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資本主義の仕組みの中で苦しむ人のお手伝い | トナカイの木 矢吹フサコ × COTEN

法人COTEN CREWになってくださった企業の方々への対談連載。
今回は、株式会社トナカイの木の矢吹フサコさんです。
社会の仕組みに苦しむ人を笑顔にするために生かしたのは、持ち前の多様な考え方でした。

対談のお相手は同じく法人COTEN CREWでもあるreborn株式会社のハブチンこと羽渕彰博さん。
法人COTEN CREWのコミュニティは、敬語を使わず「タメ語」で話すのが通例。その空気感をお伝えするため、記事内も「タメ語」のままお送りします。

矢吹フサコ
株式会社トナカイの木代表。マーケティング戦略立案、ファシリテーション、デザインをビジネスの主軸としながら、イベントや音声配信等で対話の場づくりを行っている。
複数の居場所に根ざす生き方を多くの人ができる社会を目指し、株式会社トナカイの木を設立。仕事のために人生の選択肢を狭めない、より多様な働き方をクライアント(発注元)とパートナー(発注先)ともに実現できる仕組みを模索している。
漫画家・トナカイフサコとしても活動。

選択肢は複数あった方がいい

羽渕彰博(以下、ハブチン):トナカイの木のホームページに書いてた「ひとつに絞るんじゃなくて、複数に選択肢を持ってた方が生きやすいんじゃないかっていうことを伝えたい」。これすごく面白いなと思って。

矢吹フサコ(以下、フサコさん):もともと、より多い選択肢がある方が良いという感覚は、たぶん子どもの頃からの経験が大きいと思う。いづらいとか、生きづらいとか、周りに合わせるのしんどいなっていう思いを持ちながらずっと生きてきた。違う選択肢があることは自分にとっては救いというか、それがあることで、自分は生きていられるなっていうところは、幼少期から染み付いてきた気がする。

ハブチン:なんかそれ、差し支えなければ、どういうところが生きづらいなって思ったのか聞いてもいい?

フサコさん:小学校時代に親の転勤で海外のインターナショナルスクールに通うことになった。絵が得意だったし、算数は日本の学校教育の方が進んでいて良い成績が取れたから先生に認めてもらえることはあったけど、英語はぜんぜん喋れなかった。そこで初めてマイノリティの立場を経験した。中学で帰国したら今度は日本の授業についていけなかったり日本人の同級生の一般教養がなかったりして、それで自分は他とは違うと日常的に感じる経験をしたと思う。

多様性が認められる環境

ハブチン:中学校はどんな感じだったの?

フサコさん:日本に帰国して通い始めた中学校には、帰国子女クラスがあって私と同じ帰国子女の同級生たちがいた。その後進学した高校も服装自由だったり比較的自由な校風だったから、そこまで苦しい思いはせずに済んだのではという気はする。

ハブチン:なるほどね。多様性が認められる環境にいて、社会人になるとどうだったのか。

フサコさん:私は株式会社電通に就職して、結論は、あの会社に入ってめちゃくちゃ良かったなと思う。マーケティングという戦略を考える部署に配属されたのも私の気質に合っていた。学生時代まで私はクラスの中で「ちょっと変なやつ」だったけど、電通に入ると周りには「変なやつ」しかいない状態。むしろ変じゃないと埋もれちゃうみたいな感じで。非凡な人たちだらけで、例えばコミュ力はゼロだけど、頭使うところに行ったらもうピカイチとか。何か突出するものが1個あれば、組織の中で役に立てた。

ハブチン:組織のカルチャー自体はさっきの多様性が認められるっていう意味では良かったんだ。

なぜ、働くほど忙しくなってしまうのか?

