常務執行役員CDO)からのご紹介で、一番最初は2人でご飯に行ったんですよね、福岡で。

諸藤:そうですね。ぜひ色々聞いてみたいと思ったので、食事させてもらったのが最初です。
めっちゃ興味ありましたね。僕の興味が「社会と共創する熟達」で…

深井:その説明をしないといけないですね。

諸藤:そうですね。Reapraでは、共創を「当事者とは異なる価値観や能力を有している他者や他組織と、それぞれの目的を持ちながら、ある同じ目的に向かって共働していくこと」、熟達を「Life Missionに向かって前進していくために、自我を変容させながら必要な価値観や能力を獲得していくこと」と定義しています。
またLife Missionとは、当事者が人生をかけてエネルギーを費やし続けられると信じられる拡張性のあるテーマを指します。
そして「社会」というものの重心は一旦、「人間社会」に置くのですが、
その人間社会で、何か社会を前に進めることをしようとしている人で、何か起こす可能性を感じる人っていうのにすごく惹かれるんです。それを深井さんに感じたので、興味を持って食事させて欲しいと思いましたね。

※「社会と共創する熟達」について、詳しくはこちらをご覧ください

寄付したら怒られた?!そこから繋がった投資

深井:細かく何を喋ったかは覚えてないけど、盛り上がったのは覚えてます。
そこでお互いけっこうざっくばらんに話をして、その時は出資どうこうではなく、とりあえず喋ってみようと。ほんといろんな話をしましたね。事業の話は半分か1/3くらいで残りはプライベートな話。
そこで諸藤さんが「少しだったら寄付するよ」って言ってくれて…
その寄付で事業推進部のメンバーが採用できました。そこから一気に進んで調達までいった感じで。

諸藤:個人としても寄付はそのときまでしたことがなくて。直近でいくと何人かあるんですけど。
その時点ではCOTENを株式会社でやるべきかどうか、わかってなかったんです。むしろ非営利の方がいいんじゃないか、くらいに思ってました。
そうなると投資会社としてのReapraとビジネスの接点は作れない。ならば余計に、手伝えることもありそうなので定期的に接点を持ちたい、と思っての寄付のオファーでした。
COTENにビジネス上の興味があるというよりは、先ほど言った「社会と共創する熟達」でいうと、深井さんは「熟達候補者」だし、これからも熟達していきそうで、とても興味深かったんです。

ただ深井さんがこれからしようとしていること「単体」には興味がなくて、何に対して何をどういう経緯でしようとしているか、ということに興味があったんです。過去も含んだコンテキストで未来を見る、時間の概念を含んで試行錯誤することが熟達だと思っているので。

それで、深井さんの生い立ちや今までしてきたことを色々と伺いました。生まれ育った地域や感じてきた生きづらさを含めて。「歴史」に出会ったことで、生きづらい中でもそれを社会との接点にして磨き上げてきているところが、熟達者を構成するパターンだと思いましたね。社会と接点が取れないという苛立ちと、それによって開眼するという点が。ここからアーティストになる人もいれば、起業家になる人もいると思います。
社会との接点を切らさないように葛藤していて、その葛藤が深い。そして多くの情報を繋げて深く思考している、というところにとても共感しました。

深井:とはいえ、一旦は寄付を頂いてそれで完結しましたよね。
次に諸藤さんとお会いしたのは、資金調達のときにエンジェル投資家として投資していただけないかご相談したとき。
そのときに諸藤さんが「寄付とかじゃなくてReapraで出す方が良いって部下に怒られた」と仰ってて…。

諸藤:社内にCOTEN RADIOが好きな人がいて、寄付したことを話していたんですね。そしたらそのことを投資担当に話したらしく、投資担当がめちゃくちゃ怒ってたんですよ。「今年一番デモチ(デモチベーション)した」って。
自分たちはニッチすぎるVCだから話を聞いてもらうのも難しい中で、それでも起業家と対話して向き合ってやってきているのに、ぺろっと会って寄付とかして、投資する可能性を消すなんてなに考えてるんすか?なにゆえCOTENが投資先じゃないんだ?と。笑

そうしたらたまたま深井さんがエンジェルの話を持ってきてくれたんで、
寄付した時点ではCOTENを株式会社でするイメージがあまり持てていなかったし、投資との相性がいいかもわからないけれど、深井さんはめっちゃ面白いから、投資担当がデモチしているのもあるし、是非お話をさせてください、となりましたね。

ブラインドポイントに向き合わせてくれる存在

深井:正直なところ、当初はReapraさんからVC投資を受けるつもりはあまりなかったんです。ただ以前からReapraさんの話は聞いていて、相性が良いだろうなという感覚は持っていたんですね。だから話を聞かないのも変だなと思ってお話しすることにしました。

