26. 回旋融像の正常範囲内での回旋偏位でも,輻湊・開散の水平運動融像と立体視に影響を与える

The effects of torsion on horizontal motor fusion and stereopsis

Feng T, Li Y, Zhang W. Sci Rep. 2023 Jan 16;13(1):792. doi: 10.1038/s41598-023-28169-z. PMID: 36646778; PMCID: PMC9842707.

目的:健常成人の水平運動融像と立体視に対する眼球回旋の影響を調査し,周辺融像,黄斑融像、中心窩融像に対する回旋の影響を探ること。
方法:30〜38歳の健常成人25名を本研究に登録した。シノプトフォアによる評価の際,輻湊融像(convergent fusion:CF),開散融像(divergent fusion:DF)のbreak point(BP)とrecovery point(RP)とランダムドットの立体視を3°,5°,7°,9°の内回旋・外回旋で測定・分析した。シノプトフォアスライドによって刺激される網膜領域の大きさの違いによって,融像は周辺融像(p-F),黄斑融像(m-F),中心窩融像(f-F)の3つに分類された。p-F,m-F,f-Fを同じ回旋角度で比較した。
結果:BPCF(輻湊のbreak point),RPCF(輻湊のrecovery point),BPDF(開散のbreak point),RPDF(開散のrecovery point)は回旋角度の違いで有意差があった(ANOVA、P < 0.05)。
Tukeyの多重比較検定により,p-F,m-F,f-FのBPCFとRPCFは,ベースライン(回旋0°)と比較して,内回旋・外回旋5°以上で有意に減少した(P<0.05)。
ベースラインと比較して,DFのBPはp-F,m-F,f-Fでそれぞれ3°以上,5°以上,7°以上で,RPはp-F,m-F,f-Fでそれぞれ5°以上,9°以上,7°以上で有意に減少した(p<0.05)。
p-F,m-F,f-Fの比較では,BPCFのみ3°の内回旋,3°の外回旋,ベースラインで有意差が見られた(ANOVA、P < 0.05)。また、回旋角度の違いによりRDSの結果が異なる被検者の割合に有意差があった(フィッシャーの正確検定、P = 0.000)。良好な立体視は回旋が大きくなるにつれて損なわれていた。
結論:回旋融像の正常範囲内の回旋偏位でも,輻湊・開散の水平運動融像と立体視に影響を与える。良好な両眼視を得るためには,斜視手術時に5°以上の回旋を考慮する必要がある。

※コメント
回旋偏位が融像と立体視に及ぼす影響を調査した論文です。
5°以上の回旋がkeyという結果になっていますが,あくまでこれは30〜38歳の健常成人の許容範囲を示したものですので,例えば加齢によって起こる後天性の斜視等ではまた考え方を変えないといけないかもしれません。


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