フサコさん:でも、仕事を続ける中で、違和感を持つようになった。これは電通がというよりは資本主義というシステムの話になるんだけど、例えば自分が仕事をすればするほど、周りの先輩とかはより一層忙しくなってしまう。今までの人だったら1カ月かかってたものを、私が頑張って3週間とか2週間で終わらせると、その分みんな休めるんではなくて、「じゃあ次は1週間でやって」って言われてより忙しくなってしまったり。

ハブチン:働けば働くほど、より忙しくなってみんなが不幸せになる。

フサコさん:会社というものは、社員が頑張って売上を上げて会社に貢献しても、社員自身の幸せはそこに比例しないんじゃないかと思った。自分が頑張った分だけ周りの人や自分自身が幸せになれて、未来にも希望が持てる、そういう組織に身を置きたいし、そういうあり方を目指したいなと。他にも理由は色々あるけど、そんなことを考えて会社を辞めて独立した感じですね。自分が頑張った分だけ周りの人とか自分自身も幸せになるし、その未来に希望が持てるところに行きたいし、目指したいなと。他にもいろんな理由があって、会社を辞めて独立したという感じですね。

ハブチン:世の中の会社の仕組みみたいなところに違和感を覚えたわけだ。

フサコさん:クライアントさんの現場の人は上司に厳しいノルマやスケジュールで苦しめられて、その上司は役員に苦しめられていて。さらにメーカー、流通って続いた先にはお客様である一般消費者に戻ってくるっていう。この循環はひとつの会社だけ恨んでも仕方がない。ガラッとシステム全体を変えるまでは、私にはなかなか力が及ばないけど、今まさにこのシステムによって苦しめられているその人のお手伝いくらいはできないかなと。自分の手の届く範囲の大切な人がより幸せに豊かに生きるために、自分の体と時間とスキルを使おうと思って、会社という枠を飛び出してみた感じですね。

トナカイの木から養分を吸ってほしい

ハブチン:フサコさんって常にちょっと外側から俯瞰して見るみたいな。会社の仕組みとかもそうだし、資本主義の仕組みとか。メタ認知力が高いというか。法人COTEN CREWに参加してくれたのも同じで、選択肢を増やしていく活動をという感じでやっているし。選択肢を増やしたいってなった時に、どういう手段でそれを叶えているのかな。

フサコさん:事業の実態としては、クライアントさんから見たトナカイの木はマーケティング、コンサル、制作会社の外注先でしかないけど、単に「制作とか外注請け負います」っていうよりは、思想とか価値観の面でクライアントさんとつながっていたい。目指したいのは、会社の福利厚生。例えば、子育てしながら働く会社員の方は、保育園のお迎えまでに会社を出て、帰宅して子どもを寝かしつけるまでのバタバタの後、深夜に仕事をする人もいる。その深夜の部分の作業をトナカイの木が請け負うことができれば、その社員さんはしっかり夜寝ることができる。社員の方は家族のために頑張って働いてるはずなのに、稼いだお金が子どもの保育園代で消えるのは本末転倒だと思う。「社員たちのワークライフバランスを整えるためにトナカイの木を使ってます」っていう会社さんが増えて、トナカイの木のクライアントさん=ホワイト企業って見られるといいな。

ハブチン:働き方が楽になっていくようなことをしていきたいってことね。トナカイの木って名前もそこにつながってるの?

フサコさん:自分自身がクライアントさんの養分となって、クライアントさんが豊かに茂っていくといいなとも思うし。我々トナカイの木自身も、いろんな人からの協力を得て豊かに実っていくといいなと。トナカイの木に関わってくれている外部の協力先の皆さんも同じトナカイの木から養分を吸って、より実ってくれるといいなという考えです。

「資本主義で成功してからポスト資本主義」では嘘になると思った

ハブチン:みんなの幸せのために働いていくっていう世界観だよね。法人COTEN CREWってポスト資本主義、世の中の仕組みを否定するわけじゃないけど、なんかちょっと斜めから見たりいろんな実験したりしながら、ちょっと緩やかに変えていくというか。

フサコさん:私COTENの中で「資本主義はOS」って表現されてたのがすごい納得して。OSだったらアップデートが必要だし、何か疑問を呈するとか、ここちょっと使いづらいよっていうコメントをして磨いていくもの、アップデートしていくものじゃんって。

ハブチン:そこからCOTEN CREWに?

フサコさん:COTENが「ポスト資本主義の試みとしてCOTEN CREWに!」って言っていて、ここで「うちも資本主義的に成功してお金ができてからサポートします」と言ったら、それはちょっと自分の中で嘘になってしまうなと思って。もしポスト資本主義を実践してる方がいるんだったら、自分もそこに乗っからなきゃと思って、CREWに手を挙げさせて頂いた感じかな。


ここまでお読みいただきありがとうございました!

この記事を書いた人:なるめろん(Twitter: @narumeron_1212)

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