そしたらめちゃくちゃ深堀されて。デューデリ(デューデリジェンス)の代わりに人生の深掘りみたいになったんですよね。その中で、起業家が自分に向き合うことを促進してくれることで、結果的に事業が早く進むんじゃないかと思ったんです。それで、最後の最後でReapraさんにお願いすることにしましたね。

Reapraさんがいてもいなくても、僕は自分に向き合わなければいけない。ただ、いてくれた方が速く、深く向き合えると思ったんですよね。基本的に人間は自分に向き合いたくないから。

いろんなベンチャー企業で、社長のブラインドポイントや苦手なことに起因して発生する現象を見てきました。客観的には見えるけど、自分では自分のことは絶対に見えない。見えないからこその強みも弱みもあるんだけど。
特に初期のスタートアップは、社長ができてないことが企業の成長スピードに如実に反映されるんですよね。

過去に自分で向き合ったこともあって、それがしんどいこともわかってるから、外部から指摘してくれたり、一緒に研究してくれたりする人がいるのは非常にありがたい。一人でやると何ヶ月もかかったり、スーパー痛い目に遭わないと到達できないようなポイントに向き合わせてくれる。自分やCOTENの成長上限が上がる感覚があります。

諸藤:Reapraとしては敢えてブラインドスポットを見つけにいったわけではなく、対話の中で深井さんの生い立ちを聞くということをやりました。

私たちは、社会課題を解決するためにその人自身が視座をあげたり、スキルを獲得することを支援したい。ただ、この妨げになるのがブラインドスポットで、自分では認識できていないために視座が上がらない、スキルが獲得できないということが起こります。対話を通してそこに気付いてもらうことが、支援のあり方になっていると思っています。
基本的に企業がお金を欲しているタイミングって、抱えている課題がお金で解決できるときなんですよね。そんな時に私たちが「お金以外の課題も見ませんか?」と提案しても、目的がズレてしまう。
そうすると結果的に、ほぼ0ベースの会社を一緒に作るか、会社を作ろうとしている時以外は投資にならないんです。例外はありますが、これが投資の基本姿勢です。

一般的には、VC側も投資することで上場できそうか、最後大きくなるか、という点をIRR(内部収益率)などを見て判断しています。
特にスタートアップのような0→1のときって、どれだけ自分の事業だけに集中してくれるかという目線で見ているのが実態なんじゃないかと思っています。自分と向き合ったりせずに、走り切ってくれる方がよしとされている。

でも私たちは、超長期の社会課題で、有望だけど複雑だから取り組んでいる人がいない、というところを一緒に学習したいと思っています。
こういった領域は、そもそもの環境が見えない。見えない中で探索して、探索した結果、見えるようになった範囲で作り込むということをずっとやり続けます。
そこでは、自分が見えていないことを見ようとする姿勢がどうしても必要になります。

今ある課題を解決すれば絶対に次の課題が見つかる、というわけではない。意識的に見えてないことを見ようとすることが必要なのです。
その環境を見る「目」というのが、自分で自分をどれだけ見れているのかとセットになると僕らは思っています。

前述のように、事業が進んだ状態でお金が必要、というときは普通は振り向いてくれないんですよね。
COTENはここを乗り越えて投資が実現した珍しい例なんです。

深井さんは人生の中で自分をメタ認知する機会が多かったので、自分に見えてないものを取り込む、環境を整えることに対する感度が他の人よりはかなり高かった。だからこそ、事業を始めているにもかかわらず、立ち止まるという選択をされて、僕らのことを振り向いてくれたのかなと。

歴史を通して「なんのために生きるんだ」みたいな抽象度の高いものを、無限に取り込んでますよね。それをパターン認識していながらも、現実社会にすべて適用してきたわけではない。神聖だと思っていた概念と現実社会とのすり合わせをしたときに、人間はこうも俗人的に生きているんだ、そして自分もそういう側面はあるんだ、と見ながら生きてこられた方だと思っています。

「生きづらさ」がキーポイント

下西:諸藤さんが思われる、COTENの魅力は何でしょうか?

