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病気や不調を対象化し切らない、包括的な「医療」の姿を模索中 | あかりクリニック 美崎昌子 × COTEN

法人COTEN CREWになってくださった法人の方々への対談連載。
今回はあかりクリニック院長の美崎昌子さんです。
ただ単に治す医療を提供するのではなく、支えてくれる場所をも提供しています。

対談のお相手は同じく法人COTEN CREWでもあるreborn株式会社のハブチンこと羽渕彰博さん。
法人COTEN CREWのコミュニティは、敬語を使わず「タメ語」で話すのが通例。その空気感をお伝えするため、記事内も「タメ語」のままお送りします。

美崎昌子(みさき まさこ)
茨城県で循環器救急を中心に従事後、2017年静岡県掛川市にあかりクリニックを開院。双子の姉とともに地域医療/医療の在り方・可能性を模索中。掛川の自然に囲まれながら、患者さん・こどもたち・スタッフ・自分の能力を引き出し、また迷ったときに帰れる場としてのクリニック作りを実践中。

言葉がけや雰囲気そのものが医療

羽渕彰博(以下、ハブチン):まぁちゃんは、なんでCOTEN CREWになったのか気になる。

美崎昌子(以下、まぁちゃん):COTEN RADIOが好きで。見返りを求めない、実験的な構造が面白いから。変化するか変化しないか、っていうのに参加したいっていうのがある。あと、うちのクリニックも同じで、共感してる組織ですよっていうアピールができるかなって。

ハブチン:あかりクリニックの中にも、COTENで得られた知識みたいなものが影響してるのかな。

まぁちゃん:看護師さんとか事務さんとかまで行き渡ってるかはわからないけれど、でもこれからかな。もともとうちのコンセプトが、一人一人が考えて行動できるというか、職種関係なく全員が医療を提供できるように、というもので。言葉がけや雰囲気、それそのものが医療だよ、っていう雰囲気。

ハブチン:なんか医療ってさ、全員でやるっていうより、分業制だったり、専門性があって、自分の専門領域を深く掘り下げるみたいなイメージがある。医療全体のこととかを考えたり、自分の領域を超えて考えるっていうスタンスがたぶん珍しいんじゃないかなと思うんだけどどう?

まぁちゃん:専門性の高い職種で働けば、自然と提供する医療も専門性が高くなっていくと思う。でも、やっぱり最後に残るのは、人と人との関係だったりするんだよね、不思議と。

ハブチン:技術とか手術とか薬とかじゃない、人間と人間との関係みたいなことが病気を治すってことはないと思うんだけど、癒しにつながったり、満足につながったりもするのかな。

まぁちゃん:日々患者さんの対応をしていると、幸せとか、快感の快ってなんだろうと思わされる。いま多くの人たちは長生きを望んでるけど、果たして長生きすることだけが正解なのかも疑問だよね。

ハブチン:命を定量化するのであれば長く生きた方が正解なんだろうけど。定性的な満足、快、幸せも大切だよね。

ネガティブな感情も含めての人生

ハブチン:満足・快・幸せという話になったけど、最近、ポジティブな感情だけ感じて生きるのって、「人間らしく生きる」ということの半分くらいしかカバーできていないんじゃないかな、ということを考えてる。悲しいとか悔しいとか、ネガティブな感情も感じながら生きられるってすごく大事。
でも、子どものときは皆ネガティブな感情を普通に外に表現できるのに、大人になってくると感情を抑え込んでしまう。

まぁちゃん:子どもって、悲しいとか恐怖っていうのが、どこから来るんだろうね。快とか幸せだけではなく、ネガティブな感情も追求していくことが、最終的には快にもつながるんじゃないかって思ってて。

ハブチン:感情が出せるのって、「出してもいいんだ」って許せる場所があるから、ネガティブなものもポジティブなものも出せるのであって。なんかすっげえイライラしてる人はやっぱ我慢しちゃって出せないよね。

まぁちゃん:だからね、うちの先生たちも言うの。お母さんたちとか、子どもたちをとにかく温かく包む場が社会にちょっとでもあればいいなって。「大変だね」とか「お母さん自分を大事にしなよ」とかって言ってくれるようなね。理学療法士さんは「いま体を大事にしなきゃ30年後困るよ」って骨盤体操のサイトとか教えてるし。

ハブチン:自分が「できる」って思い込みすぎちゃうと、できなかったときに、自分を責めてしまう。できなくても当たり前だし、そこで自分を責めても、なにも生まれてこない。自分の限界を知るというか、俯瞰して見ることが幸福にもつながるんだろうなって思った。

まぁちゃん:みんな悩みはきっと、いろいろあるしね。あんまりそれをネガティブに捉えすぎないのが大切かなって。自分の中にある悩み苦しみを認めて共感する親友のような自分と、悩み苦しむダメな自分もひっくるめて愛おしいと思える母親的な自分がいる。そんなふうにダブルで俯瞰して見るっていうことも解決策になるのかなと思いますね。

必要な人の「あかり」に

ハブチン:もちろん医療で治すってことも大事。だけど、全てを受け入れるみたいな姿勢だったり、あり方だったり、場所を作っていくことも大事だと思う。

まぁちゃん:場は大事。だからうちは「あかり」。灯台とかロウソクみたいに、なくても大丈夫な人もいるけど、必要な人にはなにかの足しになってほしい。その人がたどり着くべき場所に着いたら捨ててもらったり、また帰ろうと思ったときに帰る場所になったり。

ハブチン:だから「あかり」なんだね。

まぁちゃん:それと、教える側が一番大事なのは学ぶ姿勢。事務さんに「すごいいい子たちに育ったね」って言ったら、「いやぁ、習うことの方がずっと多いです」って。同じような考え方を持ってて、うれしいなと思った。やっぱり本当に教えるとか愛情とか、与えてるようで結局もらう方が、おつりが多いなって。教えながら学ぼうっていう、自分も育とうと思いながら育てると、もっと良くなるなって。

ハブチン:なんか病気を治してるっていうよりかは、みんながありのままで受け入れられて、教えて育つ、自分も育つし、育ち合ってるみたいな環境を作っていくことを大切にしながらやっているのが、あかりクリニックっていう感じだよね。

まぁちゃん:そうそう、本当に患者さんたちにいろいろ聞くとね、「教えてやるよ」っていう感じになる。自分の体のこと。いろんなスタッフにそれぞれの患者さんがそれぞれの目線で、「この人にはこれを言おう、あの人にはあれ言おう」って。その行動が、普通に医療的には、痛みとか認知行動療法とか治癒力とかを取り入れて、みんなでやったりとか。

ハブチン:コミュニケーションが多いのかもね、患者さんもね。けっこう雑談してるって感じで。

まぁちゃん:他のところと比べて、うちはにぎやかだと思う。患者さんは、私だけと話す時間はそんなに長くなくても、他のみんなとすごく話してるかな。
ハブチン:いいね!そういう場所を世の中に増やしていきたいね。


ここまでお読みいただきありがとうございました!

この記事を書いた人:なるめろん(Twitter: @narumeron_1212)

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