54. 外転時に麻痺眼の緩やかな過伸展を伴う片眼上斜筋麻痺に対する最大量のIO後転術の有効性を確認した

Superior Oblique Palsy: Efficacy of Isolated Inferior Oblique Recession in Cases with Ipsilateral Hypertropia in Abduction

Torrado LA, Brodsky MC. J Binocul Vis Ocul Motil. 2019 Jan-Mar;69(1):8-12. doi: 10.1080/2576117X.2018.1554931. Epub 2019 Jan 7. PMID: 30615559.

目的:上斜筋麻痺(SOP)を有し,外転時の上斜視がある(維持される)患者に対する下斜筋(IO)後転術の効果を評価する。

方法:2008年1月から2017年12月までに一人の外科医(MCB)によってIO後転術が行われた片眼SOPの患者を後ろ向きにレビューした。先天性および後天性の滑車神経麻痺を有し,遠見時のプリズム交代遮閉試験による垂直偏位が正面視で20Δ未満,外転時に4Δ以上ある患者を対象とした。最低でも4~6週間毎の経過観察を行なった。手術時年齢,病因,頭部傾斜の有無,APCTを用いた遠見および近見での第一および第二眼位の偏位量,ひき運動,むき運動,回旋は患者のカルテから記録した。

結果:7名のSOP患者を対象とした。4名(57.14%)が男性で,発症時の平均年齢は41.86歳(6~66歳)であった。平均追跡期間は13.25ヶ月(1.3-52.2ヶ月)であった。正面視の平均垂直偏位は11.4Δから1.71Δに減少した。また,対側(内転時)の垂直偏位の平均値は22.28Δから5.71Δに減少し,同側(外転時)の垂直偏位は5.86Δから1.14Δに改善された。回旋は最終検査で平均3.4°の内旋方向への変化が見られた。

結論:本研究は,外転時に麻痺眼の緩やかな過伸展を伴う片眼SOPに対する最大量のIO後転術の有効性を確認するものである。

※コメント
spread of comitanceの結果,外転時にも上下偏位が起きている事はよくあります。今回はそのような症例に対してIO-rec.をしてどうなるか,という論文ですが,どの方向を向いた時に斜視角が大きくなるかで術式選択をする事が最終的に患者さんのQOVに繋がってくると思っています。

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