諸藤:全部が魅力的ですよね。
COTENやCOTEN RAIDOがやっているのは、歴史的事象や人物に時間の概念を加えて編集することで、それを今の生き方に跳ね返すということ。現代の情報の集めやすさや加工のしやすさ、テクノロジーを鑑みると、これを意図してやるとすごいことになるんじゃないかと思っています。でもやっている人がいないという。

でもそれ自体があまりに輝きすぎていて、かつそれを輝かせたいという相当強い囚われを持っているのが深井さんかなと。そこがうまく世の中に浸透したらとんでもないことになるっていうのが魅力なのかなと思っています。

下西:深井を起点にしているところが大きいんですね。

諸藤:そうですね。深井さんは誰しもが持っている「生きづらいエネルギー」を跳ね返す答えを、歴史の事象や人物に見出そうとずっと葛藤してきてますよね。社会と閉じてた期間が相当長くあって、そこでねり込んだエネルギーを社会に跳ね返そうとしている。ここまで生きづらい人ってレアじゃないですか。笑

それでも社会と繋がれる機会があって、繋がろうとしているのはすごいいいことだなと思うんで。そういう人がリーダーになるのかなと思っています。エネルギーの絶対量が圧倒的に多い深井さんに、強い魅力を感じていますね。ただ会社としてそこに依存しないようになるというのがCOTENが輝けるかののチャレンジかな、と。

COTENメンバーもそれぞれに何かしらある生きづらさを可視化して跳ね返していったらいいんじゃないかと思っています。

下西:龍之介が社会と閉じてた期間が長いということを知っている人ってそんなにいないのでは?

深井:今は意識的に自己開示をしているから知っている人はたくさんいるけれど、そこがキーポイントであると認識している人はすごく少ないと思う。

僕の経験や素質、生きづらい人間の執着であり囚われているところが、反動として社会に跳ね返っていくという点に強い可能性を感じてもらっている、という話だと思うんだよね。

生きづらかったことと今やっていることの因果関係や、これからやろうということとの関連性を、諸藤さんたちは、そのように捉えていて、キーポイントだと認識しているということだよね。

諸藤:生きづらい深井さんのはずなのに、ギリギリのところで成り立ってるのは面白いなと思っています。

深井:ギリギリのところで・・・笑

ヒエログリフ的存在になれるか

下西:COTENは今後こうなるんじゃないか、という見立てはありますか?

諸藤:僕は「雲孫財団」という、9世代先の孫にまで繋がる営みを生み出す非営利団体を運営しているのですが、最初は「ヒエログリフ」という名前にしようと思っていたんです。

ヒエログリフというのは最初の文字ですよね。最初はよくわからないことをごちゃごちゃ書いてたのが、そこから派生して人間は言語というツールを得た。
これが情報の伝達や脳の発達に大きく寄与したんじゃないか?という思いから、非常に小さな所から始まったものが世代を跨いで人間を豊かにする、そんな風になったらいいな、と思って名付けたんです。
結果的には多方面から「その名前はみんな『呪い』としか思われないからやめたほうがいい」と言われてやめたんですけど。笑

COTENも「ヒエログリフ」みたいなことになり得るんじゃないかな、と思っています。
歴史を見るということは時間の概念を取り入れることだと思うんですよね。
入口はエンタメ的にCOTEN RADIOを聴く、だったとしても、歴史を見ることで時間の概念で生き方を見ることになる。

社会の空気感で幸せと思っていたフォーマットが今まで以上に剥がれやすくなっていて、みんな不安を感じていますよね。大企業で働いていても、お金を稼いでいても、スローライフをおくっていても。

何かの因子があるとそれがさらに加速していきます。例えば当たり前に享受していた医療が提供されなくなるとか。日本で言うとまだ政府とかを信じてるんですけど、それが剥がれたときに、歴史を見ることはよりどころの一つになるのかな、と。伝統的にはそれが宗教だったんじゃないかなと思います。

歴史の授業も、これまでは自分の人生とほとんど繋がりを持っていなかったのが、テクノロジーの進化も相まって、繋がるようになるのではないかと。

深井:本当にすごく理解してもらってて、嬉しいですね。
みんなの生き方の中に時系列の概念がが加わっていくんだよ、というのが我々のミッションとして実はいいのかもしれない。ミッションというかマイルストーンの最初のやつとしては。今後そうしていこうかな。

COTENの資金調達を機にスタートした「投資家(VC)さんと深井の対談企画」第二弾は、COTENのリードインベスターであるReapraグループのFounder & CEO、諸藤 周平(モロフジ シュウヘイ)さんをお相手に迎えてお送りしました。深井にとって、自分自身に向き合わせてくれる存在というReapraさん。Reapraさんの投資の考えの基盤となっている「社会と共創する熟達」に、深井自身やCOTENが目指す姿がマッチしていたというストーリーは非常に興味深かったです。投資のきっかけの一つに投資担当の方の「怒り」があったエピソードは私のお気に入りです。笑諸藤さん、ありがとうございました!