255. 若年成人の光学的デフォーカスに対する眼軸長変化に対する内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)刺激の影響

The effect of intrinsically photosensitive retinal ganglion cell (ipRGC) stimulation on axial length changes to imposed optical defocus in young adults.

Chakraborty R, Collins MJ, Kricancic H, Davis B, Alonso-Caneiro D, Yi F, Baskaran K. J Optom. 2023 Jan-Mar;16(1):53-63. doi: 10.1016/j.optom.2022.04.002. Epub 2022 May 17. PMID: 35589503; PMCID: PMC9811374.

目的:内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive retinal ganglion cell: ipRGC)は、瞳孔の大きさと概日リズムを制御している。短波長の青色光でipRGCを刺激すると、post-illumination pupil response (PIPR)と呼ばれる持続的な瞳孔の収縮が起こる。ここでは、若年成人において、光学的デフォーカスをかけたときの眼軸長変化に対するipRGC刺激の影響を検討した。

材料と方法:ほぼ正視の若年参加者を対象に、右眼に近視性(+3D,n=16)または遠視性(-3D,n=17)のデフォーカスを2時間与えた。デフォーカス前後、赤(625nm,3.74×1014 photons/cm2/s)および青(470nm,3.29×1014 photons/cm2/s)の刺激を5秒与えた後にIOL Masterを用いて最大180秒間の一連の眼軸長測定を右眼で実施した。瞳孔の測定はipRGCの活動を追跡するために左目で行った。6秒および30秒のPIPR、初期および後期の曲線下面積(AUC)、ベースラインへの復帰時間を測定した。

結果:青色光によるPIPRは、遠視性デフォーカス2時間後に有意に強くなり、6秒および30秒PIPRの低下、初期および後期のAUCの増大が示された(いずれもp<0.05)。短波長のipRGC刺激もまた、遠視性デフォーカスに対する眼球反応を有意に誇張し、遠視性デフォーカス単独によるものより有意に大きな眼軸長の伸展を引き起こした(p = 0.017)。どちらの波長も近視性デフォーカスによる軸長に影響を与えなかった。

結論:これらの知見は、近視性や遠視性デフォーカスとipRGCシグナル伝達との間の相互作用を示唆するものである。

※コメント
ヒトの網膜には杆体、錐体とipRGCの3種類の視細胞があり、杆体と錐体は明るさや色を知覚する光の視覚作用に関与し、ipRGC はメラトニン分泌抑制、概日リズム位相シフトや瞳孔対光反射などの非視覚作用に関与している。近年ではipRGCが視覚機能にも影響を与えることが次第に明らかとなってきている。
(視覚機能に及ぼす内因性光感受性網膜神経節細胞の働きに関する最近の研究動向,勝浦 哲夫 他,日本生理人類学会誌,2021より抜粋)


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